偶然、遊ぶ場所が重なったらしく、彼は他のクラスメイトと遊ぶ約束をしていた。
ついでにお前もと、誘われる蓮だが幼馴染と一緒にいる事は伏せつつ、それを断る。
それに対し、ノリが悪いなどと言わずに、藤也は離れて行くのであった。
何かと続くお出かけ回。
実はまだ半分くらい(予定)
それではどうぞ。
3人が合流したのは、別れてから15分程のことだった。
「悪い、待たせたな」
「蓮君、遅いにゃー」
フードコートの外れ、凛と花陽は壁際で邪魔にならない位置を確保し彼を待っていた。
そこにいることは連絡が送られていた。休日ということもあり人は多いが、2人の姿を彼が間違えるはずはなかった。
「少し迷った」
「珍しいね、あんまり蓮君迷ったことないのに」
「途中地図を見たが広いし、それにここ慣れてないから」
「それもそっか、とりあえず席確保するにゃ。ラッキーなことに、幾つかあるのは確認してるにゃ!」
そう言って彼女達は先程確認した空いている席へと移動を始めた。
少し遅れた理由の1つ、クラスメイトに会った、という事は彼女達に言わなかった。変に追求される事は、彼にとって1番されたくない事であったから……
––▽––▽––▽––
「何にしようかなー」
無事席を確保すると、ウキウキとした表情であたりを見渡す凛。
ここにある店は具体的に数は把握していないが、優に10店舗は超えているであろう。15、それとも20だろうか?
それにその店毎に出しているものは様々。定番のラーメン、丼ものやカレー、スパゲティやピザ、たこ焼きなどなど、1つ1つその種類を挙げていたらキリがない。さらにはラーメンと言っても、オールマイティに扱う店もあれば、1つの味のみに集中する店も存在する。
さらにどの店にもある程度値段が抑えられたものは存在する、となればそこから選ぶのはかなり迷う所だ。
とは言え、2人は大体決まっているであろうと彼は何となく思っていた。
「凛はラーメン!」
「私はご飯!ご飯です!」
まぁ2人なら第一声こう言うだろうな、という事は予想できていた。
凛はラーメン、花陽は白いごはんを大の好物としているからである。
もっとも、それでも選択肢は多い。
「まぁお前らならそう言うと思ったけど、もう少し絞らないとな」
「凛は、今日は醤油!ねぎとニラのトッピングがあったからいっぱい乗せてもらうにゃ!」
「私はどうしようかな……いっぱい食べたいからカレーかなぁ。蓮君は?」
「俺?そうだな」
キョロキョロとあたりを見渡す。
彼はこれといって好物はなく、苦手もない。大体は美味い美味いと喜んで食べる人物である。
だからこそこう言った時にどうしようかな、と迷う。毎日の食事も決まったものはなく、最近頻繁に食べていたから今日はこれ、と言った選択方法も彼にはなかった。
「あーとりあえず、先に買ってきなよ。少し考えたいし、荷物の見張りも必要だろ?」
「うん、じゃあお言葉に甘えて先に買ってくるね」
花陽がそう言うと2人は立ち上がり、その場から離れて自分の求める店へと向かった。
一方蓮は何にしようかなーと、再び辺りを見渡す。
特に決まらない、最初に何となく目に入ったかつ丼でも食べようか。
そういえば外食するのは久々だ……
などと考えていた時である。
「げっ」
思わず声が出てしまった。
もっとも周りに誰にも聞こえてない程度の声量だが、目に映ったのはあまり自分にとってはよろしくない集団だった。
(クラスの……)
彼の目に映ったのは、クラスメイト達である。
その中には藤也の姿もあった。合流して、ここで食べる事になったのだろう。
よく考えれば、食事をする、と言っていたのだからここに来る可能性はかなり高かった。
もっともだからと言って、ここを移動するのも面倒だったので、どうせここにいる事を選択しただろうが考えが浅かったのは事実である。
いや、正確に言えば2人に集中しすぎてて考えようともしていなかったか……いや、そんなことはとりあえずおいて、視線の先の人物達は彼にとって、障害でしかなかった。
「あっちか」
幸いな事に、彼らは目視がギリギリ可能でここからはかなり離れた所に座った。
自分が座ったこの席は、各店からは少し離れている。ここを通る事はあるかもしれないが、遠回りになることの方が多く、その可能性は少ないと判断できた。
後は自分が間違ってでもあちらの方向に行かないように心掛け、ここを通らないように祈るだけである。
「注文してきたにゃ」
「蓮君、決まってたら買ってきて平気だよ」
注視している間に、2人が戻ってきた。
特に食べる物に関してこだわりがない彼は先程考えた通り、かつ丼でいいかと思い、彼女達と入れ替わりで注文に向かった。
もちろん、その店はあのエリアからは離れた場所だった。
––▽––▽––▽––
「「「いたただきます」」」
特に何事もなく手元に料理が来る、という段階までやってきた。
願わくはここからいち早く出て行くことだが、それは彼女達もいるので難しい。気にしてもどうしようもない、位置的に見つかりにくい、と自分に言い聞かせ一応安心させ、目の前の2人と食べることに集中することにした。
「っ!こ、このラーメン美味しいにゃ!絶品、絶品ってこういう!」
「良かったな、凛」
「まさか、ここでこんな美味しいラーメンを食べれるとは思ってなかったにゃ」
目をキラキラさせて感激しながら、食べ進める凛。
一口は小さいが、その口に入っていく麺の1つ1つが喜んでいるのではないかと錯覚しそうな程、満面の笑顔で食べる彼女を見れば誰しもが美味しそうと感じるであろう。作った人は思わず泣いてしまうのではないだろうか。
自分の見ている彼女は美化し過ぎだろうか、それとも言葉を美化し過ぎか。まぁこの際、どうでもいい。確かに美味しそうに食べる彼女の姿は何となく惹かれた。
そんなことを自分も目の前にあるかつ丼を口へ頰張りながら、彼女にチラチラと視線を向けていた。
「どうしたのー?食べたいの?」
美味しそうに食べているかと思えば、唐突に手を休め、話しかけてくる凛。不意の事だった。
驚いて少し体をビクッとさせながらも、何のことだと彼女に質問する。
「さっきから見てたから。食べたいんでしょ、このラーメン! もう、言ってくれればあげるにゃー」
「あ、いや、俺は別に」
「蓮君の食べてるかつ丼も気になるから、交換ってことで!」
本当にラーメンにはあまり興味がなかった彼だが、そう言われてしまうと、交換しないのも悪いと感じる。
彼女は勘違いしているのだが、それをあえて言う必要もないかと思い、その交換条件にのった。
「それじゃいただきます! っ!これも美味しいにゃ〜」
かつ丼が手元に来るなり、かつを頬張る凛。
交換した以上はこちらも目の前にあるラーメンを食べる以外に選択肢はない。しかし一瞬彼は躊躇った。
よくよく考えれば、今食べるために使おうとしている蓮華や箸は1度は彼女の口が触れた……
自分の思考はなんて気持ち悪いんだ。
一瞬浮かんだ思考を停止する。
そんなこと気にするな。彼は自分にそう言い聞かせ、無理矢理今考えたことを掻き消し、気にせずラーメンを食べ始めた。
「ん、美味いな、これ」
「そうでしょー。凛が美味しいって言ったラーメンは絶対美味しいにゃ!」
「まぁ昔っから、色々なラーメン食べてる凛に言われると説得力はあるな」
そう言いながら、再びお互いの料理を交換した。
その時ふと花陽がこちらに視線を向けている事に気付いた。
何か言いたげな表情、こちらに向かう視線、妙にそれが気になって彼女に話しかけた。
「どうかした?花陽」
「え、あ、ううん、なんでもな……」
「あ、かよちんも食べたかったんだにゃ。そうでしょ、かよちん」
遮って言われた言葉に、少し顔を赤くしながら慌てて、うん、と頷く花陽。
「も、もし良かったらなんだけど、私も」
私も、と言われて交換しないわけにもいかないし、拒否する理由もない。
「これ、食いたいなら別に交換しなくても渡」
「そ、そうじゃなくて、こ、交換がいいの!」
「え?あ、ま、まぁ良いけどさ」
食いしん坊という言い方は失礼かもしれないが、花陽がよく食べる事を知っている彼としては交換ではなく、譲り受ける選択肢を選ぶ方が高いと考えていたので、彼女が何故交換の方を選んだのかが少し不思議だった。
彼女は優しいから、一方的に受け取るのは心苦しいと感じ交換を選んだのか。それとも、何か違う、そう例えば好意的な……
少し今日の自分は思考がおかしいらしい。どう考えても前者だ。
「ありがとう、カレー美味かった」
「かつ丼の方も美味しかったよ、我儘言ってごめんね」
「いや、いいよ。交換だったわけだし」
「かーよちん!凛のラーメンも食べてみる?」
「うん!じゃあ交換しよっ!」
そう言ってお互いに交換する2人。
そんな笑い合う2人を見て、ふとこのような食事風景を見るのはいつ振りだろうと記憶を探る。
周りの物音、人の会話、視線、全てを忘れられるのんびりとした雰囲気。正確な日にちなど忘れてしまったが、それを体験した最後は多分まだきっと小学生だった頃。
随分前だが、今も変わりなくこの雰囲気に浸る事ができる。
それだけ、でもそれだけがただ嬉しかった。
「どうしたの、蓮君、箸止まってるにゃ」
「あぁ、何でもないよ」
彼はそう言って、少し笑った。
久々の外食だからか、それとも単にここの店が美味しかっただけだろうか。
今日は一際美味しいと思える味だった。
多くの人と食べる料理が美味しいのか、それとも…
ちょこちょこと進んで行く物語。
更新ペースの割には、物語の進みも遅いという……
それでも今後もこのような感じです。
それではまた次回。