ワルキューレ
それは、戦乙女の名を冠する戦いの女神
荘厳な武具を身にまとい、煌めく槍を奮う女戦士
怒りは雷撃となり悪を討ち、民を守る
絵本の中の英雄だ
これは、そんなワルキューレに憧れ、志し
戦った、戦乙女の物語である。
◇◆◇◆◇
エテーネの村
周りを海に囲まれた小さな孤島の平和な村
あたしの故郷だ。
あたしのその村一番のヤンチャ娘
ケンカだって男の子に負けないし、最近は剣だって使える
本当に使いたいのは槍なんだけどね。村にないんだもん
「お姉ちゃ〜ん!」
頼まれた手伝いを無視して、日光の気持ちいい軒先で
昼寝を決め込もうとしてると、声をかけられた。
「ミュスナお姉ちゃ〜ん!!」
この声は…、あたしの心は静かに躍る。
かわいい、たった1人の妹のユイナ
ツヤツヤした黒い髪は肩でふんわりしてて、
あたしと揃いの金色の瞳は、まんまるでかわいい
似てないと言われるけど、あたしの大切な妹
今は巨大な亀にまたがり、世界一の笑顔でこちらに手を振っていた。
「ユイナ カメさまに乗ったらダメでしょ」
楽しそうで何よりだけど、あの亀は村の守り神
降ろさないと、あのやかましいばーさんに怒られてしまう。
「乗っていいって言われたんだもん〜」
あたしに注意されたのが不服なのか、ユイナは唇をとがらせた。
あー、かわいいなもう
「なら、いいよ。ところでババアは?」
「誰がババアじゃ」
あたしは、ユイナに聞くなり後頭部にゲンコツをもらった
ババア…、エテーネの村の長、アバだ。
この人をババアと呼ぶのは、あたしくらいだろう。
「ってーな!なにすんだババア!」
「うるさいよ、じゃじゃ馬。アンタ、おつかいは?」
そうだ、ババアにめんどくさい、おつかいを頼まれてたから逃げ回ってたんだ
あたしは、やってあるとでも?と言うように肩をすくめて見せた。
ババアは思った通り、苦い顔をした。
「…まあいい。それより、アンタには他に頼まれて欲しいことがあるんじゃ」
あたしは、きっと、あからさまにイヤな顔をしたのだろう。
呆れ顔のババアの次の言葉で、すぐに、歓喜のものへと変わるけど
「ちょっと外に行って、花を持ってきておくれ」
「外に出ていいの!?」
外には比較的温厚だけど、魔物がいる。
だから許可がないと、村の外には出してもらえない
村一番のヤンチャ娘のあたしには、村の中は退屈すぎる。
だから外出の許可は心が踊った。
「あんまり無茶するんじゃないよ」
「わかってるって!行ってきまーす!」
詳しい話も聞かずに飛び出そうとする、あたしの襟首をババアが掴んだ。
「こら!話は終わってないじゃろ!」
あたしは、つんのめって、ババアの話を聞くことになる
◇◆◇◆◇
つまりは、洞窟の奥のキレイな花を取ってこい
とのことだった。
テンプラ花だか、そんな感じの
「テンスの花じゃ。」
「わかってる、わかってる」
あたしは、投げやりに言うと、村の外へ通じる道へ飛び出していった。
「あ!お姉ちゃんー!」
妹に呼び止められる。
急ブレーキで、振り返る。
「帰ったら、いつもの絵本、読んでね!」
いつもの絵本とは、ユイナのお気に入りの絵本のことだ
題名は『ワルキューレ』
何回目よ、と苦笑するけど、イヤじゃない
あたしも、あの絵本が好きだから
「わかった!いい子に待っててねー!」
こう言って出かけるのも、好き。
「うん!」
返事がとても、かわいいから。
◇◆◇◆◇
この時、村を空けるんじゃなかった。
あたしは、知っている。
世の中には、どうしても理不尽なことがあると。
自分が、どうしようもなく、無力だと言う事を。
あの絵本みたいに、強くてカッコイイ、ワルキューレだったら、
ずっとあの村で、ずっと幸せに、皆と、ユイナと、生きていけたはずなのに。
◇◆◇◆◇
花を摘んで帰ると、村は火の海だった。
突如、魔物が襲来したからだ。
戦うことの出来ないエテーネの民は、なすすべなく、蹂躙されていた。
パニックになりながらも、あたしは、皆を守るために、剣をとった。
…けど
襲来した魔物は、村の外のそれとは、ケタ違いだった
桃色の巨体に、鉄の槍を持った魔物
確か…、アークデーモン
睨まれただけで、身体が動かなくなった。
アークデーモンが、指を天に向けた。
これは確か…呪文の合図
爆発呪文の、イオナズン
あたしは、咄嗟に後ろに跳んだ。
それが功を奏したのか、直撃はしなかった。
けど、爆風だけで、あたしの身体は宙に舞った。
地面にしたたかに打ち付けられる。
くぐもった悲鳴が口から漏れ、視界が歪んだ。
歪んだ視界が、戻ると、目の前には…
「お姉ちゃん…」
泣きそうな、ユイナがいた。
良かった、怪我はない。
安堵したのはつかの間。
闇の底から響くような恐ろしい声が聞こえた。
「エテーネの民は、皆殺しだ」
聞いてるだけで、ナイフを首元に突きつけられるような感覚を味合う恐ろしい声。
あたしも、ユイナも、その声の主を見て、
恐怖で、動けなくなった。
大きな鎌を持った、角の生えた男。
そして、男の指は、ユイナへと向いた。
「…!」
狙いは、ユイナ
そう認識しただけで、恐怖が吹き飛んだ。
飛び出して、ユイナを庇わなければ
身を呈すれば、きっと守れる
けど、無理だった。
爆風で、打ち付けられただけで、あたしの身体は使い物にならなくなっていたから
なんて貧弱な身体だろう、あたしは自分を呪った
ユイナに手を伸ばす
「ユイナ!ユイナァ!!」
神でも悪魔でもいい。
お願い、ユイナを助けて。
そう、願った時だった。
あたしの手は強く輝き、その輝きはユイナの身体を包みこんだ。
それは、大鎌の男の放った術を、弾き返した。
「…む?」
男は、興味深そうに、片眉をあげた。
ユイナは、光に包まれたまま、宙に浮いて…
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」
そして、光と一緒に…消えてしまった。
願いが通じたのか、自分の力なのか
分からない。けど…
ユイナは、守れた。
「そうか…お前が…」
大鎌の男は、あたしに向き直る。
やっと立ち上がれたあたしは、剣をとった。
それを、ヤツに向けた。
「殺してやる……!」
力の限り、睨んだ。
「我が名は、冥王ネルゲル」
ヤツは、冥王ネルゲルは、あたしに指を向けた。
そこに力が集中するのが、分かった。
「いつでも、殺しに来るがいい」
放たれる火球。
あたしは、絶叫して、剣をヤツに向かって投げた。
最期に見た光景は、火に包まれたエテーネだった。
けど、ユイナは無事
あたしは奇妙に満足感を持って、目を閉じた。
◇◆◇◆◇
目を覚ますと、不思議な空間にいた。
5つの像がある、妙に神秘的な、空間。
そして不思議と、死んだんだな……と、実感があった
『貴女は、まだ死ぬときではありません。』
女の人の声がした。
『新たな姿に生まれ変わり、自分の宿命に立ち向かうのです』
生まれ変わる…
かの伝説の勇者たちは、何度死んでも甦れることがらしいけど
それだろうか。
生まれ変わるなら、強靭な身体が欲しい。
力強くて、頑丈で、
もうあんな思いは、したくない。
強い身体が、欲しい。
『その姿を選ぶのですね』
迷いはなかった。
あたしが選んだ姿は…オーガ。
強くて、優しい、戦いの民。
あたしは生まれ変わって、冥王を殺す。
そしてユイナを探して、
一緒にエテーネに帰るんだ。
長くなってしまい申し訳ないです!
見るに堪えない駄文ですが!読んでくれたら嬉しいです!
ここまで読んでくれただけで感謝っす!
ありがとう!ありがとう!ありがとう!