「ふああーあ、眠いわね・・・」
アクビをしながら部屋に入るアニア。
あの場にいた女性は、アンルシア姫だったらしい。
彼女は同じ顔をしているミシュアを警戒しつつも、記憶を失っていることを不憫に思い、城に受け入れることにしたようだ。
結局、シアンとアニアもミシュアを助けた者として、そのまま滞在することになった。
(*実際はシアンしか関わってないが)
後に姫と謁見した際に、
「私はまだ覚醒の時を迎えていない。必ずや私は、覚醒の時を迎えてみせる!」
と言っていたので、やはりスラムスとアニアの話のズレはここでも発生してるようだった。
そしてアニアとシアンは東の塔、ミシュアは世話人のダイム老と共に別室に連れていかれた。
塔の中とはいえ、城の設備は豪華だ。
アニアはフカフカのベッドで、足を伸ばしてくつろぎ中である。
ふと横を見ると、シアンがカバンをごそごそしている。
「ぬ~ん・・・、ブロくんに貰ったお菓子が見つからないぬ~ん」
「支度係に頼めばいいでしょ。お城ならもっとすごいオヤツが出てくるんじゃないの?」
「ブロくんのお菓子が美味しいぬーん。それに」
アクビをしながらアニアが返事する。
「それに?」
「偽姫の出す料理が大丈夫か、心配ぬん」
「・・・・・・シアン、あんた気づいてたのね」
ミシュアとアンルシア姫は、顔・髪型・背格好・何から何まで同じだった。
唇の左下にある、特徴的なホクロまで。
ただシアンもアニアも、アンルシア姫からは何かよくない気を感じ取っていた。
「ぬん!アンル姫の方はうまく説明しづらいけど…、一緒にいて気分良くないぬん。ミシュアは気持ちが落ち着くぬん」
「まあ、そうよね。アタシもそれはそう思ってた。これは何としてでもミシュアの記憶を取り戻…」
アニアが言いかけたところでシアンが喋り出した。
こいつはいつも人の話を聞かない。
「だから今は!とにかくミシュアを守るだけぬん。ブロくんに貰ったお菓子のが重要ぬんぬん!てか・・・、シアンはいまもっと、気になることがあるぬん」
「何よそれ。気になることって」
アニアが気になって起き上がる。
(意外と細かいことに気付くところは、さすが生き返しを受けた者か)
心の中でアニアが褒めたところでシアンが叫んだ。
「残された男三人が何をしてるかだぬーーーーーん!!!」
「は?」
「多分、リョンさんは一人で自由行動しちゃうと思うぬん。でも、あの二人は意外と気が合うと思うぬん。スラムスは大雑把だけどいざというとき頼りになるし、ブロくんはいろいろと細かいけど心意気だけは一人前ぬん。それでいてある意味、真面目でしょ?」
「ああ・・・、うん」
「残された二人が意気投合して、オシャレな城下町を歩いてるうちに良い雰囲気になって・・・それで・・・。ああああ!シアン、変なコト考え始めたぬん!!破廉恥だあーーーーーあああ!!」
―――このヘンテコ娘と二人きりになったのは失敗かもしれない・・・。
アニアが後悔しても、後の祭りであった。
一方その頃、そんなことを思われているのを知らない二人。
「はい、スラムスさん。くち、アーンです」
「あむ!・・・もぐもぐ。うん、ブロッコリーの食事には劣るが、グランゼドーラ城下町のメシ屋もイケるじゃねえか」
・・・いい雰囲気であった。
口に入れた肉をモグモグして飲み込むと、スラムスが聞き始めた。
「で?そっちの成果は?」
「あハイ、町の人々の姫への評価は悪くないようです。というか、もう、彼女を崇拝しているレベルですねえ。彼女がいなくなったら、この町の行く末が心配です」
「なるほどな、ミシュアがいないと困るってことか」
「じゃなくて・・・ゴホン。ミシュアさんとは別で、もう一人姫がいるんですよ」
「はあ!?そいつは何なんだ?そいつが覚醒の光を出したとでもいうのか!?」
「そこまでは分からないですね。ただ町の人はそっちの女性を勇者姫として崇めているようですよ」
「うーん、そいつが本当だとしたらヤベえな。アニア達だけに任せるのは心配だ」
「後で合流出来るようならしましょう。それで、スラムスさんの方は?」
「ああ、俺の方は・・・」
「てめえ!!ふざけんなよ!!!」
スラムスが言いだしたところで、遠くから怒鳴る声が聞こえ、しばらくすると酒場の奥から男が出てきた。
「は~、ビックリした」
怯える様子のその男に、ブロッコリーが声をかける。
「どうしたんです?何かあったんですか?」
「いやね、なんだか兵士二人が、酒場の女の子に声をかけててね。あまりにもしつこいから、女の子は嫌がってたんだよ。そしたらチャラチャラしたウェディの男がさ、間に割って入ってモメ始めたんだわ。はあー、城の兵士に逆らうなんてあり得ない。俺はもう怖くてすぐ会計済ませてきちゃったよ・・・」
話を聞いたブロッコリーとスラムスは、お互い顔を見合わせた。
「おい・・・、どうする?放っておくか?」
「うーん、仮にも仲間でしたし・・・」
「一応、様子だけ見に行くか」
二人は気がノらないといった顔をしつつも、酒場へ入る階段を降りていった。
「俺らがグランゼドーラ王国兵と知ってのことか!ただじゃすまんぞ」
二人の兵がウェディ男・・・、もとい、
「あーあ、権力ふりかざす奴ってイヤだねー。完全に脇役だよ」
リョンへと怒鳴り散らしていた。
「だからさ、主役のオレがイイ方向へ物語を進めてあげるから安心してねー」
横にいる酒場店員の女にリョンがささやく。
「てめえ、それだけ言うってことは、覚悟は出来てんだろうな・・・」
背の高い方の男がリョンへと殴りかかる。リョンはそれを身軽に受け流した。
「ああ、うん。出来てるよ。オレは」
受け流した男の拳を引き寄せ、
「困った女の子の為なら、」
そのまま男の腹に蹴りをいれ、
「いつでも死ねる覚悟ならね!」
蹴られた男はそのまま派手に吹っ飛んでいった。
「まあ、かっこいいっちゃかっこいいが」
「短絡的過ぎますよねえ」
遠目で見ているブロッコリーたちがボソリとつぶやく。
「上官どの!!貴様・・・」
残された男の方も殴りかかろうとするが、
「まあ、待て。お前の上司、よく見てみなよ」
と、リョンは手の平を男の前に出し止めた。
「なーーーんか、上等兵がキナ臭いのよ。こないだアラハギーロで見かけた兵士長もそうだったし。オレ、ばあちゃんが盗賊だったから、こういう悪いニオイには敏感なのよねー」
倒れた男が起き上がる。もう、怒りが収まらない様子だ。
「き・・・さ・・・・・・ま・・・。許さねえ」
「うん?許せないなら、どうしたいのー?そろそろ正体見せたらどうよ?」
怒りで我を失った男の身体からは、瘴気があふれ出していた。
元の話ばかり追ってもつまらないので、そこは省略してオリジナルを混ぜました。