「ベルムド王の正体が魔物だったとは・・・。王になりすまし国民を扇動していた魔物は、我らグランゼドーラ兵が打ち取った!これよりアラハギーロの民の安全は、我がグランゼドーラが保障しよう。国民にもそう伝えよ!」
兵の隊長と思われる男はそう言って剣を掲げ、兵士たちに命令した。
多くの兵士たちはその場から立ち去り、うなだれるセラフィとその傍にきたチョメが残った。セラフィはチョメの頭を撫でる。チョメの優しい表情で、少しは気持ちが落ち着いたようだ。
その様子を見ていち早く言葉を発したのは、
「セラフィ、これで良かったぬん」
シアンだった。
「うん、そうだよね。ありがとう。ベルムドさんを止めてくれて……」
「そうぬん、あのまま自分を止められないでベルムドさんが壊れていくより、シアンたちの手で壊すのが良かったぬん。人として壊れた存在は、もうセラフィよりも魔物だぬん」
「そっか、分かってるんだね・・・、私もともとは魔物なの。この姿になる前は、ある魔物使いに仕えるホイミスライムだったんだ・・・・・・」
「ホイミスライム、可愛いぬ~ん♪」
「ふふ、ありがとう。ねえ、シアンさんたち。これからムルードの岩山へ来てくれる?全部話しておきたいんだ。あのレリーフのとこで待ってるね」
そう言うとセラフィは格闘場から走り去った。
セラフィが立ち去ると、アニアがシアンの方を向いて言った。
「ふ~ん、見直したわシアン」
「何を見直したぬん?」
「バカだけど、バカじゃないのね」
「それ褒めてるぬん!?」
「馬鹿とアレは紙一重といいますから……」
横から口出ししたブロッコリーを、シアンはギロッとにらんだ。
「バカじゃないぬ~ん!シアンは魔法も使える賢い子だぬ~~~~ん!!」
ジタバタするシアンを遠くから、
「いいから置いていくぞ、バカ子」
と叫んで、余計怒らせるスラムスだった。
アニア達がムルードの岩山に着くと、魔物使いが描かれた石碑の前で、セラフィとチョメがたたずんでいた。
「あっ、呼びつけちゃってごめんね。私が過去を取り戻せたのはみなさんのおかげだよ。いろいろ助けてくれたあなたたちには、ベルムドさんのこと、私が思いだしたこと、全部知っておいてほしいの」
「ぬん」
「知っておきたいわね」
セラフィが話を続ける。
「ベルムドさんは有名なまもの使いだったの。昔、アラハギーロの格闘場の管理人もやってて、みんなからすごい尊敬されてたんだ。さっき私が人間の姿になる前は、ある魔物使いに仕えていたホイミスライムだったって、言ったじゃない?このチョメこそ、私が仕えていた魔物使いのカレヴァンさんなの。ベルムドさんとカレヴァンさんは、若い頃から同じ師匠のもとで修業を積んだ兄弟みたいな関係だったんだ。驚いた・・・よね?人間と魔物が入れ替わっちゃってるなんて・・・・・・。なんでこんなことに、なっちゃったんだろ?」
「やはり、戦争のせいですかね」
ブロッコリーの発言にセラフィもうなずく。
「きっとあの戦争・・・、魔族の大軍隊との戦いが原因ね。戦争が起こったとき、この国の軍隊はベルムドさんの魔物たちを戦力・・・いえ、魔族にぶつける捨て石として駆り出したの。カレヴァンさんは慕ってたベルムドさんにずっとついていくって決めてて・・・、私もカレヴァンさんと戦争へ向かったわ。そこで何が起こったのか分からないけど、気が付いたら私は人間の姿でカレヴァンさんはキラーパンサーに・・・。一緒に戦争に向かった格闘場の魔物たちはアラハギーロの民に。私たちを戦争に駆り出した兵士さんたちは、格闘場の魔物になっていたの。あの戦争のせいでこの国の歯車が、全部狂っちゃったんだ・・・・・・」
「魔族ね、厄介な相手だわ。きっとそいつらが…」
アニアはそれだけ言うと黙り込んでしまった。
「あ、でもね、これだけは言わせて。ベルムドさんは決して悪い人じゃない。魔物を愛するとてもいい人だったのよ?魔物を・・・私たちを思いやる心が、ベルムドさんをあんなふうに変えてしまったの」
「分かるぬん、ベルムドさんはいい人だったぬん。セラフィもいい人ぬん!」
「ふふ、ありがとぬん」
セラフィその口癖をまねるのは辞めろ、とその場にいるシアン以外の誰もが思った。
「あっ、そうだ!呼び出したのは、もう一つ用事があったんだった。シアンさん、蝶を探してるって言ってたよね?」
そう言いながらセラフィは自分の腕輪と、チョメ(カレヴァン)の腕輪を外し始めた。
「これのこともさっき一緒に思い出したんだ。この腕輪ね、こうやって二つ重ねると、蝶に見えるの。あなたの探してた蝶ってコレのことかも・・・と思って」
セラフィの両手に光沢のある緑色の腕輪が二個重ねられていた。
「私たちの大事なものだけど・・・・・・コレくらいしかお礼出来るものがないから、シアンさんにあげるねっ!」
「いいぬん?二人の絆の証なのに……ありがとぬん!」
シアンは喜んでパピヨンブレスを受け取った。二つを重ねられると赤く描かれた物体が、蝶のカタチに見える。
「セラフィはこれから、どうするぬん?」
「私はこれから、カレヴァンさんと一緒に旅に出ようかなって思ってる。この世界をじっくり見てみたいの。そうすれば、なぜアラハギーロがあんなことになったのか・・・何か分かるかもしれないしね」
「気を付けろよ、セラフィ。この世界は普通じゃない」
スラムスがピョンピョン跳ねながら忠告する。同じ魔物だからこそ、心配しているのかもしれない。
「うん、ありがとう。それじゃあみなさん、またどこかで会いましょ。ホントにホントに、ありがとう!!」
「ガルルッ♪」
チョメ(カレヴァン)は人間の言葉は話せなかったが、表情は明るく笑っているように見えた。
「セラフィこちらこそありがとぬーん!」
シアンの言葉にニコっと振り返ったセラフィは、また前を向き、二人で歩きだした。
全員、二人が見えなくなるまでその場で見送っていた。
「よし!これで蝶が三つ手に入ったぬん!これであのヘンテコな男が言う通りなら、グランゼドーラ王国まで行けるぬん」
小説のモデルさんたちからのクレームは、一切受け付けません、てへぺろ。