どうも、護廷十三隊一番隊直轄財務監査室室長です   作:三角頭

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あの服のデザインはいったい誰が考えたのでしょうか?


外を歩くときは、ちゃんとした服を着てください

「で、代表者の君に聞いておこう。全員、この場で大虚のまま死ぬのと、死神の実験台にされて俺と同じ破面(アランカル)になって生きる、どっちがいい?俺としては前者をお勧めする」

 

  虚の虚化という何を言っているのか意味不明の状況を打破するには、大虚達に魂のそのものを進化させる必要があり、その為には崩玉によって破面(アランカル)化させる必要がある。

 

「その前に一つよろしいでしょうか?」

 

「手短にしてくれ。君が思うほど、君たちの状況は余裕はないんだからな」

 

「その剣は貴方自身のものですか?」

 

「当たり前だろ?最上級大虚(ヴァストローデ)の頃から使い続けているんだからな」

 

「……そうですか。ありがとうございます、アンヘル様」

 

「そりゃ結構……ん?俺はまだ君に名乗った覚えはないんだが?」

 

「それは……ぐっ!?」

 

「言わんこっちゃない。さっきの質問は撤回だ、なんで俺の名前を知っているのかを聞くためにも破面(アランカル)化させてもらうぞ」

 

  俺は懐から崩玉を取り出し、喜助に言われた通りに霊圧を込める。すると、中の青い炎のようなものが揺らめき、薄く輝きを放ち始めた。

 

  が、早速問題発生だ。崩玉の起動に必要な霊圧が俺の想定より格段に多い。

 

「何が隊長格の倍だ……そんなもんじゃ足らねぇじゃねぇか!」

 

  それどころか、崩玉の方から俺の霊圧を吸い上げているじゃないか。しかも、加速度的に吸い上げられる霊圧が増え、根刮ぎ俺の霊圧を喰らうつもりらしい。やっぱり、最初に崩玉を見た時に感じた不気味さは正解だったな。

 

「いや、冗談抜きで……割とヤバい……意識……が……」

 

  何かが砕ける音は聞こえたと同時に、俺の意識はプッツリと途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  俺が虚圏(ウェコムンド)で倒れてから数日後、目を覚ますと俺は尸魂界(ソウルソサエティ)に帰ってきていた。あの後、何をどうやったのかは知らないが俺は瀞霊廷の病室に運び込まれたらしく、運ばれてから目覚めるまで点滴やら訳の分からん薬やらで霊力を回復させられたそうだ。俺を診てくれた烈さんが言うには、俺が運ばれるのが数時間遅れていたら霊子になって消えていたそうだ。

 

  で、ようやく意識を取り戻し、一人で起き上がれるようになった頃の事だ。頬を腫らした喜助が色々な書類を抱えて、俺のいる病室を訪ねてきた。

 

「今回は本当にすみませんでした。完全に僕のミスです」

 

  出会って一発目の会話が、深々と頭を下げてからの謝罪だった。

 

「あー……色々と文句を言うつもりではあったんだが、その辺りは左陣がやり終えているみたいだから、もういいよ」

 

  普通なら特に気にしてない的な事を言うべきなんだろうが、こっちは本当に死に掛けたのだから多少は毒を吐かせて欲しい。

 

「あはは……盛大に拳骨を貰いましたよ。お体の方は如何ですか?」

 

「絶賛絶不調だが、まぁ食って寝てれば治る範疇だ」

 

「それはそれは……」

 

「で、色々と聞きたいことはあるんだが、まずどうやって帰ってきたんだ?」

 

「それはハリベルさん、アンヘルさんが破面(アランカル)化した最上級大虚(ヴァストローデ)の方が黒腔を開いてくれたんです」

 

破面(アランカル)化には成功はしたんだな、結構結構」

 

  折角死に掛けたのだ、助かってもらわなければあまりにも甲斐のない話じゃないか。

 

「で、破面(アランカル)化したのは兎も角、処遇はどうなったんだ?」

 

「それですが、ハリベルさんはアンヘルさん同様に斬魄刀を封印した上で、他の方はそのままで四名ともアンヘルさんの下で働くことになりました」

 

「よく通ったな、それ」

 

「あはは……いや、色々大変でしたよ。けど、ハリベルさんが基本的にこちらの要求をほぼ全て通して下さったので、解決自体はあっさりでしたよ。他の三人もハリベルさんに続く形でこちらの要求を呑んでくれました」

 

「結構結構。で、その書類はウチで預かる為の配属手続きみたいなものだな」

 

「はい、署名の方をお願いします」

 

  喜助から渡された俺の万年筆を受け取り、渡された書類に同意の署名を書いていく。そこで各々の身体データや能力などの簡単な説明があったのだが、そこで一つ疑問が浮かんだ。

 

「こいつら、超速再生を失ってるのか?虚なのに?」

 

  確かに俺も最上級大虚(ヴァストローデ)時代に比べれば超速再生の性能は落ちているが、少なくともちょっとした切傷やらは霊力に余裕があれば一瞬で再生できる程度には残っている。性能の程度に差はあるだろうが、どの個体も多少は残るんじゃないのか?

 

「調べてみたところ、崩玉で破面(アランカル)化した場合は、アンヘルさんのように自力で破面(アランカル)化した場合よりも魂が死神に寄るようで、余程特殊な虚でもなければ超速再生を失うという結果がでました。しかし、死神に寄って力の制御が上手く行われているのか、アンヘルさんと違って斬魄刀を持たない状態の戦力低下がある程度抑えられているようです」

 

「養殖と天然の差ってところか?」

 

「そうですね、戦闘に特化しているか汎用性に秀でているか、という意味ではその例えが正解ッス。とはいえ、斬魄刀がない状態ですとハリベルさんも隊長格が相手をすれば十分に対処できますんで、ギリギリですがアンヘルさんと同様の扱いということで通せました」

 

「そりゃ結構、トカゲ野郎に関しては?」

 

「そちらはサンプルが手に入ったこともあり、色々と分かったことがありますが……ちょっと長くなりそうなんで、アンヘルさんが退院なさってから、後日資料を含めてお渡しします」

 

「分かった。ほら、署名は終わったぞ……それはそうと、部屋の前にさっきからいるやつ、いい加減入ってこい」

 

  俺は書類と万年筆を喜助に渡し、ドアの向こうに立っている人物を呼びつける。

 

「……失礼します」

 

  件のハリベル ティアがドアを開けて入ってきた。彼女にも色々と聞かなければならない事はあるんだが、彼女の姿を見て色々と考えが吹っ飛んだ。

 

  基本的なデザインは俺の死覇装と同じで、変更点として仮面を隠す為に口元を覆うように延長された襟があるまではいい。ただ何故に裾が胸の上半分で途切れているんだ?加えて、下の部分もスリットと言うにはあまりにも大きすぎる切れ込みが入り、太もも部分が完全に露出されている。

 

  ……正直、警邏部隊に捕まりかねない格好だ。

 

「あー……喜助、褐色の女性は総じて露出癖があるのか?」

 

「あはは……一応断っておきますが、デザインはハリベルさんご自身のものッス」

 

「ああ、君がそれをやっていたら今すぐ夜一さんに通報して瞬閧の実験台行きだ」

 

「私に何か不備が?」

 

「あー……一応確認しておくが、それを正装にするつもりかな?」

 

「……?そのつもりですが?」

 

  OK、おさらいだ。彼女はこちらに来たばかりの素性の知れない破面(アランカル)。そして、俺はそれの監視と監督を行う人物。つまり、彼女の一挙手一投足に対しての責任と事によっては取り締まる義務がある。平たくかつ大雑把に言えば、俺は彼女に対しての生殺与奪の権利を持っている。

 

  つまり、客観的事実だけを見れば、男である俺に生殺与奪を握られた女性が露出狂めいた格好をしているという事だ。これを何も知らない第三者が見ればどうなるか?言うまでもない、俺が社会的に終わる。

 

「喜助、今すぐ腕のいい仕立屋を呼んでこい。君が呼んでくる間に俺は大まかな服のデザインを考える、いいな?」

 

「あの、アンヘル様?」

 

「少し後にしてくれ、俺の人生を大きく左右する事態なんだ。君のその格好では色々とマズい」

 

「私の服装が問題ですか……分かりました」

 

  何をトチ狂ったのかハリベルは 上着のジッパーを外そうとし始めた。

 

「ふっざけんな!君は恥じらいとかないのか!?」

 

「いえ、虚は元来服など着ませんので。それに我が身を恥じるような生温い鍛錬は行っておりませんので」

 

「今の君は破面(アランカル)だ!そして、恥の方向性が完全に夜一さんと被ってやがる!いいから脱ぐな!ちゃんと服を着るまでこの部屋から出るな、いいな!」

 

  どうして褐色肌の女性には、こう、ボディービルダー的な具合に肉体美を晒そうとするんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「色々と遅れてしまったが、ようやく君に質問できるな」

 

  喜助の連れてきた仕立屋に服のデザインを送りつけ、値段交渉を終えてひと段落ついてから、俺はハリベルに対して話を切り出した。

 

「なんで、俺の名前を知っていた?」

 

虚夜舎(エスクエラ)をご存知ですね?」

 

「っ!?」

 

「私は中級大虚(アジューカス)の頃にそこにいました。それが私が貴方を知る理由です」

 

「生き残りがいたのか……」

 

「はい、あの日は私が見回りの当番でしたから……」

 

  俺たちは二人はそれきり黙ってしまった。どうがんばったところでこの話は世間話にしては重く、胸糞悪くなる話にしかならない。それにいくら話の内容が同じだからといって、誰だって好き好んでトラウマをほじくり返す趣味はない。

 

「……君以外に生き残りはいないのか?」

 

  戯言だ。彼女に聞くまでもない問いだ。

 

「貴方と私以外には誰も……」

 

「だよな。しかし、なんでまたこっちに来た?俺を送ってくれた事に関しては礼を言わせてもらうが、尸魂界(ソウルソサエティ)に居座る必要はないだろう?」

 

「貴方への御恩に報いたいという事が一つ、もう一つは個人的な敵討ちです。尸魂界(ソウルソサエティ)の何処かにいるのでしょう、アルトゥロ プラテアドは」

 

  ……なるほど、そう来たか。そりゃ、自分の住んでいた家を壊されて、家族みたいな奴らや恩師を皆殺しにされたんじゃそうなるのも仕方ないか。

 

「だが、あいつは今封印されている。敵討ちは結構だが、君の独断で封印を解くことは許さないぞ」

 

「分かっています。ただ、万が一封印が解けた場合は」

 

「いいだろう、好きにするといい。少なくとも、君にはそれを行うに足りるだけの権利はあるからな」

 

「はい。それでは、失礼致しました」

 

  ハリベルは一礼してから、俺の病室から出て行った。

 

虚夜舎(エスクエラ)……か」

 

  ベッドにもたれながら俺はため息まじりに呟く。どうにも過去というのは中々に清算できず、忘れようとした頃にふらりと顔を見せるものらしい。

 

  しかも、それが若さゆえの無知と無謀でやらかした失敗というのものならば軽く死にたくなるな。

 

「ほう、おぬしのそういう表情は初めてみるのう」

 

「そこは黙ってクールに去るもんじゃないんですか、夜一さん」

 

  天井に隠れていたらしい夜一さんは僅かに空いた窓から部屋に入り込み、ベッドの上に音もなく着地した。

 

「わしがそういう輩でないことくらい、とっくに承知しておろう。さて、虚夜舎(エスクエラ)とはなんじゃ?」

 

「はぁ……それを思い出してへこんでる奴に、その内容を話せっていいますかね、普通?」

 

「なに、苦労ついでという奴じゃ」

 

「……分かりましたよ。大したオチのない話ですが、暇つぶしを兼ねて語りましょう」

 

 




次回から2,3話ほど過去の話が始まります

またアンケートがございますので、活動報告のほうをちらりと見ていただければ幸いです

ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております


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