「で、結果この面子か」
俺の目の前には指名した、左陣と喜助の二人が立っている。というより、この二人以外に呼べる人材がいなかった、というのが実際のところか。
「室長、拙者程度の腕では足手まといになるのではないでしょうか?」
「左陣、心配しすぎだ。君の実力は副隊長にも届き得るんだ、過度な謙遜はあまり感心しないぞ」
「……はっ」
左陣は優秀なんだが、どうにも自信が足りないんだよな。その辺がどうにかなれば一皮剥けるんだろうが、それは焦ってどうにかなるもんじゃないか。
「それと二人ともマントなり何なり防塵用の装備を用意しておけよ、向こうは砂漠だからな」
「一応試作品を用意しておきました」
喜助が何処から取り出したのか、三人分の外套を差し出してきた。何か特殊な繊維で編まれたものらしく、殺気石のように霊子を遮断する外套のようだ。これなら、虚は目視しない限りこちらを認識できないな。
「なるほど、こりゃ便利だ」
「ただ、霊子遮断は瞬歩や
「十分だ。何匹かにバレる分には問題ないからな」
あの骸骨爺に目をつけられなければ問題ない。
基本的に
「室長、で何か心掛けておく必要のある事はございますか?」
「
「正面ですか?」
「ああ、俺も極力気をつけるが、射線上に入られると巻き込んでしまうからな」
というか、百年前なら加減ができたかもしれないが、流石にブランクが長すぎるので加減できる自信が全くない。
「それじゃあ、さっさと行って終わらせるぞ」
俺は虚空に手を翳して虚としての霊圧を放つ。すると、ミシリと空間が軋む音と共に真っ黒な裂け目のような物が現れた。これが
「足場は霊子で自分で作れよ。落ちても死にはしないだろうが何処に行き着くかは知らんし、わざわざ拾いにもいかないからな」
「了解ッス」
「はっ!」
二人とも流石というべきか、初めてである霊子による足場の構築を難なくやってのけている。それも随分としっかりしたもので、殆ど乱れる事の無い一本の道だ。
「ところで、アンヘルさん」
「なんだ」
「尸魂界に戻ってからでいいんですが、黒腔を解析させて貰ってもいいッスか?」
「構わないが、そう何度も開いてやる事はできないぞ。最悪、開いた拍子に
黒腔は
「そろそろか……二人とも出た先が虚の群れって場合もある。斬魄刀の用意はしておけよ」
二人は斬魄刀を抜いて、霊圧を込めた。それとほぼ同時に俺たちは黒腔を抜け、二度と来る予定のなかった俺の故郷に到着した。
「いやー本当に何も無いッスね」
「言っただろ何も無い砂漠だって」
てっきり、到着と同時に虚の群れとの遭遇戦があるかと考えていたが、そんな事はなく気味の悪い程にアッサリと調査開始となった。
「しかし、室長。この広大な砂漠の中から手掛かりを探すとなると、流石に不可能ではないでしょうか?」
「いや、そこら辺の虚を捕まえて聞き出せば多少手間は省ける」
「ほ、虚を!?」
「何を驚いているんだ、左陣。虚だって言葉は通じるし知性もあるんだ、地元の事を聞くなら地元住人に聞くべきだ。数発殴って力を見せればいう事を聞くからな、虚は」
というより、ハッキリ言わせてもらうと虚の方が人や死神より話は通じる。人同士の交渉には地位や権力といったものが重要になり、そもそも交渉の席にすらついてもらえないという事が多々ある。しかし、虚の交渉は強者が弱者に対して要求するだけだ。つまり、力さえあれば死神でも虚を黙らせ、自分の意思を完全に通す事ができるという事だ。
それが良いか悪いかは別として、少なくとも普通の交渉よりは手間はかからない。そして、手っ取り早く要件を済ませられる。
「あ、あまりにも乱暴ではないでしょうか?」
「それが
「は、はぁ……」
「まぁ、殴らなくても霊圧を見せれば済むこともあるから、そこまでの心配はいらんよ」
というわけで、俺たちは近くにあった虚達の住むコロニーを探す事にした。
虚も常に戦っている訳ではなく、弱い虚や傷付いた虚が寄り集まって、集団として外敵から身を守ることで生きている奴らもいる。奴らはこちらから手を出さなければ、基本的にこちらに害をなす事はない。そういう奴らが集まっているコロニーは
そこを幾つか探せば多少なりとも情報は集まり、手掛かりをつかむ事ができるはずだ。情報の真偽に関しても、集団でしか生きる事のできない虚達にとって、周辺にどんな虚がいるのかというのは文字どおり命に関わる事なので手抜きや嘘はない。
「アンヘルさん、あそこッスか?」
喜助が何かを見つけたらしい。彼の指差す方向を見ると、遠くに山のような建物があった。
「ああ、あそこには多くの虚がいる。さしあたって、まずはあそこで情報収集だ」
俺がそちらに足を向けた瞬間、俺の足元からイソギンチャクのような触手に覆われた口が現れた。
「室長!」
左陣はそれを見て斬魄刀を抜き放ったが、俺はそれを慌てて手で制する。ここで左陣の天譴を振るわれると、間違いなく俺が巻き添いを食らう。
「イタダキマス」
足元で勝利宣言をしている触手の持ち主に、俺は背中の斬魄刀を引き抜いて切っ先を向ける。
「左陣、喜助、瞬歩でここから離れろ。『結晶虚閃(セロ・クリスタリサシオン)』」
剣先から真っ白な光が奔り、地面に隠れていた虚諸共に地面を盛大に吹き飛ばした。爆発によって巻き上げられた土煙と虚閃の熱によって砂が変質したガラスの欠片が舞い上がって、足元にいた虚の姿は確認出来ないが、少なくとも死んだかその寸前まではいったんじゃないだろうか?
結晶虚閃なんて気取った名前はついているが、要するには速度を馬鹿みたいに上げて撃った、ただの虚閃だ。名前の由来は
「ア……ア……」
「ん?生きてたか……すごい顔だな、おい」
左半身が消し飛び、残りの右半分も一部炭化しているが俺を喰おうとした虚は生きていた。その虚の真っ黒な身体の様子から察するに最下級
しかし、最下級
「おい、君」
倒れている
「コ…コ…コロサナイデ」
「じゃあ、喋れ。この周辺で死神か何かと出会った事は?」
「……アリマセン」
「本当か?」
「じゃあ、用済みだ」
「マ、マッテ、マッテクダサイ!」
「何か俺にとって役立つ情報を君は持っているのかな?俺が自分を殺そうとした相手を許してやろうと思うくらいの価値がある情報を、君は持っているのかな最下級
「ハ、ハイ、ココカラ北ニアル洞窟二《中級大虚《アジューカス》》ヲ従エタ人影ヲ見タト聞キマシタ」
人影に中級
「まぁ、いいだろう」
俺は怯える
「俺が言えた口じゃないが、世の中妙な虚もいたもんだ」
「良いのですか、室長」
左陣と喜助は無事に離脱していたらしく、無傷のままに俺の背後に現れた。
「なにが?」
「先程の
「いいんじゃないか。多少は役に立つだろう情報はくれたんだ、命は助けてやるべきだろ。それに一度結んだ契約に対しては真摯に対応するのが俺の矜持だ、可能な限りそれには反したくはないんでな」
「そうですか」
左陣は斬魄刀から手を離し、それと同時に彼の背後に浮かび上がっていた巨人の腕も消えた。
「さて、それじゃ、その
十中八九外れだろうが残りの一か二が出るか、次の手掛かりが得られることを期待して頑張るとしよう。
次回からヒロイン登場です
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