どうも、護廷十三隊一番隊直轄財務監査室室長です   作:三角頭

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AAを貼りたくなったのは内緒です


恥ずかしくても、決めポーズはしよう

  新聞で確認した通り本日は夜も快晴、雲一つない空に満月が輝く夜空を眺めながら酒を飲んでいると、不愉快極まりない霊圧を感じた。同時にポケットに入れていた伝令神機が震え、俺の予想は確信に変わった……最悪、我ながら露骨に不機嫌な表情を浮かべているのが分かる。

 

 

「もしもし」

 

「アンヘル室長、業務連絡です。大虚が流魂街郊外に出現。至急、現場に向かってください」

 

「規模は?」

 

最下級大虚(ギリアン)です」

 

「俺の斬魄刀は?」

 

「申し訳ございません、総隊長から許可は下されておりません。現戦力での対応を」

 

「了解」

 

  俺は返事と共に通話を切ってから、杯を床に置いて腰を上げる。そして、周囲を見回して額の角を隠せそうなものを拾って頭に被った。

 

「ちょっと、それ僕の笠」

 

「あとで返すから、借りるぞ」

 

「ちゃんと返してよ?」

 

  俺によって笠を奪われた春水は不満そうにこちらを見たが、これが無ければ色々と面倒な事になるのだから勘弁してくれ。

 

  現場までは……瞬歩でいいか。響転じゃ、こっちに気付かず居住区に突っ込まれかねん。響転の方が慣れてはいるんだが、俺個人の感想としては瞬歩の方が若干速いし何かと便利なんだよな。

 

「まっ、何事も使い分けが大事ってことで」

 

  それじゃ、足に霊圧を集中させて……

 

「し、室長!?」

 

  急に左陣に呼び止められたので、思わず前のめりにコケかけた。呼び止めるにしても、もう少しタイミングをどうにかしてもらえないだろうか?

 

「……なんだ左陣、用があるならできれば簡潔に頼むぞ」

 

  下手に遅れれば、大虚の足止めをしているであろう二番隊に被害が出るだろうし、俺の方への苦情もくる。

 

  そして、その流れから夜一さんからの襲撃が増えてしまう。最悪、今からこっちに来かねない。それはできれば、いや、確実に防がなければならない。

 

「斬魄刀を持たずに大虚と戦うのですか!?」

 

「あのな……報告にあったのは最下級大虚(ギリアン)、俺は元最上級大虚(ヴァストローデ)。隊長格と一般隊士くらいの差はあるんだ、マトモにやっても負けはないよ」

 

「ですが……」

 

「いいんじゃないか、アンヘル。彼も連れて行ってあげるのはどうだろう?」

 

  十四郎は何の気なしにそんなことを言った。頼むから焚きつけるな、特に左陣はそういうのに弱いんだから。

 

「また俺の仕事が増えるのか……左陣、仮に付いて来るにしても自分の身は自分で守れよ」

 

「はっ!」

 

「春水、肉は俺の分も残しといてくれよ」

 

「はいはい、任せといて」

 

  肉を春水に任せ、俺と左陣は瞬歩で現場に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「状況は?」

 

  連絡されていた地点は鬱蒼とした森の中で、機動力が著しく削られる場所だった。そんな中、現場に到着した俺たちは、近くにいた隠密機動を捕まえて状況説明を求める。

 

「こちら側に最下級大虚(ギリアン)が出現した形跡は確認できたのですが、本体の霊圧や形跡などが発見できていない状況です」

 

「待て、なんで最下級大虚みたいな馬鹿でかい奴を発見できないんだ?」

 

「申し訳ございません。ただいま鋭意捜索中ですので、しばしお待ち下さい」

 

  これは妙な話だ。小隊規模の人数しかいないとはいえ、大虚絡みの案件であれば相応の精鋭部隊のはずだ。それが最下級大虚(ギリアン)の痕跡すら発見できず、霊圧すら探れていないというのはちょっとした異常事態だな。

 

  と、なると、この状況は大体二つのオチしかないってのがお決まりだ。

 

  一つは最下級大虚(ギリアン)出現ってのがそもそも誤報で、実際は小型虚が何匹か紛れ込んだだけというパターン。こちらの場合、俺はこのまま帰っても問題ない。その程度は隠密機動の精鋭部隊であれば片手間の内に処理するだろうし、俺が出張れば不必要な被害が出るだけだ。

 

  もう一つは最下級大虚(ギリアン)じゃない大虚だって場合だ。こいつは最悪だ、本当に。その場合の相手は自分の霊圧を覆い隠す術を持ち、隠密機動にも発見できない程の隠蔽工作ができる奴ってことになる。

 

「理想は前者なんだろうが……後者だろうな」

 

  俺の愚痴に応えるかのように、少し離れた場所から血の匂いが漂ってきた。

 

「……」

 

  流石は精鋭、仲間の死にも動じず状況判断に徹するか。

 

「左陣、可能な限り俺から離れるな」

 

「いえ、自分の身は……」

 

「そうじゃない。下手に離れられると、俺の攻撃に巻き込まない自信がない」

 

「……了解しました」

 

  左陣は俺の背後に付き、周囲の気配に神経を尖らせ始める。

 

「君らは今すぐ周囲を包囲できる増援を呼びに行け。対象の逃亡を阻止、俺の霊圧が外部に漏れないように結界を張れ」

 

「御意」

 

  精鋭の一人は俺の指示に従って瞬歩で場を離れ、森一帯を囲むための増援を呼びに行った。彼も今の状況が連絡通りのものではない事を察したようで、こちらの指示に従うべきだと判断したらしい。

 

  はてさて、命令したからにはこっちはこっちで片付けるしかない訳だが、どうやって探し出したものか。

 

  とりあえず、さっき名も知らぬ隠密機動が殺されたであろう場所を中心に探すか。

 

  俺が血の匂いのする方向へと足を向けた瞬間、耳元で風を切る音が響き、咄嗟に首の辺りに手をやって急所を守る。その行動は正解だったらしく、俺の鋼皮が何かを弾き火花を散らせた。手に当たった感触から相手の獲物は爪、本数はおよそ五本、筋力は死神より僅かに上ってところか。

 

「室長!」

 

「分かってる!」

 

  俺はもう片方の腕で俺に襲い掛かった虚を捕まえようとするが、その瞬間に俺が捉えた虚の姿は何から何までおかしかった。

 

  鱗と尻尾のないトカゲの様なツルリとした外見、腕は片腕だけが異常なまでに筋肉が発達し、もう片方は赤子ほどに小さくか細い。そして、仮面は一面真っ白、牙や角をどころか目すらない。

 

  しかも、その姿はまるでノイズが走っているかのようの一部が不可視になっている。

 

「何から何まで気持ち悪いんだよ、このトカゲ野郎っ!」

 

  驚きこそしたものの、俺はトカゲ野郎の首を掴み、そのまま躊躇うことなく握りつぶした。この手の奴はどんな手を打ってくるのか想像できないからな、すぐに殺すのが得策だ。

 

「さて、物凄く気味の悪い相手だったが、何とか片付いたか」

 

  俺は握り潰した時に付いた血をハンカチで拭きながら、さっさと帰る準備を整えるとしよう。できれば手洗い場でも近くにあればいいんだが……

 

「室長、まだです!」

 

  左陣の叫びと共に、空から馬鹿でかい剣が俺の背後の目掛けて降ってきた。俺は慌ててその場を離れて、近くにあった木の上に着地する。

 

  さっきの剣は左陣の斬魄刀か……確か自身の攻撃に連動させて、巨大な剣や拳を放つ斬魄刀で名は天譴だったか。で、なんだってそんなもんが俺の後ろで発動したんだ?

 

「なんだ、左陣!」

 

「まだです。まだ生きています!」

 

  斬魄刀を地面に突き立てている左陣は、必死にその斬魄刀を押さえ込んでいる。彼の斬魄刀は彼の動きに連動して発動するのだが、デメリットとして逆に天譴の動きに左陣の動きが連動させられる場合があるのだ。つまり、彼が必死に斬魄刀を押さえ込んでいるのは、天譴の剣が押し除けられかけているという事だ。

 

  そして、天譴の剣の先にあったものは俺が殺したトカゲ野郎のいた場所。

 

「なん…だと……」

 

  土煙が晴れて、天譴の剣を受け止めていた奴の正体は案の定トカゲ野郎だった。しかも、首がない状態の。今まで色々な虚は見てきたつもりだが、首無しで動ける虚など見たことも聞いたことがないぞ。

 

「気持ち悪いのはその外見だけにしとけ!」

 

  今にも天譴の剣を弾きかねないトカゲ野郎の手足目掛けて、虚弾、つまりは霊圧を固めた弾丸を両手から発射する。速度重視の攻撃なので致命傷にはならないだろうが、並みの虚なら殺せる威力の弾丸をだ。手足にダメージを与えて体勢を崩すくらいはできるはずだ。

 

  が、事態は予想の斜め上をいった。俺の虚弾はなんの抵抗もなくトカゲ野郎の手足を吹き飛ばし、トカゲ野郎はそのまま天譴の剣に両断された。普通、どう考えても即死だ。

 

「死んでないよな、絶対」

 

  首を千切っても生きてるんだ、胴体切断で殺しきれる気がしない。

 

  それでも、トカゲ野郎の特性は何となく掴めた。あいつはその霊力の殆どを再生能力に割り振っているのだろう。でなければ、まだ生きている理由に説明がつかんし、あの能力に見合わないひ弱さにも納得できない。あれだけの能力を持っているのならば、普通は初手の引っ掻きで俺の鋼皮が多少の傷を負っている筈だ。

 

「その考えでいくなら、殺すには欠片一つ残さずに消さなければならないってか」

 

  こんな事なら総隊長に言って斬魄刀返しといて貰うんだった、などと後悔しながら俺は木から降りる。

 

「左陣、そこから動くなよ」

 

「はっ!」

 

  俺は左陣の前に立ち、腕を掲げて指を天に向かって指す。これに意味があるかどうかは知らないんだが、本に載っていた以上やった方がいいんだろう。……割と恥ずかしいんで嫌なんだけどな。

 

「滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器、湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる、爬行する鉄の王女、絶えず自壊する泥の人形、結合せよ、反発せよ、地に満ち己の無力を知れ」

 

  トカゲ野郎の胴体は既に繋がり、立ち上がってこちらへと飛び掛かろうとしている。切断から十秒も経っていないにも拘らず臓器や骨格を再生し、戦闘可能な状態にまでなるというのは本当に異常だ。このまま放っておけば、隊長格相手に対等以上の戦いができる虚になるだろう。

 

  それでも、今の性能じゃこれで終わりだ。

 

 

「破道の九十 黒棺」

 

 

 

 

 




鬼道に関しては虚化したハッチが撃っていたので、破面でも撃てるんじゃないかと妄想した結果こうなりました

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