何せ今までこの小説では十歳以上の生物が出てきたことがない。最高年齢七歳、最低年齢一歳、物語の平均年齢約2歳。もうね…………これぞ二次創作だからできる暴挙だよね。
まぁあれだよ、キャラクターの外見が歳に相応しないことなんてよくあることだし。合法ロリつうかペドだよね、これも。
「…………というわけで教会側とは表裏ともに仲を深めることに成功しました。私の息子の綺礼も順調に成果を上げているようです」
「そうか、ご苦労」
いよいよ計画も軌道に乗ったというところか。これでようやく一息つけるな、とここのところ張り詰めっぱなしだった緊張を意図して緩まそうとする。しかし、と続けた頭の良すぎる教会担当の魔獣の言葉に感じた不吉な予感を振り払うように。
「安全と実益のためここで一手を打っておくべきかと」
「…………まだやるのか」
ただでさえ、教会の裏に接触するために一騒動と言うにはあまりに目に余る茶番をやったというのに。まだ懲りないのか。一人で裏方すべてセッティングする美術担当の僕の労力も考えてくれ。
「はい。熱心なクリスチャンである企業主の私が世界の裏の事情に触れ、教会の正義を知り、そしてその正義に息子を救われたのです。ここで行動を起こさず看過したとしたらそれこそ主に申し訳ない」
「…………その主とはいったい誰の事なのかな」
「もちろんクリスチャンを演じる私にふさわしい“主”です」
嘘つけ、言葉には出さず、心のうちで毒づく。ここで意味する主とはもちろん聖書の神ではなく、僕の事だろう。表面上は聖書の神を信望するクリスチャンになぞらえた言葉ではあるが、それは演者の趣に沿った言いようでしかなく、真実現しているのは僕への牽制。ここで行動を起こさなくば、あなたが演出した茶番の労力さえ徒労と化すのですよ、と諫言しているのだ。
流石はあの綺礼を息子に持つだけのことはある。
なんと婉曲かつ嫌味な言いようだろうか。これもまたカレン・オルテンシアの持ち味か。
つくづく厄介なキャラを創造したものだ、と嘆息する。ただ創造するのも味気ないから、と戯れで最近よみがえりつつある現世の記憶で目についた作品の中からキャラを教会担当用魔獣として創造してみたのだが、アクが強すぎた。
創造したのは、カレン・オルテンシアと言峰綺礼。性格は原作遵守、スペックまでそれに沿うわけにもいかないので、両方セバスチャンの要請通り知力チートで綺礼のほうは戦闘力もそれなりに高めてある。綺礼は再現できたらいいな程度の気まぐれで戦闘力を付加してみたのだが、その能力が講じて、教会の裏に接触する茶番の被害者になるとは思わなかった。
まぁ裏の才能が強いっていう舞台設定だったし、脚本上、以後教会に潜伏しなければいけない役目も負っていたしで綺礼の存在は都合がよかった。何より企業経営に頭脳チート二人はスペック過剰だったというのもある。
そのような事情からこの世界でまさかの親娘逆転現象が起きたのだ。
「それで? 具体的にはどうするんだ?」
しかし、綺礼のほうもそうなのだが、この二人揃ってアクが強く皮肉っぽい。そのように創ったから当たり前と言えば当たり前なのだが、前者の三人が最初の方は絶対服従という姿勢を崩さなかっただけに、はじめっから皮肉っぽい態度で相好を崩すこの二人の対応には当初戸惑うものがあった。
それでも創造当初のとある事件から二人の忠誠は疑っていないのだが。それは余談だろう。
まぁ慣れてくれば、二人の忠勤の形と言うのも自然と見えてくるしね。露骨にこちらをおちょくってくるので、やり取りのたびに疲れるのは事実だが。
「はい。企業を倒産させようかと」
「…………頭の悪い僕にもわかるように説明して」
このように突拍子もない発言に対する処理も慣れたものである。
「昔はもう少しワタワタしててかわいげがあったのですが。ファックしてやろうか、この雌豚としきりに叫んでいたあのころのレオンちゃんはどこへ行ったのですか?」
「…………僕はまだ七歳だから、いくら言葉で変態したところで成熟しきった変態には勝てないんだ、と学んだんだ」
「そんな成熟しきった変態を生み出したあなたの変態さ具合には負けると思います」
くだらないやり取りに、汚辱にまみれた過去を思い出し、涙する僕。
そんな僕には、「ですが……」と続けたカレンの言葉は不意打ちに近かった。
「そうですね、それなら四年後ぐらいを楽しみに待っています」
そう言って微笑む気配を見せたカレンに僕は鼻白む。
「…………ッッ、そ、そうっすか」
そして一瞬のち、カレンの声に出された笑いに、この反応を引き出したかったのかっ! と一本取られたような気分で悔し紛れに歯ぎしりした。
どうでもいいけど、なんでこんな揚げ足の取り合いみたいなことしてるんだろ。
「ちなみにあなたとまぐわう際には喘ぎ声の代わりに、そんなにオナニーして楽しい? ねえ、楽しい? と延々問いかけ続けることにします」
「…………それやめて」
心にくるものがある。
「マスターとのコミュニケーションもいいですが、そろそろ本題に入りましょうか」
「始めたの、お前だから」
「それで、会社を倒産させると言う話ですが」
なんでもなかったことのように素知らぬ顔で話を続けるカレンが憎いとしい。
「実際には会社が傾くぐらいの大量の献金をしようかと思っています」
「それは実際に、か?」
「はい、一種の賭けではありますけどね。以前から私は熱心なクリスチャンということで社会に通してきましたから。教会の正義に救われ、裏の事情を知った今、狂信ともいえる常軌を逸した献金をしたとして不自然ではありません、裏の世界的には」
ニヤリ、と笑う悪魔の影を言葉尻に匂わせて、カレンは自らの権謀術数を主につまびらかに披露する。
「狙いはなんだ」
「私たちの企業は今や世間の話題にも上る新興の
「まぁ、よくは映らないだろうな。あるいは癒着も疑われるか」
「そうです。裏的には、息子が教会に救われた、教会に教えられた真実、まさかこんな実態が世界にはあったなんて! でも私に力になれるのはお金くらい。そうだもっと献金を増やそう、もっともっと、とまぁありふれた狂信者になったんだな、くらいの理解で済みますが、世間的にはそうではありません。突如としか映りようがない異変としてそれは映るでしょう」
聞けば、あらかじめそうなるように、過剰なメディア露出をしてきたらしい。今の企業の力なら、しようと思えばメディアに圧力をかけることもできたらしいが。この狙いのためにあえてしなかった、むしろメディアに嫌われるように振る舞った、とまで聞き、改めて頭脳チートの恐ろしさを実感した。
いつから考えていたんだ、と問えば最初からと言う。
これが敵でなくてよかった…………というよりこれ僕が創ったんだよなぁ、魔獣創造チートすぎるだろ、おい。
「まぁとはいえ、世間的に評判のよろしくない私がクリスチャンだということを公にされるのは不利だと感じたのか、教会がその情報は圧力かけて隠してましたけどね。もらうものはもらっといて。しかし、企業が傾くほどの献金ともなれば流石に無理です。むしろ今までクリスチャンだという情報が話題に上がらなかったこと自体、邪推の的とされるでしょう」
「…………それは非常に教会によろしくないな、それで? それをどう利用するんだ?」
僕らの目的はあくまで教会内の地位向上だ。別に教会を貶めたいわけではない、そこだけは僕たちの間で共通項の目的であるはず…………生来のサディスティック精神が好んでこの方法をとったという可能性はあるかもしれないが。
「献金する相手は選ぶつもりです。少なくとも目先の莫大の利益より、恒常的な資金源を失うことに目が回る人を。先挙げたような事態を予想できる人を」
「当然止めるだろうな、その人は」
「ですが、当然止まりません」
「最終目的地は?」
「天使に会えるまで」
お互いあくどい笑みを交わしあう。ここまでくれば僕にも狙いは読めてくる。
「天使と面識をつくることが今回の目的か? そうすることで教会への発言権をより先鋭的なものにしよう、と。やれやれ、利になる狂信者と言うのは教会にとっても恐ろしいものだな」
「今の私では所詮枢機卿どまりの発言権しかありません。それではマスターの意に沿えない。一足飛びに地位を築くには劇的な契機が必要です。そのためにここまで世間を盛り上げる道化となった。ここで実を結ばせなくては意味がない」
「しかし…………そう簡単に天使が出てくるかな?」
挑発的に水を差し向ければ、返ってくる皮肉な答え。しかしその皮肉を吐く余裕こそカレンらしくて頼もしい。
「私は一流の演者ではありませんから」
「どの口がほざく」
「しかしながら、マスターのためせいぜい努力いたしましょう。神の恩恵を預かり聖書の内容をかみくだいて説明することぐらいしか能がない枢機卿では話を聞く価値などない、と。私が信望するのはお前らではなく、聖書に記された、天上におわしめす主とその傍に侍る天使たちなのだ、と。狂信者らしく理の通らぬ駄々をこねましょう」
「…………加減は間違えるなよ?」
「私を失うことは教会にとっても損失です。特にあの
そのための策はあなたが弄したものでしょう? とその悪辣さを褒めるように、ふふふ、と悪い笑みを漏らす。それに対し僕は苦笑いするしかない。
この案は、当初のところ、頭脳チートどもに否定された。しかし、三大勢力が大きな抗争を避けたがっている傾向があることと、リスクを分散させる狙いがあることまでを話すと条件付きでその案の有用性を認めた。まぁ彼らも流石に十年後の三大勢力の和平協定までは見通せなかったらしい。
カレンの
カレンの複合企業は大きい。そこで諍いを起こせば、その利益を巡って大きな抗争が起きかねない。そういった危惧を裏の勢力に共有してもらい、勢力トップの耳目を集めれば、必然余計な諍いは避けられるというわけだ。
カレン自身、明確にクリスチャンだと宣言し、教会の庇護下にあったことも大きいだろうが。教会を近隣につくりながらも、今まで裏として接触してこなかったのもそのような緊張状態があったからなのかもしれない。
今の時点で考えているかは怪しいが、少なくとも和平に向けて努力する上では、そういったトラブルの種は摘んでおきたいはずだ。優先順位は上がり、上層部の目端もきかざるをえない。
それにどうせ悪魔の息がかかっているとは言っても、セバスチャンが創設した企業の関連会社だし。背景はしっかり僕で握っているので、どうにでも収拾はつく。大きな火種になることもないだろう。その上で、悪魔の中でも注目の高い新興の悪魔の企業なのだから、宣伝価値もうなぎのぼりで美味しい。自作自演であることこの上ないが。
これも余計な手出しをされて変な事態に巻き込まれないための安全策だ。
それに、だ。緊張状態をつくるということは、すなわちそれ自体に影響力が発生するということだ。トップの耳目を集めている以上、その企業の行動自体に裏の勢力は左右されることになる。
現に今もその影響力に左右されている。企業主であるカレンが狂信に走ろうとしているという事態にこれから裏の勢力は揺れることになるのだ。
それはそれ自体で裏の勢力間に変な緊張を起こしかねないし、そもそもそんな企業が大量献金と言う事態を引き起こすこともかなりまずい。
考えてみれば、カレンはこの僕の拙い策で上がった自身の価値も今回の策謀の目算に入れていたのだろう。加減どうこうより、もはや狂信者になったくらいで下手なことできるような人間ではないのだ、カレンは。
影響力さえあれば、いざというときのためになる。カレンも見事にそれを利用していた。
「まぁ、そうだな。成果を期待している」
直接的な影響力でこそないものの着々と僕の権力はその影を伸ばし始めている。そのことに僕はほくそ笑んだ。これはまだまだ僕の成果の一部なのだ。
「はい、マスターの策まで利用するのですから失敗はしませんよ。神とまでは言いませんが上級天使くらいは説得の場に引き出して見せましょう」
「…………神はもとからいないけどな」
慢心に心に隙ができていたのだろう。ポロッと出た原作知識。
「え?」
それに対し、訳の分からない、と言った顔で反芻するカレンにまずった、と内心悪態をついた。
「いや、なんでもない。吉報を待ってる、じゃあな」
「あ、は、はい。失礼しま――――」
そして、変にボロが出ないうちに、電電虫の連絡を切った。しかし、逆に不自然だったか、と舌打ちする。
最近ファミリーの連中に対する心の敷居が下がりすぎてて、本音が全部出そうになるんだよなぁ。
「…………お疲れですか」
ため息をついた僕にスッと通話を終えたのを見計らって気遣ってきてくれるキルキルちゃん。キルキルちゃんマジ天使。
「もうちかれた~~よぉ、キルキルちゃぁん。だきちめて~、だきちめてぼくちゃんをあたためてぇ」
公私の切り替えがきっちりできている僕はすぐさまプライベートモードへと移行し、完全にオフの気分になる。仕事とプライベートをきっちり分ける、これぞ成功者の秘訣。
心の敷居が下がりつつあるとはいえ、ここだけは譲れない一線というものを僕は持っているのだ。
「はい、マスター」
それをよく理解してくれている愛しき従者キルキルちゃんは、ポイっと手にしていたものを投げ捨て抱きしめてくれる。ああ、心臓の鼓動が聞こえる。ほのかな温もりが! 形の良い双丘ふがふが。
「キルキルちゃぁ~ん、ぼくち、ひちゃちぶりにおっぱい飲みたくなってきちゃったなぁ」
上目づかい、こぶしを小さく固めて顎に添えてねだれば、キルキルちゃんも頬を赤らめて答えてくれる。
「はい、マスター。喜んで」
息を上気させながら服を脱ぎ脱ぎするキルキルちゃん。
今ほどかれる胸のブラジャーの紐、下がる下着、肌との境界線から今ピンク色のキルキルちゃんをエロくするスイッチが――――
「主! あるじーー! 私! 私が聞いております! 主! 情事は私との通信を終えてからにしてください!」
「…………ちっ。なんだ、セバスチャン。せっかくいいところだったのに」
渋々ながら先ほどキルキルちゃんが投げ捨てたゴールド電電虫のほうを向く。せっかくいいところだったのにとんだ邪魔が入ったものだ。げきおこぷんぷんまる。
「い、いや、さすがにこのセバスチャン。久しぶりの主との通信が幼児退行する主と従者の情事で始まると思いもよりませんでしたぞ」
「ばかめ! 聞かれていると余計興奮するだろ!? 羞恥プレイというやつだ!」
「…………お気づきになられた上でやっていたのですか。き、聞かせるプレイにしては赤ちゃんプレイは難易度が高すぎるような気が…………」
「ただ情事を見せつけるだけで興奮するのは素人だ! お前は主がその程度の変態だと思っていたのか!?」
「あ、いえ、はい。なんかすいません…………」
ふぅ、やれやれだぜ、と息をついて奴の不甲斐なさに同意を求めれば、キルキルちゃんも殺気を持って同意してくれる。
「それで何か報告か?」
セバスチャンとはなかなか連絡を取る機会に恵まれない。いくら小型ゴールド電電虫を持たせているとはいえ、常時持ち歩くには危険が高いし、セバスチャンも能吏としての仕事に忙殺され、同輩の眷属たちや家人の隙を伺う暇もないという。
いくら先代当主の紹介とはいえ出自の定かでない転生悪魔がダンタリオンという名家の下での風当たりが厳しいのは当然とは言えるものの、セバスチャンが雑務の仕事に追われているのは何もそれだけが理由ではないらしい。
なんでもセバスチャン、新鋭の兵士としてはかなり主人である次期当主の長女に気に入られているようだ。いや、そもそも頭脳チートのセバスチャンが処理に一日追われるだけの雑務っていう時点でその量たるや推して図るべきなんだろうけど。
次期当主の期待を一身に背負い、かつそれに答え続けなければいけないセバスチャンの今は進退にかかわる大事な時期。
余計な定期連絡は不要、と言っていた手前、報告と言うからには何か重要なことがあったのだろう。
「…………はっ。実はこのたびこのセバスチャン、中級悪魔に昇格しました」
「…………へぇ」
そうしてなされた報告まさしく朗報と言っていいものだった。
「…………今までトレードに出されていた連中は全員下級悪魔だったんだっけ?」
「はい、中には兵士4駒消費の者もいたようですがその者も含めて今までの兵士は私以外では家人の娘の一人を除いてすべて下級悪魔のままトレードに出されています」
「…………ようやくスタート地点に立ったってところか」
中級悪魔。原作でも主人公たちが一年もしないうちになっていたがあれはあくまで稀有な特例。一年弱で中級悪魔まで上り詰めたセバスチャンは十分に優秀と言えるが。
しかし、セバスチャンは言ったのだ。三年で上級悪魔になる、と。それを考えれば猶予はあと二年。厳しいことを言うようだが、その目標の高さからすれば、あまり余裕があるとは思えない。
「はい、猶予のほどは十二分に理解しております」
「…………上級悪魔になるにあたって目途は立っているのか?」
なんならカレンにつき合わされた茶番のように手伝ってやってもいい、そう申し出たがセバスチャンは首を振った。
「いえ、主のお手を煩わせるなど恐れ多くて叶いません。わたくしめのためを思うのならどうぞ、お任せしてもらいたい」
「恐れ多い、か…………お前も大概頑固だな」
カレンや綺礼、そしてキルキルちゃんの振る舞いに慣れてきたせいか、そう感じてしまった。ファミリーの中では、唯一セバスチャンはくだけきれていない。
「私は、従者殿のように傍に侍るわけにもいきませんし、
一抹の寂寥感を滲ませてセバスチャンは笑う。しまった、と思うも謝るのも謝るのでそれは違うと思った。フォローしあぐねていると、今度は快活にセバスチャンは笑った。
「これこそまさしく、単身赴任する父の悲しさでありますな。全く一番家庭に貢献しているというのに一番冷たく当たられる。悲しきかな、父のヒエラルキーの低さ」
おいおい、と泣き、おどけてみせたセバスチャンにさしも僕も笑った。キルキルちゃんは相も変わらず無表情でつっこむ。
「それならば、もっと頻繁に顔を出すことです。
「
「くっくっく、なんだ案外イケるクチじゃないか」
セバスチャンの意外な一面を見て思わず噴き出してしまった。
「なに、人におべっかを使って機嫌を取らなきゃいけない職場ですから。自然こういった芸も覚えます。しかし、それをファミリーにもしていいのか、少し迷いました、が」
「が、どうした?」
自分の言葉におかしみを覚えたのか、笑いをこらえようともせず続きを切り出さないセバスチャンを促す。
「いや、なに。なかなか楽しいものだ、と思いましてね。少なくともダンタリオンの家でやっているときよりは気が休まる…………」
「そうか…………」
苦労をかけるな、そう慰めようとして首を振った。父親だというぐらいだしな、目いっぱい苦労してもらおう。頼られるのもまた父の甲斐性だ。
「…………上級悪魔になる手段に関してはお任せください。目途はつきませんが、算段は私にもできますので。必ずや主の期待に応えて見せましょう」
そして気づく。セバスチャンが僕の助力を断るのは何もそう創られたから、だけではないのだ。セバスチャンは自身の能力に誇りを持っている。自分の力を信じている。だから僕の申し出を断るのだ。
それこそ役割に例えるのなら、セバスチャンは父親になるのだろう。父親を自認するからこそ、その能力に誇りを持っているのか。その能力に誇りを持っているからこそ、父親を自認しているのか。そんな論議は鶏が先か卵が先かの論議ぐらいに不毛だ。そうであるように創られたから、などというつっこみをするのは野暮であろう。
「わかった。続報期待しているぞ、セバスチャン」
「はっ、それと…………上級悪魔になる以外にも影響力を高める手段は確立しつつあるのでそちらもご心配なく」
「ほう、報告はしてくれないのか」
「まだまだ小さき火種ゆえご勘弁を。私にも恰好ぐらいはつけさせてください」
「わかった、ではな。会える日を楽しみにしている」
「はっ」
そうしてゴールド電電虫の通話が消えた。
「ふっ、順調だ。何もかもが順調だ」
椅子に寄りかかり、天井を眺めて思う。まだだ、まだ足りない、と。あくなき欲望が己の中で煙を上げるのを感じる。
「はい、ですが…………お体にはお気を付けください」
「…………ああ」
ゆっくりと瞼を閉じ、聞き流した。体調などさしたる問題ではない。魔獣創造の応用でどうにでもなることだ。
キルキルちゃんの懸念は精神的な疲労に向いているのだろう。確かに計画発足から一年経ったが、この身はまだ七歳児。まだまだ成長期にあり、そんな大事な時期を迎えているにしてはやっていることが多すぎる。
しかし、今やっておかなければいけないのだ。時間は待ってくれない。原作開始まであと九年、いや駒王学園に入学する日を考えればあと八年か…………
「お祭りの準備は入念にしなければな」
後の祭り、なんて冗談じゃない。思いっきり僕は原作を楽しむのだ。
「さぁ、もう少し頑張ろうか」
ぱちんと頬を叩き椅子から立ち上がる。
やるべきことはたくさんあった。