ジョジョの奇妙な冒険 勝手に第9部 飛ばない竜騎士 作:みつお・ライブ
退屈な授業も終わり、放課後になった。部活に向かう人、残って勉強する人、友達と遊びに行く人と、様々な様相を見せる教室から、ジョジョ、エビスタ、ケンの三人が共に出てくる。
「健二君は、部活には入らないの? ジョジョも運動神経良いんだから、一緒にサッカーやろうよ!」
エビスタが二人を誘う。どうやら、ジョジョとケンは、部活には入っていない様だ。
「俺は面倒だからパス。 早く帰ってゲームしないと」
ーエビスタには悪いが、二年から部活に入るのはキツイ。 それに、俺は汗を流すより、部屋に篭ってゲームしてる方が性に合ってる 。ー
「サッカーはやった事あらへんしな。 第一、転校生は帰宅部一択やろ。 ……それと、俺の事はケンでええよ。 ジョジョのダチなら、ええ奴に決まってるしな」
ケンが謎の理論を展開する。体を少しのけ反れせ、顎を軽く上に傾けるポーズは、どうやらケンの癖らしい。
「ああ、ジョジョは予想どうりの答えだね……。 そっか、残念だけど、これからよろしくね、ケン。 僕もエビスタって呼んでくれ。仲良い奴は、皆そう呼ぶから。 それと、気が変わったら何時でも言ってね。サッカー部は歓迎するよ」
ニコリとエビスタが笑う。その屈託無い笑顔は、女性ファンが多く、特に三年の先輩達が虜になっている。
「遅刻したらカッコつかないだろ、次期キャプテン。 後は勝手に帰るから、エビスタは早く部活に行けよ」
ぶっきらぼうな物言いだが、その言葉には確かに優しさが感じられる。ジョジョなりの不器用な優しさは、一部にコアなファンが多い。特に、下級生の女生徒達の間では、熱狂的な人気がある。
ー俺達と駄弁ってたから部活に遅れた、なんて言い訳にもならねえからな。この位言わなきゃ、エビスタは律儀に校門まで付いて来ちまう。……面倒だな。ー
「心配してくれてありがと、ジョジョ。 じゃあ、僕はもう行くね。 二人共、帰り道には気を付けてね」
手を振りながら駆けていくエビスタに、軽く手を振り返しながら、自分も帰宅しようとするジョジョ。
「自転車通学とは羨ましいやん、ジョジョ。 しかも電動かい……実家は金持ち?」
「家はチャリ屋だよ。これは借り物、壊したら一年間小遣いゼロだぜ。面倒くせえ」
「なるほどねー。んじゃ、俺はこっちやから、また明日な、ジョジョ」
ケンは少し仰け反り、顎を軽く上に傾け、手を振りながら帰って行く。ジョジョも手を振り、自転車をこぎ出そうとした。
が、しかし、ジョジョの前に一人の少年が現れる。平均よりもやや低い身長だが、制服の上からも膨らんだ筋肉が見て取れ、短い髪を少し逆立たせている。鋭い眼光でジョジョを見つめる少年は、目に見えないオーラの様なものを纏っている様にも思えた。
「大城城一郎君。君と少し話をしたい。この時間なら、校舎裏がひと気も無くて丁度いい。少し付き合ってくれないかな」
疑問系ではあるが、有無を言わせぬ口調で告げる。その瞳には、何が何でも付いて来てもらうと言う、意思が感じられた。
「……あんた、同じクラスの清 清彦だろ。 俺に用事があるなら、今ここで話してくれないか」
ー多分無理だろうな。こういう輩は、自分の決めた事を絶対曲げようとしねえ。あー、面倒だな……。ー
「……余り、人が居る所で出したくは無いのだが、仕方あるまい」
すると、清彦の背中から、ガスマスクを付けた、世紀末風の、全身黄金に輝く幽霊の様な者が浮かび上がる。よく見ると、腰から下は徐々に細くなっており、清彦の背中につながっている様だ。
ー……おいおい、何だこいつは。 幽霊? 怪奇現象? 超能力? 訳が分からねえ、一体こいつは何者なんだ? どうする、この幽霊みたいな物は俺に危害を加えられるのか? とりあえず逃げるべきじゃ無いのか? だかしかし……。ー
「見込んだ通りだな、大城君。 君は今、どんな顔をしてるか気付いているかい? ……まるで新しいオモチャを与えられた子供の様な、無邪気な笑顔を浮かべているよ」
「……こいつを俺に見せるって事は、俺と何か関係しているんだな? まさか、俺にもこんな幽霊みたいな奴が取り憑いて「その通りだよ、大城君」……冗談だろ? 俺は今まで、幽霊を見た事は一度も無かった。 こんな奴も見たことが無い」
ーいきなり何訳の分からねえ事を言ってやがる。 だが、もし本当なら……。ー
「これが見える事が証拠だよ、大城君。 詳しく説明するから、付いて来てくれるかな」
「……仕方がねえ。 ちゃんと説明してくれよ」
二人は連れ立って校舎裏へと向かう。日が当たらない校舎裏は、ジメジメした空気が漂っており、どこか暗い雰囲気がある。
するとその時、突然清彦に取り憑いた幽霊が、ジョジョを勢いよく殴りつける。
「っ! ……どういう事だ、清」
「こういう事だよ、大城君」
問答無用と、清彦は幽霊を使いジョジョに殴りかからせる。その怒涛の攻撃に、ジョジョはドンドンボロボロになっていく。どうにか、躱したり、受け流そうとはするが、いかんせん勢いが強く、ジョジョは中々機会を見出せずにいた。
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフン!! 見込み違いだったかな、大城君! どうやら君には資格が無い様だ!」
ーかなり面倒な事になったな……。 どうすりゃ良い、どうすれば、この状況を覆せる。 ……下手な縛りプレイより難しいな、だがな。ー
「大城家家訓その二、困難には、勇気を持って立ち向かえ。 ……やってやれない事は無いと、俺は親父から教わった」
「打開策も見出せない割に、大きな口を叩くじゃないか! このまま、自分のスタンド! "
ースタンド、ね。 それがこの幽霊の名前か。 スタンド、何故だろうか、そう呟くだけで、俺の中から、何か熱い物がこみ上げてくる。 ……そうか、こいつが俺の! ー
「"
ジョジョの後ろに、龍を模した甲冑を身に付けた騎士が立つ。手には二メートル程の槍を持ち、静かに佇んでいた。
「随分と好き放題殴ってくれたな……。 面倒くさがりな俺でも、流石にイラっときたぜ」
「出現したばかりのスタンドで何が出来る! フン!」
突き出した拳が、ジョジョの顔を捉える。しかし、確かに力を込めて振り抜いた拳が、ジョジョの顔に触れた瞬間、いきなり勢いが無くなり、拳に力が入らなくなる。
「もう、お前の攻撃は無意味だ。 意味のない事はしない方がいい。 面倒だからな」
「……何が起きた。 確かに俺は全力で殴ったはず。 なのに、何故! 君にダメージが入ってないんだ!」
「今度は、俺の番だな。 流石に槍は使わねえよ、拳で我慢してやる。 歯を食いしばれ!」
大きく振りかぶった拳を、清のスタンド"イエローゴールド"に叩きつける。ジョジョのスタンド、"ドラゴンナイト"が怒涛のラッシュを仕掛ける!
「しねしねシねしねしね死ねしねシネシネしねしね死ね死ねしネ死ねシネシネ死ねしね死ねシネしねぇ!!」
滅多打ちにされたスタンドと共に、清彦も吹き飛び地面に転がる。ジョジョは、恐ろしい事を口走りながらも、一応加減はした様で、清彦はフラつきながらもすぐに立ち上がった。
「ぅぅ、効いたよ、かなり重いパンチだったな……」
"イエローゴールド"を引っ込め、もう闘う意思が無い事を、アピールする清彦。
「まずは謝罪しよう。 すまなかった、君のスタンドを目覚めさせるには、こうする他思いつかなかった」
ーこいつは、頭が固そうだな……。 まあいい、取り敢えず。ー
「スタンドってのは何だ? これは俺達以外にも、呼び出せる事が出来るのか?」
よく聞いてくれたと言うように、清彦は事の顛末を話し始めた。
「今、台乗町で起きている事件は知っているな。 あれは失踪じゃない、誘拐事件なんだ。 ……この町の有名な不動産といえば、大村不動産だが、その跡取りにサイポーンと言う男が選ばれた。……選ばれてしまった」
ーサイポーン? 聞いた事の無い名前だ。 そいつが、小・中学生を誘拐してるって事か?ー
「この男が問題なんだ。 サイポーンは、大村不動産の持つ金と権力を利用して、極秘裏に幼女を誘拐しているんだ。 警察も捕まえる気は無く、このままでは、更に大きな事件にも発展するかもしれない。 ……俺の妹も、現在行方不明だが、警察は全く役に立たない……。 サイポーンもスタンド使いだ、しかも、何人かサイポーンに従うスタンド使いも居るようで、此方も味方を増やしたかった。だから、俺に協力してくれそうなスタンド使いを探していた。それが君だ、大城君」
ーこいつは、一体何処からこんな情報を持って来ている……。 その前に、こいつを信用しても良いのか、判断材料が少なすぎるな。 だが……。ー
「興味が湧く話ではある。 しかし、本当にお前を信用しても良いのか? そのサイポーンとか言う男が、本当に悪だと断じる理由は何だ」
「……自分の父さんは、大村不動産の重役何だ。以前の社長の頃は良かった。 だが、サイポーンが乗っ取ってから、歯車が狂い始めたんだ……。 自分の父さんは、差し出したんだよ、娘をね」
ー狂ってやがる……。 重役の娘を欲しがるサイポーンもそうだが、差し出す清の父親も、イカれてやがる。 ー
「なるほどな、事情は分かった。 お前が、かなり切羽詰まってる事も、この事件が、かなりヤバい奴の仕業って事もな。……最近、どうにもヌルゲーが多くてな。肌がビリビリする様な、刺激的な事を待ち望んでいた。サイポーンって奴が、俺のラスボスって事か。……良いねえ、かなり刺激的だ」
「……理由はどうあれ、協力してくれるなら、とても助かる。恐らく、真正面から闘ったら、自分のスタンドでは、大城君のスタンドには敵わないだろう。そんな君が力を貸してくれるなら、こんなに心強いことは無い」
清彦が、ジョジョに握手を求める。勿論、ジョジョもそれに応え、二人は固く握手を交わした。
ー不謹慎だが、これからが楽しみで仕方ない。スタンド使いは、俺と清、それとサイポーンに、その仲間……良いねえ、実に刺激的だ。ー
「そう言えば、何で俺がスタンド使いだとわかったんだ?」
「自分の勘だよ。よく当たるんだ」
「……そうか、勘か」