ジョジョの奇妙な冒険 勝手に第9部 飛ばない竜騎士 作:みつお・ライブ
銀色の甲冑に身を包み、身の丈を超える大剣を肩に担ぐ騎士が、巨大な怪物に果敢に挑んでいく。当たれば只では済まないであろう攻撃を、紙一重でかわし続け、隙を見つけてはこちらも負けじと斬り込んで行く。
しかし、そんな健闘もむなしく、騎士に怪物の重い一撃が入ってしまう。
……何とか耐えきれたらしい騎士は、立ち上がり回復薬らしき物を口に運ぶ。
「厳しいな…… これ以上の回復は望めず、デーモンは未だ健在。 面倒くせえな」
デーモンの一撃を耐えた騎士は、大剣を肩に担ぎ突撃して行く。それはもはや、勇気と言うよりは蛮勇に近いものであり、何処か自分の命を捨てている様にも見える。
荒れ狂う暴風の様なデーモンの猛攻を、かわしながらも隙を見つけ、大剣を叩きつけてる騎士。 しかし、やはり人の身では怪物に勝てないのか、遂には集中力が切れ、またもデーモンの一撃をその身に受けてしまう。
耐えきれなかったのであろう騎士が、まるで風に吹かれた灰の様に雲散霧消してしまう。
「……あー面倒くせ。 またあそこから"やり直し"かよ。 このゲームちゃんと難易度考えてんだろうな? 中ボスにしちゃ、強すぎる……」
体格の良い、高校生位の少年がそう呟く。 ゲームを終えた少年は、何気なくテレビを付けた。
「こんばんは、ニュースのお時間です」
ーこの時間はどのチャンネルもニュースだけか。ー
「度重なる失踪事件に、犯罪集団による組織的な犯行も有り得ると、警察からの発表が有りました。 今年に入ってから、既に27件もの行方不明者が出ており、台城町内の小、中学校では、集団下校だけでは無く、PTAによる見廻りも行われているとの事です」
ーおいおい、一大事じゃねえか。 この町の良いところなんて、平和な事と流れてる川が綺麗な事位しかねえだろうに。 ー
例年通りに、雪も溶けてなくなり、川の水かさが増し、もうそろそろ桜の花も咲き始めるだろうこの時期に、台城町に何か不吉な影がうごめいていた。
決して大きくは無いが、長閑で住みやすいこの町は、良くも悪くも呑気な住民が多い。 しかし、ここ最近は、どうにも浮かない顔をした人々が増えて来ている様に思えた。
「そろそろ降りてきなさい、城一郎。 晩御飯にするわよ」
「悪いな、ちょっと気になるニュースが流れてたからよ。 晩御飯は何かな」
ー最近は圧力鍋にはまってるし、どうせまた煮物だろう、仕方ねえな。 ー
「煮込みハンバーグと、きゅうりの漬物よ。 早く降りてきなさい。 お父さんも待ってるわ」
「今降りて来たトコロだよ。 ……まじでハンバーグときゅうりしかねえじゃん。 仕方ねえな」
ー相変わらず面倒くさがりだな。 まぁ、俺も人の事言えねえけど。 ー
「これだけあれば十分だろう。 あまり、母さんを困らせるんじゃ無い。 大城家家訓その一、出された物は、文句を言わず残さず食べる。 忘れるんじゃ無い」
「覚えてるよ、親父。 忘れたらまたクドクド言われるからな」
ーそうなったら面倒だし、な。 ー
「覚えてるなら良し。 忘れたりしたら、承知せんぞ」
「分かってるって。 忘れたら、また原稿用紙に書き取りさせられるだろ。 んな面倒な事はごめんだ」
ー目が笑って無いぞ親父……。 まあ、家訓大好き人間だからな、仕方無え。 ……面倒な事ばかりだな。 ー
「明日も学校でしょ? 早く食べて寝なさい。 ……そう言えば、エビスタ君から聞いたけど、転校生が来るらしいわね。良い機会だから、今の内から、人付き合いはキチンとしておきなさい。 学校は、そういう事を学ぶ場でもあるのよ」
黙々と食べる父に、よく喋る母。 相槌を打ちながらも、聞き流す城一郎。 大城家の、良く見る食事風景である。 が、珍しく城一郎が口を開いた。
「そういや、ニュース見てたんだけど、最近失踪事件が多いらしいな」
ーしかも小、中学生のみ。 確実にヤバい奴の犯行だよな……。 ー
「城一郎がニュースなんて珍しいわね。 近所の奥さんの間でも、かなり話題になってるのよ。 警察も初動が遅れたみたいで、未だ何も成果を挙げれてないらしいし、本当に物騒よね」
「余り、食事の時にする話では無いな、紀与乃さん」
「あら、ごめんなさいね、一雄さん。 城一郎、食べ終わった皿は流しに置いといてね」
早くも食べ終わった城一郎が席を立つ。 そのまま、自分の食器を片付けた城一郎は、自分の部屋で、またゲームを起動させるのだった。
翌日の朝、一雄と紀与乃は朝が早い。 その為、朝食は何時も城一郎一人だった。
「ベーコンエッグと、サラダか……。 トーストしたパンにでも挟むか」
ー今日は米の気分だったんだけどな。 自分で炊くのも面倒だし、時間も無え。 ー
さっさと朝食を食べ終わると、身嗜みを軽く整え、高校に向かう。 学校は近く、自転車で十分位の所にある。 途中に長めの坂があるが、城一郎は電動自転車なので楽に登れる様だ。
登校した城一郎は、自転車を規定の場所に止め、自分のクラスである二年二組へと向かう。
「おはよう! ジョジョ。 結局、あのデーモンは倒せたの?」
整った顔立ちの少年が、元気良く城一郎に話しかけている。
「はよ、エビスタ。 朝から元気だな、面倒くせえ。 やっぱ縛りプレイはキツイわ。 全然倒せねえの」
やる気の無い表情で城一郎が返す。 エビスタは、いつも通りの城一郎の様子に、苦笑しながらも声を掛ける。
「あの産廃武器縛りは無理だって……。 下手な直剣より威力でないじゃん」
「だからこそ楽しいんだろが。 最近はヌルゲーばっかで困る。 こう、肌がひりつく様な、難易度の高いゲームをしたいもんだね」
ガラガラと、教室の扉が開く。
「ほらー、席に着け。 出席を取るぞ」
素早く自分の席に戻るエビスタ。 賑やかだった教室が、静かになる。
「ーー渡部潤。 遅刻欠席は無しと。 えー、それでは今日は転校生を紹介する。 高校生にもなって、イジメは無いと思うが、皆、仲良くする様に。 じゃ、入ってくれ」
皆が注目する中、静かに教室の扉が開く。中々に体格の良い、お世辞にも整ってるとは言えないが、何処か愛嬌のある顔の少年が、教室に入ってきた。
「兵庫の、須磨区から引っ越してきた。 大西健二です。好きな飲み物はライフガード、嫌いな食べ物は椎茸かな。 未だ少し、関西弁が抜けへんけど、皆、仲良うしてや」
ー結構でけえな、俺と同じか少し低い位か。 しかも凄い天然パーマだし。 ってか席隣じゃん。 ……面倒だなー
「席は、大城の横だな。 あのでかい奴の隣だ」
「おー、俺よりでかい学生さんは中々居らんで。 健二や、宜しくな」
気さくに、健二が話し掛ける。 人見知りなどはしない様だ。
「宜しく。 大城城一郎だ。 城が二つ続くから、皆はジョジョって呼んでる。 まあ、好きに呼んでくれ」
気怠げに答えるジョジョ、健二は、気を悪くした様子もなく、ニカッと笑って話し掛ける。
「ええ、あだ名やな。 俺もケンって呼んでくれや。 これからよろしくな、ジョジョ。 なんか、仲良うやれそうやな」
そんなやり取りを重ねるジョジョとケンを、じっと見つめる者が居た事に、ジョジョは気付いてはいなかった。