ドラゴンクエストX 〜ワルキューレ〜   作:リョンさん

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グレンで、ひと悶着あったが、なんとか無事、雲上湖へ向かうことが出来た一行。

そこには、恐ろしい怪物が待ち受けているのだった!


第11話 激闘、ギルギッシュ

雲上湖へ向かうには、ゲルト海峡を通過し、ランドン山脈を登る必要があるようだ。

 

「ランドン山脈の気候は厳しい。オーガだから大丈夫だと思うけど」

「あたしは、たぶん大丈夫」

 

本当に、この身体は、あまり寒さを感じない。

ユイナは、ランガーオで震えていたから、少し不安だが……

 

「わたしも、大丈夫です!」

 

ユイナは、頼しげに、胸を叩いた。

ゲルト海峡までに至る道、お喋りをしながら歩いた。

 

「そういえばユイナさんは僧侶なんだよね?」

「はい」

 

回復魔法を得意とするユイナは、僧侶のはずだ。

ダーマ神官とやらに、聞かないと詳しいことは分からないらしいが。

 

「どうしてスティックを持たないんだい?」

 

アルベールの質問に、ユイナは、眉尻を、下げた。

 

「装備出来ないんです何故か……」

 

ユイナは、旅に出てからというもの、ずっと丸腰だ。

冒険者の職業は、神に許された武器のみ使うことが出来るということらしいが。

 

「ふむ、槍や棍は?」

「それがだめなんです。スカラとか、覚えられないし」

 

呪文にも、制約がかかっている。

その職業に適応しない術は、覚えられないようになっているようだ。

 

「……もしかしたら、僧侶じゃないのかもしれないね」

「え?でもホイミとか、使えるんですよ?」

 

ホイミを使える職業は、ほかにもある。

もしかしたら、それなのかもしれないな。

 

「うーん、とりあえず弓でも持ってみる?

丸腰だと、危ないからさ」

「弓ですかぁ……」

 

難しそう、とユイナに、アルベールは優しい口調で言う。

 

「俺も練習中の身だけど、良かったら教えようか?」

 

その提案に、ユイナの瞳が輝く。

 

「ほんとですか!?じゃあ、やりたいです!」

 

ユイナも、いつまでも丸腰で居させるわけには行かない

武器は、持ってるだけで抑止力になる。

 

「あたしがモンスターでも、明らかに弱そうで丸腰のかわいいユイナが居たら、そっち狙うしな」

「か、かわいいだなんてそんな……♪」

 

都合のいいとこだけ聞き取りやがったな。

 

「じゃあゲルト海峡で、一旦休憩して、そのときにでも。」

「はぁい♪」

 

アルベールは、ちょうど弓を持ち合わせているようだ。

二人の軽い弓講義に耳を傾けてると、地面の微細な隆起に気付く。

集中して、見てみると……

 

「あ、そこ、何か、いるから気をつけな」

「え?」

 

遅かった。ユイナが、そこを、ジャストに踏み付ける。

その足を、土で出来た手のようなモノが掴んだ。

 

「こ、これは……!マドハンドです!こうやって、隠れて近づいた獲物を……きゃぁ!」

 

その獲物は、まさに今のお前だな

でも、害は少なそうだ。

 

もう少し見ていよう。

 

「あっ…、やっ…、スカートの中に!ふ、ふとももに!?いやぁくすぐったぃ〜……!」

 

ふ、ふとももにだと!?許せん

 

「おいこらクソハンド、粉々にしてやるから、そこ動くんじゃねぇ」

 

ユイナのスカートの中に手を突っ込む。

 

「あぁ!姉さんの手なの!?マドハンドなのー!?」

「落ち着け、いま取ってやるから」

 

暴れるユイナを抑え、スカートの中を這いずるマドハンドを掴んだ。

引きずり出し、地面に叩きつける。

 

そして、踏みつけた。

 

「大丈夫か?」

 

ユイナは、涙をためた瞳で、こう言った

 

「マドハンドがトラウマになりそうです……」

 

アルベールは、ずっと困ったように笑っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

ゲルト海峡、打ち付ける波が崖を削り、天然と橋となった。

 

そこで営業してる宿屋からは、鬼の顔のような岩が見える。

なにやら、ご壮大な謂れがあると、ユイナが長々と語っていたような気がするが、ほぼ聞き流したっけな。

 

今は、そこ、ゲルト海峡の宿屋の二階、『ご休憩』してる。

あたしは、ベッドに寝転がって静かにしてるが、連れの二人は海の見えるベランダで、ロマンチック中だ。

 

「矢の指は、こう」

「……こうですか?」

「ちょっと違うな、いいかい?」

「あ、はい…」

 

アルベールが、ユイナの手を取る。

指を動かして、矢にあてがってやっている。

 

ユイナは、ぽーっ、とした表情で、アルベールの横顔を眺めている。

 

「で、弓のほうは、こう……」

「はっ、はい!」

 

弓を持たせて、矢をつがえさせる。

そして、弓を引かせてみせる。

 

「う〜〜〜ん……!」

 

力いっぱい引くが、弓は、わずかにしなるだけ。

アルベールが苦笑した。

 

「初心者用の弓なんだけどなぁ

ちょっと貸してごらん」

 

アルベールはユイナから弓を受け取ると、器用にも弦を解き始めた。

それから、結び直す。手際が良いものだ

 

「ほら、引いてごらん」

 

ユイナが弓を引く。指の形は、しっかりしていた。

 

「! 軽いです!」

「慣れたら、重くしよう。無理すると、指が傷ついてしまうからね」

 

その弓は、あげるよ。とアルベール

ユイナは、飛び跳ねて喜んだ。

 

「おー、良かったな。姉さんにも貸してみ」

「はーい♪ 壊さないでくださいね?」

 

ユイナから弓を受け取る。引いてみると驚くほど軽い。

まるで羽毛だ。

 

「これじゃ矢は飛ばないんじゃ……」

 

言いかけて、やめた。アルベールが、口元に指を当てたからな。

少しずつ鳴らさないと、大事な妹の指が傷物になってしまう。

 

「姉さんには軽すぎました?」

「お姉さんなら攻城用の重弓まで引けそうだ」

「なるほど、バリスタか」

 

攻城兵器で備え付けの巨大なボウガンだ。槍のような矢を飛ばす。

滑車を使って弦を引くらしいが

 

「誰が滑車だ」

 

女の子に失礼な。

あたしは、女扱いは嫌いだが男扱いされたいわけじゃあない。

ましては、化け物扱いなんて、冗談じゃない。

 

「攻城任務があったら、キミに頼むとしよう」

「やった!姉さん仕事が出来ましたよ!」

 

アルベールめ、こんな冗談が言えるのか。

黙らないと噛み付くぞと、一喝し、あたしは、少し目を閉じた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

……いつのまにか寝てしまったようだ

確か、みんなにバリスタの滑車扱いされ、ふて寝したんだったか……。

 

目をこすりながら、上体を起こす。

 

「お、目が覚めたかい?」

 

ユイナに弓の手ほどきをしていたようだ。

 

「どれくらい寝てた?」

「1時間くらいだよ」

 

昨日から寝てなかったから、足りないくらいだな

 

「悪いな、寝ちゃって」

「無理もない。すぐに出る?」

 

あたしは、頷いた。

弓の練習中のユイナの名前を呼ぶ。

 

「あ、おはよう姉さん!もういいんですか?」

「ん、大丈夫〜」

 

立ち上がって、伸びをする。

さあ、怪物退治にいこう。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

ランドン山脈を登ると、すぐにそこに出た。

 

凍りついているが、巨大な湖なのだろう。

その名前の通り、雲より高い位置にある湖。

まだ昼時だと言うのに、太陽がまるで地平線に沈むようだ。

 

その光を反射して、氷の湖は、キラキラを光り、まるで宝石の上を歩いてるようだ。

 

そして宝石の湖の中央には、水晶の木がある。

 

「あれが、目的の水がとれる木です。」

「早くとって帰ろうぜ」

 

怪物は、まだいない。

戦ってみたい気がするが、そんな悠長にできる状況ではない。

居ないなら居ないで、さっさと終わらせたかった。

 

……が

 

「ミュスナ、武器を。」

「……あぁ。」

 

アルベールも剣を抜く。

 

木の向こう。地平線から太陽が登るように、竜が姿を現したのだ。

 

水色の身体に、赤い眼光。翼は、ついてない。その代わりに魚のヒレ。

そして尾も、魚のそれだ。

 

「ヤツが水竜か」

「そのようだな」

 

水竜が咆哮する。甲高い声だ。

アルベールが身構え、あたしは、耳を塞いだ。

ユイナは、怯えて、すくんでしまう。

 

「……うるせえ。」

 

あたしは、氷の地面を蹴った。

水竜に切迫し、その腹を槍で突こうと、振りかぶる。

 

「……っち!」

 

水竜の動きは想像以上に機敏だ。

宙を舞うように、槍をかわされてしまう。

 

ヤツの口が、青色の光を放つ。

 

「呪文かよ……!」

 

尾や、ヒレによる、攻撃を警戒したから、反応に遅れた

ダメージを覚悟したあたしの前に、アルベールが躍り出る。

 

「紅覇斬!!」

 

おそらく攻撃の上級魔法、マヒャドを、正面から切り伏せた。

 

「ミュスナ!氷の地面で、踏ん張りが効かないんだ!

無理をするな!」

「あぁ!」

 

いつもよりスピードが出ないと思ったら、そういうことか。

なら、まだ考えはある。

 

「もう1度近づく!擁護しろアルベール!」

「了解だ!」

 

アルベールは、剣に風と雷をまとわせる。

あたしは、槍に雷撃をまとわせた。

 

水竜は、口から、氷塊を飛ばした。

 

あたしたちは、それぞれ左右に走り、それをかわす。

呪文の詠唱がなかったから、あれはブレスの類か。

 

着弾した氷は、砕けちり、榴弾のように、飛び散る。

 

「そうくるかい……!」

 

回避距離が足りなかった。

鋭いナイフのような氷の破片が身体をかすめていく。

 

「ミュスナ……!」

 

アルベールが、こっちを見る。そこに、ヤツの尾がせまる。

 

「アルベール!前!」

「なにっ!? ……ぐっ!」

 

剣の腹で受けるが、彼は吹き飛ばされ、氷上を転がった

 

「アルベールさん!……ホイミ!」

 

ユイナのホイミが、アルベールを癒す。

立ち上がったアルベールは、姿勢を低く走る。

 

よし、そのまま走れ……!

 

さらに接近した、あたしに、水竜は、尾での攻撃を繰り出す。

 

しゃがんで、くぐり抜ける。

そして、氷上に、槍を突き立てる。

 

さっきの弓のしなりをみて、思いついた。

槍を引いて、しならせ……

 

離す!

 

あたしの身体は、矢のように、跳躍とともに、宙に放たれる!

 

「雷鳴突きィ!!」

 

アルベールのが、うつったか、叫んだ。

人間が腕で、防ぐように、ヒレで、弾き飛ばそうと、奮う。

 

「ここにもいるぞ!!」

 

そうこうしてる間にアルベールは、剣の間合いへと、入り込む。

上下同時攻撃だ。

 

あたしは、ヒレの一撃を受けるが、それを穿った。

水竜のヒレは、風穴をあけられ、鮮血を散らす。

 

空中でもろにくらい、あたしは、氷上に叩きつけられる

が、叫んだ。

 

「いけ!アルベール!」

 

アルベールは、突きの姿勢に入っていた……!

あのオーガ兵とは比べ物にならない、鋭い突きを繰り出す!

 

「……風雷神剣ッ!!」

 

水竜の胸を穿ち、風が身を裂き、そこを雷が焼いた。

たまらず水竜は悲鳴をあげる。

 

水竜の巨大が大きく揺らぐ。

 

「……やりましたか……?!」

 

あたしにホイミをかけるユイナが言った。

……いや、まだだ。

 

赤い眼光は、まだまだ死んでない。

 

「逃げろアルベール!!」

 

水竜は、宙を、くるくると、回りながら上昇

あたしは、アルベールへ向って、駆けた。

 

倒したと思って、油断していたか、反応が僅かに遅れている。

 

水竜が氷上に腹を打ち付ける寸前、彼を突き飛ばす。

 

「ミュスナぁ!!」

 

アルベールは、氷上をすべるように転がった。

逃れられたようだ。

 

「大丈夫だ……!」

 

ブレス自体は外れた。……が

氷上から飛び出すトゲのような氷塊たちが、あたしを襲った!

 

「くそっ!」

 

わずかに腕をかすめる。それでも、傷は浅くなかった。

なんて威力だ……!

 

だが、それよりも、不運なことが、あたしを襲った。

 

「なっ……ウソだろ!?」

 

足元の氷上に、ヒビが入り……

割れた。

 

水竜が、待ってましたと言わんばかりに、割れた氷から湖の中へ。

あたしも、その中へ、ヤツの独壇場へと、引きずり込まれてしまった。

 

 

 




雲上湖にアイスプレスで引きずり込まれる夢を見たんですよ(笑)
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