ドラゴンクエストX 〜ワルキューレ〜   作:リョンさん

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狂王の凶行を阻止するも、街を追われる身となった、
ミュスナ。

そんな彼女を救ったのは、魔法戦士のオーガの青年だった。


第8話 妖剣士の塚へ

いつの間にか、眠っていたのか……。

暗かった空は、すっかり明るんでいた。

 

「目が覚めた?」

 

上体を起こすと、アルベールに声をかけられた。

ずっと、見張りをしてくれていたようだ。

 

「見張りありがとう……。君は寝たの?」

「少しね。」

 

と、言ってアルベールは、笑った。

目の下の隈を見ると、ウソだと分かる。

 

「……ウソは嫌いだ」

「う……、まあ、大丈夫だよ」

 

少しばつが悪そうなアルベールが、なんだか可笑しくてあたしは、少し笑った。

 

「あんま、無理するなよ」

「うん、ありがとう」

 

少し話すだけで、優しい人だと分かる。

お人好しで、巻き込まれ体質で。

 

「君みたいな人を勇者と言うんだろうな」

 

アルベールは、はにかんだ。

 

「たまに言われるけど、そんなんじゃないって」

 

よく笑う人だ。

皮肉屋で、ひねくれ者のあたしとは、正反対だな。

 

「さて、それより、これからどうするつもりなんだ?」

 

アルベールの質問に、あたしは、眉根を寄せた。

 

「それを困ってる。」

 

我ながら、取り返しのつかないことをしたもんだ。

嘆いても仕方ない。が、ため息が漏れる。

 

そこで、アルベールは、嬉しい提案をしてくれた。

 

「君さえ、良ければ一緒に行動しないか?」

 

向こうから、言ってくれるとは、意外だった。

願ったり叶ったりだ。

 

「喜んで。」

 

あたしの即答に、アルベールが微笑んだ。

それから、グレンに居た、理由を語ってくれた。

 

「俺がここに来たのは、魔法戦士の任務だからなんだ」

「まあ、バカンスをするには、少し物騒な街だしな」

 

だな。とアルベールが苦笑する。

「けど、げんこつアメとか、おいしいよ」

「へぇ」

 

好物なんだ、とアルベール。

生きてたら、ぜひ食べてみよう。

 

「さて、本題だけど。君たちには、俺の任務を手伝って欲しいんだ。」

「任務?」

 

アルベールが頷いた。

 

「バグド王の突然の乱心。そして、戦争。

俺が前にこの街に来た時は、こんなではなかった。」

 

神妙な顔で、アルベールが続けた。

 

「なにか、邪悪な思惑が、バグド王を操っている。」

「老害が蒙昧してるわけじゃないってことか……。」

 

君は、少し口が悪いな。とアルベールが苦笑する。

ほっとけ、とあたしは、唇をとがらせる。

 

「というのが、魔法戦士団の見解でね。

俺は、その調査、出来るなら解決を、しにきた。」

「なるほどな」

 

他国にまで話が伝わるほど、事態は深刻ということだ。このまま、放っておいたら、間違いなく戦争が起きる。

 

「戦争なんて、させるわけには、いかない。」

 

戦争が起きれば、もっとたくさんの人が、理不尽に死ぬ人が、簡単に、死ぬんだ。

 

あまりにも、あっけなく。あたしは、それをよく知ってる。

 

「出来る限り、協力する。」

 

アルベールが、微笑んだ。

 

「ありがとう。」

 

あたしたちは、対策を話し合うことになった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「魔法戦士団が見るに、首飾りが、怪しいらしい。」

 

確か、バグド王は、首に紫色の宝石の首飾りをつけていた。

 

「確かに、そんなの、つけてたな。

あたしには、そういうのは、分かんないけど」

 

この身体には、魔力が皆無なのかもしれない。

なんていうか、魔法を使えるようになる気がしない。

 

「わずかに、首飾りから邪悪な気配を感じたよ。

それが、なんなのかは、特定できないが……」

「ふむ……」

 

悪いが、専門外だ。魔物のニオイを辿って後を追うのとは、訳が違う。

 

「そのために、専門家と落ち合う予定だったんだけど、この有様ではな……」

 

それで、弁当が、2つあったのか。

あたしのせいで、解決が遅くなってしまうかもしれない

 

「ほとぼりが冷めたら、落ち合うさ。それまで、大人しくしてよう。」

 

手詰まりか……。

 

「……ごめんな。」

 

あたしは、また、謝ってしまう。

アルベールは、「君のせいじゃない。俺の責任だよ」と言ってくれたが……

 

なんとか、ならないものか

 

「あ、あの……」

 

途方に暮れた、そのとき、意外なところから、助け船が出された。

 

「おはよう、ユイナさん。ごめん、うるさかった?」

 

気遣いすぎる。さぞモテるんだろうな

ユイナは、ふるふると首を横に振る。

 

「わたし、けっこう呪いとかにも詳しくて、気になっていたんです」

「そんな方面にまで、オタクなんだな」

「オタクじゃないです!」

 

ユイナが、大きな瞳を精一杯つりあげて、睨んでくる。

 

「まあまあ。そのオタク知識が、活路になるかもしれないしさ。」

「ですからオタクじゃないです!!」

 

埒が明かない……。

ここは、いつもの、あれで行こう。

 

「ユイナ、詳しく聞かせてくれ。」

 

あたしが言うと、ユイナは、誇らしげに胸をはった。

なんとチョロい。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「あれは、人の理性を狂わせる類の、呪物です。」

「ほう?」

 

ユイナが人差し指を立てて、説明体勢に入る。

アルベールが、興味深そうに、聞き入る。

 

「人は、誰しも、心に凶暴性を秘めているものです。

あれは、そういったものを、引き出すんです。」

 

そうして、引き出されたのが……

 

「闘争本能……。」

 

アルベールが、静かに言った。

ユイナが頷く。

 

戦闘民族オーガの、本能だ。

 

「理性を狂わせた人に罪を犯させ、汚れた魂を死後に、自分のモノとする。

悪魔の呪物です。」

 

悪魔は、汚れた魂を集めるほど、チカラを増すという。理にかなった、アイテムだな。

 

「つまりは……魔族のしわざと。」

 

ユイナが頷いた。

 

つまり呪いを解けば、王は正気になり、あたしも、無罪放免となるわけか。

 

と、そこで重要なのは……

 

「対策は?」

 

呪いの解き方だ。

ユイナは、人差し指を立てる。

 

「説明しましょう!」

 

生き生きしてるな。アルベールも、苦笑している。

 

「悪魔の呪いを解くには、限りなく清い水を聖なる器に注いで、振り掛ける。が有効ですね」

「面倒くさいな」

 

手っとり早く、悪魔を倒すんじゃだめなの?と聞く。

 

「姉さんが悪魔だったら、安全なとこにいて、魂がとれるのに、わざわざ戦闘しに、出てきますか?」

「なるほど、おびき出さなきゃいけないんだな」

「ですっ。方法が無いわけではないですが、いずれにせよ、王に近づかなければなりません。」

 

それはだめだ。

 

「近づいたら最後、首と胴体がサヨナラだ」

「それに、手がつけられないレベルの悪魔が、出てくるかもしれませんしね。」

 

それは、少しワクワクするのは、オーガの本能だろうか

 

「つまり、器と、水を探す。ということでいいね?」

 

アルベールが、あたしたちの話をうまくまとめた。

ユイナが頷く。

 

「それらの場所は、分かるのかい?」

 

ユイナは、胸をはった。

 

「もちろんです。」

 

それから、文献によると、とか語り出した。

あたしが、静止する。

 

「待てユイナ。要点だけでいい。」

 

ユイナは、少し不満げに、唇をとがらせたが、要点だけをかいつまんで、言った。

 

「器である、『レムルの聖杯』は、この先です。」

 

行き先を、指で、指し示す。かなり、かいつまんだな。

 

「そして、水は、雲上湖と呼ばれる場所にあります。

こことは、正反対の場所ですね。」

 

器から、取りに行くんで、良さそうだ。

 

「よし、案内してくれ。ユイナさん。」

 

アルベールが立ち上がる。

行き先が決まったようだ。

 

「はい!」

 

頼りにされて嬉しいのか、ユイナは、元気よく返事して誇らしげに、先頭を歩き始めた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「聖杯は、この先、べコン渓谷の、妖剣士の塚と呼ばれる場所にあります。 」

 

グレン領西を、ユイナを先頭に、歩く。

魔物がいない方へ、うまく先導しながら。

 

「確実なのか?」

 

あたしの疑問に、ユイナは、自信満々に頷いた。

 

「レムルの聖杯は、もともと、ガートラントの宝物で、ある将軍の失踪を堺に、紛失してしまったんですよ」

「あぁ。それは、聞いたことがある。」

 

話の腰を折ったのは、アルベール。

そのまま、彼が続ける。

 

「べコン渓谷の奥には、骸骨の王がいて、聖杯を守っている、って話だよね?」

「ですです!」

「なんか御伽話っぽいなー」

 

胡散臭い、と、あたしが、言うと、アルベールが、補足する。

 

「将軍の失踪と、宝の紛失は、事実だし、レムルの聖杯の実物をみた、冒険者も、いるよ。」

 

頼もしい証言だが、1つ疑問が浮かぶ。

 

「なんで、そいつは盗らなかったんだ?」

 

ユイナが、納得の理由を述べた。

 

「骸骨剣士さんが強いってこと、ですかねぇ」

「一筋縄じゃ、いかないってことだね。」

 

それは、それでワクワクするな。

あたしは、すっかり、オーガ脳だ。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

べコン渓谷は、さらに過酷な環境の、谷間だ。

モンスターたちも、それに合わせて強力なものとなっている。

 

少し歩くと、洞窟がある、とユイナが言った。

 

「そういえば、アルベールさん」

「ん?」

 

先頭を歩くユイナが、歩きながら、振り返る。

転ぶぞ。

 

「お弁当、ごちそうさまでした!」

「あぁ。お粗末さまでした。」

 

お口にあったかな?とアルベール。

 

「すごく美味しかったです!!」

「ユイナに見習って欲しいくらいだな」

 

ユイナの料理は、豪快すぎる。

あれを、料理と呼んでいいのだろうか。

あれは、焼いた。煮た。というやつだろう。

 

に、比べて、アルベールの弁当は、家庭の味、という感じだった。

 

アバの料理を思い出す。少し、切なくなる。

 

「姉さんうるさいー。

……どこのお弁当なんですか?」

「俺が手作りだよ」

 

趣味の範囲で、だけど、料理職人をしている。とアルベール。

 

「料理できるんですか!?」

「かじった程度だよ」

 

食いつきがいい。そういえば、ユイナは、よく腹を鳴らしているな。

 

「わたしも習ってみようかな〜

……あっ」

 

ほら。鳴った。ユイナのお腹。

 

「舐めるかい?」

 

アルベールが、懐から、げんこつの形のアメを取り出した。

ユイナは、うつむきがちに、受け取る。

 

「……いただきます。」

 

それから、あたしに、向き直る。

 

「お姉さんも。」

 

げんこつアメをくれる。

 

「お、ありがとな」

 

ちょーど腹がすいてた。ありがたくいただこう。

妖剣士の塚まで、もうすぐだ。

 

それから、何度か戦闘があったけど、無事、あたしたちは、たどり着くことができた。

 




げんこつアメって、なんとなく醤油の味がしそうですよね。
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