もとの賢王に戻り、より良い政治を約束したバグド王によりグレンの平和は、約束された。
アルベールは報告にヴェリナードに戻ることに
ミュスナたちは、旅を続けることになった。
2人は、大地の方舟に乗り、風と学問の国
エルフたちの領域、風の町アズランを目指した。
グレンの東口のすぐ近く、そこに、グレン駅がある。
地下に作られた駅には、今日も冒険者たちにより、溢れかえっている。
グレンは、冒険者たちの中心の都市なのだ。
あたしは、ユイナが人混みに流されないよう注意しながら、グレン駅を歩いた。
「わ!姉さん!げんこつアメが売ってますよ!」
なのにコイツと来たら、ホイホイと、離れていってしまう。
「ユイナ、あんま離れっと迷子になるぞー」
「大丈夫ですよ〜子供じゃないんですし」
子供じゃなくてもお前は、心配なんだ。
「あ!駅弁食べたいです駅弁!
すいませんー、一つください〜」
「おい、まだ買っていいつってないだろ」
もう遅い。
店員が「400Gです」と、にこやかに弁当を差し出している。
……まあ弁当くらい、いいか。
「……すいません、2つ下さい」
あたしも腹が減った。
方舟に乗りながら、食べるとしよう。
◇◆◇◆◇
「まさか25Gで乗れるとはなー」
「このパスのおかげですね!」
駅員に、まさにドヤ顔で、大陸鉄道パスを見せつけた、ユイナが面白かったな。
駅員は、苦笑いだった。
「座れるといいですね〜」
方舟内部は、なかなか豪華だ。
そして運良く、座席に座ることが出来た。
「やったー♪」
ユイナは、座るなり、弁当箱を開け始めた。
ユイナの向かいに座る。
「お腹ぺこぺこです〜」
「こぼすんじゃないぞー」
ユイナは、返事もそこそこに、弁当を食べ始めた。
リスのように口いっぱいに頬張る変わった食べ方をする
「ほれユイナ、食うか?」
「食べゆ!」
箸につまんだウィンナーをユイナに差し出すと、餌を差し出された犬のように食らいついた。
「ねーひゃん、もーいりゃにゃいんでふか?」
「いらなくは、ないけど」
口に食べ物を含みながら話すな全く。
そんな幸せそうな顔をされたら、あげないわけにはいかないじゃないか。
「ほら、食っていいぞ」
「いただきまふ!」
弁当箱ごと渡すと、勢いよく食べ始めた。
よく食べるんだなー、やっぱオーガなんだなユイナも。
ちょっと物足りないけど、アズランで、なんか食えばいいか。
手持ち無沙汰になって、景色を見る。
景色が白くなったり、赤くなったり
暑かったり寒かったりするグレンの気候が、よく分かる
おかげで、飽きない、が、なんだか眠くなるなー
「う?ねーひゃん、ねむいんでふか?」
「飲み込んでから喋れ、飲み込んでから。」
呆れ顔で言うと、ユイナは、勢いよく、口の中のものを飲み込む。
「おいおい、そんな一気に……」
「ンーっ!!」
案の定、苦しそうに胸をたたき出した。
あたしは、飲み水のキャップを外し、飲み口をユイナに差し出す。
「んっ、んんっ」
くぴっ、くぴっ、と、喉が鳴る。
「落ち着いて食え、落ち着いて」
呆れて言うが、内心、なんだか満たされるものがある。
エテーネにいた頃から、こんなことをしていたからかな
「……ふぅ、姉さん、眠いんですか?」
飲み口から、離れ、一息。改めて聞いてきた。
「んー、少しな」
「まだアズランまで、かかるので寝たほうがいいですよ」
わたしが起こしますから!と自信満々なユイナ。
自分も寝てて一緒に乗り過ごす……そんな不安を覚えるが。
「じゃあ、頼んでいいか?」
「もちろんですっ!」
じゃあここは、頼もしい妹に任せて、少し眠ろうかな。
あたしは、静かに目を閉じた。
眠気は、すぐにやってきた。
◇◆◇◆◇
すぐに目を覚ました。
正確には、覚ましたような気がした。
「……あれ?」
あたしは、独りでに、疑問を投げかけた。
そう、1人なのだ。ユイナも、ほかの乗客も、消えた。
「……夢か。」
周りを見渡す。
奇妙な静けさは、夢であることを自信つけた。
視線も戻す。と、そこには人がいた。
「おねえちゃん」
小さい方の、ユイナだ。
エテーネの、あたしの妹の。
またか……、と嘆息する。
「ユイナ……」
「なんで、ためいきつくのー?」
夢でしか会えないのが、虚しいからだ。
そう言っても、ユイナには、通じないだろう。
「静かに寝てたいのに、邪魔するからだ。」
「えぇー!」
ユイナは、唇をとがらせた。
「ためいきすると、しあわせにげるよ?」
「じゃあ、させんな」
いつもいつも、面倒かけやがって。
早く、現実で、抱きしめさせてほしいもんだ。
「ユイナのせい?」
「……いや」
けど、これは、ユイナのせいじゃない。
「あたしのせい、かな」
あたしが、弱かったせいだろう。
「おねーちゃん……」
ユイナの眉尻が、悲しそうに下がる。
「夢以外で、わたしに会いたい?」
あたしは、頷いた。
「当たり前だろ。会いたいよ。」
じゃあ、とユイナが続けた。
「きれいなカギのオモチャ、それがほしいな」
カギのオモチャ?なんのことか、分からないが、心当たりがあった。
英雄の証キーエンブレムだ。
「それがねー、10こ、ほしいな!」
つまり10国救え、と……
なんでだよ、と文句を言いたくなるが。
「集めれば、会えるのか?」
重要なのは、そこだ。
「うん、会えるよ」
ユイナは、真剣な表情で、言った。
「なら、集めるよ」
ユイナは、にんまりと笑った。
「うん……。」
そこで、あたしは、現実に引き戻される。
◇◆◇◆◇
「ねえーさーんー?つきましたよー?」
周りの喧騒と、夢と同じ声に、目を覚ます。
同じ声だが、違う姿。
大きい方のユイナだ。
「ん…」
「早く降りないと、出発してしまいますよ」
ユイナに手を引かれ、立ち上がる。
引かれるまま、方舟を降りて、あたしは、アズラン駅へと、降り立った。
「さあ!ここが次の冒険の舞台です!」
ユイナが、アズラン駅の扉を開け放つ。
突然、舞い込んだ日光に、あたしは、瞳を細めた。
「ん……」
瞬間、突風のような、強い風が、吹き抜けた。
だが、吹き飛ばされるような、強い風じゃない。
同じ風に吹かれるユイナが、揺れる黒髪を抑えながら、言った。
「ここが、風の町アズラン。
いい風でしょう?」
あたしも、揺れる銀髪を抑えた。
「ん、悪くない」
強くないが、弱くない、気持ちのいい風。
それに乗る、鼻腔をくすぐる木の香り。
良い国だ。
「ユイナ」
ユイナは、「はい?」と返事をした。
「キーエンブレム、集めよう」
ユイナは、一瞬の迷いすらなく、
ただひとつ、質問せずに
「はいさ!」
敬礼の真似事をして、元気よく返事した。
さぁ、風の中へと、踏み出そうか。
◇◆◇◆◇
「で、まず、どこ行くんですか?」
「メシ屋」
勢いよく出てきて、からのあたしの即答に、ユイナは、大きな瞳を丸くした。
「腹へってんだよー」
「まあ、わたしが食べてしまいましたからね!」
りょーかいですっ!とユイナ。最近、こういう感じがマイブームなのかな?
まあ、つまりアルベールの真似か。
「確か酒場は、宿屋の前をまっすぐ行って」
「宿屋ってあれか?」
あたしが、駅から見える、立派な和風建築を指さす。
木の匂いに混じって、嗅ぎなれないニオイが、あそこから漂ってくる。
「そうです!わたしたちの当分の宿ですね〜」
宿屋の前までくると、高級な旅館と言った感じか。
とは言え、商売相手は、冒険者なので、格安のようだ。
すんごい助かる。
「ここ、温泉があるんですよー」
「おー、そりゃいいな」
なるほど、そのニオイは、温泉のニオイか。
今日泊まるのが楽しみだ。
旅館を見上げていると、ふともも辺りに、何かが当たった。
人にぶつかったか。
そっちの方を見る。
「悪い、大丈夫か?」
小さな女の子が、倒れていた。
フリルをまんべんなく使った黒い……喪服のような?
それでいて、ふわふわっとしている。
髪は、瞳の上でキレイに切りそろえられてて……ユイナのような前髪だ。が、腰まで、スラッと流れる長髪だ。色は黒、少し紫混じりで、とても艶やかだ。
ユイナのそれとは、一味違う。
そこにドンッと乗せてある大きめの紫のリボンが、とても目を惹く。
だが、それ以上に、目を引くのは……
肌の圧倒的、白さ。そして、長く大きな耳。
何より、背中にある透明の、妖精のような羽だ。
……なんだ、この守りたくなる生き物は
その生き物は、紫色の、ユイナより大きく丸々とした瞳を、あたしに向け、そして睨んだ。
「……キサマ!急に立ち止まるな!
でくの坊めが!」
眼帯をしていない、右の瞳を、キリキリと釣り上げる、白いヤツ。
「おかげで、私の、『いっちょーら』が埃まみれじゃないか!
どうしてくれるんだ!!」
小さいのが、すごい怒ってくる。
「あぁ、だから悪いって……」
「謝罪をしろ!謝罪を!!」
なんだコイツは。うぜーな。
いくら、かわいい女の子だからと言って、
あたしは、女の子の、襟首を掴んで持ち上げた。
ちょうど、子猫を運ぶ、母猫のような、感じに。
「謝ってるだろ。けど、前見て歩けよ、おじょーちゃん」
「な、何をするか!ヤバンな戦闘民族め!」
手足をばたつかせる女の子。
そんな、短い手足じゃ届かないぞー
「はなせー!はーなーせー!」
「あ!姉さん!エルフさんをいじめたらダメですよ!」
ユイナが、騒ぎに気づいて、口を出す。
失礼な小娘に礼儀を叩き込んでいるところだ。
「おい!そこの地味なやつ!コイツをなんとかするんだ!早くしろ!」
「じっ、地味っ!?」
またしても、地味と言われるユイナ。
この白くて小さくて軽いヤツが、エルフなのか。
確認に、ユイナに聞いてみる。
「これがエルフか?」
「キサマ、エルフも知らんのか!
博識で!慎みやかで!もっとも優れた種である、私たちエルフを!」
少なくとも、慎みやかでは、ないな。
コイツに限った話かもしれないが。
「私たちは、大雑把で雑なキサマらオーガと違って、繊細なんだ!こんな雑に扱うな!
分かったら、さっさt……ふぎゅっ!」
うるさいから、離してやる。
すると、小娘は、顔から、地面に落下した。羽根ついてんのに。
「あぁ!姉さんなんてことを!エルフは、すぐに骨が折れたりするんですよ!?」
「え?そーなの?」
そりゃ、悪いことしたな。
小娘は、地面に、倒れふしたまま、震えている。
「大丈夫ですか?エルフさん……」
「いたい……」
顔をあげる小娘。その、瞳には、たくさん涙がたまっていた。
「バカ!オーガなんかキライだ!」
駆け寄ったユイナをポカポカ殴る。
ポカポカって音、ほんとに鳴るんだな。
「あぁ、顔を打ったんですね、ホイミ。」
ユイナは、ポカポカと殴られながらも、小娘を回復してやる。
赤かった顔は、すぐに元の白に戻った。
「う?」
「ほーら、痛いの痛いの飛んでいきましたかー?」
小娘は、うん、と頷き、ユイナの、後ろに隠れ、あたしを睨んだ。
「ダメですよ!姉さん!」
「ダメだぞ!オーガ!」
お前ら並ぶと似てるな。
仕方ない、謝って、場を収めよう。
と、仕方なしに謝ろうとした、その時。
「何をしてるんだ?セリア」
今度は、男の、声だ。また新しいエルフか……。
あたしは、エルフってこんなんばっかなんかと、思い込み、ためいきをついた。
「ハル!どこに行ってんだ!」
「郵便局に寄ると行っただろう。
その方々は、誰だ?」
ハル、と呼ばれたエルフの、少年だろうか。
短く、キレイにまとまった、この少年も、黒髪だ。
緑色の瞳は切れ長で、なかなかの美少年だ。
服は執事が着るような燕尾服を着ている。色は、小娘と、同じ、黒と紫。
2人揃うと、まるで人形細工のようだ。
「アイツが私をいじめて、コイツが私を助けたんだ!」
交互に、あたしとユイナを指さす。
ハルと呼ばれた少年は、「ふむ」と、アゴに手を当て、それから、あたしに一礼した。
「……セリアが失礼なことを言ったのでしょう
代わりにお詫び申し上げます。」
深く、一礼した。
あたしは、拍子抜けする。
「あ、いや、あたしも、ひでーことしたしな……」
なんだか、すごい悪いことをした気分になった。
ユイナの影に隠れる、小娘を見る。
小娘は、びくっ、と身を震わせた。
「ごめんな、えーっと……セリア?」
小娘は、ぷいっ、と視線を逸らしたが、
「……私こそ、すまなかった。
あと、我が名は、オルセリアだ」
意外、素直に謝った。
やはり大切なのは、大人の対応だな。
「僕は、ハルカと申します
これも、何かの縁でしょう、お茶でも飲みませんか?」
ハルカ、と名乗ったエルフの少年の提案に、ユイナが手を叩いて、賛成した。
「いいですね!姉さんが、おごるそうです!」
「おい、まだなんも言ってねーよ」
「そうだ!ハル!こんなヤバン人と食卓を共にしたら、ディナーは我々だぞ!」
反対2賛成2だ。
「アズランの団子は、おいしいですよ
価格もリーズナブルです。」
「団子!?団子食べたいです!」
お前さっき吐くほど食ってたじゃねーか。
「だ、団子……!?」
オルセリアまで、食いついた。
「姉さんのおごりで、お団子食べましょ?
オルセリアちゃん」
ユイナが、しゃがみこんで、聞く。
「……んむ、まあ付き合ってやろう。」
ディナーにすんぞ、餅みてぇな顔しやがって。
「決まりですね、酒場は、こっちです」
ハルカが、先導して、歩き出す。
まさか、暴行のツケが、4人分の食事代とはな……
「お前ら、名前は、なんだ?」
オルセリアが、聞いてくる。
「わたしは、ユイナです。
そして、こっちの大きいのが……」
「ミュスナだ」
子供じゃあるまいし、自分で名乗る。
「ふむ、ユイナと、キングレオか」
「誰がキングレオだ、餅娘」
「誰が餅だ、アームライオン」
あたしは、オルセリアを睨む。オルセリアも、果敢に睨み返す。
牙を見せて、ガァ!と言ったら少し怯んだ。
「ほ、ほら!獣じゃないか!」
「もう、姉さん!エルフは、ビックリすると心臓が止まったりするんですから!」
エルフ弱すぎないか?
「ユイナ、お前は、イイヤツだな。
よし、我が使い魔にしてやろう」
「使い魔?」
何言ってんだこの餅は。
あたしたちの疑問に答えたのはハルカだ。
「つまり、友達、です。」
「あぁ!はい、お友達になりましょー♪」
オルセリアは、見るからに、嬉しそうだ。
使い魔と言い張るのはやめないが。
「私が呼んだらすぐに来るのだぞ!使い魔なんだからな!」
「つまり寂しいから構ってくれって、ことです。」
「はぁい♪ご主人様♪」
ユイナは、すっかりノリノリだ。
オルセリアも、ユイナのノリが嬉しいのか、その手をとって、ぶんぶんと振っている。
かなり、なつかれたな。ユイナ。良かったじゃんか。
そうこうしてる間に、目的地についたようだ。
「ここが、酒場です。」
ついてしまったか……、あぁ、あたしのG……
「団子〜♪」
「団子…♪」
どっちが、喋ってるんだか、分からん。
「ご馳走になります、ミュスナさん」
ハルカ、こいつも何気にちゃっかりしてやがる。
「あー、はいはい……もう、どうにでもなれや」
まったく、素晴らしいスタートだよ。
オルセリアの声は、小倉唯さんで、脳内再生してください。