まったり転生~魔獣創造を手に入れし者   作:ドブ

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やべぇよ、やべぇやつ生み出しちまったよ

「ふぅ、快適快適」

 

 

人生が勝ち組過ぎてやばい。

 

 

人としての何かを失って三日が経った。あれから自己嫌悪に浸っていた僕だったが、当座の寝床を探さねば、と二時間ぐらいしてから動き始め、見つけた先が、今住処としているこの洞窟だ。雨風は凌げるし、ちょっとした崖の中腹に立地しているために眺めもいい。この森の中でなかなかの良物件といえるだろう。

 

 

そのまま連れてきた豚を抱いて一夜を明かした僕は何かを忘れるように魔獣創造の能力の検証を兼ねて住居の改装を図った。え、牛はどうしたのかって? 捨てた。ヤリ捨てた。

 

 

まぁそんなことは置いといて、だ。この魔獣創造なかなかに使い勝手がいい。

 

 

何せ生命としてイメージがしっかりしていれば、なんでも生み出せる。

 

 

現にこの洞窟の照明はDQのおばけキャンドルだし。今座っている寝具は、創造した鳥の羽毛を敷き詰めたものだ。汎用性抜群ですね、ぼくの神器。まぁまさか神様も神をも殺せる神滅具がこんな使い方されるとは思ってもみなかっただろうけど。才能の無駄遣いすぎる…………

 

 

そしてあの時点では解決していなかった食事だが。

 

 

「…………そうだ、自分でできないなら他人にやってもらえばいいじゃない」

 

 

この発想のもと、肉を調理する専用の魔獣を創りだした。

 

 

人型魔獣、キルキルちゃん。

 

 

当初は小間使い的なメイド型魔獣でも創ろうと思ったのだが、さすがにそこまで融通の利く魔獣を創れるほど僕の神器は万能ではないようで。

 

 

あるいはもっと魔獣創造が成長すればできるのかもしれないけど、今の僕にはこれが精いっぱいだった。というかなんかよこしまな想像広げすぎて、いろいろ条件付けくわえた挙句に己の力量を図り間違え気を失った結果できたのがこのキルキルちゃんだったわけだが。

 

 

一応このキルキルちゃん、人の形はしている。それどころかなかなかの美人さんなのだ。しかし、キルキルちゃんは、しゃべらないし動かない人形さん同然の代物。生命と言えるのかどうかも怪しいレベルの産物だ

 

 

しかしキルキルちゃん、一応初期のコンセプトは達成できているらしく、斬れる生物を創造すると、手刀で綺麗に捌いてくれるのだ…………宿主の命令なしで。斬った瞬間にやりと微笑んでいたように見えたのはさすがに錯覚と信じたい。ちなみにそれを身を以て教えてくれたのは最初に創造した豚さんだった。キルキルちゃんが創造された直後に捌かれた。神器の使い過ぎで意識が途絶える直前にそれやられたから、てっきり最初は豚が殺されたショックで、とか思っちゃったよ。ごめん、豚さん、あんま悲しくなかった。そして、ふざけんな、豚、まぎらわしい。

 

 

それから調整を重ねてどうにか無差別に僕の創造物を斬ることだけはやめてくれたけど。僕が創造するたびに、身じろぎするのはホラーである。やるときはこっちで頼むから! 

 

 

それを感じ取っているのかおばけキャンドルたちもキルキルちゃんに怯えている。ちなみにおばけキャンドルの寿命は一日。頭に火がついているからね! そりゃ蝋も溶けるさ。キルキルちゃんに構いすぎたせいで疎かになったがこちらも鋭意努力中。一日の命じゃかわいそすぎるからね。創った初日とかうっかり名前付けたせいで全僕が泣いたよ。いや文字通り目の前で擦り減っていく命を看取るとか何の感動ドラマだよ。

 

 

まぁ、おばけキャンドルのほうもそうなのだが。

 

 

キルキルちゃんが落ち着き、当面快適に過ごせるだけ環境も整った今日、僕は神器を新たなステップへと進ませたいと思う。

 

 

そう、せっかく魔獣創造というチート級の神滅具が手の内にあるのだ。これを試さずして今生の意味があるというのだろうか。いやない。

 

 

目指せチート。目指せハーレムなのだ。

 

 

その目標への躍進の第一歩として僕はまず、

 

 

 

 

女を創る。

 

 

 

 

何言ってんだと思われるかもしれない。前世の僕なら言うかもしれない。もっと他にすることあるだろ? と。強力な魔獣を創るとか、あるいはそれに向けて修行するとか。ちょっと前までは僕もそう思っていた。

 

 

しかし、と、僕はキルキルちゃんを見る。彼女は首をかしげる、ご命令か、と。斬るものがあるのか、と。

 

 

僕は知ってしまったのだ。キルキルちゃんによって。魔獣創造の無限大の可能性を。

 

 

魔獣創造は魔獣しか創れない、そんな固定観念に囚われていたら決してたどりつくことができなかったであろう推測。

 

 

 

 

あれ? これ原作キャラ創れんじゃね?

 

 

 

 

その可能性に思い当たった僕はその欲望に駆られ、いてもたってもいられなくなった。原作キャラの攻略というのは、このハイスクールD×Dの世界に転生してから頭のどこかにずっとあった欲望だ。特に僕はゼノヴィアを筆頭としてイリナ、子猫ちゃんのことが大好きだった。できることならこの三人とあとロスヴァイセさんもかな? それを囲って愛欲にまみれた生活をしてみたかった。

 

 

そのある種僕の中で神聖視されていた原作キャラが手元に届くかもしれない距離にいるのだ。これに猛らずして何が嫁か、何が婿か、と。

 

 

そして今日、僕はそれを実行に移す。いっぺんには無理だろうから、とりあえず嫁筆頭のゼノヴィアからいってみようと思う。

 

 

…………今の僕に創れるのか。いざ実行の段階に至って僕のなかにそんな疑問が生まれる。神滅具を使い始めてわずか三日。そんな状態ではたしてゼノヴィアを創るだけの力があるのか。ただでさえ、キルキルちゃんを創るときも気絶しているのだ。ここは一度決行を見直して、一端の力量を身につけるまで待ったほうが賢明ではないだろうか。

 

 

「…………ふっ、愚問」

 

 

そんな弱気な心を僕は一顧だにしない。神器は感情に応えてくれる。僕のゼノヴィアの愛は無限大。そんな深い愛に神器は確実に答えてくれるはずだ…………決行への躊躇いはゼノヴィアへの深い愛を疑っているのと同じことだ。ゼノヴィアへの愛が真実だというのならそれを証明して見せろレオナルド!

 

 

…………童貞丸出しの肉欲をかっこよく言える、これが童帝の貫録である。要はゼノヴィアとHしたいだけであった。レオナルド君、まだ五歳である。

 

 

「いくぞ…………」

 

 

手を前に突き出し、静かに静かに己を猛らせるべくゼノヴィアへの愛で心を満たす。

 

 

ゼノヴィア! ゼノヴィア! う、うわあああああああああああああ、くんかくんかすーはーすはー、かわいいよ綺麗だよ凛々しいよゼノヴィアぁあああああああ、おっぱいもみもみもみちょうどいいサイズその攻略できない感じのヒロイン臭が素晴らしくたまらんく好みだよぉおおおおおお、はぁははぁっははぁはhぁゼノヴィア! ゼノヴィア! 興奮あああおおうんんゼノヴィアが好きすぎて死にたい、ゼノヴィアなんでメインのイベントがないんだよぉおおんお色気要員的な感じで扱われている不遇感あああああああああああぁあああああああああああああああああん、もうやっゼノヴィアゼノヴィアゼノヴィ(ry

 

 

神器が発動する。

 

 

その愛を象徴するがごとく、震える魔獣創造。

 

 

次の瞬間。

 

 

世界に光が満ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おぉお! おお! おおおおぉおお!」

 

 

まぶしさに目を焼かれようとも閉じることのなかったまぶたに乾杯。光の世界に見えた人型の影。徐々に徐々に姿を現していく。

 

 

凛々しい姿かたち。軽く緑のメッシ入った青のショートカット。そしておっぱい。微乳と巨乳の間をさまようくらいの僕大好物のおっぱい。

 

 

「ああ…………ああ!」

 

 

これぞゼノヴィア、まさしくゼノヴィア。僕の嫁のゼノヴィアがそこにはいた。

 

 

「す、すばらしい! なんて力か! これが魔獣創造の力か!」

 

 

ふらふらと僕が創りだしたゼノヴィア歩み寄る。

 

 

頬に手を添える。唇に手をかける。腕をさする。髪にほおずりする。尻を撫でる。足をなめる。

 

 

「ああ、ゼノヴィア」

 

 

そしておっぱいをもむ。

 

 

「こ、これが本物のおっぱい…………」

 

 

ごくりとつばを飲み込み、もむ。もみしだくとまるでおっぱいに吸い込まれていくように姿を消す指。つぶすようにもむとかえってくる心地よい反発。

 

 

「………………………」

 

 

な、なんて弾力感。す、すばらしい、すばらしいすばらしいすばらしいぞこれは!

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………だが。

 

 

…………………………………なんだ、この違和感は。

 

 

僕はおっぱいをもみしだきながら感じた何とも気味の悪い違和感にふと手を止める。いや、意識しないようにしていただけで常に感じていた。おっぱいをもむという行為に足りない何か。

 

 

くそっ、生前おっぱいをもんだことがない故にその何かが何かわからない!

 

 

なんだなんなのだ、この違和感は…………

 

 

すがるようにおっぱいをもまれているゼノヴィアの端正な顔つきを見上げる。無表情な顔。

 

 

そこで気づいた。

 

 

はっとさせられた。

 

 

今まで感じていた違和感の正体。それは、

 

 

「喘がない…………だと?」

 

 

おっぱいをもまれたら普通喘ぐだろう、いや、そこは敏感なのぉ! って実況してくれるだろうふつう! 

 

 

「はっ…………そうか」

 

 

キルキルちゃんのときもそうだった。もし特定の行動をとらせたい場合はきちんと条件を指定して創造しなくてはいけないのだった。この場合、おっぱいもまれたら喘ぐゼノヴィアといった感じでプログラミング、ではないがきちんと意識せねばならなかったのだ。

 

 

だからおっぱいもまれてもゼノヴィアは喘がないのだ!

 

 

くそ、そこらへんは僕の愛がカバーしてくれると思ったが、そこまで甘くはなかったか。

 

 

急いでキルキルちゃんの時と同じように調整しなければ…………そこまで考えてふと思った。それは正しいことなのか、と。

 

 

だってそうだ。たとえばHするとき普通は喘ぐ。気持ちいいから喘ぐ。だけれどもこのゼノヴィアの場合はそうじゃない。そのように創られたから喘ぐのだ。それは果たして僕の望んだゼノヴィアなのだろうか。そんなことをして満たされるのだろうか。

 

 

虚しい…………それではただのオナニーではないか。

 

 

僕はがっくりと膝をつく。何をやっていたんだ、僕は。童帝としての誇りを忘れ、目先の欲望ばかり考えおっぱいをもみ、はや二時間。それまで目の前のゼノヴィアがゼノヴィアかどうかすら厭わず、ただおっぱいの虜になっていた。何たる失態。何たる屈辱。

 

 

目の前のゼノヴィアを眺める。ああ、どこからどうみても容姿はゼノヴィアだ。しかし、中身がない。俺の愛したゼノヴィアちゃんではないけどハァハァ。こ、これではダッチワイフと変わらない。何の意味もない。

 

 

「…………僕のばか野郎!」

 

 

喝を入れる。女々しい女々しいぞ僕! 僕はチートだ勝ち組だ! こんなところで満足してどうする! このチートをもってすれば、攻略などいとも容易いというのに、何を手近な、自分で創った女で満足しているのだ! ばかものめ!

 

 

「まったく…………くだらないものを創ってしまった」

 

 

偽ゼノヴィアをにらみつける。ああ、でもチューしたいなぁ、ちょっとくらいいか、ちゅーしながらおっぱいもんで、擦り付けるくらい。いやもちろん偽のゼノヴィアだということは理解しているし、それ自体が意味のないことだとは理解しているが、意味のないことにも意味があるというか、そういう哲学的なことを考えたりしたりしちゃったりして? ゼノヴィアではないと理解しているからゼノヴィアとはすでに見てないし? まぁだからチューくらいしてもいいじゃないだろうか、ついでにおっぱいくらいはもんでもいいと思う。あれだ! ぼく、ぼく、ごちゃいだし、ははおやすてられてさみちいの、って感じでレオナルド君の体が言っている気がする! それにせっかく作ったんだし有効利用しなきゃね!

 

 

「そ、そそそそそそうだな、ゼノヴィアではないとはっきり唇で感じるために未練を断つためにここは…………って、え、キルキルちゃん?」

 

 

チュ~としようとしたらなぜかキルキルちゃんが目の前にいたでござる。

 

 

そして、なぜか偽ゼノヴィアの髪を掴んで引きずっていっている。洞窟の外へ。

 

 

「あ、あれぇ? 僕、それ斬れとか言ってないんだけどなぁ? き、き、キルキルちゃん? 食べれないからさ、それ。捌く必要とかないしね? だからちょっとまって、おいマテ! 待てって言ってるだろ! ま、ちょ、ちょちょちょちょ!」

 

 

………………………何かを裁断する音とともにキルキルちゃんが外から帰ってきた。

 

 

心底楽しそうなとてもきれいな笑顔をはりつけて。

 

 

その笑顔を見て僕はオモッタンダ。

 

 

 

 

ナニコレコワイ

 

 

 

 

「ま、まぁ! いらないものだったしね! あれだよね、僕がくだらないものとか言ってたから、気を利かせて処分してくれたんだよね。う~んえらいなキルキルちゃんは~ほめて遣わす! な、なんちゃっ…………て~~」

 

 

何事もなかったかのように定位置ついたキルキルちゃんを見届けて、僕はぎこちなく腰を下ろす。

 

 

そしてキルキルちゃんにならって何事もなかったかのようにつぶやいた。

 

 

「攻略する気のない原作キャラだったら、疑似NTRみたいな感じで肉体だけ愉しむのも悪くないかも…………」

 

 

キルキルちゃんの目が光った気がした。

 






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