IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
どうやらセレニアと一夏が付き合うことになるエンディングも想定はしていたみたいですね、私。あんまし覚えてない上に、前にも同じの出しちゃってるかもしれませんが、その時はお許しを。こう多いと確認するのも一苦労なので・・・。
ワイワイ、ガヤガヤ・・・・・・
私の前を女子の一団が、おしゃべりしながら通り過ぎていきました。
聞くとはなしに聞こえてきてた会話は、
「ねぇ、来年の進級時に選ぶ学科はどれにするか決まった? ちなみに私は、断然ISレスキュー科志望なんだけど」
「私は空中建設科かな~。就職先の見学として見に行ったときに、空飛びながら高層建築造ってる姿に魅せられちゃってて。戦果で壊された分を立て直さなくちゃいけないわけだし、やっぱ今の時代は土木建築でしょ。見た目も綺麗な建設作業員のお姉さま方マジリスペクトっす。・・・って感じ~?」
「・・・嘗ての面影なさすぎるわよね、アンタたちって・・・まぁ、兵器としてのISは用済みになったんだから仕方ないのかな?」
「そうそう♪ しゃーない、しゃーない、どうしようもなーい♪ 明日は明日の風が吹くと思って生きていくのが私たち現代日本人~♪」
ーー大体、こんな感じの内容でした。
「・・・ほんとーに変わってしまったんですね、IS世界・・・」
私は胸の痛みを自覚しながら、それでも視線だけは外さずに復興が進みつつある日本の景色と、様々な学科に分かれて各種分野で平和利用が進められている『世界最高戦力』ではなくなったIS操縦者を育成するための国立機関『新IS学園』に通っているらしい女子生徒さんたちの姿を記憶に焼き付けるため一分たりとも見逃さないよう目を眇めて見つめ続けておりました。
あの戦争の後、世界は混乱期を迎えましたが、それは同時に活気と進取にあふれた開拓時代の様相をも呈していて、世界と人類は新しい社会の枠組みを建設するため各種業界への新規介入及び次代を担う若者たちの育成に力を入れ続けていました。
ISの民需完全採用もその内のひとつです。
嘗ては数が少なく、国益のためにスポーツであると言う名目の元でおこなわれていた兵器開発が主流だったIS産業は、今はもう昔の話。
災害救助や建設産業、ISの操縦者に対する絶対的な安全性能とパワーアシスト等の補助機能によって事故や災害による死亡率は大きく低下し、今ではISが介入すれば99パーセントの確率で現場から生還できると言われる時代に突入していたのです。
篠ノ之博士も議長たちから宇宙開発と宇宙進出の話を持ちかこられた事で大いにやる気を出し、その為の作業用機械としてISをバカスカ造りまくっては大量に供給しまくり、結果として供給量が過剰になりすぎて民間企業でも比較的安価で購入できる新時代を支えるインフラの一つになりかけてしまってさえいる今日この頃。
・・・正直、始めからこうしてくれていればと思わなくもないですが、人類は痛みを味わうことでしか自らの過ちに気づけないことが多いので、その類の物だったのだろうと今では思いたく思ってもいます。
死んだ人間は蘇らず、死者に対して生者がしてやれることなど自己満足の慰霊と献花のみ。それで良しとする人もいるのでしょうけど、私にはそれが出来ないタイプのため今もこうして此処にいます。
この場所に、今の私は立っている。あの中で生きてきた私は、あの中で死ななかった私は、あの大戦の引き金を引いてしまった私は、今もこうして生き恥を晒しながら自己満足の平和思想に取り込まれていく自分に嫌気が差しています。それが、前世今生あわせて私の人生がだしたクソッタレな答えだったのです。
「ーーつくづく救いようのない人間ですね、私って奴は・・・って、あ痛っ!?」
「ほーら、学校の校門前で生徒会長が暗い顔しなーいの。そんなだから新入生の子たちに冷たい人だって誤解されちゃうんだからね? もう少し笑顔を意識して作りなさい」
「ううう・・・自分なりに頑張ってはいるんですけども・・・」
「努力したって結果が出せなきゃ意味がない、それが組織の長というものなんだから頑張るだけじゃダーメなの。もっと精進なさい、異住セレニア・ショート現生徒会長さま?」
「・・・・・・了解しましたよ、善処させていただきます。更識楯無前生徒会長さん」
新旧ふたりのIS学園生徒会長職を担う私と楯無さんの二人がいつもどおりの会話を交わしているのは新IS学園校舎のバス停前。
旧校舎はIS関連の整備施設などが豊富に揃えられていたことから整備課などの後方要員育成がメインとされ、操縦技術及び各種専門技術を学び取る場として新IS学園が学園島の反対側に建設されたため三年生の今頃になってもまだ生徒会長を降りられなくなってしまった彼女は頻繁にIS使って会いに来てくれてたりしましてね。
以前のIS条約は半ば戦時条約と化していたため、新たな枠組みとして『IS平和維持活用法案』が国防委員長・・・いえ、米大統領閣下が提出され全会一致で可決となり、専用機持ちに限らず社会秩序や経済に著しく影響を及ぼさない用途に限り使用制限は大幅に縮小されたため操縦者の行動は自己責任の名の下に自分で自分を律することが求められる形となったのです。
それら精神面での教育が私と相性良さそうだからって理由で新校舎の生徒会長職を押しつけられた私も、今ではIS学園二年生。・・・見た目はあんまし変わっていないんですけどね・・・。マジでいつ成長するんですかね、私の身体って言うよりも身長は・・・。
「ところで今日はどうしたの? いつもは生徒会室に引きこもって書類仕事に精を出してるセレちゃんが、珍しい所で出会えたなーって意外に思ってたところなのだけど?」
「引きこもりて。・・・いやまぁ、強く否定は出来ないのは自覚していますけど、私にだって外に出る用事ぐらい有るときにはありますよ。偶にはですけどね」
「セレちゃんが外に出る用事・・・? ーーあぁ~、なるほど。そういうお話のことねぇ~♪」
「・・・・・・なんですか? その意味深な笑顔と扇子に書かれてる『姫始め』の卑猥な単語は・・・」
「べっつに~♪ 何でもないったら何でもなーい。・・・あっと、大変。誰かが私の救助を必要としているわ! 日本人を助ける表の世界の暗部組織『更識日本国内限定救助隊』の長として助けに行かなくちゃダメよね! と言うわけでシーユーアゲーイン♪」
「・・・その国際なんたらみたいな名前はどこから・・・まぁいいですけどね。行ってらっしゃい、頑張ってきてください。応援してますので」
「うん、セレちゃんも彼氏さんによろしくねー♪」
「ーーーっ!!!(///////)」
「あははーっ♪ 赤くなった赤くなった! 最近のセレちゃん人間くさーい! 昔のも好きだけど今のあなたも大好きよ! 寂しくなったらいつでも呼んでちょーだい。いつでもどこでも駆けつけてあげるから。ベッドのな・か・に・な・ら・・・ね☆」
「早く行っちゃえ、変態生徒会長!」
「イヤ~ン☆ 楯無のこと言葉責めしちゃダメ~ん♪ 今夜にでもお邪魔したくなっちゃう~ん♪ と言うわけで私はドロン! 更識忍法『霧になる』の術! ドロン!」
「ただのワンオフ・アビリティでしょそれ!? ・・・ちっ、またしても逃げられましたか・・・」
ちくそう・・・。いつか絶対復讐してやりますからねぇ・・・。
「おう、待たせたなセレニア。・・・って、どうしたんだよ何も見えない空なんか睨んで。憎むべき怨敵でも見つけたか?」
「・・・別になんでもないです。それから、大して待たされてはおりません。私の方が比較的早く仕事が片づいたから暇だったんで先に着て待ってただけですのでお気遣いなく」
「いや、その顔色と表情で言い訳するには不適切すぎるだろ、その言い分」
織斑さんにまで似たようなことを言われてしまう私っていったい・・・。
それにしてもーー
「・・・そんなに顔に出ちゃってますか? 今の私の感情って・・・」
「ん? まぁ結構な。つっても付き合い長いから判別できる程度でしかないが、昔と比べりゃ天と地の差だな。むしろミレニアの奴に少しだけ似てきた気がするくらいだぞ?」
「うっ! それはちょっと・・・由々しきすぎる事態ですね・・・改善方法を検討しなくては私まで変態の仲間入りを果たしてしまいかねません・・・」
「今更手遅れすぎてる気がするんだけどなー」
気楽な口調で自虐と罵倒を兼任させちゃう織斑さん。・・・変わったのは良いことなのかも知れませんが、私に対してはも少しだけ優しくして頂けません? これでも自分の変化ぶりに戸惑っていて、最近やたらとアンバランスな精神状態に陥りやすくなってるんですから・・・。
「んじゃ、行くか。久しぶりに恋人たちの逢瀬とやらを満喫しに駅前モールまで。ウィンドウショッピングでいいんだったよな?」
「はい、一応。・・・ああ、でもそう言えば買っておかなくちゃいけない物がありましたので、その店だけは購入を前提に寄らせてください。いい加減古くなって使えなくなってきたみたいでしたのでね」
「ああ、その程度なら問題なく片手間でこなせるから構わないが・・・何を買うつもりか差し障りがなければ聞かせてもらっても構わないか? お前が食品以外の買い物って割と珍しい気がしたもんだからさ」
「別に構いませんよ? 聞かれたからって減るような代物でもないですからね」
「おう、サンクス。で? 何を買う予定なんだ?」
織斑さんが他意なく悪意なく訊かれてきた質問に対し、私も特にこれと言って隠し立てする理由もないので普通の態度と口調でお教えいたします。
「下着です。最近、胸の辺りが窮屈になるまでの期間が短くなりすぎまして・・・結構頻繁に買い換えねばならず、引きこもり会長には片手間として誰かの買い物につき合ったときにまとめ買いして済ませたいという細やかな野望がありますもので」
「・・・なぁ、今更になって気づいたんだけど、お前ってさ。実は変なことと一般常識に詳しいだけで、女の子として自分がどう見られてるかって事を、あんまし気にしたこと無かったりはしないか?」
「??? ええ、まぁ確かにそうですけど、それが何か?」
こんなチンチクリンのロリ巨乳相手に欲情するのは、どっかの全裸な変態会長ぐらいなものですからねー。圧倒的大多数が気にしてない事項は気にしなくても良いのです。端数なんか切り捨てちゃっていいのです。数は力。戦いは数なのですよ、お兄ちゃん!
「・・・なるほど、よく分かった。あと、今の今までお前の危うさに気づけなくて悪かった。すべき事がようやくハッキリくっきり目の前の霧が開けて見えてきたよ」
「・・・???」
「とりあえず、買い物帰りか行く途中で薬局よって構わないかな? 急いで購入しとかないとヤバそうな物の存在に今気が付いた」
「私は別に構いませんけど・・・なに買われるおつもりなのですか?」
「ゴムを少々。使用目的は、人間関係を円滑に進めるために」
「??? ーーよくは分かりませんが、人間関係の円滑さは大事ですからね。私でよければ協力させていただきますので、あり得ないとは思いますけど私なんかの力が必要になる事態がもしあったとしたら遠慮なく頼ってくださいね?
ちょうど、以前のお世話になってた頃のお礼がしたいと常々思っていたところでしたし、お返しとして出来うる限りこの身を張って尽力いたしますので御遠慮なさらずに・・・って、どうしたんですか織斑さん? 急に空を見上げて鼻をつまんで首筋を手刀で叩き始めたりなんかして・・・鼻血も出てますし病気ですか? 今日の買い物やめて病院行かれます?」
「・・・なんでぼだい、気にずるな。それより早く行こう。昼間の終わりは、もうすぐそこだ!(ボタボタボタ)」
「は、はぁ・・・」
何でもいいから鼻血を拭け。今の姿で私の見た目に迫ってたら通報されかねん。
この人ももう少し他人から自分がどう見られてるか考えられるようになってくれればなー、私も楽できるのですが。
危なっかしくて放っておけないからと言う理由で天下を取った劉邦みたいな人ですからなー。私たちが付き合いだしたのもそれが切っ掛けというか理由の全てだった気がしますし。いずれは私のポジションも張良さんに? それともノッブ辺りでしょうか? 少しだけ楽しみでもあり不安しか無くもあり。微妙なところです。
「では、参りましょうか織斑さん。此処にいたらあなたが不振人物扱いされて通報されかねませんからね。安全第一で行きましょう」
相も変わらず女子生徒オンリーな新IS学園。男子も整備課に入れろと進言してるんですけどねー、一度根付いた伝統は戦争で焼き尽くしでもしないとなかなか消えてくれたりしないものみたいです。
なので此処でも織斑さんはパンダさん。熊科の生き物が町中を彷徨き回って女子校付近に出没してたら一発でアウトです。滅多に人を襲わない狼さんは恐れなくていいので、人食い熊の類には気をつけましょうね? ちなみに鮭を素手で捕まえるのはグリズリーであってツキノワグマは草が主食の何でも食べれる雑食系です。
*余談ですが私のその後は、カティ・マネキン准将でした。