ジョジョの奇妙な冒険 勝手に第9部 飛ばない竜騎士   作:みつお・ライブ

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第三話 エビスタ、目覚める

 

 

朝の七時半、ジョジョの部屋に銃声が響き渡る。ゆっくりと体を起こしたジョジョは、ケータイのアラームを止めた。

かなりのガンマニアであるジョジョは、目覚ましのアラームやら、着信音なども、全てミリタリーに統一している。

 

「眠い……。怠い、体が、重い……。歯でも磨くか」

 

朝に弱いジョジョは、のっそりとした動きで洗面所に向かう。

用を足したジョジョは、口に歯ブラシを突っ込んだまま、居間に向かった。

 

ー今日も親父とお袋は仕事か。飯は炊けてるけど、漬物しかねえのか……。ー

 

徐ろに冷蔵庫を開けるジョジョ。中からウインナーと、キャベツ、卵を取り出し、フライパンや油、まな板などを用意していく。

 

口を濯ぎ、歯を磨き終えたジョジョは、台所に立つ。

慣れた手つきで、キャベツをざく切りにし、ウインナーを、約三等分に斜めに切る。

そのまま油を敷いたフライパンに、キャベツとウインナーを入れて炒めていく。軽く塩胡椒で下味を付け、火が通ったところで一度皿に移す。

溶いた卵をフライパンに入れ、薄く焼き上げていく。その上に再度炒めたキャベツとウインナーを入れ、卵で包んでいく。

卵で包み終えたところで皿に盛り付け、ソースとマヨネーズをかける。

 

ー自己流豚平焼き、完成。……豚肉じゃなくてウインナーだけどな。ー

 

「頂きます。……ぉお、結構美味いなこれ。ケンに聞いて作ってみたが、楽に作れて美味い。良い料理だ」

 

一人の食事を終えたジョジョは、もう一度歯を磨き、制服に着替えて家を出る。勿論、昨日の内に用意してある、カバンを持っていくのも忘れない。

この、大城城一郎と言う男。面倒くさがりではあるが、大抵のことはそつなくこなす、完璧人間タイプであった。

 

 

 

ガラガラと、教室の扉を開ける。軽くおはようと呟いたジョジョは、自分の席にスタスタと向かう。

 

「おはようジョジョ! ……どうしたの、その傷。誰かと喧嘩でも……、ジョジョに限ってそれは無いか」

 

「おはよう、大城君。昨日は突然突っかかってすまなかったな」

 

清彦とエビスタが、ほぼ同時にジョジョに声をかける。

 

「ジョジョに手を出したのは清君なのかな? まさか本当に喧嘩だとはね。ジョジョは、そんな面倒な事はしないと思ってたけど」

 

「エビスタ君、実は僕の勘違いで、大城君に喧嘩を売ってしまったんだ。まあ、結果は自分の負けで、誤解だと謝罪もしたんだがね。だが、君の友人に手を上げてしまったのは事実だ。謝罪しよう、すまなかった」

 

律儀な清彦が、エビスタに頭を下げる。

 

「謝らないでよ、清君。僕は暴力は好きじゃ無いけど、本人同士で納得してるなら、僕が口を出すのも違うと思うし。後、僕の事は呼び捨てで良いよ。エビスタって、よんでくれ」

 

清彦に、気にしなくて良いと伝えるエビスタ。頭を上げた清彦がジョジョに改めて声をかける。

 

「ありがとう、エビスタ。……大城君も、昨日はすまなかったな」

 

「別に気にして無いぜ、清。俺も殴っちまったしな。それと、俺の事はジョジョで良い」

 

ジョジョも、気にしていないと清彦に告げる。二人の間に、わだかまりはもう無いようだ。

 

「ジョジョ、エビスタ、これからもよろしくな。自分の事は、キヨと呼んでほしい。……その方が、友人らしいだろう」

 

少し照れくさそうに、キヨが告げる。ニコリと笑ったエビスタが、キヨの前にグーを出す。キヨも笑いながら、エビスタとグータッチをする。また少し、ジョジョの周りは賑やかになった様だ。

 

「おはよーっす! おー、ジョジョ、エビスタ! ん?えーと、自分誰やったっけ」

 

「おはよう、ケン。キヨは、僕とジョジョの友達だよ。って言うか、キヨは学級委員長じゃん! もう忘れたの? ケン」

 

元気に挨拶を返すエビスタ。既にジョジョは机に突っ伏して眠そうにしている。

 

「あー、そういや昨日、教室案内してくれとったな! 悪い悪い、俺はどーにも、物覚えが悪うてな。 大西 健二や、ケンって呼んでくれ。よろしくな委員長」

 

バツが悪そうに苦笑いしながら、キヨに謝るケン。先ほどから、ジョジョの机の周りでは、何故か謝る人が多かった。

 

「昨日は、ろくに自己紹介もせずにすまなかったな。 改めて、清 清彦だ。キヨと呼んでくれ。よろしく頼む、ケン」

 

今日も、気怠げなジョジョとは対照的に、周りはとても賑やかだった。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン。

 

 

 

退屈な授業も終わり、放課後を迎えたジョジョ達。委員長としての仕事もあるため、放課後も忙しそうにするキヨ。エビスタも部活に向かい、ジョジョとケンも早々に帰宅していった。

 

「梶谷ー! もっと早くディフェンスにもどれー! 三淵はもっとオフェンスに参加しろ! ああぁっ!エビスタぁっ!何でそこでボールを取られるっ!もっとしっかりキープしろよ! トラップが甘いからだ!」

 

サッカー部の監督はかなり厳しい。今日もグラウンドには怒声が飛び、部員達は皆、必死にプレーをする。

 

「はいっ! すいません、監督っ!」

 

サッカー部の、次期キャプテンとしても期待されるエース、エビスタが謝る。人の意見を素直に取り入れ、貪欲に成長していく姿勢に、監督もとても期待している。

 

「集合っ!」

 

監督が叫ぶと、部員達は大声で返事をし、駆け足で監督の元に集まって来る。

 

「次の日曜は、隣町の那珂河(なかがわ)高校との練習試合だ。 各自、今日言われた課題をしっかりとこなして、試合に臨んで欲しい。 それと、最近物騒な事件が多い。 皆、気を付けて下校する様に。 では、クールダウンを済ませた者から下校して良し」

 

「「「ありがとうございましたーっ!」」」

 

「おう。気を付けて帰れよ」

 

伝える事を伝えた監督が、校舎の中へと戻って行く。真面目な部員が多い様で、チラホラと、足早に下校する者も多い中、大半の部員はしっかりと整理運動を行っていた。

 

「今日も疲れたなー、エビスタ。 監督メッチャ厳しくね? もう既に筋肉痛になりそう」

 

軽い感じで、少年がエビスタに話し掛ける。

 

「お疲れ様、三淵君。サイドは大変だよね、走る量も多いし。 監督の厳しさは、期待の裏返しだよ。 ……でも確かに、今日は格別ハードだったね」

 

「おっ! でたなナチュラル優等生! 嫌味なく、そう言うセリフが言えるってのは、エビスタの人徳ってやつだな!」

 

三淵と呼ばれた少年が茶化す。エビスタも慣れた様子で、苦笑しながらも言葉を返す。

 

「何そのナチュラル優等生って……。 さてと、もうクールダウンは充分だね。 そろそろ、僕は帰ることにするよ」

 

「ああ、俺ももう帰るよ。 いやー、しかしこの高校は、生徒も使えるシャワーが有るのが良いよな! 那珂河高校何て、ホースだぞホース。 冬でも夏でも、冷水しか浴びれないらしいぜ」

 

ジョジョ達が通う大城高校は、比較的新しく建てられた校舎で、設備の面では、かなり上等なのである。

 

運動部用の更衣室で、シャワーを浴び終えたエビスタは、制服に着替えて下校する。部員達に挨拶をしながら、最寄りの駅に向かうエビスタを、途中から尾ける男がいた。

 

 

 

 

 

エビスタは高校二年生だ。つまり、一年間は同じ道を往復した事になる。なのに、エビスタは、自分が全く見知らぬ土地に、足を踏み入れている事に驚き、恐怖していた。

 

周りを、民家と塀に囲まれた空き地には、何故かひと気が無く何処か薄気味悪かった。そのひと気の無さに、エビスタは不安を煽られていた。

 

「……何故だ、意味が分からない、何故僕はここに居る。 確かに僕は、少し疲れていて、余り周りを見ずに歩いていた……。 でも、これは明らかにおかしい。 ここは何処だ……、取り敢えず、ジョジョに電話してみよう」

 

昔から、ジョジョと、エビスタは仲が良かった。

 

エビスタが、ピンチの時に助けに来てくれたのは、何時でもジョジョだった。だから今回もまた、エビスタは無意識の内に、ジョジョと連絡を取ろうとする。ジョジョの声を聞ければ、ジョジョに事情を説明すれば、ジョジョにきっと、助けてもらえると思ったからである。

 

「無駄だ。 何故かここは、電波が届かない。恐らく、何らかの組織か、地に封印されし魔の力だと思うのだがな……」

 

黒いトレンチコートを羽織った、二十半ば頃の男が、歩いて来た。

 

良く見るとこの男、左目には眼帯を付け、手には指貫グローブ、そして謎の包帯で、鼻と口を覆っている。コートの下は、何故か何も着ておらず、ダメージ加工されたスラックスには、中心にドクロが付いたベルトが通されていた。

 

「我ら"破壊の堕天使(クラッシュ・エンジェルズ)"を束ねる至高の神、サイポーン様からの命令でな、清 清彦なる男と、その周りの者を破壊せよとのご命令だ。 君には、何の恨みもないが仕方がない。 我は、"破壊神の中指(ブレイク・ザ・サードフィンガー)"幽幻自在のルシフェル・C・ヘルクリエイト(よしむらてつや)! さあ来い! 我がスタンド! "後僅か届かない手(ソールドアウト)"!」

 

薄汚れた革鎧を着た骸骨が、海賊船の船長の様な帽子を被っている。これが、この男のスタンドの様だ。

 

エビスタは困惑していた。見知らぬ土地に来たと思ったら圏外で、そうと思えば、いきなり目の前に謎の人物(厨二病患者)が現れた。

 

未だ理解の追い付いていないエビスタに、男のスタンドが襲いかかる。

 

木が割れる様な、乾いた音が響き、エビスタが吹き飛ばされる。

 

「……ああ。 そうか、これは夢か。目が覚めたらきっと、隣にはジョジョが居て、ケンとキヨも一緒に笑ってるんだろうな。何寝ぼけてんだよって、ジョジョが笑ってぶしっ!」

 

呟くエビスタを、容赦なくぶん殴る男。

 

「錯乱してしまったかな。 聞こえていないと思うが、一応説明をしておこう。 もう既に、周辺一帯は我の領域だ。 "ソールドアウト"によって、三半規管を狂わされた生物が、此処に辿り着くことは無い。 寄って、助けが来ることは、絶対に無い。 此処に足を踏み入れた瞬間、貴様の死は、既に決定事項だったのだ」

 

この男のスタンドの能力は、生物の持つの三半規管を自由に狂わせることが出来る能力だ。しかも自身を中心に、約半径三百メートルの範囲内に居る生物全てが対象となる。かなり特化した能力だが、それ故、ハマれば滅法強い能力でもある。

 

「ああ、痛いなぁ。 何で夢なのに痛いんだろう……。さっきから、立ち上がろうにも立てないし、視点も全然定まらない……。 早く覚めろ、早く覚めろ、早く覚めろ、早く覚めろ、はやおぐっ!」

 

またも、殴り飛ばされるエビスタ。舌を噛んだらしく、口から血を流しながら、のたうちまわる。

 

「スタンドを持つ訳でもなく、ただ清 清彦と仲が良いだけで壊される。 実に哀れな存在だな。 ……今日は風が騒がしい。風の精も、誰かの死が近づいている事を、悟っているのかも知れないな」

 

鉄也が、左目の眼帯を抑えながら呟く。

 

「我の、封印されし魔眼が疼く……! 成る程、目の前の少年の血を見て、興奮しているのだな? 少し待て、我が魔眼、狂える魔狼(フェンリール)よ……! 今、貴様にこの者の血肉を捧げよう……!」

 

訳の分からないをことを口走りながら、ゆっくりと男がエビスタに近づいて行く。男のスタンドが、エビスタをタコ殴りにし、蹴り飛ばす。

 

吹き飛んだエビスタは、背中を民家の塀に打ち付け、苦しそうに咳き込んだ。

 

最早エビスタも虫の息だと、男はスタンドの能力を解除し、最後のトドメを刺すべく、塀に寄りかかったエビスタの元へと歩いて行く。

 

 

 

 

エビスタはキレていた。普段は温厚なエビスタだが、此処まで暴行を加えられれば誰だってキレるだろう。

 

無防備な状態で暴行を加えられたエビスタは、かなり深刻なダメージを負っているはずだ。が、まるで"自身の身に受けたダメージに比例する様に"、その瞳には、力強い光が宿っていた。

 

「……違うな、これは現実だ、"真実"だ。 さっきからずっと、頭の中に靄がかかっていた様だったが、やっとスッキリしてきたよ、実にクリアだ。 ……この夢の様な今が真実で、あんたは、僕の敵って訳だ。 そして、その後ろの骸骨があんたの武器って訳ね。 急に見えたから、びっくりしたよ」

 

「ほう、この我のスタンドが見えるのか。やはり、我が神の予感は正しかった様だな。 貴様らは、早めに潰すべきだ」

 

「早めに潰す、ね。 どうやら、完全に舐められている様だね。 自分達は潰す側で、その他は黙って潰されると……。 舐めんなっ!」

 

エビスタが吼える。 それに呼応する様に、エビスタの背後から何かが飛び出してくる!

 

「あーっ、びっくりした!! ……そうか、なるほど、これが僕の……!! "真実は夢の中(ドリームズ・カム・トゥルー)"! 僕のスタンドだ!」

 

筋肉で膨れ上がった巨体に、メリケンサックを嵌め、頭には王冠を被っている、まるでレスラーの様な格好をしたスタンド。それが、エビスタのスタンド、ドリームズ・カム・トゥルーである。

 

「こっからは、僕のターンだね。今までの分を、まとめて返させてもらうよ」

 

「スタンドが発現しただけで、よく吼えるじゃないか。 我がスタンド、"ソールドアウト"は無敵だ」

 

「いや、残念ながら、ここはもう僕の間合いだ。 ……余り舐めないでほしいものだね。 あなたは少し、近づきすぎた」

 

男が口を開こうとした時、エビスタのスタンドの拳が唸る。

 

「舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐め舐めんな!!!」

 

ドリームズ・カム・トゥルーは、エビスタが傷を負えば負う程強くなる。ボロボロにされた分、かなりのパワーを蓄えていたエビスタのスタンドに、成す術もなく再起不能にされる男。

 

エビスタの傷が治る。ドリームズ・カム・トゥルーは、どうやら受けた傷も回復する様だ。

 

「あー、スッキリした! さて、早く家に帰らないとね。……って言うか、此処は結局何処なんだろう」

 

 

 

 

 

 

それから1時間後、何とかジョジョと連絡の取れたエビスタは、結局ジョジョに泣きついた。

 

迷子になったエビスタの為に、家から自転車で駆け付けたジョジョは、呆れた顔をしながらも確りと、エビスタを駅まで送り届けるのだった。

 

 

 

 

 

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