星空凛と青春を   作:ひまわりヒナ

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凛と2人きりで見る星空。
一時的に影響をもらった彼が迎える、土曜日。
いつも通りの1人の日常に変化が……

改めてここで記させてください。
この作品は複雑な事情が絡むリアルに近づけて書くことを意識しています。楽しい事もあれば辛い事、暗い事もあります。
所謂シリアス要素も多くあります。

それをご理解いただいた上、星空凛と青春を、をこれからもよろしくお願いします。
それではどうぞ。


7話 とある土曜日

 朝6:00、なんとなく目が覚めた蓮。

 今日は土曜日、特に予定はないので二度寝でもしてしまおうか、とも思ったが眠気は襲ってこない。

 仕方がないので、とりあえず携帯をポケットに入れ顔を洗いに行き、ダイニングで適当に朝食をとった後、コーヒーを持ってリビングのソファーに座りテレビをつけた。

 最初に映ったのはニュース番組、特に見たい番組があるわけでもないのでそのチャンネルのまま、じっとテレビを眺めていた。

 そんな時、

「ただいま」

 

 玄関の扉が開いた音と共に父の声が聞こえた。

 足音が近づいたのを聞くと、蓮は振り返った。

 

「ん、お帰り。また朝帰りか、お疲れ様」

「また、直ぐに出るよ」

「そう、いってらっしゃい」

 

 少し素っ気ない態度で、再び視線をテレビに移す。

 そんな彼に特に何かを言うわけでなく、仕事に向かう準備を始めた。

 家の中にはテレビからの音のみが反響していた。

 

 少しして、準備を終えた父は蓮のいるリビングへと立ち寄った。

 

「最近、勉強の調子はどうだ?」

「……上手くはいってない」

「そ、そうか、頑張れよ。それじゃ、行ってくるからな」

 

 彼はまるでその話題から逃げるかのように、家を出て行った。

 蓮はそんな父の様子に何となく気付いてはいたが、テレビから目を離すことはない。

 

 そう言えば携帯に連絡が来ていないかを見ていなかった。そのことに気づき、ポケットから携帯を取り出す。

 そして映る、利用しているSNSに十数件の通知マーク。

 無意識に少し期待感を持って、アプリを開く。

 通知が来ていたのはクラスや友人のグループからのもので、また無意識に少し気持ちが落ち込みながらも、その内容を確認する。

 

「昨日、確認し忘れたから、結構溜まってたな……俺宛の用件はなさそうか」

 

 確認し終わると、携帯を閉じる。

 再び何もせずテレビを眺める時間が始まろうとした時、ふと昨日の夜の事を思い出した。

 

「昨日は勉強できたのにな」

 

 昨日、凛に誘われ向かった神田明神。そして一緒に眺めた星空。

 あの時間を体験した時、不思議と気持ちが洗われたような感覚になってそのまま勉強してへ打ち込むことができた。

 そして今も、あの時見た星空の記憶は残っている。なのに何故昨日のように上手く行かないのだろう?

 勉強をやらなければ、という気持ちはあるのに。

 

「あ、起きてたの」

 

 そんな時唐突に現れたのは目が覚めたばかりの母だった。

 彼女の問いに、うん、と首を縦にふる。

 

「今日はどこか行ったりするの?お金、渡しておく?」

「別に予定はないよ。お金も使ってないから溜まってる」

「そう……あ、今日も仕事だから。出かけるようなら 「戸締り、でしょ」 うん、よろしくね」

 

 それ以降特に会話はなく。行ってきますという言葉に返事するまで、彼はソファーに座りながら黙ったままだった。

 日差しは僅かに差し込む程度、薄暗い部屋の中で光るテレビをマジマジと見つめる。そんな自分の姿を想像して、自分ながら暗い生活をしてるな、何て思っていた。

 

 テレビを見つめる事にも流石に飽きを覚え始めた彼は、今日は何をしようか、と考えるようになった。

 時刻は9時00分近く、まだまだ時間はある。しかし何をすればいいか全く浮かばない。

 いや、正確に言えばやるべき事がある事なんて分かっている。けれど、それに対する意欲はメッキリ消えている。

 

(何か、ないかな)

 

 ネット、ゲーム、暇つぶしになるであろうものは浮かぶがしようとは思えない。

 友人に連絡でもしてみようか、そう思うと何故か自分の気持ちにブレーキがかかる。

 

 いつもこう、何も変わらない。変わる結果すら見出せない日常に彼は放られたような感覚。

 

 そんな時だった

 ピンポーン

 突然鳴ったインターホン。少し驚きながらも、誰が来たのかをモニターで確認する。

 そして映っていたのは、

 

「凛に花陽?何で……」

 

 彼女達が何故ここに来たのか、いつもならその事に長い時間をかけて考えるだろう。

 けれど、その時は珍しく即座に通話ボタンを押していた。

 

「ま、待ってて」

 

 自分は何故頭を悩ませなかったのだろう。

 自分は何故彼女達に、待ってて、と即座に伝えたのだろう。

 自分は何故気持ちを高ぶらせているのだろう。

 

 自分への謎ばかりが頭を巡る中、既に扉を開いていた。

 

「あ、蓮君、おはよう」

「蓮君、おはようにゃ!」

「あ、あぁ、おはよう」

 

 どんよりしていた雰囲気を壊すような笑顔で挨拶をする2人。

 気がつけば自分への謎など、不思議とどうでもよくなっていた。

 

「どうしたんだ、いきなり」

「蓮君を驚かせようと思って」

「昨日話したでしょ、一緒に遊ぼうって。で、今日は練習お休みだから、誘いに来たんだにゃ!」

「もしかして迷惑だったかな?用事があったとか……」

「え、あ、いや。そんな事ない。

 とりあえず見ての通り、俺は何も外に出る準備なんてしてない。

 少し時間かかるだろうから、家の中に入ってて」

 

 交流がめっきり減るまでは、お互い家に入る事はよくある事だったので、入っててと言われ躊躇う理由は特にない。

 お邪魔しますと言いながら、2人は家に入った。

 もっとも蓮は少し成長した彼女達を入れることに僅かに抵抗感を覚えていたのは、彼の中だけの秘密である。

 

「蓮君の家久しぶりにゃ!全く変わってない!」

「今、お茶持ってくるよ」

「あ、ごめんね。手伝おうか?」

「大丈夫、座ってて」

 

 久々の彼の家に懐かしさを感じているのか、辺りを歩き回りはしゃぐ凛。そして座って彼女と会話しながらも辺りをキョロキョロ見渡す花陽。

 そんな2人の声が聞こえる中、今日も気温が高い事を知っているので、キンキンに冷えたお茶を用意する蓮。

 お盆の上に置いて、2人が待つリビングへと向かう。

 

「子供じゃないんだからジッとしてろよ」

「えー、いいじゃん、いいじゃん!」

「まぁ構わないけど、それよりお茶」

「あ、ありがとう、蓮君」

「いただきますにゃ」

 

 歩き回っていた凛も花陽の横に座り、冷たいお茶を口に運ぶ2人。

 今日は特に暑い日だったので、その冷たいお茶は2人に確かな幸福感を与えた。ふぅ、と思わず息をついた時、ふと花陽は思い出す。

 

「そう言えば蓮君、ご両親は?」

「どっちも仕事中」

「あれ、蓮君のお母さんって、お仕事してたっけ?一緒にこの家で遊んでた時はいつも居たような気がするにゃ」

「最近始めたんだ、まぁいいだろそんな事。それより俺は着替えてくるから、適当にくつろいでて」

「え、う、うん」

 

 了解したのを確認すると、待たせては悪いので部屋へと急ぐ。

 最近外に出る事といえば学校ぐらい。とは言え、服はそれなりに持っている。

 お気に入りなどが特にあるわけではないので、適当に暑くない服装を選び、着替え終えた頃、

 

「「あー!」」

 

 何やら下の階が騒がしい。

 命に別状はないだろうが、とりあえず着替え終わったので急いで駆け下りる。

 

「いったいどうし「蓮君!蓮君!スクールアイドル!スクールアイドルの特集だよ!」……お、おう」

 

 目を輝かせながら、興奮気味にそう言う花陽。

 久々に見た彼女のこの状態の勢いに、思わずたじろぐ。

 アイドルの事となると人が変わる彼女、久々に見たから少し動揺しただけで嫌いではない。というよりも嫌いだったらこんなに仲良くなっていないと思う。

 

「放送されているのは、A–RISEってグループか。少し聞いた覚えはある」

「A–RISEは不動の一位、スクールアイドルを代表するグループなの」

「へぇ、1位ねぇ……」

 

 スクールアイドルに関して、μ's以外はほぼ無知である蓮。

 そんな彼でも一度は聞いた覚えのあるグループ名。さらにテレビを見ている限り、ダンスも歌も人気がある理由がよく分かるほどに完成されているように感じる。

 いくつもあるスクールアイドルの中の1位、代表するグループ。彼女の言った言葉は十分納得できる。

 プロからすればまだまだなのかもしれない。それでも、彼女達はスクールアイドルとして本気で活動している。その努力は到底、彼には想像できない。

 

 思った以上にアイドルの世界は深いものなのかもしれない。

 

「凛も早く踊りたいにゃ!」

 

 などと深く考え込んでいると、今すぐにでも動き出したいと言わんばかりに凛はそう言った。

 

「そう言えば、まだ踊ったことないのか?」

「全く練習してないわけじゃないよ。でも本格的に一曲通して踊ったことはないにゃ」

 

 まだ始まったばかりなので、それもそうか、と思いながら2人が踊っている姿を想像する。

 1番最新の記憶にあるダンスとして、START:DASH!!があったので、あの映像の中に2人がいたら、というのを考えたのだが、実際に見てみたい。かなりワクワクする。

 

「早く見てみたいもんだ」

「そ、そう言われると、何だか恥ずかしいにゃ〜」

 

 人前で踊る、自分達の踊りが誰かに見られる。その事を改めて自覚させられる蓮の言葉に少し顔を赤くする凛と花陽。

 そっか、2人は誰かの前で踊るのか。その事を蓮も2人の表情を見て改めて理解すると、先程のワクワク感は小さくなった。

 

 2人のことを良く知っているからこそ思う、2人はしっかりと踊ることができるのだろうか、人前に晒されるような事態にはならないだろうか、と。

 もちろん応援しているし、そうならないと信じたい。でもアイドルの世界のことはよく分からないから、不安ばかりになるのも極自然のことだった。

 人前で恥ずかしがらず笑顔で元気よく踊るA–RISE……アイドルの凄さをさらに痛感し、その不安は膨らんでいく。

 

「凄いんだな、アイドルって……」

 

 思ったままの感想を蓮はボソッとそう呟く。

 花陽はアイドルの凄さを彼女達の努力を、テレビなどを通してではあるが知っている。

 凛はアイドルについて花陽ほど詳しくはないが、ダンス、歌、あれが簡単にできたものではないことぐらい知っている。

 

 静かな空間の中で、スクールアイドル特集が流れるテレビ。

 少女達はこれから自分達がどういう所へ向かおうとしているのかを改めて感じ、少年は少女達が未知の世界へ入っていくということを実感していた。

 

 

 

 

 




楽しい休日、かと思いきや何やら重苦しい雰囲気。
蓮の事情、そしてこれから2人が入っていかなければいけない、アイドル事情も多く現れました。
しかし次回はそう言った雰囲気とは違う、楽しい雰囲気にしていこうと思います。

@LLH1hina twitterにて活動報告、適当に呟いてます。
何か質問などがあればそちらから、又、感想や評価をよろしければお願いします。

それではまた次回。
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