どうも、護廷十三隊一番隊直轄財務監査室室長です   作:三角頭

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破面の能力の有効利用法を考えてみましたが、独自設定なのでおかしな所があるかもしれません






事務職でも、護身術は学ぼう

 ギラついた日差し、雲一つない空、外出どころか日向にすら出たくない炎天下。そんな中、流魂街(るこんがい)を歩く二つの影あった。

 

「はぁ……何だって俺がこんな事を」

 

「これもアンヘル室長の日頃の行いの賜物でしょう」

 

  俺と左陣だ。

 

  どうにも、左陣は俺の言葉を誤解しているようだ。確かに俺のような存在が、昼間から流魂街(るこんがい)を歩いているのは中々にぶっ飛んだ事で、それは何だかんだ百年の間真面目に働いた努力の結果なのだろう。だが、それが自由行動でもなく、単なる広報活動ってのはあまりにも締りのない話じゃないか。

 

  総隊長からの命令で、未来の優秀な死神を探す羽目になっているのだ。何故俺たち、というより俺が選ばれたのかというと、破面(アランカル)の持つ探査回路(ぺスキス)がそれに向いているからだそうだ。

 

  俺は死神ではないのでよく分からないのだが、死神の霊圧探査とは違い、探査回路(ぺスキス)は相手が霊圧を放っていなくても一定以上の霊力を持っていた場合、問答無用で発見する事ができるそうだ。一応、霊圧探査に長けた死神にできる、個々の性質までは探査回路(ぺスキス)では見抜けないという欠点はあるが、とりあえず見つけるという意味では探査回路の方が優秀だといえる。

 

  喜助曰く、探査回路(ぺスキス)は虚の霊力の高い魂を求めるという本能が転じたもので、要は腹を空かした豚が地中のキノコを嗅覚で探り当てるようなもの、だそうだ。それを聞いた俺が、無言で喜助を一発殴ったのは仕方のない事だ。

 

「よりにもよって豚はないだろ、豚は」

 

「室長?」

 

「なんでもない、単なる愚痴だ。……とりあえず、こっちか」

 

  俺は頭にスイッチを切り替えて、探査回路(ぺスキス)が反応した方向へ向かう。まずは一番遠く、一番大きい反応のある場所から始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「室長、ここは……」

 

「北流魂街80地区 更木だが、それがどうした?」

 

「この様な場所に優れた死神の素質の持ち主が?」

 

「ああ、十中八九、人間性に問題ありの人材だろうが……隊長格になり得る素質の持ち主がいる。というか、これ、人間か?」

 

  明らかにここにいるであろう件の人物の霊力は尋常ではない、いや、異常という方が正しい域だ。流魂街一の治安の悪いここにいる段階で、人格的な期待はできないが問答無用で切り掛かってくるタイプではない事を願うばかりだ。

 

  こんな所で命のやり取りなぞしたくもないし、本心を言えばこの手の霊力の持ち主とは相対すらしたくない。というか、蛇の道は蛇ってことで、あの人を呼んできてどうにかしてもらった方がいいんじゃないだろうか。

 

  ……いや、やめておこう。確実にロクな事にならん。それにそもそも、俺はあの人が苦手だ。普段はともかく、その気になったあの人の顔がどうにもチラついて仕方がないのだ。

 

  軽くトラウマを思い出しながら、俺は重い足取りのままに左陣を連れて、更木の奥へと向かう。道中、何人かのゴロツキに絡まれたが、全て左陣が頭を引っ掴んで投げる事で黙らせた。

 

  何人か死神の素質のある奴はいたが、そう何人も何人も荒くれ者相手に宣伝などしたくはないので、今回は無視させてもらおう。もっとも、素質のある奴は一応武器を持っていない俺に対して剣を向けず、左陣の方へと突っ込んでいった辺り、ある程度の道理は弁えているらしく荒くれ者と括るのは失礼かもしれないな。

 

「室長、この霊圧は……」

 

「な、少なくとも素質はあるだろう?」

 

「……ええ」

 

  まだ距離はあるのだが、結構な霊圧がこちらにバシバシと当てられている。しかも、こちらを意識せず、単に垂れ流している霊力がここまで霊圧になっているのだからたまったものではない。

 

  左陣は半ば無意識の内に、自分の腰の斬魄刀に手をかける。用心の意味合いもあるのだろうが、どちらかと言えば本能的に危機を察知したという方が正確か。

 

「左陣、落ち着け。今回は殺し合いに来たわけじゃない、そう身構えるな」

 

「……はっ」

 

  まぁ、相手側はどういうつもりかは分からんがな。

 

「さてと、それじゃ、お仕事開始っと……おい、そこの男!」

 

  俺は腰に布を巻きつけた斬魄刀を差した、人相のやたらと悪い子連れの男に声をかけた。背は俺より高く、左陣より多少低い、要するに大男で体つきは引き締まったタイプか。

 

「あぁ?」

 

  物凄く物騒な表情を向けられた。……うん、こっち系の顔は別に怖くない。あの人の本気より数倍マシだ。

 

「死神にならないか、君」

 

「何言ってんだ、テメェ」

 

「いや、君はかなり腕が立つと見えるんでね。その手の人材を集めて死神にするのが俺の仕事なんだよ、って訳で死神にならないか?給金に関して応相談だが、君の場合はすぐに充分な額を稼げるようになるだろう。安心しろ、護廷十三隊は基本的に実力主義だ、能力さえあれば出自や出身は問わないからスピード出世も可能だ。加えて衣食住に関しても、護廷十三隊に所属すれば最低限の保証がされるので、給金は全額君の趣味に使うことができる。業務内容に関しても多種多様、強大な敵との戦闘に特化した隊、諜報に特化した隊、医療や裏方に特化した隊、君の得意分野に合った隊への配属がされるだろう。万一君が気に入らないのであれば、転属届けを提出すれば大体の場合君の希望が通るだろう。つまり、仕事に関してのやりがいについては保証するということだ。ああ、福祉や社会保障に関しても問題ないよ。余程の違反行為をしなければ、老後の充分に生活できるだけの金額は支給され続けるし、なんだったらその経験を活かしての職場も提供しよう。休暇の面でも非常事態でなければ有給休暇もあるし、夏季休暇なども充分にある。その間であれば、霊力に制限などを設けた上での現世への物見遊山も良しだ。それに今なら俺に出来る範囲ならば願いを叶えてやろう。とはいえ、流石に全財産を寄越せなどは拒否させて貰おう。俺の見立てたところ君個人にオススメするのは……」

 

「話が長ぇ」

 

「俺と戦うこと、とか」

 

  案の定、彼の表情がガラリと変わった。それはもう嬉しそうなものに。

 

  俺だって無駄にあんな長台詞を言っていたわけじゃない。相手がどの単語に反応、もしくは惹かれたかを見る意味合いでの長台詞だ。

 

  で、この男が反応したのはたった一箇所、強大な敵との戦闘に特化した隊、って所だけ露骨に興味を示していた。まぁ、好き好んでこんな所にいる奴だ、戦闘狂の類か弱者を嬲って喜ぶ奴って所だろうが、こいつの雰囲気から前者だろ。

 

  実際、それは当たっているらしく、男は既に斬魄刀を抜き放っている。それに加えて、こちらに向かって意識的に霊圧を放ち始めた。

 

「お前、強いのか?」

 

「少なくとも、隣の彼よりは強い」

 

「充分だ」

 

「そりゃ結構。……左陣、斬魄刀を貸してくれ」

 

「……はっ」

 

  流石にあの男の剣を素手で受けるのはマズイ、軽い一撃なら防げるかもしれんが、攻撃によっては切られかねない。……この手の相手と頻回に遭遇することなどないだろうが、万が一の為に浅打くらい貰ってもいいかもしれないな。

 

「さて、やり合う前に一つだけ言わせてもらうぞ」

 

「なんだよ、とっと始めたようぜ」

 

「俺たちは君以外にも今日中に勧誘しなければならない相手がいる、というわけで5分間斬り合ったら逃げさせてもらう」

 

「なんだと?ふざけてんのか」

 

「まぁ、今回はお試し版だ。君が死神となって、それ相応の働きを見せたならちゃんと相手をしてやる。俺が君のお眼鏡に叶うかどうか、それを今回で試せばいい」

 

「……いいぜ。じゃあ、5分間は手を抜くんじゃねぇぞ!」

 

「ありがとう、手は抜かないよ。こっちも殺す気でいく」

 

  というか、抜く余裕があるわけないだろう。

 

  男は俺の方に走ってくると、一気に剣を振り下ろしてきた。速力はそうでもないが、剣速はバカみたいに速く、剣圧は規格外に重い。

 

  しかし、左陣の斬魄刀はそれを受け止める強度と、俺の霊圧に耐えられるだけの耐性がある。俺は部下の成長を喜びつつ、男の剣を受け止めた状態で空いている右手を男に向ける。

 

「鉄砂の壁、僧形の塔、灼鉄熒熒、湛然として終に音無し 縛道の七十五 五柱鉄貫」

 

  男の頭上に鎖付きの鉄の柱が五本出現し、手足を封じる為に同時に落下する。副隊長クラスなら拘束可能、それ以下なら手足が潰れる縛道だ。それなりの妨害にはなるだろう。

 

「しゃらくせぇ!」

 

  男が剣を柱に向かって振るうと、その剣圧のみで柱を微塵に砕いた。……一応、七十番台の完全詠唱なんだけどな。

 

  それでも、隙は充分にできた。男が剣を上に振るったことで俺を抑えていた剣は無くなり、男の胴体は完全にガラ空きになった。

 

  斬魄刀の切っ先を男の胴に向け、俺は左半身ごと斬魄刀を後ろに引いて、右足を一歩踏み出す。

 

「虚突(ルプトゥラ)」

 

  虚突は俺の数少ない独自の技だ。斬魄刀に虚閃を纏わせ、響転で勢いをつけてから放つ全体重を乗せた突きだ。普通の死神なら消し炭にできる威力はあるんだが、どういう訳か男は生きている。斬魄刀が借り物であることを考慮しても、中級大虚に結構なダメージを通すくらいの霊圧は込めたんだけどな。しかも、さっきより格段に霊圧が上がっている。

 

「あの霊圧で虚閃が掻き消されて、当たったのは突きの部分のみにされたって所か。なんなんだよ、あんた」

 

  男は吹き飛び、腹から血を流してこそいるものの、相変わらずの笑顔を浮かべてこっちに突っ込んでくる。

 

「鬼道なんて使うつまんねぇ野郎かと思ったが、やるじゃねぇか!さぁ、今度は斬り合おうぜ!」

 

「勘弁してくれ……斬り合いなんてガラじゃないんだよ」

 

  男の剣は受ければ受ける程に速度と重みが増し、なんだか決算が過ぎてから一気にやってくる監査をやらされている気分になる。というか、徐々に俺の処理能力を超えてきている。詠唱破棄とはいえ六杖光牢が一秒保たずに破壊された辺りから、完全に鬼道が機能しなくなってきた。

 

  傷の数や流した血は向こうの方が多いんだが、どうにもこの男は首を刎ねないと止まらないようで、多少な傷ならばむしろ喜んで突っ込んでくる。被虐嗜好って訳じゃないんだろうが、ここまでくると実はそうなんじゃないかと思えてくる。

 

「ふんっ!」

 

「ヤベッ!」

 

  今のは危なかった、俺の角が切り落とされかねなかった……って、今更だが笠は何処にいった?いつの間にやら俺は破面の素顔丸出しで戦っていたようで、仮面を隠している笠は最早残骸とも言えない姿で道端に転がっていた。

 

「室長!お時間です!」

 

  律儀に時間を計っていてくれた左陣が吼えた。

 

「だ、そうだ。今日はこれで終いだ」

 

「そういうなよ、もう少しサービスしていけよ」

 

「悪いね、当店延長は認められておりませんのでっ!縛道の二十一 赤煙遁」

 

  俺は男との距離を離しながら縛道で煙幕を放ち、左陣と共に瞬歩で一気に更木から逃げ出した。

 

  その後、まるで犬か何かに玩具にされたようにズタボロになった死覇装の代わりに、服を買いに行く羽目になった。……俺の死覇装、特注で高いんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




個人的にBLEACHで一番怖いのは卯の花さんの本気顔だと思います

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