ディアベルが死の運命を覆そうと奮闘するようです   作:導く眼鏡

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前回のあらすじ

GM「デスゲーム開始宣言」
ディアベル「!?」

ディアベル「後は……頼む」パリーン

はじまりの街「おかえり」
ディアベル「!?」
GM「デスゲーム開始宣言」
ディアベル「デジャヴ!?」


ディアベルはソロで奮闘したようです

やぁ、俺はディアベル。職業的は気持ちナイトやってます!

突然だけど、俺は今ソロでフィールドに出ている。

本当なら、パーティを組んで攻略に出た方が安全だし、負担も減るんだけど……訳あってソロでフィールドに出ざるを得なかった。

何故かというと、はじまりの街でデスゲーム開始宣言が行われた直後、何故か広場の一人が

 

「ディアベルを探せ! あいつ、このゲームがデスゲームになるって知ってやがったんだ!」

 

なんて言い出して、そこから俺が茅場とグルだとかいう騒ぎに発展して魔女狩りの雰囲気だったからね。

捕まったら何をされるか分からないし、気付かれないように街を離れたよ。

そんな事情があって、俺はソロで奮闘している。

少し先には、ボス戦で俺にポーションを飲ませてくれようとした少年が一人で必死に次の街をめざしている。

あの少年はキリト……β時代にLAをよくかっさらっていた人物だ。

彼にLAを取られる事を危惧した俺は彼にLAをとられまいと、色々策を練って彼には悪い事をしたっけ。

 

だけど、そんな彼に俺が声をかけるのは気持ちの問題として許せないし、何より今の俺の境遇を考えたら声をかける訳にはいかない。

一人ぼっちは心細いけど、今の俺はソロで攻略するしかない。

俺は逃げるように、ソロでフィールドを駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

 

1ヶ月後、トールバーナで第1層のフロアボス攻略会議が開かれる事になった。

俺は髪を蒼に染めて(前回の記憶を頼りに髪染めアイテムを気合いで手に入れた)フードを被るという変装のもと、攻略会議の端の席で話を聞く事にした。

ちなみに、前回一瞬でHPを削り切られた事を考えてレベルは念入りにあげて12にまでなった。

ソロでここまでレベルをあげるのは骨が折れたし大変だったが、同じようにソロで頑張っているキリト君を見かける度に、彼にやれるなら俺にだって出来ると自身に渇を入れて頑張り抜いた。

 

周囲を見渡せば見覚えのある顔ばかりだ。

ここまでで2000人のプレイヤーが退場しているのを考えるとそこまで差異はなさそうだ。

一番気になるのは、前回は俺が指揮をとっていたが、今回は誰が会議を主催して指揮を取るのか、というものだ。

 

しばらく待っていると、中央の会場に数人の人物が表れた。

 

「皆、集まってくれてありがとう。俺は、今回第1層のフロアボスを発見した第一人者として会議を纏めさせてもらう。宜しく頼む」

 

うん、彼は誠実な人間だというのが今の自己紹介で分かる。

パーティ……いや、レイドのリーダーとして命を預ける事の出来る人物だと言える。

少なくとも、欲に目が眩んで皆の命を預かる立場にいながら皆を危険に晒した俺なんかよりは余程いいだろう。

 

彼のトークを聞きながら関心していると、一人の人物が乱入してきた。

 

「ちょっと待っとらんかい!」

 

聞き覚えのあるこの声、確か彼はキバオウだったか。

覚えのあるやり取りを纏めれば、彼はβテスターの溜め込んだアイテムを全て寄越せという主張を声高らかに宣言したというものだ。

 

冷静に考えれば、詫びを入れろという主張は百歩譲って理解出来てもアイテム等を差し出せという主張等攻略全体からすれば足枷にしかならない。

βテスターは貴重な戦力足り得るのに、彼等から装備を剥ぎ取ったら戦力にならなくなる。

そうなればレイド全体の戦力低下に繋がり、ボス攻略が難しくなるからだ。

 

当然、そんな主張が通るかと言われればそうでもなく……という事もなく、会場からは彼に賛成してβテスターから装備を剥ぎ取っておこぼれに預かろうとする者が現れだす。

会場が不穏な雰囲気になり、これはまずいと思った束の間、黒人の男性……たしかエギルだったはず。

彼が攻略本を持ち出して会場をなだめてくれた事で九死に一生を得た。彼とは友好な関係を築きたいものだ。

 

そして、会場の皆でパーティを組む事になったが……さて、ここで大きな問題が発生する。

俺は今、指名手配紛いの扱いだ。俺が公然と姿を表せば魔女狩りの餌食だろう。

当然、そうなりたくない俺はソロで戦っていた為にフレンドもいない、パーティを組んでくれる人物に心当たりもない。

何より、パーティを組めば俺がディアベルだとばれる為迂闊に組む事も出来ない。

途方に暮れていた俺は帰ろうと席を立とうとするが、そのタイミングで声をかけられる。

 

「えっと、あんたも炙れたんだろ? よかったら俺達と組まないか?」

 

声をかけてくれたのは、キリトだった。

俺はこの時内心で泣いて喜んだね。こんな俺にだって声をかけてくれたんだから。

けど、二つ返事で入るかと言われれば否だ。俺の境遇を思い出してほしい。

 

「俺をパーティに入れると、君達にも迷惑がかかるかもしれないけど……それでもいいのかい?」

 

そう、俺をパーティに入れた後に俺がディアベルだとばれた時、彼とその後ろにいる人物が魔女狩りの巻き添えになりかねないという事だ。

当然、そうなったら彼等にも申し訳がない。だからこそ本来は問答無用で断るべきだったのだが……未練たらたらだった俺はやんわりと警告するだけに留まってしまった。

 

「気にするな。事情は分かるけど、そういうので排斥するような輩じゃない」

 

彼は、俺がβテスターだという事を隠しているだけだと思っているようだ。

だが、パーティを組めば名前が割れる。そこで、一度パーティを組んで俺がディアベルだとばれた時、怪訝な表情を彼等が見せたらパーティを解散して、俺は今回のレイドを見送ろうと決めた。

キリト君達とパーティを組む。後ろの人物はアスナというらしい。

 

「それじゃあ、改めてよろしく頼む。俺はディアベル、気持ち的にナイトをしているソロプレイヤーだ」

「キリトだ、同じくソロ」

「アスナ、貴方達と同じくソロ」

「全員ソロか、ならソロ同士気楽に行こう」

 

彼等は俺がディアベルだと知っても何一つ怪訝な表情をしなかった。俺、彼等とパーティを組めてよかったかもしれない。


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