「メラゾーマぬんたった♪」
「・・・」
「メラゾーマぬんたったーーーーー♪」
「あ~もう!なんなのよ、そのリズムは!!」
アニアとシアンはロヴォス高地にある、ゼドラ洞という洞窟にいた。
アニアが向かってくる敵すべてを瞬殺してしまうため、シアンは暇を持て余し、
「メラゾーマ!」
で、敵を一体を弱らせ、
「ぬんたった♪」
と、言いながら、杖で敵をタコ殴りにし、メラゾーマ分のMPを吸収するという遊びを繰り返していたのである。
「完璧すぎる・・・・・・、シアンのこの完璧すぎる作戦で、MP満タンのまま、真っ赤な巨竜ってのを倒せるぬん!!」
「あのう、シアンさん……」
そんな調子ではしゃぐ側から、ミシュアが不安そうに声をかけた。
「……もしかして先ほど、ぬかどこスライムにかけられたメダパニーマが、まだ解けてないのでは?」
「え」
ミシュアの本気で心配する顔に、アニアが思わず吹き出した。
「そ・・・、そいつは正常なのよ!いつも通り!は・・・はははは、そのツッコミ、おかしすぎるでしょミシュア!もうちょっとヤメテ、腹筋が崩壊する・・・」
「ぬううん!!」
笑いが止まらないアニアに、シアンが顔を真っ赤にして石ころを蹴飛ばしたが、アニアは笑いながらひょいとかわした。
(*メダパニーマ・・・混乱呪文。敵全体を攻撃する)
そもそも三人は何故ここに来たのか。
話は数時間前にさかのぼる。
グランゼドーラ王座の間。
「よく来たな、ミシュア」
アンルシア姫がミシュアに声をかけると、遅れてシアンとアニアも王座の間へと入って来た。
「おお、二人も来たか、これで揃ったな」
「遅れてすみません、姫。ご用件とは・・・?」
「ああ。さきほど、近隣の洞窟に赤き巨竜が現れ、暴れているという情報が届いたのだ。私はこれからその討伐に向かおうと思う。・・・・・・そこでだ。どうだミシュア、この赤き巨竜の討伐に、お前も同行する気はないか?」
「え、私が……ですか?私が行ってもお役に立てるとは…」
「ふふっ。もちろんお前に戦えなどと言うつもりはないさ。私と行動していれば、お前の記憶によい影響があるのではないかと思ってな」
そう笑うとアンルシア姫は立ち上がり、マントをなびかせた。
「私は先に行っている。お前たちも準備が出来たら後から来い」
こうして記憶を取り戻すためにミシュアは洞窟の奥へと向かっているのだが、その護衛役としてアニアたちも同行したというわけだ。
「アンルシア姫、足が速いぬーん。まだ見えない・・・、いつ追いつけるぬん?」
「う~ん、あちらさんは兵士二人引き連れてるし、姫自体も強そうだしね~。なによりせっかちそう~」
「噂をすれば見えてきましたよ、ほら」
ミシュアが指した先に、アンルシアと思われる人物が広い場所で佇んでいた。
「ホントだぬーん!行ってみるぬん!」
そう言ってシアンが速足になりそうになるのを、アニアが腕を掴んで止めた。
(まて!シアン)
小声でシアンの耳元に囁く。
「いいか、シアン。あんたが思ってるように姫は何かよくない気を発している。恐らくココでも何か企んでいるに違いない。彼女の様子をしっかり見るの。そしてもし・・・・・・、ミシュアが危ない目にあうことがあっても、ギリギリまで見てて欲しい」
「なんでぬん!?」
「あの子はそんなにヤワじゃない。とはいえもちろん、見殺しにはしないわよ・・・。まあ、アタシの言うとおりににして」
「来たか。残念だが巨竜の姿は見えないようだ」
アンルシア姫がアニアたちに気づいた。洞窟の奥にいるという巨竜はいないようだった。
兵士の一人が注意深く見回す。
「おそらく、アンルシア姫さまに恐れをなして逃げ出したのでしょう!」
「ふっ。ならよいがな・・・・・・。ところでミシュア。道中でなにか思い出すようなことはあったか?」
「いいえ。なにも…」
「そうか。それは残念だ。だが焦る必要はないぞ」
アンルシア姫がそう言った直後、辺り一帯に地鳴りが起こった。
「むっ・・・!?」
地鳴りはやみ、しばらくの静寂。
だが何故か気配を感じる。
「きゃっ!?」
「グラァァァァァァッ!」
直後、ミシュアの目の前に、丸々とした赤い竜が降り立った。
彼女の何倍もある巨体に、ミシュアは震えあがった。
「こっ・・・来ないで!シアンさん助けてっ!!」
呼ばれたシアンが助けにいこうとするが、何故かアンルシア姫にそれを止められてしまった。
「ひ、姫!?何をするぬん!!」
だがアンルシア姫は何も言わない。
アニアも手にはしっかり短剣が握られていたが、姫の言う通り動かずにいた。
「ギャラァァァァァッ!!」
巨竜が再び雄叫びをあげる。
この女は弱い。こいつなら勝てる。そう勝利を宣言しているようだった。
「きゃあああああああっ!!」
その様子にたまらず、ミシュアは頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
スキが出来た一瞬に巨竜が襲い掛かるが、
「ギャウッ!?」
ミシュアの身体が金色に光り、その強い光は彼女を守るように覆い尽し、巨竜は弾き飛ばされてしまった。
「ギュアアァ!!」
巨竜は自分が見たことのないチカラに圧倒され、その場から逃げ出していく。
ミシュア自体も何が起こったのか、分からないようだった。
その様子を見ていたアンルシア姫が、確信に満ちた顔で近づいてくる。
「そのチカラ・・・。それは紛れもなく、勇者のチカラだ」
ミシュアの左手を鷲掴みにし、ニヤリと笑う。
「やはりお前がそうだったのだな・・・・・・。私が失った半身。ついに手に入れたぞ!」
「失った…半身?アンルシア姫さま、何を言ってるの……?」
動揺しているミシュアを引っ張り立たせると、アンルシア姫が嬉々として言葉を続ける。
「私がいくら努力しても、勇者に覚醒できないのは何故なのか?私には何かが足りない。何かが欠けている。それが原因だとずっと感じていた」
ミシュアはアンルシア姫の凄みに、ただただ怯えるしか出来なかった。
「城でお前と出会ったとき、それがなんだったのか悟ることが出来たよ。お前こそ私の失われた半身・・・・・・。いつの間にか勇者のチカラを奪って私から抜けだしていったんだ・・・・・・。記憶がないのも当然だ。私から抜け出したお前は、ひとりの人間としてこの世界に存在するものではない。グランゼドーラ城を目指し私の前に現れたのは、無意識にもとの場所へ戻ろうとした結果なのさ」
「そ、そんな……。私……私……?」
「お前とひとつになることで、私は勇者として覚醒を迎えられる!!」
アンルシア姫はシアンたちの方を振り向いた。
「シアンよろこべ。お前の見た夢が正夢となる時が来たぞ。儀式の準備を始めなくてはならんな。急いで城へ戻るぞ!ふふふ・・・。はーははははっ!!」
やっと書き終わりました。
ちゃんと連載してるぞおーw