ミュスナが男にしか見えないと言われますが
……女子です!
心の目で、見てください
ロンダ岬で落としたルーラストーンを探すべく、村の外へ向かうところを、ユイナに呼び止められた。
「あれ?おでかけですか?姉さん。」
心配そうに、見つめてくる。
数時間前まで、死にかけてたのだから、無理はない。
「宝物を落としちゃってさ」
自分の腰の辺りをポンポンと叩いてみせる。
ユイナは、その動作で、なにを落としたのか、察したようだ。
「あ、ルーラストーン落としちゃったんですか〜」
おっちょこちょいですね、と、くすくすと笑うユイナ。
落としたのはあたしじゃなくて、君のお姉さんだけどね
「すぐ戻るから、心配しないで」
「姉さんなら大丈夫でしょうけど……」
やはり心配そうだ。
「いつもどんな魔物も、素手でバーン!ってやってしまいますし……」
オーガのミュスナ、ワイルドだな。
剣とか、欲しいところだけど、あいにく持ち合わせがない。
「うーん……、わたしもついて行っていいですか?」
1人じゃ少し心許ないな、と思い始めた時に、いい提案だった。
「分かった。一緒に行こうか」
「はい!」
すぐに聞こえた元気な返事に、思わず、頬が緩んだ。
初めての、姉妹共同戦線だ。
◇◆◇◆◇
村を出ると、さっそく見慣れたモンスターが居た。
「あれはスライムです!」
うん、知ってる。
「ぷるぷるひやひやで、抱っこすると気持ちいいんですよね〜」
ユイナは、そう言うと、野生のスライムに近づき、
しゃがみ込んだ。
「おいで〜怖くないですよ〜」
そーっと、手を伸ばす。
おいおい野生だぞ、危ないぞ。
「……ひゃぁ!」
ほら、噛まれた。
「なんで怒るんですかぁ!」
ユイナは尻餅をつく。
オーガだから、なかなか豪快な音がしたけど、スライムは離さない。
「もう、なにやってんのよ」
あたしは、スライムの頭のとんがりを掴むと、強引に、ユイナから引きはがした。
「噛まれましたぁ……」
「スライム歯ないでしょ」
言いながら、放り投げる。
それから、一応、ユイナの手を取る。
「……ケガないね?」
「はい!」
気をつけなさい、と、手を離す。
振り返ると、さっきのスライムが、こちらを睨んでいた
「お、おこってますよぉ……」
ユイナは、さっ、と後ろに隠れてしまう。
スライムにビビるなよ。
「ユイナの手が不味かったんじゃない?」
「姉さんが投げたからです!」
なんて、やり取りをしていると、スライムは、長く伸びて……
ゴム飛ばしの要領で、体当たりをしてきた!
「ん。」
なかなかの勢いだけど直線的すぎる。
片足を突き出して、それを受け止める。
「よっ」
そのまま、蹴りをくらわせる。
スライムは、白目を剥いて、雪の上へ吹き飛んだ。
「さすが姉さんです!」
ユイナが手を叩いて喜んだ。
スライム1匹でこの喜びようだと、こっちが恥ずかしくなる。
それから、倒れたスライムを見て、こう呟いた。
「……スライムって、スープになるんですよ」
え?食うの?
無言で見ていると、黙ってスライムを持って帰ろうとしたので、慌てて止めた。
「ロンダ岬に急ごう」
◇◆◇◆◇
ロンダ氷穴は、その名の通り、氷の洞窟だ。
中の寒さは、外のとは、一線を画す。
「うぅここは寒いですね〜……」
ユイナは、二の腕をさする。
2人して、裸同然の格好なのだから、当たり前だ。
「ロンダ岬は、この奥ですよ 寒いから急ぎましょう!」
寒さを凌ぐためか、ユイナは走り出してしまう。
「走ると危ないよ」
あたしが止めるのも聞かずに、ユイナは、1人で、少し広い空洞へと、入り込む。
すぐに悲鳴が聞こえた。
「きゃぁ!」
ユイナの元へ走る。
そこには、また、尻餅をついているユイナと、モンスターが1匹。
大きなトカゲ。
「め、メラリザードです!」
火をはく、小さなドラゴンだ。
けっこうカワイイけど、この辺りでは1番強敵だろう。
メラリザードは、大きく口をあけた。
そこに、小さいが、炎がまきあがる。
あたしは、ユイナと、メラリザードの間に、走り込み、
ユイナの代わりに炎をあびた。
「……っ」
「姉さん!!」
ユイナの悲鳴のような叫び。
けど、思ったより熱くない。
火をはいて、硬直しているメラリザードの顔を蹴りあげる。
渾身の力で蹴ったから、メラリザードの小さな身体は、壁に叩きつけられ、動かなくなった。
「大丈夫?」
それを確認してから、ユイナに振り返り、手を差しのべる。
「大丈夫ですか!?」
ユイナに、聞かれるのも同時だった。
「あんなんじゃ、ウィンナーも生焼けよ」
オーガは、火に対して強い耐性を持っている。
まったく、無傷とはいかないが、軽傷だ。
「動かないでください!」
ユイナは、あたしにそう言うと、傷のあたりに、手をかざした。
優しい光が、ユイナの手から放たれる。
「ホイミ!」
火傷をしていたのが、嘘みたいに、スーッと消えた。
ヒリヒリしていた痛みも、引いた。
「大丈夫ですか?」
すっかり治った腕を、さすってみる。
うん、痛くない
「大丈夫よ、ありがとう」
頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに、目を細めた。
オーガのミュスナも、よくこうしてあげてたのかな。
◇◆◇◆◇
それから何度か戦闘したけど、大きなケガはなく、目的地であるロンダ岬につくことが出来た。
元々鍛えられてた身体だから、どのモンスターも、素手で、というか蹴りで倒せた。
「ここが、ロンダ岬です」
なかなかキレイな場所だ。
景色に見惚れていると、ユイナが、見つけてくれた。
「あ、あれじゃないですか?ルーラストーン」
ユイナが指さした方向を見ると、岬の中央に、青い石が落ちている。
それを拾い上げる
「これがルーラストーン?」
宝石のような石で、なにやら呪文印のようなものが刻まれてるから間違いないだろう。
「はい。大切なものですから、無くさないでくださいよ〜」
あたしが無くしたんじゃないし〜と、思いながらも、
「わかったわかった。」
無くさないように、しっかりと、腰に結びつける。
と、その時だった。
なにか、聞こえた。
低い、うなり声のような。
「いま、なにか聞こえなかった?」
ユイナに聞くと、あからさまに、嫌そうな顔をした。
「や、やめてくださいよ、そういうの苦手なんです」
心霊的な意味合いで言ったんじゃないんだけど。
「そうじゃなくて」
岬の奥へと、進む。
すると、何重もの、木の板と、鋼の錠で、封印された空間があるのに気づいた。
「なにこれ?」
こういうのを見ると、ちょっかい出したくなるのが、人の性。
「ダメですよ。触ったら。」
ユイナが、制止する。
「この向こうには、悪鬼ゾンガロンっていう、こわーい鬼が封印されてるんですっ」
ふーん、って相槌を打ちながら、ユイナと、封印の向こうを覗き込む。
「……誰かいるわね。」
背丈からして、オーガの男性だろうか。
剣を持った後ろ姿が、見える。
「……ジーガンフさん?」
ユイナに、見覚えのある人物のようだ。
ということは、村の人か。
「なんでジーガンフさんが、ゾンガロンの封印場所なんかに……」
妙に嫌な予感を覚えた。
見てはいけないものだったかもしれない。
「行こう、バレないように」
見つかったら襲われるかもしれない。
「……はい……。」
ユイナは、少し納得いかないようだったけど、ついてきてくれた。
◇◆◇◆◇
村に戻ってみると、慌ただしい雰囲気だった。
あたしは、戻るなり、村の女性に、声をかけられた。
「大変なんだよミュスナ!戦えるものは、すぐに格闘場にいっておくれ!」
あたしは、ユイナに格闘場の場所を確認して、向かった彼女には、ここで待ってるように、すぐに戻る。
そう、伝えて。
もうすぐ初期村完結です!
がんばれオレ!まだ飽きるなよ!