蓮のクラスメイトの何人かがいたが、花陽と凛の2人前に、そんなことはすっかり忘れ、食事を楽しむ蓮だった。
あまりにも前回の振り返りがすっきりしていますが、とりあえず今回はこの続きです。
一点ご報告を。
次回の更新は予定通りであれば、2月1日なのですが、2月分の更新は無しになります。
また3月もどうなるか分かりません。活動報告等でまた詳しく報告しますが、ご了承ください。
それでは、どうぞ。
時刻は13時を過ぎた頃。
3人はフードコートを離れ、再びデパート内をフラついていた。
せっかく席が取れたのだから、とそこで駄弁って時間を潰そうという提案はあった。しかし蓮としては一刻も早く、クラスメイトと遭遇する可能性が僅かにでもある場所から離れたい。
その為2人には悪いとも思ったが、空いている席は少ないのだから、用が済んだ以上早めにここを離れるべきだと話し、それに2人も賛同し今に至る。
とりあえず難を逃れて彼はホッとしていた。
「それじゃ、次どうするー?」
「次、か」
うーん、と頭を悩ます3人。
今日は服を買いたい、その目的で外出した。そしてそれを達成した今、どうするか。
もちろん、選択肢はたくさんある。だがそれにはお金が必要な場合が多い。
お金を貯めていたとは言え、あまり多くを持ってきていない蓮。おまけに買うつもりのなかった服を1着買ってしまったので、安い物を買ったとはいえ少し痛いダメージを負っている。
一方2人は服を彼より多く購入しており、余裕はない。今後のアイドル活動の事も考えてなるべく使いたくないという点も大きい。
「そう言えば豊島区の方にでっかい図書館がある」
「えぇ、ここでその案を出す……?」
「センスないか?」
「ないにゃ」
凛の即答がグサッと心に刺さった。
「わ、悪くはないと思うよ。ほら、静かで心地よいし」
「うーん、でも今日は久々に3人で遊ぶんだし、もっと楽しい事しようよー」
心切り替え、楽しい事、楽しい事か……
考えても一向に浮かばない蓮。小学校の頃彼女達と何度も遊んだが、その日その日の気まぐれで何とかなっていたし、中学から現在まで全く遊んでいない。
つまり何かと言われれば、彼はあまりにも遊ぶ場所の情報が少ないのである。
「こういう時は適当に色々な店に入ってみればいいんだよ」
「色々な店って言っても沢山あるにゃ」
「だからこそだよ、色々寄ってれば時間なんてあっという間に無くなっちゃうよ」
「……確かに、それもそうだにゃ!よし、それじゃあ色々寄ってみよ!」
花陽の一言から、特に目的のないちょっとした歩き旅が始まる。
旅、というのは大げさかもしれないが、それだけの広さを十分に持ったデパート、旅と言い表しても良いのかもしれない。
3人の目的のない旅。
そんな言葉が彼の中でふと浮かんだ時、昔の記憶を思い出した。
中学になり、自分が彼女達と距離を置くようになるまで。
幼稚園で出会った時から、ほぼ毎日3人で遊んでいた。
もちろん、他の子も何人か誘って遊んだ時もあった。けれど圧倒的に3人だけで遊んだ日の方が多いだろう、そう思える程にいつも一緒で一緒にいない時間の方が少ないと思える程であった。
実際どうであったか、そんな事記録などしていないし、忘れている事も多い。けれどそうであったと言える程の記憶の数々が存在する。
今、彼らは遊ぶ事に頭を悩ました。
だがその前の何年もの時間をいつも楽しく飽きずに遊んでいた。
ある時は街を歩き、ある時は親につられて買い物や遊園地に一緒に行ったり、ある時は学校で鬼ごっこ、ある時は家でお絵描き、ある時は……挙げたらキリがない。
そんな毎日。
見知らぬ場所に冒険に行くようなワクワク感と共に、笑顔でいた日々の記憶は彼の中に深く刻み込まれている。
その記憶と共に、彼はふと疑問に思った。
『何故さっき悩んだのだろう?』
確かに遊園地などに連れて行ってもらった記憶はあるけれど、お金が無くたって遊んで過ごせた記憶ばかりだ。
いつも自由気ままに……
「……」
どうやら3年間で自分達は大分変わってしまったのかもしれない。
お互い変わってないところばかりかと思っていたが、それは実は間違っているのかもしれない。
「どうしたの、蓮君?」
「ん、あぁ、悪い」
気がついたら足が止まっていたようで、花陽に声をかけられ我に返る。
再び足を動かし始めるが、妙に先程の疑問が頭に引っかかって離れない。
「何か考え事かにゃ?」
「んーまぁ」
「何々?凛かかよちんだったら答えられるかもしれないよ!」
そう言って笑顔を見せる彼女。
答えられるかもしれない、と言われても……と考えている時点で既に変わっている。
昔は多分すぐに打ち明けていた。そうだ、こう何というのか、いつも自分は特に考えず彼女達に打ち明けられていたはずなのだ。
「……なんか、変わったかなって」
「変わったって、何が?」
「何と言えば良いのかな、言っといてなんだが、俺にも表現の仕方がわからない。でもふと思った、俺達なんか変わったかなって」
花陽に何がと言われたが、それに答える適切な言葉が見当たらなかった。
変わったのは自分達、でも何が変わったのかそれが表現できない。
この数日の自分を振り返って何となく感じた事なので、上手く言葉にできないのも仕方ないこと。でもどうにかして言葉にしたい、そんな気持ちはあった。
ふと、気になった。それだけのはずなのに。
「んー変わったかな?」
「凛ちゃんも私も、蓮君も変わってないと思うけど……」
「でもさ、昔はもっと自然にって言えばいいのかな、気軽な気持ちで遊んでたと言うか、んん?俺も何に悩んでいたのか分からなくなってきた」
そもそも気にする必要があったのか、そう思うと自分が何に疑問を感じ、何に悩んでいたのかそれすらも分からなくなってきていた。
「私も蓮君の気持ちも分かるかも。高校生になって、少し大人になれたかなって感じて、昔は行きにくかったカラオケとかそういう場所に行きたいって気持ちが強くなって」
「自由が広がった!って思ったら、何か逆に窮屈になった気もするにゃ。したい事も遊びたい気持ちもいーっぱいあるのに」
「これが大人に成長したって事なのかな?」
「えー、じゃあ凛大人になんかなりたくないにゃー」
ムスッとした顔で頰を膨らます凛。
確かに、こんな答えのないような面倒な事を考えるようなら、昔みたいに楽に、難しい事は考えず、ただ一緒にいるだけで楽しかったあの頃のままで……
「凛は、2人と一緒にいれればいいにゃ!楽しいもん!」
「それなら大人になっても平気だと思うよ」
「はっ!確かにそうだにゃ。じゃあ大人になってもいいにゃ!」
一緒にいれたら楽しい、か。
それだけの簡単な事なのに、自分は色々な事を考え過ぎなのかもしれない。
成長して環境が変わって考え方も変わって、昔みたいに遊ぼうと言ったら色々と考える事が出来るようになって。自分はその昔との違いをやけに気にしていたが、そこは問題ではなかった。
何に悩もうとも、もっと根本的な所。彼女達と一緒にいいや、という考えは昔から変わっていなかった。
それが成長につれて色々と覆いかぶさって、面倒な事を考えるようになって。いや、性格が面倒にものになってしまったのだろうか。まぁこの際どうでもいい。
「なんか考えてた事、どうでも良かったのかも」
「えぇ、そうなの?」
「悪いな、凛、花陽。時間食わせて」
「ふふ、大事な事に気付けたからいいんじゃないかな」
そう言って花陽は目を合わせて笑う。
凛は彼女の言う大事な事というのが何だったのか分からず、何のこと、と首を傾げる。
彼女にその答えをあえて言う必要はないだろう、彼女が複雑な事を考えず純粋にその答えを持ってくれているからこそ、この関係は成り立っているのかもしれない、そう思えるから。
言葉にする必要はない。
それに、一緒に居られるだけで楽しい、というのは少し恥ずかしくて声に出せなかった。
少し成長すると、何か感じる虚しさに近い感情。
そして過去と比べ大きく変わる時期である高校時代、その点についての回でした。
中々子供時代の遊んだ記憶って真似でないと個人的には思っています。
前書きにもお話しした通り、来月の更新はありません。
それではまた次回。