「あ、皆さん」
捕まえたモンスターを入れるためだろうか、フィールドからしか行けない場所に格闘場の東口はある。セラフィとチョメはそこで中の様子を伺っていた。
「それじゃ、セラフィ、あんたの考えた作戦を教えて」
アニアが不安そうに話しかける。アニアにとって作戦はとても重要なものだ。ミスだけはしたくない。
真剣な顔でセラフィが頷く。
「この先に格闘場の地下へ降りる階段があるわ。その階段を降りてすぐ右の部屋に、魔物たちを入れるオリがいくつもあるの。・・・・・・あれ?初めて行く場所なのに、なんで私そんなことまで知ってるんだろ」
確かに。ここは関係者以外、入ってはいけない場所だ。
「まあ、いっか。でね、その地下へ降りる階段の前に見張りの兵士さんがいるのよ。そこであなたたちの出番ってわけ!その兵士さんにチョメを見せて、キラーパンサーを捕まえてきたって言えば、地下のオリまで通してくれるはずよ」
「ぬんが捕まえてきたよー!」
「あんたは喋らなくていいわ・・・、シアン」
「失礼だぬん!!」
二人の掛け合いをみて、セラフィが苦笑いをする。
「ええと、誰でもいいけど、あなたたちが交渉してくれればきっと大丈夫。私は王様に目をつけられて、兵士さんたちにも顔を知られてるけどね。オリの前まで来たら、あとは私にまかせて。華麗に掴まってる魔物たちを逃がしてみせるわっ!」
「分かったぬん!」
「分かりました、やってみましょう」
まて・・・何であんたらが返事するの・・・。
元気よく返事するシアンとブロッコリーにツッコミを入れたい衝動を抑え、
「とりあえず、それでやってみるしかないみたいね」
と、言うアニアだった。
「誰だ!?お前」
アニアたちの前に、槍を構えた兵士が二人現れた。緑色の髪の男と、紫色の髪の男。バンデットチェインを装備している。
「んん?そのキラーパンサーはなんだ!?」
緑色の兵士の方が問いかける。
「コイツはここから逃げ出したキラーパンサーと聞いている、アタシたちが捕まえてきた」
「なにっ!おお、でかしたぞ!」
「よし俺がオリまで案内してやる、ついてこい」
ここまで順調だ・・・とアニアが安堵したとき、後ろからシアンが明るくペラペラと喋り出した。
「シアンも捕まえたぬん!青い、あおーーーいスライムぬんっ!お手柄だぬんぬん」
シアンは嬉しそうに、スラムスを抱え見せていた。
(馬鹿・・・何でスラムスをここまで持ってきているの・・・)
何か言おうとしたが、兵士の言葉にアニアは思わず笑ってしまった。
「スライムなんかいらん!持って帰れ!!」
(スライムなんかだとう!?スライムほどシンプルかつ完璧なモンスターはいないっていうに!!)
勝手に連れてこられて勝手に怒られたスラムス。文句を言いたそうだったが、今は黙っているしかないと諦めたようだった。
「よし、俺がオリまで案内してやる。ついてこい」
兵士自らチョメを連れていく様子は無かった。これはいける。アニアがチョメを見てお互い頷く。恐らく、この兵士自体はそこまで強くない。チョメを怖がっている。
「さあ、そいつをここにブチ込め!」
オリまで案内されたところで、顔を布で隠し紛れこんでいたセラフィが合図を送った。
「今よ!チョメ」
「ガルルルルル」
急にキバを向いて兵士に威嚇し始めるチョメ。アニアが思った通り、その様子に怯え、チョメに歯向かう様子すらなかった。
「ひぃっ!」
あっという間にチョメに攻撃され、兵士は気絶してしまう。その様子を見て、呆れるアニアだった。
「あんた、そんなんでよくモンスターを扱ってるわね~」
「普段は何か、大人しくさせる薬でも使ってるのかもしれませんね」
気絶している兵士の腰から、セラフィはカギを盗み取った。アニア達は他の兵士が来ないか、周りを警戒する。
「ちょっとカギ借りるねー」
セラフィはオリの前で一つ一つのカギを確かめながら、次々に開けていった。
「今、逃がしてあげるからね!」
ドラキー、暴れ狛犬、オーク、どくずきん、イェティ。今捕まえられてるのは、これで全部らしい。
「もうここにいなくていいんだよ。一緒に逃げよっ!チョメ、みんなを誘導してあげて」
「ガルッ」
外へ向かうチョメ達に、自分もついていこうとしたセラフィだったが、急に誰かの声が聴こえたような気がして足を止めた。
【・・・・・・すまない、みんな】
「今のは・・・・・・なに?」
何かを思い出すように、セラフィは辺りをキョロキョロ見回した。
「私・・・・・・、前にもこの場所に来たことがある。あのとき・・・・・・戦争に行くときだ」
セラフィの頭の中に、過去の記憶が鮮明に映し出されていく。
そう、あの時も同じようにオリの前で・・・
【往生際が悪いぞ、ベルムド!!この戦争に手を貸すと、約束したはずだ!早く魔物たちをオリから出せ!】
あれは、兵士さんとベルムドさん?
【ですが兵士長・・・・・・】
やっぱりベルムドさん、と同じ格好をした横にいる男の人は?
【我らに協力出来ないと言うなら、こやつらなどこの場で処分してやってもいいのだぞ。ん~?】
ベルムドさん、すごく悔しそうな顔をしてる・・・。
【いいか。この魔物たちは我々の盾となるのだ。魔物ごときがこんな名誉ある仕事を与えてもらえるなんて、ありがたく思えよ】
ああ、ベルムドさんが悲しい顔でカギを開けようとしている。そんな顔しないで。
【・・・・・・すまない、みんな】
ベルムドさん・・・・・・・・・・・・。
「セラフィ、どうしたの?」
「セラフィ、早く逃げようぬん!」
アニアたちの問いかけに、その場で膝をついていたセラフィがハッと立ち上がった。
「私、思い出したよ!・・・・・・ベルムドさんを止めなきゃ!!この部屋を出て右に行った所の扉を開けると、闘いの広間に出るエレベーターがあるんだ。ベルムドさんは今、そこにいるはずよ・・・・・・」
「思い出したって何をだ?おいセラフィ!」
スラムスがセラフィを呼ぶ。一瞬立ち止まったが、
「もしかしたら命がけになるかもしれない。でも、思い出した以上、放っておけないから・・・。私、行ってくるね!」
と、そのまま走り去ってしまった。
そろそろベルムド編、クライマックスー。