仕方なくデュバリィを連れてホテルロレントに戻る、受付の人はなせが表情筋がピクピクしていたがなんでだろうね。
「…」
デュバリィはデュバリィで非常にむくれてるし意味わからん、なにもする気ないよ…いやマジで。
部屋に戻るとアイテムや武器の準備を始める、あれを使う時がきたか。
「その剣、随分と手が込んでますのね。」
デュバリィさんが食いついてくる、まぁ確かにあんまりこの世界じゃない武器ではあるな。
「魔獣も人も狩れる武器ですよ。」
形状は端的に言うと艶消しを施した片刃の剣だが厚みがそこそこある、しかも全体的に黒い。
「悪趣味だこと。」
なんとでも言えばいい。
そして草木も眠る丑三つ時、俺はミストヴァルトの最奥に来ていた。
「時間通りの到着ですね。」
「ま、一応ね。」
「…デュバリィ、ご苦労でした、下がりなさい。」
デュバリィの気配が消える、ここからだ。
「貴方をお呼び立てしたのは他でもありません、貴方を結社の執行者として迎え入れるためです。」
「お断りします。」
淡々と話が進んでいく。
「それは私達と敵対する…と取って構いませんね?」
「それはそちらが我々と敵対すればの話でしょう、それに今回僕を呼んだのは別の理由でしょう?」
そう、いくら俺のレベルが高いからといって全盛期の《漆黒の牙》や現役の《痩せ狼》《剣帝》なんぞには遠く及ばない。
「と、いいますと?」
「あなた方…というより《白面》が警戒しているのは俺の爆発力、つまり《白面》と相打ちにまで持ち込んだ俺の未知の力と知識でしょう。」
《白面》に内面を読まれた時に余計なことまでバレた可能性の方が高いからな、ハッタリに近いが…どうだ?
「全てお見通しのようですね、しかしながら貴方を結社に迎え入れたいというのも本当です、《白面》も私もそれについては異議を挟む余地もありません。」
「かの《鋼の聖女》殿にそこまで買っていただけるとは、俺も捨てたものではないらしい。」
まぁならないけどな。
「しかし貴方は私達と敵対する道を選んだ。」
アリアンロードの闘気が膨れ上がる。
「っ…!?」
「その代償は高くつくと知りなさい。」
やっぱりこうなるか、俺は剣を抜くと構える。
「《緑拳》のクロ、推して参る!」
言い放つとアリアンロードと一気に距離を詰め…
「ぐっ…!?」
一気に吹き飛ばされた、多分突かれたんだろうが全く見えなかった。
「この程度ですか?」
アリアンロードが失望を孕んだ声で聞いてくる、ふざけんじゃねぇこの作中最強が…
ゴロゴロ転がって無様に立ち上がると身体の内に意識を集中する。
「闘気爆発(オーバーブースト)!」
俺の身体から黄緑色の闘気が吹き出す、この戦技(クラフト)はSTR(攻撃力)とSPD(速度)を50%up、CPを100、発動時の攻撃が必ずクリティカルになる戦技だ、ただし3分後にSTRが50%downする。
「一気にいくぞ!」
同じくアリアンロードに肉薄すると突きを繰り出してくる、ただし今度は見える、突きを避けるとそのまま背後に回り込む。
「終ノ太刀・黒葉!!」
アリアンロードの兜目掛けて叩き込む、その瞬間俺の剣から黒い闘気が溢れだし濃縮され直撃する…
「…嘘だろ…」
一気に後退して距離を取る、考えうる限り最高の状態で放った一撃のはずだ…なのに…俺の手には剣だった柄が握られていた。
「確かに貴方の一撃は私に届いていました、ですがそれでは強者には届きません。」
化け物め…
「もしや貴方、あの《白面》を退けたあの力、自由には使えないのでは…」
あぁ、その通りだよ。正直なんであの鬼畜眼鏡を倒せたのか俺もよくわかってない。
「だとすれば貴方には失望しました。」
俺は怒りを抑えながらポーチからあるカプセルを取り出して飲み込む、振り向いた瞬間がラストチャンスだ…柄のみになった剣を棄ててグローブを構える…3、2、1…
「もう終わり…」
「剛ノ拳・滅覇!」
俺の《緑拳》の二つ名の元になった一撃、闘気爆発と滅覇の合わせ技。
「ですか?」
滅覇が直撃した瞬間、グローブの金属部分が砕け散る、だがさっきとは明らかに違う手応え…。
「あぁ、これで終わりだよ。」
「見事です。」
アリアンロードの兜が割れ顔が現れる、すっげぇ…
「すっげぇ…綺麗だ…」
見とれて動けなくなるほどに…。
「…貴方という人は…」
アリアンロードは少し微笑む(ように見えた)と魔法陣のようなもので消えてしまう。
「っ…」
闘気爆発の代償とSクラフトの疲労でその場に膝をつく、あぁ…バックの中にまだ予備の武器があったはずだ、少し休んだらそれでロレントに戻ろう。
「さすがにしんどかった…やっぱ…強いな…」
本気で殺しにこられたら闘気爆発状態でも簡単に殺されてた、俺を試してたんだろうな…
なんとか回復して立ち上がるとロレントに帰る、ホントに気を抜いたら倒れそう…あ…落ちる…
目の前に広がるのは真っ黒な泥と紅蓮の業火…それは全てを呑み込み無限に広がってゆく…空からは光の雨が降り、その光景は正に…
「はっ…!?」
何の夢かわからんが物凄く悪夢な気がする…昨夜はめっちゃいいものみたのに…ちくしょう…
「とりあえず飯いくか…」
アーベントに行くと適当に朝食を食べる、野菜が甘いな。というかなんでから知らないが周りの視線が俺に集中してる気がする、なんで?周りを見ると視線を逸らされるかなぜか生暖かい目で見られる、ますますわけわからん。
会計を済ませるとギルドに向かう、やっぱり視線は付きまとう…なんなんだまったく。ギルドに入るとシェラさん、エステル、ヨシュアの3人が俺を見ている、いや正確にはアイナさん含めて4人だけど。
「おはよーございます。」
「おはようクロさん、ちょっと二階に来てもらっていいかしら?」
シェラさんの眼が据わってる。
「いや俺なんかしました?全く身に覚えがないんですが。」
まぁ敵対勢力に近しい人間と接触したけど、え?それで遊撃士クビとかないよね…?
「いいから来て下さい。」
一切の反論を許さず二階に連行される、解せぬ…。
「そこに座って下さい。」
座る、一体全体なんなんだよ。
「クロさん、昨夜エステル達と別れた後どこに行きましたか?」
「アーベントで一杯やってましたけど。」
「誰と飲んでましたか?」
「知り合い。」
身喰らう蛇の構成員だけど。
「クロさん、アナタ今噂で女の子を酔わせてホテルに連れ込んだことになってるわよ。」
「え?」
「まさかとは思うけど事実じゃないわよね?」
「そんなわけないじゃん、ちょっと昔話をしてただけで結構遅くなったけどちゃんと帰らせたよ、そりゃぁ途中まで送っていったけど。」
田舎の情報伝達の速さ舐めてたわ…本来の物語以外でこんなにも手こずるとは…
その後も四苦八苦してなんとか誤解だと言うことを伝えて事なきを得た、もう2度と面倒なことには首を突っ込まない。
なんとか兜を叩き割るために四苦八苦してました。ちなみにカプセルはというのはもちろんゼラムカプセルのことです。
FC編では後2回登場予定です、次回もお楽しみに。