今回は、11月1日。凛ちゃんの誕生日をお祝いし、ストーリーとは離れた、if物語。
設定に大きな変更などはなく、1つあるのは、時系列が既にμ's完成後だという事のみです。
大きく前半、後半に分かれています。
後書きにて、ささやかながら、挿絵を。
それでは
『凛ちゃん!お誕生日おめでとう〜!』
「みんな、ありがとにゃ!」
8人の祝いの言葉に1人の少女の元気な感謝の言葉が一室に響き渡る。
今日は11月の最初の日。
星空凛の誕生日。
星空凛と青春を【特別編】
「それでは凛ちゃんの誕生日を祝って!かんぱーい!」
『かんぱ〜い!』
今回の企画の代表として、花陽の音頭と共に会は始まった。
場所は音ノ木坂学院のアイドル研究部部室。
彼女達、μ'sの集まるいつもの場所だ。
「凛ちゃん、改めてお誕生日おめでとう!」
「ありがと、かよちん!凛のためにこんな凄い会を開いてくれて、嬉しいにゃ!」
「良かったね、花陽ちゃん!喜んでくれて!」
「うん、穂乃果ちゃん、みんな!本当に手伝ってくれてありがとう!」
この会はサプライズパーティー。
もちろんのこと、凛は今ここに来るまで全く知らなかった。
それを可能にするために準備が行われたのは直前。部屋中の飾り付け等、花陽の力だけでは到底できなかったことである。
「早速だけど、凛にプレゼントがあるの」
そう言って彼女の前に最初に立ったのは、絵里。
プレゼントと言われ、凛はさらにワクワクとした様子を見せる。
「わー!本当!?何々?」
「私からのプレゼントは……じゃん、猫型のマトリョーシカ」
「可愛いにゃ〜!マトリョーシカって、中からちっちゃい人形が出て来るやつだよね!嬉しいにゃ〜、大切にするね!」
「ふふ、喜んでもらえて嬉しいわ」
凛が絵里にありがとう、と感謝を述べると、絵里と入れ替わって次は希が彼女の前に立つ。
その手には大きなアルバム、おそらく手書きだと思われる絵、猫やμ'sみんなの可愛らしい姿が表を飾っていた。
「うちからは、これ。アルバム。今まで撮ってきた写真とか、今後撮っていく写真。それを、保存できる凛ちゃんだけのアルバム。そんなのを、プレゼントできたらええなーって思って」
「すっごい大っきい!いっぱい入りそうにゃ〜。この絵は希ちゃんが描いてくれたの?」
「うん、あんまり上手に描けへんかったけど……」
「ううん、そんなことないよ。みんな可愛くて、特徴がちゃんと捉えられてて、いつでもみんなの事が思い出せる。すっごく、嬉しいよ!」
「そう言ってくれて、うちも嬉しいよ」
続いてはにこだろうか?と胸を高鳴らせる凛の前に現れたのは、予想通りにこ、と真姫だった。
口を最初に開いたのは、にこだった。
「私から、と言いたいところなんだけど、真姫に色々と協力してもらってね」
そう言いながら、凛の視界から横にズレて手で指し示したのはテーブル。
部屋に入った時、そこにはお菓子や飲み物が置いてあったが、そこにさらに置かれていたのは、
「ケーキだにゃ!」
「凛に美味しいケーキを食べてもらいたくって作ったんだけど、その話を提案したら、真姫が色々と材料を用意してくれて」
輝くような白さを放つケーキには、よく添えられる苺に限らず、キウイやオレンジなど、色鮮やかな種類のフルーツ。
部室内の光を反射し水々しく光る果物達をさらににこの盛り付けによって、より美しさを引き立てていた。
「この子、料理全くやったことないのに、私もやるってうるさくて」
「ゔぇえ!ち、ちが、私はただにこちゃんの手伝いをと思って!」
「こんな感じだけど、ほんと必死に頑張って一緒に作ってくれたのよ。それにこんないっぱいフルーツを盛り付けようって提案してくれたのは真姫。だからこれは、私だけじゃない。真姫からも、ね」
にこの言葉を聞いて、気恥ずかしいのか顔を赤くしながら、にこの手伝いと言い張る真姫。
きっと、料理下手だからこれが喜んでもらえるか、美味しそうにできているのか、色々と考える事があり複雑な心境なのだろう。
もちろん、凛の気持ちは1つだ。
「ありがとう、真姫ちゃん!にこちゃん!凛、とっても嬉しいよ!」
ありがとう、嬉しい。
その言葉は確かな喜びを真姫の中に生んでいた。
まだ食べてはいないが、今彼女の視界に入るケーキが美味しくないわけがないであろう。2人の気持ちがたっぷりこもった、ただ1つのケーキなのだから。
「食べ物つながりで……じゃん!私からはお饅頭!特製のラーメン味だよ!」
「ありが……ラーメン味!?」
「冗談、冗談。でも普段のお饅頭じゃないよ〜見て見て!このお饅頭、星とか猫とか、凛ちゃんの焼印入れてるんだ〜」
「本当だっ!食べるのがもったいないにゃ〜ありがとう、穂乃果ちゃん!」
穂乃果に続いて彼女の前に現れたのは、ことりと海未。
その手にはリボンで綺麗に結ばれたプレゼント箱があった。
「私からのプレゼントはこちらです」
「開けてみて、凛ちゃん」
2人から受け取った2つの箱。
その中身はなんだろう?ワクワクと胸を躍らせながら、綺麗にリボンをとりその中身を確認すると、
「わー、綺麗!鞄と、スカートにゃ!」
「私からは鞄です。凛の事ですから、可愛らしい鞄を持っているとは思ったのですが、最近衣装関係で細々としたものも多いので、小物入れとして利用していただければ、と。ことりに頼んで、色々と貸してもらい作ってみました」
「スカートは私の凛ちゃんのイメージ通りに作ってみたんだ。いつも衣装作りの時にサイズを測らせてもらってるから、ぴったりだよ!」
「ありがとにゃ、海未ちゃん!ことりちゃん!今後大切にいっぱい使っていくにゃ〜」
笑顔でそう言う凛。
そして、残すはあと1人。
花陽は後ろに何かを隠しながら、2人の後に続いて凛の前に立った。
「凛ちゃん、いつもありがとう!凛ちゃんのおかげでいっぱい楽しい事、嬉しい事に会えたよ!これからも、よろしくね!」
そう言いながら、花陽は彼女にそっと近づいて隠していたそれをそっと首に巻いた。
それはとても柔らかく、温かいマフラー。
11月1日の今日、すっかり冷え込み、寒さが厳しい季節。
彼女がくれたマフラーは、どのマフラーよりも不思議と温かみを帯びているように感じた。
「凛も、かよちんがいてくれたから、スクールアイドルに、μ'sに出会えた。こんなに祝ってもらえた。
かよちんのおかげで、みんなのおかげで、本当に、ホントに……今が最高にゃ!!ありがとう!」
その言葉と共に、ワッと拍手が湧き上がった。
学校の授業が終わり、いつも通りやってきた今日の放課後はいつもと違う、年に1回だけの。いや、このμ'sで行える、最初で最後の誕生日。
それは宇宙No.1のケーキを食べながら、昔ながらのお饅頭を食べながら……様々な幸せに囲まれながら。
その一瞬は、彼女にとって忘れられない1日となった。
––▽––▽––▽––
「今日は楽しかったにゃ、本当にありがとね、かよちん!」
「喜んでくれて本当に良かった」
既に日は落ち、薄暗い夜空が出てきた頃。
誕生日会が終わり、途中7人と別れ、帰路に立つ凛と花陽の2人。凛の片手にはプレゼントをまとめて入れた、大きな袋。
いつも祝ってはいたが、今回は特に力を入れ、最高の仲間と共にできた誕生日会。
花陽は満足……と言いたいのだが、本当はその笑顔の奥に少しだけ気がかりを残していた。
それは蓮の存在。
もちろん、放課後だからと言って学院に他生徒、ましてや男子生徒がいくら協力してくれている人物とは言っても、学院内に入るのは厳しい。
とは言え、ならば別の場所で、など色々対策を打つことはできる。
それでも彼は連絡するとこう言ったのだ。
『悪いけど、俺はパス』と。
μ'sはμ'sだけでやった方がいいんじゃないか、と言うのだ。
結局そうなってしまったわけだが、できれば彼も含めて、と考えていた。
「……」
凛は隠れて携帯を時折確認していた。
しかも、その度に少し寂しそうな顔をしていた。
パーティーの時は見せなかったが、朝から時折見せるその一連の行動は、多分彼の連絡。
たった1つの、通知。
「そろそろ、だね」
「うん、それじゃ、本当ありがとうね、かよちん!」
彼女は話しかけると微塵も寂しさを感じさせない笑顔を見せてくれる。
どうしたの、蓮君?
凛ちゃんは忘れてるんじゃないかって思っちゃうよ?
その笑顔がなんだが辛くて、彼への少しの不信感が頭を過ぎった。
その時、
その不信感は一瞬にして綺麗さっぱり消える。
「凛ちゃん、またね」
「うん、バイバイ!」
彼女との分かれ道。
凛の視線はこちらに向けられて、後方、少し離れた所にある凛の家の前の存在に彼女は気付かない。
ただ、花陽は気付く。そして最高の笑顔で彼女に またね の一言を言うことができる。
そうだ、彼はそんな人じゃない
凛は分かれ道の中心で花陽を見送る。
手に抱えた荷物を1人になったその場所で改めて確認し、笑顔。そして同時に脳裏を過ぎる彼の姿。
今日は会えないのかな
そんな不安が心の隙間を満たされながら、彼女は振り向いた。
「れ、蓮君?」
季節の変わり目、今日は特に冷え込んでいた。
そんな11月1日、星空凛の誕生日。
彼は彼女の家の前で、夜空を見上げながら1人ポツンと立っていた。
数秒の不動、少しずつ動き出し、距離を広げていく歩幅。
そう遠くない距離が、今日はなんだかやけに遠く彼女には感じられた。
「蓮君!」
「ん、凛、お帰り」
「た、ただいま、じゃなくてどうしてここに!?それに、ちょ、ちょっと待って、冷たっ!」
荷物を持っていない手で彼の手を握る。
その手はまるで氷のよう、芯まで冷えていた。
「寒さは慣れてるよ」
「そんな強がりはいいの!ずっと……待っててくれたの?」
透き通った凛の目はしっかりと彼の視線を捉えて離さない。
彼女には嘘はつけなさそうだ、そう、直感した。
「うん、まぁ」
「ば、馬鹿にゃ!こんな寒いのに、風邪引いたらどうするの!とりあえず、家に入って……」
「あー、待って。そんなに長い用事じゃない、悪いがここで話させて」
「でも、」
冷えきった彼、このままにして良いわけがない、と強く感じたが、彼の中ではどうしてもここで終わらせたかったのだろう。
彼は変なところで頑固だから……多分いくら言っても、結果は変わらないと彼女は直感した。
「分かったにゃ。そ、それで用って」
大きな袋を傷つけないように、そっと地面に置き、彼と向き合う彼女。
何だか恥ずかしくて、さっきのように彼の顔が直視できなかった。
そして同時に彼も、うまく彼女を視線が捉えようとしなかった。
頭の中もなんだか回ってしまいそうな感覚で、上手く今の感情を形容する言葉は見当たらなかった。
ただこのまま時間が過ぎてしまうのはいけない。
時には、思い切りも大事だ。とにかく、はっきりと。
今目の前にいる彼女に。
「あ、あのさ、誕生日おめでとう」
「あ、ありがとにゃ、蓮君」
「それで、これ、プレゼントなんだけど……」
そう言って彼が彼女の前に差し出したのは、小さなプレゼント箱。
その中身はもちろん、彼女には分からない。
中身は何なのか、凛は不思議がりながらその箱を受け取った。
「開けて、いいの?」
「も、もちろん」
彼に許可をもらい、そっとリボンをとって箱を開ける。
その小さな箱に入っていたのは、
「これ、髪留め?」
小さな、1つの猫の髪留め。
「え、っと、そう言うのか?ピン留めって言うのか?め、名称は分からないんだが、その可愛いと思ったから買った。色々と調べて、考えたんだけど、浮かばなくて……悩んでた時、ふと目に入ったんだ。お前の鞄に付いてるストラップの猫の髪留め。こんな小さいやつでごめんな」
自信がなかった。
期間が空いて、高校生となって、周りの女子が考える環境は一変した事を感じた蓮。
今まで何かしらプレゼントは上げていたが、その事が引っかかって、どうしても決め手に欠け、様々な考えを巡らし、インターネットや友人に聞いて調査した。
でも見つからなくて、最後に出会ったのがこの髪留め。
妥協したとかではなく、自分がこれが良いと思ったプレゼント。
でもだからこそ、これで正しいのか、様々な疑問が湧いていた。
だからμ'sメンバーがプレゼントする中で渡したくなかった、する自信がなかった。
それに、2人きりで、こう言った形で渡したいと思ったから……
「多分、花陽とか他のみんな……」
「違うよ、蓮君」
プレゼントが視界に入ったのだろう、さらに自信をなくし少し俯いていた彼がボソボソと話した言葉に否定の言葉を投げかける。
「みんな、色々なプレゼントをくれたにゃ。どれも嬉しかった、本当に。
それはプレゼントの内容もそうだけど、何よりみんなの気持ちが本当に嬉しかったにゃ」
––––だから
そう言いながら彼女は彼に近づいて、少し下を向いていた彼に、
「凄い嬉しいにゃ、蓮君」
少し屈んで、覗き込むように笑顔を見せた。
そんな彼女の笑顔を見て、
「それなら、本当に良かったよ」
と安堵した表情を見せた。
ふふ、と笑った彼女は、クルッと回りながら彼から離れ手元にある髪留めを見つめる。
「すっごく可愛いにゃ、一生の宝物。ねぇ、蓮君」
「なんだ?」
「これ、付けてほしいにゃ」
「俺が?いいのか?」
「うん、蓮君に付けてほしいにゃ」
その言葉にドキッとしながらも、分かったと言って近づく。
そして彼女からその髪留めを受け取ると、彼から見て左側の髪に触れた。
「蓮君の手、やっぱり冷たいにゃ」
「わ、悪い」
「平気だにゃ」
「待ってろよ、なるべく直ぐに終わらすから」
––––ゆっくりでもいいにゃ
そんな小さな声は、彼の耳に届く事はなかった。
「付いた、えっと、これでいいか?」
「うん、バッチリにゃ!」
手を少し当て、髪留めの場所をしっかりと確認する。
そして彼の顔をまっすぐ見て、
「どう?似合ってるかにゃ?」
明るい笑顔で聞いた質問は、
「うん、似合ってるよ」
たった一言、でもとても嬉しい言葉のプレゼントと共に返ってきた。
「改めて、誕生日おめでとう、凛」
「ありがとにゃ、蓮君」
11月1日の今日、1人の少女の誕生日。
2人の上には満点の夜空。星達も彼女を祝うように輝きを放っていた。
如何でしたでしょうか?
最後の髪留めの部分を描いてみました。
【挿絵表示】
凛ちゃんが身につけているストラップ猫ですね。
さて、凛ちゃん、本日はお誕生日おめでとうございます。
次回はいつも通りに投稿します。
それでは