いつもの彼の裏で時折現れる感情に悩みながらも、服屋へと話は進む。
後書きにて今後についての報告。
しばらくの間デート回(尚、雰囲気がいつも楽しいとは限らない)
それではどうぞ。
「へぇ、やっぱり何でも似合うな」
「かよちん、可愛いにゃ〜!」
女性ものの服が揃う場所へと移動した3人。
数多くある服の中から厳選しなければならないわけだが、その為には試着ができる、これを使わない手はない。
そしてまず最初に花陽に似合う物を探して、時間は十分にあるため色々と気になったものを着てもらっていたのだが、そのどれもとても彼女に似合っていた。
「かよちん!次はこっち!」
「え、り、凛ちゃんもういいよ〜」
「時間はたっぷりあるから大丈夫にゃ〜」
「そう言うことじゃなくて〜」
彼女の声は届いてはいるが、色々と着せてみたいという凛の欲望が、彼女の言葉を凛の中で打ち消していた。
これからの夏シーズンに向けて、少し薄めの白いワンピース姿。
スカート姿に清潔感のある水色のノースリーブなど、正直凛が選ぶものが良いのか悪いのか、センスの欠片を微塵も感じさせない蓮にとってはよく分からないことである。
でも、直視するのを少し躊躇うほどに可愛い、という感情にばかりが彼の中にあったのは事実だった。
「ねーねー蓮君も可愛いと思うよね!」
「え、あ、あぁうん、可愛いな」
コメントがだんだん少なくなっていたので、聞かれたのだろう。そうは思いつつも、真正面から女の子に向けて可愛いと言うのは何となくブレーキがかかってしまい、目をそらしながら彼は答えた。
花陽の顔も凛から可愛い可愛いと何度も言われ続け、蓮からも言われれば、流石に恥ずかしくて真っ赤にするのも当たり前の事である。
「え、えーと、次凛ちゃん!」
「えー、やっぱり凛もなのー?」
嫌そうな顔をする凛だが、色々と着させてしまったので断りにくいのが現状。
しぶしぶ更衣室の中へと入る。
「それじゃ、凛ちゃんに似合いそうなの探してくるね。ほら、蓮君も」
「え、お、俺も?さっき花陽のは選んでなかったじゃん」
「細かい事は気にしないで。それじゃ、凛ちゃん待っててね」
そう言うと、花陽は半ば強引に彼の手を引っ張っていく。
ここまでされれば彼も断り辛く、やれやれと思いながら彼女と共に凛に合う服装を探し始めた。
「蓮君はどれが良いと思う?」
「あー、んー、えっと動きやすそうなの」
そう言って指差した服は確かに動きやすそうで、かつ涼しそうなもの。
しかし少しオシャレ、とは言い難いもので、花陽は思わず苦笑いを浮かべる。
「動きやすそうだし、清潔感のある水色で悪くもないとは思うんだけど……」
「やっぱ、オシャレって感じではないか。んー、難しいな、服選びって」
自分の服装は適当に親が買ってきてくれたものや安売りしていたものを組み合わせたりするだけで、極端に変な所はないが、何かパッとしない、そんな服選びをしている。
要はよっぽど変でなければ良いと思っているだけで、オシャレに関して知識はもちろん意欲もない。
ましてやセンスもないとなると、他の人の服を選べと言われても全く分からない。強いて言えば、相手の需要や得意なものに合わせることぐらいしか、発想がないのである。
「どう選べば良いんだ?まぁ夏物を選ぶって事は分かるんだが」
「そうだね、やっぱり着てもらいたいし。あ、蓮君はこんなの着てもらいたい、って服ある?」
「着てもらいたい、ねぇ」
「うん、オシャレする理由って他の人の目に映るって所が根本にあるよね。だったら相手が着てもらいたいものを、着た方が良いんじゃないかなーって」
着てもらいたい、か。
適当に辺りを見渡しながら、彼女に着てもらいたい服は無いかと探す。
そんな中ふとあるものが目に入った。
それはスカート。
少しそれを見つめたが、彼は視線をそらし別のものを再び探し出す。
一方で彼の視線の先を追っていた花陽は動きが止まった服装があることに気づき、その服装を確認すると少し慌てて話しかけた。
「蓮君、凛ちゃんにスカートを 「あれ、どう?」 え?あ、うん、蓮君が選んだならそれで良いと思うよ」
蓮が次に選んだのは何ともシンプルな白いズボン。それに続いて、少し大きめ、ショルダーオープンの水色フリル。
悪く無い組み合わせかどうか、それ以上に花陽の中ではモヤモヤとしたものが残ったが、選んだ服を持つと、先に着せてくると言ってその場から離れて行ってしまった。
そんな彼の後を見送った後、気持ちはスッキリしないまま自分も彼女に会う服を探し始めた。
先に更衣室の場所まで戻った蓮。
凛は退屈そうに鼻歌まじりに小さくステップを踏んでいた。
「うっす、持ってきた」
「蓮君なら運動服持ってくるかとばかり思ってたにゃ」
「ん、最初はそのつもりだった。そっちの方がお前らしい気もしたし」
「あはは、そっか、そうだよね」
僅かに彼女の位置が後ろにずれたような気がしたが、すぐに彼女は持っていた服を貸してと言ってきたので、近づいて渡した。
そしてカーテンを閉めた……かと思えば、カーテンをずらしひょこっと顔を出して、
「中、見ないでね」
「見るわけ無いだろ?」
「でもかよちんが着替えてる最中、まるで透き通して見えないかと言わんばかりに、必死に瞳孔を開けていたにゃ」
「そんなことしてな 「そうだったの!?」 タイミング、悪っ!いや、してないからな、神に誓ってしてないからな!」
にゃはは、と悪い笑みを浮かべながらカーテンを改めてちゃんと閉める凛。
着替えている間に、改めてちゃんと花陽に弁明していると、思った以上に早くシャッとカーテンが開く音がした。
「早いな、お、似合ってるんじゃないか」
「色、上下逆の方が良かったんじゃないかにゃ?」
「んん?そうか?俺は良いと思ってる、てか思いたい」
「まぁ蓮君にしては?」「相変わらずストレートで俺は泣きそうだよ」
そんな会話をしている間に、凛は花陽選びの服を受け取った。
計3着、その中には一応ということで練習着も含まれていた。
さすが、と言ったところだろうか。花陽の選ぶものはとても彼女に似合っていた。
自分のは凛が可愛らしいので偶然にもちょうど良くなったが、花陽の選ぶ服は彼女の魅力を十分に引き出している、そんな差がある。悲観している部分も大きいのかもしれないが、確かに彼女の選んだものは自然と凛に合っていて、服と彼女が互いに干渉せず上手い具合の調整が取れているのは間違いなかった。
「んで、服選びはもういいのか?全然時間あるけど」
「え?そんなわけないにゃ」
「そうだよ、蓮君。大切な事を忘れてるよ」
質問するとすぐにそう返す2人。そんな彼女達の視線は自分に集まっている。
もう何の事だか察した蓮、ため息をついた後、もう好き勝手にしてください、と言わんばかりに試着待機席へと座った。
そんな彼の行動を見た彼女達は、目を輝かせて、任せて!と一言だけ言って、すぐさまその場から離れて行った。
「服選びのどこが楽しいか今一分からないが、まぁ可愛い姿は見れたか」
そんな事を呟きながら、彼女達の姿を思い出す彼だったが、その姿の中にスカート姿の凛はいない。
「あいつはスカートじゃなくたって、似合ってるし……」
まぁ良い、と話を終わらせて良いかと、ブレーキがかかる。
そんな彼の脳裏にふと映ったのは、小学校時代のスカート姿の凛であった。
彼はその時の光景を今でもはっきりと思い出せる程刻まれているが、無理矢理掻き消すように頭を振る。
ふと見上げて目に入った照明の光はとても眩しかった。
きっと罪を犯した人もこんな光を見せられながら、尋問を受けるのだろうと、その場の雰囲気にはまるで似合わない事を思いながら空いた時間を過ごしていた。
もはやシリアス抜くのを諦め、こういった作品だ、と堂々とする事にしました。
もちろん、楽しいイチャイチャ回も考えていますので、お楽しみに。
それでは前書きに書いた通り重要報告。
この作品の今後の投稿は、毎月1日となります。
もし余裕があれば、月に2回、という事もあるかもですが、基本月1です。twitterで主に連絡を行っているので、確認していただければ、と。
それではまた次回。