そして今回含め2、3話程はμ'sと主人公の関わりとなり、凛ちゃんの出番が強調されにくいと考えられます。
もちろん、題名通り『凛ちゃんとの青春』これがテーマである。ということは忘れていないので、どうかご安心を。
それではどうぞ。
15時00分少し前、広瀬蓮は和菓子屋【穂むら】の前に来ていた。
昨日の22時00分頃、凛から『来てもいいって!』というメッセージが来た。それは電話で話したμ'sの話し合いに参加していいというものであった。
そしてその後15時00分からと聞き、今に至るのだが……
「入りにくいな」
穂むらは有名なので親が買ってきてくれた物を何度か食べたことはあるが、実際に買いに行ったことは僅かである。
まぁ入ること自体普段なら可能、だが今回は訳が違う。
知らない人が4人もいる、おまけに全員女の子という空間にお邪魔するわけなので、緊張するのは極自然である。
「とはいえ、ここでじっとしているわけにもいかないしな」
断れば良かったなんて、少し思ってしまう程の緊張を味わう彼。
しかし来てしまった以上仕方ないし、ここでじっとしているのも不審である。
ならば、と一歩踏み出し、穂むらの中へと入って行った。
「いらっしゃいませ!」
店の中に入ると大人の女性が1人。
その大きな挨拶に思わず、ペコッと頭を下げた。
「えーっと」
「何かお探しでしょうか?因みにオススメは……」
「あ、すいません、違うんです。あの、ここでμ'sの方々が話し合いをするとお聞きして、自分はそれに呼ばれたんです」
「そういえば穂乃果が1人男の子が来るって言ってたわね。
それなら、そっちの方の部屋よ」
女性が指差す方向には大部屋へと繋がる引き戸が見えた。
彼はありがとうございます、とお礼を言った後指示された場所へと向かう。
そして引き戸の前までやってきて、彼は気付く。
(……音がしない)
μ'sのメンバーは今は6人と聞いている。かつ今回の集まりは話し合いのはずだ。
防音されてるとは考えにくい、けれどもの音1つしない……これは何かある。
が、考えてもよく分からないので、とりあえず彼は引き戸を開けた。
その瞬間、
パーン! 『μ's会議へようこそー!』
クラッカーの大きな音とともに何人かの大きな声が聞こえた。
彼は目を点にして固まる。
何かしらあるとは思ったものの、まさかこういった形で歓迎される事になるとは予想していなかった。
さらに、
「シャー!」「うわっ!って、凛!?」
後ろから凛が驚かせてきた、まさかの二段構え。
「またお前は」
「ふふふ、またイタズラ成功だにゃ!」
「一本取られたな……さて、頭グリグリ、いっとくか?」
「ま、待って、暴力はいけないにゃ。それより皆に自己紹介!」
そう言って背中を押され、部屋の中へと入った蓮。
視線を凛から離し、部屋を一望。
花陽の姿と共に4人の女の子の姿を見て、自分の状況を改めて確認した彼に緊張が走った。
ワクワクとした態度やクールな態度、4人それぞれが違う。だが視線がこちらに向けられている事実に変わりはない。緊張はもちろん倍増していた。
「あ、あー、えっと」
頬を少し掻く。彼女達の様子に変わりはない。
凛か花陽が少し支援してくれるかもしれない、という期待が一瞬存在したが、花陽は頑張れとでも言ってるような表情、後ろをチラッと振り向いて見る凛は満面の笑み。
期待しても意味がないという事実だけが残った。
仕方ない、自己紹介をやるしかないのである。
「広瀬蓮と言います。この度は呼んでいただきありがとうございます。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げたと同時に起こる拍手。
なんともシンプルで平凡な挨拶ではあるが、これが精一杯。それよりも内心、噛まなくて良かったと安堵の気持ちでいっぱいである。
「どうぞ、そこに座って」
「あ、すいません」
茶色のようなオレンジのような髪色の少女が、彼にそう言って席を指示した。席と言っても座布団の上である。
凛も後に続いて元の場所へ戻った。
配置は大きな長方形の机に、蓮を端に置いた1年生側と2年生側に別れていた。私服であるため、もちろん蓮がそのように分かれている事など知る由もない。
「さて、改めてμ's会議へようこそ!私は高坂穂乃果、よろしくね!」
「はい、よろしくお願いします」
穂乃果に続いて、ことり、海未、そして真姫が自己紹介を続けていった。淡々と名前を言っていっただけなので、学年等の情報を得る事ができなかった。
「えっと、花陽ちゃんと凛ちゃんは昔からの知り合いなんだよね?」
「はい、蓮君とは幼稚園からの友達で」
「へー、じゃあ幼馴染ってやつだね!」
などと話して盛り上がった所で、タイミングが良かったので蓮は気になっていたことを質問した。
「あの、気になってたんですけど……」
「ん?何かな?」
「自分はこの会議に参加して良かったんでしょうか。
アイドルを良く知ってるわけじゃないし、ましてやスクールアイドルは尚更よく知らないですし。必要ない、と思ったのですが」
彼の言葉を聞いた彼女達はお互いの顔を見合わせた後、優しく笑って、
「私達だけでは気が付かないところは多くあると思います。特に男性目線という点で。それに見て気になった点などを教えていただける方は多いほうが良い。
だから広瀬君にはその手伝いをして貰いたい、それが皆の気持ちです。決して必要ない、なんて事はないですよ」
皆の総意を海未が口にした。
アイドルであろうがスクールアイドルであろうが、知名度は違えど見てもらう相手は人間であり、その中には男も存在する。
だが女の子だけしかいないため、どうしても女性よりの考えばかりが適用されてしまうのは必然。
男女に考えの差はないかもしれない、そうであったとしてもアドバイスを聞ける人物は多いほうが良い。
それが、ここに彼がいる理由であった。
「でも俺本当によく分からないですよ、ダンスとか音楽とか」
「大丈夫。詳しい知識がなくても、少し気になったとか、話を聞いててここはこうした方が良いんじゃ、なんて思った事があったら言ってくれるだけで良いんだよ」
そう言って再び笑うことり。
だがまだ何となくここにいて良いのだろうかという気持ちが残る彼の表情はあまり晴れない。
そんな彼の横に座っていた凛は肘でツンツンと横腹あたりを軽く叩くと、
「大丈夫。先輩達もそう言ってくれてるんだし!」
そう言っていつものように笑う。
それだけの行動ではあったが、彼に安心感を与えた事に違いはなかった。
「……あまりお力になれるか分かりませんが、その、よろしくお願いします」
ここまで言われて悩んでいるのも男らしくない。
彼はそう言って頭を少し下げた。
「さて、それじゃ早速なんだけど感想、聞いてもいい?」
「感想って、START:DASH!!の事ですよね」
穂乃果から感想を聞きたいと言われ、すぐに浮かんだのは昨日見たSTART:DASH!!。
彼女はうん!うん!と首を縦に振りながら、
「あの曲はね、真姫ちゃんが作ってくれた曲なんだ〜」
「ちょ、ちょっと!別に言わなくてもいいでしょ!」
机に手を置き、少し上半身を前に乗り出して、頬を赤くしながら穂乃果にそう言う真姫。
へー、と感心した表情で見てくる蓮に気づき、ふん、と顔を逸らしながら元の態勢に戻る。
「そして、作詞は海未ちゃん!」
「ほ、穂乃果!それまで言うことはないでしょう!?」
穂乃果の隣に座っていた海未は穂乃果の肩を掴み、明らかに怒った表情で彼女と視線を合わせた。
だがそれを気にせず、ただ凄いなーと感心した表情で海未を見る蓮。
海未はハッと我に帰り、恥ずかしそうに座り直した。
「ご、ごめんね、海未ちゃん。
え、えっと、それだけじゃなくてもう1人!衣装担当のことりちゃん!」
「あはは、何だか恥ずかしいなぁ」
視線をことりに移した蓮に気づき、ことりも少し恥ずかしそうにする。
以上、START:DASH!!を作る上で外す事のできないメンバーの紹介を終えた穂乃果。その上で、改めて感想を蓮に聞いた。
「で、どうだったかな?私達の曲!」
「本当に知識がなくて、細かい事は言えないし、子供みたいな感想しか言えないんですけど……
とにかく凄かったです。見てて凄い惹かれるというか、なんて言えばいいか分からないんですけど目が離せなかったんです。
衣装も可愛くて、ダンスも迫力があって、音楽も綺麗で、歌詞も心にくるものがあって、本当に凄い以上の言葉が見当たらな……」
思う事を述べていると、目の前にいる3人が誰が見ても分かる程照れ臭そうにしていた。
所謂褒め殺しというやつを現在進行形でダイレクトに穂乃果達は受けていたのである。こんな経験はもちろん初めてだった。
そして視線を横にずらすと、凛、花陽の次に座っていた真姫も顔は逸らしていたが僅かに頬を染めていたのが見えた。
音楽を評価され、彼女も気分が良いのだろう。
「いやぁ、真正面でここまで褒められるとは、照れるなぁ」
「は、恥ずかしいものですね、予想以上に」
「私も流石に恥ずかしいな」
照れ照れとしている3人。
さてどうしようか、と思い、凛に視線で救難信号。
しかし視線に気付いてはくれたが、意味には気付いてくれずにこにこと笑顔を見せてくる。
じゃあ花陽はと思ったが、苦笑いで彼女にも手に負えない様子。
真姫とかいう子にも頼んでみようかと視線を向けたが、誇らし気に笑顔を見せているのを見て、こりゃダメだと判断した。
まだ始まったばかりだが、これからは面倒なことになりそうだという予感がしてならなかった。
前書きでも書いた通り、少しの間μ'sとの関わり合いとなります。
今回分かった通り、主人公は特別なにかできるわけではありません。
それではまた次回。