「ベルムドさん!サバイバルデスマッチは中止よ!魔物はみんな、逃がしてしまったもの!」
「なんだと……!?」
格闘場の上にいたベルムドに、セラフィが叫んだ。
「ここなの?セラフィ」
後ろを追いかけてきたアニア達もようやく追いついたようだ。
ベルムドはすぐさま部下たちに命令を下した。
「今すぐ逃げた魔物を追え!抵抗するようなら、殺しても構わん」
その様子を見て、セラフィは悲しそうに言った。
「もうそんなマネはやめて。あなたはこの国の王様なんかじゃないでしょ。あなたはっ・・・・・・あなたはまもの使いのベルムドさんでしょう!?岩山のレリーフに描かれてる偉大なまもの使いって……ベルムドさんのことなんでしょ?…私、思い出したの。あなたのことも、自分が何者なのかも。魔物たちを深く愛していたあなたが、どうして格闘場の魔物たちにあんなむごい仕打ちを・・・?」
「やつらは・・・死んで当然の存在だ」
ベルムドは右手を強く握りしめながら語りだした。
「私の可愛い教え子たちを、戦争の盾に使って、醜く生き延びた、卑劣で罪深いやつらなのだ!」
「戦争の盾?それって・・・。もしかしてあのオリにいた魔物たちは、一緒に戦争に向かった兵士さん……?」
「・・・・・・」
ベルムドは返事をしなかったが、セラフィはそれで察した。
「・・・ベルムドさん。もう終わりにしよう?そうだとしても、あの人たちだってきっと、充分苦しい思いをしたわ」
「セラフィッ!なぜお前は過去を取り戻してなお、あんな鬼畜どもに肩入れする!?」
セラフィはただ黙って、ベルムドを見つめていた。
「・・・・・・もう、よい!!その者たちを捕らえよ!」
ベルムドが命令すると、数人の兵士がセラフィとアニア達を取り囲んだ。
「囲まれたぬーん」
「いやー、こいつら、手加減してくれるつもりはないみたいだねー」
その時だった。
大きな音がしたと思うと、逃げ出したハズの魔物たちが一斉に兵士に襲い掛かった。
「ガルルル・・・」
「な…なぜ戻って来た!?まさか、セラフィを……!?」
ベルムドは一瞬、動揺したが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「・・・いや、むしろ好都合よ!あの方からたまわったチカラで、今こそ教え子たちの復讐を遂げてやる!」
「みんな!様子が変だわ」
アニアがすぐにベルムドの異常に気付いた。
彼の身体の周りに瘴気がたちこめ、目が赤く光った瞬間、
「グルァァァァァァァ・・・!」
瘴気が彼の身体を覆い、ベルムドは人の姿ではなくなっていた。
二本角が生え、竜のような羽が背にひらき、顔の周りは金髪のタテガミで覆われ、悪魔のような魔物の姿だった。
「我が復讐をジャマする者は、皆、排除してくれるわ!!」
「みんなっ!お願い、ベルムドさんを止めて!!」
セラフィが叫ぶ前から、アニアは身構えていた。
「こんなの、止めないとダメでしょ。アタシたちにまかせて」
素早く腰から短剣を取り出すアニア。その後ろでシアンも魔方陣を描き始めていた。
(あら、シアンの戦闘初めて見るけど、意外と動き早いじゃない)
アニアは関心すると同時に、
「ぬんぬんぬーーん♪ててててて~~~ん♪♪♪へいへい!!」
(あの変な歌が無ければ)
と思った。
変な歌ではあったが、暴走魔方陣は無事、二つ完成したようだ。
「ぬーん、シアンのメラゾーマ受けるぬーん!」
シアンは素早く詠唱を始め、ベルムドに暴走したメラゾーマを二連続で当てた。
(*メラゾーマ・・・炎属性の詠唱魔法)
「グガアアア・・・!!」
「やるじゃんか、シアンちゃん。スキが出来たぜー」
リョンがすかさずバイキルトをアニアに唱える。
(*バイキルト・・・仲間一人の攻撃力を二段階あげる)
「やっちまいな、アニアちゃん」
「言われなくともッ!!」
アニアのナイトメアファングが会心ダメージを与え、ベルムドは大きく膝をついた。
「やつらを皆殺しにするまでは・・・私は死ねぬ・・・・・・」
諦める様子はなかった。
手を掲げてメラゾーマを放とうとしたベルムドに、サっとセラフィが立ちはだかった。
「ベルムドさん、もう、やめて!!」
「なぜ、かばう!?あいつらはお前の仲間たちの命を、物のように扱い、切り捨てた凶悪な奴らだぞ!」
「ベルムドさん……。忘れてしまったの?あなたがいつも言ってたのよ」
「---まもの使いにいちばん必要なのは、どんな凶悪な魔物でも、受け入れ許す心だ・・・・・・って!」
セラフィの言葉に後ろにいたチョメも何かを思い出した様子だった。
ベルムドも動きが止まった。
「私は・・・・・・」
だがその瞬間、無情にもベルムドへ強力な魔法が直撃した。
放ったのは、どこかの国の兵隊長のようだった。
それがトドメとなったのか、ベルムドは倒れ、動かなくなった。
部下とみられる男がセラフィに近づく。
「大丈夫か?ケガはないか?」
セラフィはそれをはねのけて、ベルムドへと走った。
「ベルムドさん!」
セラフィは必死にベルムドへとホイミを唱えようとしたが、
「無駄だ・・・もういいセラフィ」
ベルムドはセラフィの手を優しく止めた。
「そんな・・・ベルムドさん。なぜこんなことに・・・・・・」
「フフッ。私の教え子ではないお前だけが、ただひとり過去を取り戻すとはな」
セラフィの横にチョメが駆け寄ってきた。
「それもこれも・・・ヤツとの絆のおかげか。私はまもの使いにとって大事なものを、いつの間にか失っていたよう・・・だ・・・・・・」
そう言うとベルムドは瘴気となって、消えていった。
「・・・・・・ベルムドさん?ベルムドさんっ!」
セラフィが駆け寄って叫んでも、もう返事はない。むなしく自分の声が響くだけだった。
久しぶりに更新、文章少なくてごめーん