ドラゴンクエストX 〜ワルキューレ〜   作:リョンさん

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アズランの町の不可思議な事件を解決したミュスナと、ユイナ。

懐を暖めた2人は、次の目的地を話し合った。

2人の目的地は、満場一致で、海と欲望の町、
ジュレットに決まった。

そこで、2人は、このオレ、仮面のナイスガイに出会うのだった…!


第22話 ジュレットの町

「海が見たい」

 

あたしの、このロマンチックな一言で、次の行き先が、決まった。

 

「では、海と欲望の町、ジュレットですね!」

 

そんな大層な二つ名を持つ、ジュレットは、

この辺りでは、もっとも、大きな町のようだ。

 

「お、海!」

 

そのジュレットが近づいてきたようだ。

窓から見える景色は、1面の大海原。

 

エテーネでは、有り得なかった、海の上を駆けるという行為は、あたしの胸を高鳴らせた。

 

「キレイですねぇ…!」

 

水面に太陽の光が、反射して、キラキラと輝いている。

あたしたちは、しばし、目的も忘れて、海に見とれていた。

 

『次〜ジュレット駅〜、ジュレット駅〜』

 

そのアナウンスが聞こえるまで、飽きもせず、海を眺めていた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

辿りついたジュレットの町は、大海原のように、光り輝く自由都市…!

…では、なかった。

 

駅から、まっすぐ行った広場に、常に人が集まっている。

一見、交流広場だが…

 

「けっこー都会だな」

「ですねぇ…」

 

島国出身者と、山奥出身者が、驚くのは無理はない。

とりあえず、町についたら、あたしは、用事があった。

 

「あたしは、郵便局行ってくるね」

 

アルベールに送った手紙の返事が、来ているかもしれない。

一応、チェックしないと。

 

「あ、妙にそわそわしていると思ったら、それですか」

 

そわそわなんかしていない。ニヤニヤするな。

人の往来の真ん中で、ニヤニヤする巫女は、目立つ。

 

「お前、それ脱げよ…

すげー目立ってるぞ」

 

アズランで、正式に、その制服を受領してから、脱ごうとしない。

おかげで、電車内から、悪目立ちだ。

 

「目立つことこそ、我が望みです!」

 

ここにくるまで、地味と言われ続けたユイナは、すっかり、根に持っているようだ。

 

しかし、その目立ち方は、間違ってるような…

 

「まあ、いいか…

変に絡まれても知らないからね〜」

 

と、半ば、投げ出すように、あたしは、ユイナから、離れた。

まあ、たぶん、大丈夫だろう。

 

「大丈夫ですよ!ほら!行って行って!」

 

と、ユイナは、あたしの背中を押して、郵便局へと、

送り出した。

…道、分からないんだけど…

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

姉さんを見送ってから、周りの視線に酔いしれる。

 

ふふふ、地味、地味と言われ続けた、わたしですが、

もう、それを言わせませんよ!

 

この格好で、ばんばん事件を解決して!どんどん有名になって!

心霊探偵の名を世に知らしめるのです!!

 

「お、巫女がいるよ」

「え、マジで?うっわ、マジじゃん」

 

と、1人、意気込んでいると、後ろから、男の人の声が

やったー!目立ってるー!と喜んだのは束の間、

 

ウェディの男性が、2人。

 

振り返ってみると…

 

「黒髪巫女じゃん」

「うわー、漫画みてぇー」

 

金髪と、茶髪のウェディさん。

ウェディの男性は、皆さん、イケメンですけど…

 

「ねぇ君、巫女とか普段なにしてるの?」

「お茶でもしながら聞かせてよ〜」

 

なんていうか、判子を押したみたいに同じような感じというか…

量産型っていうか…

 

「君、けっこーかわいいねー」

「清楚系?って感じ?」

 

ぐいぐい来ますね!この人たち!

と、心の中では、思ってますが…

 

「えっ、その…、あはは…」

 

こんな感じで…、

困ってるの、分からないのかなぁ…

 

「この先に酒場があるんだよ、奢るからさ〜」

「魚料理、うまいよー、ね、いこーよー」

 

こ、こういう人、苦手…

姉さん助けてー…

 

と、途方にくれた、その時!

 

「レディース&ジェントルメーン!」

 

高々と、男性の声が、響いた。

あまりの大声に、ざわついた周囲、そして、わたしに話しかけてきた、ウェディさんも、凍りつく。

 

声のほうを向く、と変わった格好のウェディの男性がいた。

 

派手な黒と赤のマント、負けないくらい派手な羽根の帽子。

その帽子から、のぞく、燃えるような赤髪。

 

そして、黒い仮面。

 

「特にレディースの皆様、御機嫌よう

今宵も、『道化師』のショーが始まるぜ!」

 

レディースの方だけかい!と、コケそうになる。

 

仮面のウェディは、マントを翻す。

すると、そこから、メカの鳥の魔物、メタッピーが3匹飛び出した。

 

「ヒィ!魔物!?」

 

町は、大騒ぎになる。

 

「心配無用!道化師とハトは友達だからな!

あー、たまにつっつくよ!気をつけて!」

 

余計、大騒ぎになる。

幸いにも、メタッピーは、誰にも危害を加えることなく天高く、消えていった。

 

「さて、次は、お得意の消失マジック!

さあ、誰を消しちゃおうかな〜」

 

と、仮面のウェディは、観客…(とは言っても勝手に始めて、周りの人を勝手に観客にしている)を、物色するように見て…

 

「そこのキュートな巫女ガール!キミに決めた!」

 

わたしを、指さした。

仮面のウェディは、なかなかのスピードで、わたしのすぐそばに来た。

 

「大丈夫、怖くないからな」

 

そう言って、懐から、魔法の小瓶を取り出し、それに、ハンカチをかぶせた。

 

それを、のけると、いつの間にか小瓶の蓋が空いていて、代わりに生けるように薔薇がさしてあった。

 

「お嬢ちゃん、ナンパで困ってるんだろ?」

 

仮面のウェディは、その花を、わたしの髪に、さした。

髪飾りみたいに、わたしの頭に薔薇を飾る。

 

「マントで、隠すから、走って逃げな」

 

わたしの返事を待たずに、仮面のウェディは、マントをひろげた。

 

「3!2!1!」

 

カウントダウンを始めた。

わたしは、急いで走り出す。

 

「じゃじゃん!」

 

仮面のウェディは、マントを翻す。

当然、わたしの走っていく後ろ姿は、公衆の面前に晒される。

 

「インチキじゃねーか!!」

「また失敗か! このクソ道化師!」

「誰だクソ道化師だ!誰が!」

 

背後から喧騒が聞こえる。

なんとか、ナンパから、逃げられたようだ。

 

少し、離れたところから、あの道化師の無事を確認するために、振り返る。

 

「またお前か!赤毛!町にモンスターを放すなと言っただろう!」

「げ、やべーのが来た…!」

 

なにやら、ここの警備員に目をつけられたようだ。

道化師は、口笛を鳴らした。

 

「あばよ!淑女の皆さん!」

 

再び、3匹のメタッピーが、現れ、道化師は、メタッピーの足を掴む。

すると、空高く舞い上がって、消えていった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

アルベールからの返事をみて、また返事を書いて、ユイナのいる広場のほうに来てみると、ひと騒動起きていた

 

あたしは、近くで、同じように野次馬をしている、女に話を聞いた。

 

「おい、嬢ちゃん、なんの騒ぎだ?」

 

クリーム色のポニーテールを翻して、振り返ったのは、青白い顔をした女だ。

 

細身な身体は、スラッとしたタンクトップと、短パンで、さらに細く見える。

タンクトップからのぞく腰は、驚くほど細い。

 

確か、この半分、魚みたいな種族は…ウェディだったか

 

「うちが聞きたいよ!また『道化師』のあんちゃんが、騒ぎを起こしてるんやと!」

 

変わった訛りのウェディの女は、気になる言い方をする

 

「なに?道化師?また?」

 

ジュレットの有名人だろうか。ウェディの女は、意外そうに片眉をあげた。

 

「なんや?自分、ジュレは初めてかいな?

道化師っていうと、有名な変人のことやけど」

 

有名な変人…、それは会いたくないな…

だが、探してる変人は、そっちじゃない。

 

「あたしの探してる変人は、巫女の格好してるんだが」

「…あぁ、走っていく後ろ姿が見えたで

めっちゃ、かわええのぅ、巫女!」

 

まあ、うちは、道化師のほうに用があるんやけどな、と女。

そんな事情は聞いてない!

ユイナの走り去った方向を聞いてから、そちらに駆けようとするが、

 

「待ってや!自分!

うちの話も聞いてくれや!」

 

腕を掴まれ、つんのめる。

 

「なんだよ!? 変な訛り女!」

「変とは、なんや! れっきとした、レーン訛りやで!」

 

レーンという地名は、聞いたことがないし、ユイナが離れていくし、なんだこの女は!

 

「うちも、巫女ちゃんに興味あるねん、つれてってくれへん?」

「勝手にしろ!」

 

女に言い放ち、あたしは、駆ける。

 

「おおきに!

いやぁ、ほんまジュレってとこは、世知辛くてなぁ

うちの故郷レーンはなぁ

あ、うち、スズって、いうんやけど…」

「黙って走れ!黙って!」

 

おしゃべり女、スズを黙らせて、

あたしは、人混みをかき分け、走った。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

幸い、すぐにユイナは、見つかる。

目立つ、とんでもなく目立つ。

 

「ね、姉さん…!」

 

目が合うなり、泣きそうな顔で見てくる。

 

頭に飾られた薔薇を見るに、怖い目に、ナンパにあったに違いない。

 

「無事か?その薔薇、どうした?」

 

ユイナは、そっ、と薔薇に触れる。

 

「これですか?お節介な道化師がくれたんですよ」

「ナンパか?ナンパされたのか?」

 

薔薇をあげるとは、また古風な…じゃなくて

 

「どんな奴だ?怖くなかったか?」

 

あたしの質問攻めに、ユイナは、たじたじ。

クソナンパ野郎め、お前の血で薔薇を生けてやる。

 

「逆です!ナンパから助けてくれたんですよ!」

 

じゃあ、なんで薔薇が…、と、聞くと、ユイナが、かくかくしかじか。と説明してくれた。

 

なるほど。感謝するぞ道化師。

でも、ナンパしたやつは、八つ裂きな。

 

「初めまして巫女ちゃん、急で悪いんやけど…」

「初めまして!姉さんのお友達ですか?」

 

話の腰をおられたスズだが、嫌な顔ひとつせず、笑って「せやで、スズちゃんって呼んでな」と言った。

 

「友達になった覚えなんかねーよ」

「レーンじゃ、名乗りあったら、友達なんやで!」

「名乗ってすらいねーって」

 

うっかりしてたな!とスズ。名乗るように、せがる。

 

「わたしは、ユイナ。こっちは、姉の…」

「ミュスナだ」

 

スズが、手を叩いた。

 

「なんや!自分ら姉妹かい!似てへんなー?

狼とチワワって感じや〜」

「チワワなんて褒めすぎですよぉスズちゃん♪」

 

なんかすっかり意気投合してるし、チワワは、褒め言葉なのか?

すっかり変わってしまった話題を、スズが、戻す。

 

「そんでな、チワワちゃん。

うち、道化師を探しててな?」

「あぁ、彼なら…」

 

ユイナは、空を指さした。

 

「なに?死んだの?」

 

あたしの疑問にユイナが、首を横に振る。

 

「メタッピーで飛んでいきました」

 

待って。何言ってるか、分からない。

 

「やろなぁ。あいつは、殺しても死なないやろなぁ」

 

なに納得してるんだ、この女は。

周りのヤツらの話によると、警備員に追われ、飛んで逃げたらしいが、信じられないな。

 

「飛ばれたんじゃ、しゃあないなぁ。

今日こそ、会うつもりやったんに」

「困りましたねぇ…、あ、姉さん!」

 

周りの声に耳を傾けてたあたしを、ユイナが呼ぶ。

そちらを見ると、薔薇を、差し出している。

 

「なに?」

「たぶん、道化師さんのニオイが残ってるかもしれないので…」

 

男をニオイで、追えってか?

なにその新たなストーカー。

 

「自分、犬みたいやなぁ

一生のお願いや!頼むで!」

「何回目の一生のお願いだよ、それ」

 

呆れる、が、道化師とやらに興味がある。

ユイナを助けてもらった礼もいいたいし。

 

あたしは、薔薇を受け取った。

 

と、同時に、一変する空気に気付いた。

 

「…あ、まずいなぁ」

 

スズが、つぶやく。心なしか、周りも慌ただしい。

 

「な、なにかあるんでしょうか?」

 

緊張した空気に呼応するように、ユイナ自身も、こわばっている。

 

「ジュレットの有名人、『道化師』『男爵』『女王』

のうち、もっとも危険な人物でな…」

 

説明するより、見た方が早い、とスズは、酒場の方面を指さした。

 

人が集まっているが、川のように、割れている。

まるで、王族の凱旋パレードのように。

 

「頭を低く!絡まれると、めんどうやで!」

 

スズが、平伏するように、地面に伏せた。

ユイナも、それに、習う。

 

女王、と呼ばれるヤツと、ご対面か。

ここまで、恐れられる人間、もしかしたら、魔族の類いかもしれない。

 

そして、魔族は、冥王へと通じる。

 

「ミュスナも、伏せなあかんで!」

「いや、これでいい。」

 

ご尊顔を、よく、拝見しなければ。

 

神輿のようなものが、見えた。

屈強なオーガの男たちが、担いでいる。

 

神輿には、もちろん、女王が乗っている。

 

「あれが、ジュレットの『女王』レイナや…」

 

丸くまとめられた、桃色の髪。

輝く真珠と謳われた、瞳。

 

豪者な白いドレスに身を包み、手には桃色で、ハートのついた鞭。

 

「あれが…女王レイナ…」

「あぁ、噂じゃ、ゴールドシャワーでガートラントを血の海に沈めたとか…」

「今はヴェリナードへの侵攻を考えてるらしいぜ…」

 

聞こえてくる噂話だけで、やばいヤツなのが分かった。

 

女王、レイナは、平伏しないあたしでは、なく、

平伏して、怯えきっている、ユイナを呼んだ。

 

「そこの巫女服の貴女」

 

巫女服を着てるやつなんて、この場で、ユイナしかいない。

ユイナは、スズに横から小突かれ、怯えながら立ち上がる。

 

「よく似合ってるわ。」

 

ユイナが、ほっ、としたように、胸を撫で下ろした。

 

「あ、ありがとうござ…」

 

言いかけたユイナのすぐ近くの砂が跳ねた。

しなる鞭で、打たれたのだ。

 

「本当に、よく似合ってる。

私がそれ着た時より、膨らんでる胸とかね?」

 

女王は、鞭を奮う。

ユイナは、縮こまって、悲鳴をあげた。

 

「Dカップ以上は殺す」

 

物騒すぎることを言って、鞭を奮う。今度は当てにいった。

 

あたしは、2人の間に入る。

ユイナを襲う、しなる鞭を、掴んだ。

 

「…鞭は、人間の目じゃ追えないらしいけど?」

 

武器を掴まれたレイナだが、冷静だ。

 

「だとしたら、あたしは、人間やめてるな」

 

掴んだ鞭を、両手で、掴み…

左右に思い切り引き、引きちぎる。

 

「止まって見えた。」

 

ちぎった鞭を捨てる。

レイナは、あたしを、値踏みするような目で見て、

指を鳴らした。

 

神輿が、降ろされる。

 

「レイザック」

 

神輿を担いでいたオーガの1人が、呼応した。

 

「懲らしめてやりなさいな」

「承知いたしました。」

 

オーガの男が、あたしの前に立ち塞がる。

 

「…覚悟しろ」

 

ウォーミングアップには、ちょうどいいな。

 

「どけ。」

 

指を鳴らす。

その奥では、レイナが…

 

「爪!」

 

と、叫んで…

 

イケメンのウェディが、「はい!」と、道具を手に、近づき…作業し…

 

「痛いわね!へたくそ!」

 

と、平手打ちされていた。かわいそうすぎる。

 

「女王の名の元に…」

「時給いくら?」

「え?…800Gだが…ぐぁ!」

 

答えてる間に、顎をうつ。

どんなにでかいやつも、脳を揺らせば、倒れる。

 

「ったく、使えないわね」

 

一撃で倒されたレイザックをみて、レイナが、言った。

 

「次は、お前だぞ」

 

レイナは、扇を広げ、口元をかくした。

 

「やぁよ。痛いの嫌いだし…

レイド」

「ここに!」

 

名を呼ばれて、どこからか、エルフの青年が、現れた。

 

「逃げる。足。」

「では、このキラーパンサーに…」

「お尻臭くなるからヤ。」

 

ワガママな女王さまだ。

結局、彼女は、モーモンブランコで、去って行った。

 

「……なんだったんだ?今の…」

 

あたしの疑問に答えてくれる人は、いなかった。

 

波乱に満ちた、ジュレット編が始まる。

 

 




キラーパンサーは、お尻が臭くなるので気をつけましょう
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