ディアベルが死の運命を覆そうと奮闘するようです   作:導く眼鏡

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プウマネ編のディアベル死後の番外編を書こうとする→手が動かなくなる→後日(以下ループ
私は番外編を諦めた。

前回のあらすじ
ディアベル「ここは俺に任せて先に逃げ……」パリーン


ディアベルは血盟騎士団に入団するようです。

やぁ、俺の名はディアベル。職業は気持ち、ナイトやってます!

 

突然だけど、どうやら俺はまた死に戻ったらしい。

ニューゲーム、というやつなのかな? 過去2回はボスにやられて死亡したけど、その次は他のプレイヤーに殺されて死に戻った。俗に言うPKだね。

3回目の世界で分かった事だけど、PKされて死亡した場合でも俺は死に戻るようだ。死に戻る条件がボスに殺される事、という密かな仮説は見事打ち砕かれた訳だ。いや、今回は打ち砕かれてよかったけど。

仮説が合っていたら俺は今、はじまりの街に立っていない。今こうしてゲーム開始地点にいるという事は、そういう事なのだろう。

しかし、情報でこそ聞いていたがいざ俺がPKされた時にはなんというか、不思議とそこまで命乞いやら何やらをしようとは思わなかったな。

皆がみんな、そうではないのだろうけど……あの時思っていたのは、シリカは無事逃げ切れただろうかという他人の心配だった。

既に2回死亡経験があるから自分の死に対する感覚が麻痺しているのかもしれない。

最も、俺が考えている通り死に戻る際何もかもリセットされているのであれば、彼女も再び会う時は俺とも初対面なのだろうけど。

今まで築き上げてきた人達とのコミュが全てリセットされている、というのはかなり精神的にきついものがある。

ましてや、それが一年以上もの絆ならば尚更だ。

しかし、他の人達が死に戻った様子がない、死んだ人物が戻って来ない、というのは確認済みだ。

過去に何度か死に戻ったものの、それまでで死んだ人物……モトやコペルを筆頭とした様々な人物との接触を試みたが彼等に死ぬまでの記憶はないというのは既に分かっている。

仕組みは分からないが、俺だけが死ぬ度に初期状態で戻されて記憶を引き継ぐ事が出来ているようだ。

もしかしたら、他の人も死ぬ度に俺と同じように死に戻っているのでは、という可能性も考えたがそれは否定出来る。

もし他の人も俺と同じように死に戻っているのならばそれ以前の周回とは何かしら違うアクションがあるはずだからだ。

死に戻った内2回は第一層での出来事の検証がほとんどだったからそれこそその先に関する出来事の検証はしようもない。

しかし、実はあれから何度も死に戻っている。その周回で得た情報を元に、次の周回、その次の周回……何度も繰り返した周回の中で俺は様々な検証を行っていた。

周回ごとの行動の差異……これは俺が何かしらのアクションを起こせば当然、違いが生じてくる。これは当たり前だ。では俺が何もアクションを起こさなかった場合に違いは生じるのか。答えはほとんどが否だった。俺が起こしたアクションが元になって、差異と差異が重なった結果俺がアクションを起こしていない部分での差異が出てくる事もあったが、それ以外での差異は一切発生していない。これが先程述べた、俺以外の人物が死に戻ったりしていないと言える根拠でもある。

死に戻った人物が俺以外にいたら、その人物は俺が何もしなくても、必ず違うアクションをする。いや、しない事はあり得ない。

人はやり直しが出来る場面に遭遇したら、必ずもしもの選択肢……ifの選択肢に興味を持つ。

あの時、こうしていたらどうなっていたんだろう。あの時、あんな事をしなければ。

自分の選択から発生する、もしもの展開。特に、その選択に強い後悔を持っていたらそれこそ必ずifの選択肢に手を出す。

ほとんどの周回で攻略組トップクラスのプレイヤーとして名を馳せた黒の剣士ことキリト君がその代表例と言ってもいい。

彼は自分の選択がきっかけでとある中層ギルドを崩壊させてしまったと強く後悔していた。

そんな彼が、死に戻り……やり直しができたならば必ずその中層ギルドの崩壊を阻止しようとするはずだ。

そのようなアクションが一切存在しない時点で……つまりはそういう事だ。

さて、長々と前置きを語っていたがここで今俺は何をしているのか、という話になる訳だが……

 

 

 

 

 

 

「皆、今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう! 知っている人はこんにちわ、知らない人ははじめまして。俺の名はディアベル、職業は……気持ち、ナイトやってます!」

 

 

 

俺、ディアベルは現在第一層のフロアボス攻略会議のスピーチを行っている。

ナイトやめたんじゃないのかって? 色々あったのさ。

なんで攻略から離れていたのに突然攻略組になろうという気になったのか、と事情を知っている者がいたら聞いていただろう。いたとしても今答えるつもりはないし、そもそも俺の事情を知っている人がいたら見て見たい。

と、まぁ周回の情報を利用して攻略組の最前線リーダーとして皆を一つに纏める。キリト君がβテスト時に誰にも到達した事のない層まで登ったとかでチーター扱いされていたが、俺の場合キリト君なんか目じゃないという程のチーターだ。

と、そんな後ろめたい事情こそあるがそれも言わなければいいしばれなければいい。

当然、ここに来るまでに出来る限り助けられる人は助けたのだから文句を言われる筋合いはない。

はじまりの街でビギナー達に指導を行ったりモンスターにやられそうなプレイヤーをすんでの所で助けたり、これでもかと言う程のプレイヤーの命を救って来たのだ。

おかげで、ゲーム開始から一か月時点での現在の死者は1400人。俺のアクション、行動がきっかけになって結果的に600人もの人が死なずに済んだ事を考えればよく頑張っている方だと思う。

皆がそれぞれの反応を見せる中、俺は会議を進める。以前ならばこの辺りでキバオウ君がβテスターは詫び入れろ云々と言って来ていたが今回はそんなアクシデントも発生せず順調に会議は進んでいった。

俗に言う仲のいい人でグループ作ってーというアレをすると、決まってキリト君が炙れるのも見慣れてしまった。

そして攻略会議は順当に収まり、翌日にはボスを無犠牲で討伐した。

その時は皆達成感で喜んでいた。これが自信に繋がり、この後の攻略も順調に進む。

ちなみに第一層のフロアボスのLAボーナスは当然の如くきりと君が掻っ攫っていった。

その後のフロアボスに関しても特に危なげなく攻略に成功し、順調に24層のフロアボスまでの攻略を見事無犠牲で一貫してきた。

何故初見のはずのフロアボスをここまで無犠牲で攻略出来ているのか、という根源は当然周回で得た知識が元になっているのだが。

周回を繰り返す途中攻略組に戻り、ボス戦を経験しては何度も死に戻っているのだから嫌でも攻略法が叩き出される。

そんな、ボス攻略で一度も犠牲者を出していない事からプレイヤー間から、「蒼の軍師」なんていう異名がついてしまった。気持ちはナイトやってるんだけどね。

しかし、次のフロア……25階層はクォーターポイント。このフロアのボスの強さは段違いの為、相当対策を練らなければならない。

過去の周回でも、クォーターポイントのフロアボス攻略ではどうあがいても死者が続出していた。

当然、俺だって何度もあのフロアボスに殺されている。そして問題の攻略会議を現在開いている訳だが……

 

 

「どうかしたかね、ディアベル君」

「少し、嫌な予感がしてね。25層といえば100層の4分の1。いわゆるクォーターポイントだ……これまでとは比べ物にならない程に強くなっていてもおかしくない。これまで以上に警戒しなければならない」

「けど、今までのフロアボス攻略で一人の死傷者を出さずに攻略を達成し続けた君ならば今回も犠牲者0の攻略を行えるのではないかね? ディアベル君が指揮をとる戦闘では一人も犠牲者が出ていない。フロアボスとの戦闘でも、だ。そんな君の優れた指揮だからこそ、私としても指揮を任せる事が出来る。私も一人の攻略組として戦線を支えるつもりだ。何かあったら、是非頼って欲しい」

 

 

今、俺と会話しているのはヒースクリフ君、アインクラッド攻略において、今までの周回でも幾度となく攻略組トップギルドである血盟騎士団の団長として君臨してきた人物だ。

今回攻略するフロアではヒースクリフ君が殿を務めてくれたり、アレの猛攻を凌ぎ続けたりと本当に彼様様だった。不思議なのは彼の姿をそれまでほとんど見かけなかった事だが……探しても会えないとは、何事だろうか?

信頼できる情報屋に彼の情報を求めても、口止めされているらしく情報を開示される事はなかった。

と、まぁそんなこんなで彼と初対面になるのは決まって25層になる(攻略に関与しない場合はこの限りではないが、それでも24層以前から彼に出会う事はない)。

そんな謎の多い人物だが、決まって彼は神聖剣と呼ばれる彼だけのスキル……いわゆるユニークスキルを発現させるのだから恐ろしい人物だ。

 

攻略会議が終わった後、俺はヒースクリフ君に食事でもどうだと誘われた。

彼から話しかけて来るというのは以前の周回でもあったが……その時の話は大体決まっている。

 

 

「先程の攻略会議、実に有意義な時間だったよ。何が来ても対応する為の細かい戦術、そして尚犠牲者を一人も出さない手腕。聞けば君の指揮したパーティ、及びレイドでは一人も戦死者が出ないそうだね。君程の人材が我が血盟騎士団に加わってくれれば頼もしいのだが」

「評価されるのは嬉しいけど、俺はそんな大層な人材じゃないさ。せいぜい起こり得る事柄を予測して対策を考える位しか出来ないよ」

「自らの実力を謙遜する必要はないさ。それに、攻略を続けるのであればギルドに所属した方がいい。君さえよければ、我が血盟騎士団は君の入団を何時でも歓迎している」

 

そう、血盟騎士団への入団の誘いだ。様々な事柄を調べていた俺はこの話が来る度に断っていたのだが、今回は違う。

 

「確かに、小人数での攻略では限界があるからそろそろギルドに入るべきなのかもしれない。けれど、所属するギルドを選ぶにしても後悔はしたくない。そこで、25層のフロアボス戦……そこでヒースクリフ君の実力を見せてもらえないだろうか?」

「勿論、そのつもりだ。会議で豪語した通り戦線をしっかりと支えてみせる」

「頼もしい宣言だね。ボス戦でも頼りにさせてもらうよ。フロアボス戦で一線級の活躍を示してもらえれば、俺としても信頼に足るからね。その時はギルドの件を前向きに検討させてほしい」

 

今回、俺は血盟騎士団に入団するつもりだ。勿論、はいそうですか入りますという二つ返事で入る訳ではないけど。

フロアボス戦で活躍すれば入団する、という条件こそ出しているが数ある周回でこの男が活躍するのは分かり切っている。よって、実質無条件のようなものである。

今までは断っていた血盟騎士団への入団を今回承諾した最大の理由、それは……

 

 

 

「君の指揮にも頼らせてもらうよ、蒼の軍師ディアベル君」

 

 

 

 

この男、ヒースクリフ君の謎に関して徹底的に調べ上げる為だ。

 

 

ちなみに、後日のフロアボス戦は彼の活躍によって戦線崩壊を免れ、キリト君の怒涛の攻めによって見事無犠牲で攻略に成功した。


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