真恋姫的一刀転生譚 呉伝   作:minmin

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 恋姫英雄譚3の思春ルートをやり終えたらどうしても書きたくなっちゃいました。革命が出るまで待つつもりだったんですけど……導入だけなら多分矛盾しないよね?笑
 構想自体は前からあったので、大まかなプロットはできてます。まあ、次の更新は革命をやり終えてからだと思いますが。

 では、どうぞ。


船上の人

 

 長江を進む、船上。

 

 

 

 

 ――風が変わったな。

 

 どことなく、湿り気を帯びてきた気がする。今はまだ微かな変化だが、そのうち皆も気づくだろう。船乗りにとって、天候の変化を読み取るのは必須の技術だ。いかなる操船の腕を持っていたとしても、自然が本気で牙を向けば船など簡単に沈んでしまう。先の空を見る限り、今日はそこまで荒れることはないだろうが、間違いなく一雨くるだろう。

 

「おい」

 

 声量を抑えて、なるべく平静に部下に声を掛ける。別段そんなつもりはなかったのだが、私の話し方は普通に喋っていても、どこか威圧しているように聞こえるらしい。

 

「すぐに降りだす。備えておけ」

 

「へい。――おい!お前ら、一雨くるぞ!」

 

 副官の言葉を受けて周囲の部下たちがさっと動き出す。こうして改めて見てみると、随分軍らしくなったものだ。旗揚げした当初はどうみてもただの荒くれ者の集団だった。衣食足りて礼節を知る、という言葉を引き合いに出していたが、なるほど、あの男の支援は部下の行動を変えるには充分だったようだ。

 ちらりと視線を船首の方へとやる。件の男は、今日もいつも通り舳先に胡座をかいて座っていた。右手て頬杖をついたまま、ぼんやりと水面を眺めている。

 気配を殺し、音を殺してゆっくりと近づく。決して気づかれないように。あと4歩、3歩、2――。

 

「興覇か」

 

 文字通り、あと1歩というところで気づかれてしまった。仕方なくそのまま後ろに立つ。武人でもないのに、この勘の良さは一体どうなっているのだろうか。

 

「……一雨くるぞ。さっさと中に入れ。そんなところにいると風邪をひく」

 

 声を掛けるも、男は振り返りもしない。これもいつものことだ。

 

「荒れるのか?」

 

「それほど酷くはならんだろう。お前にとってどうかは知らんが」

 

 ふうん、との抜けた返事をする男。視線は、相変わらず前を向いたままだ。そのまま暫く沈黙が続く。聞こえてくるのは、船の音と部下が発する声だけだ。

 どれくらいそうしていたのか。沈黙を破ったのは、今度は男の方からだった。

 

「船ってさ。揺れるんだよなあ」

 

「何を当たり前のことをしみじみと言っているのだお前は」

 

「……俺が前いたところの船は揺れなかったんだよ」

 

「ああ、そういえばそんなことも言っていたな」

 

 皇帝も王もおらず、民が政を行う国があるだとか、鉄で作った大きな鳥に乗って人が空を飛んでいるだとか。そんな世迷い言ばかりを熱心に語っていた気がする。当時はほとんど聞き流していたが。

 

「でもさ、漢って大きいだろ?船に1度も乗ったことがなくて、こんなに揺れるとは思ってなかったって人も結構いると思うんだよ」

 

「それは……まあ、そうかもしれんな」

 

 長江に船を浮かべて暮らす自分たちには想像もできないが、そういう者もいるだろう。

 

「で、何が言いたい?」

 

「もし軍にそういう人がいてさ、揺れを防ぐために鉄鎖で船と船を固定したいって言ったらどうする?」

 

 どうするか?そんなもの――。

 

「馬鹿め、と嘲笑ってやる」

 

「その心は?」

 

「船は生身の人や馬のように咄嗟に細かく動くことはできんのだ。それをさらに動きづらくしてどうする。それに、もし万一火計にかかれば全滅するぞ」

 

 それを聞いて、男が笑う。心から。本当に楽しそうに。ようやくこちらへ振り返ったその顔は、満面の笑みだった。

 

「そうか。いや、そうだよなあ。興覇の言うとおりだ」

 

 それだけ言って、また笑い出す。まったく、この男は、本当に……。

 

「お前、今自分が傍から見たらどれだけ異様か理解しているのか?そんな風だから、狂児などと呼ばれるのだ」

 

 若干語気を強めるが、当の本人はどこ吹く風だ。

 

「暫くはそれでいいんだよ。何をやっても『ああ、またあの狂児か』で済む。表に出るのは、そうだな。早くても乱が各地に広まってからだな」

 

 乱。それも各地に。前々から聞いてはいたが、やはり嫌な言葉だ。

 

「太平道……だったか。確かに、お前の言う通り急速に大きくなっているが、本当に反乱など起きるのか?」

 

「起きるさ。そしてあっという間に漢全土へと広がる。間違いない」

 

 自身がある、という口調ではない。まるでそれが確定した未来であるかのようにはっきりと断言する。

 

「乱世が来るぞ、興覇。世が動く。英雄たちが天下を目指し、覇を競う時代が来る。その嵐を、その荒波を乗り切れなければ、飲み込まれて死ぬだけだ」

 

 男が、暗く嗤う。

 

 ぽつり、と何かが額に落ちてきた。上を見ると、空が黒く染まっている。雨粒が一斉に落ちてくる。遠くで、雷鳴。

 雷に照らされながら嗤う男――魯粛。魯家の狂児の異名を持つ男、魯北郷の顔は、何かを恐れているようでもあり、何かを楽しんでいるかのようでもあった。

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?
自分は呉では思春が一番好きです。次に祭さん。その次に蓮華ですね。なので英雄譚は大満足な内容でした。
魏伝も以前連載していたのですが、英雄譚や革命のおかげで色々キャラが増えちゃったので革命が出てからの再構成待ちの状態です。なのでこの呉伝も次は革命が出てからになると思います。
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