IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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長らくぶりとなりますね。
思い付きで書いてみた番外編となりますが、他のところに出すと分かり辛そうでしたのでここに投稿させて頂いた次第です。
内容としては、言霊一夏を主人公にして言霊ISを1話目からやり直してみた…そんな感じのストーリーとなっております。


言霊ISドリフター(漂流者)

 それは、ある夜のことだった。

 俺は日課としている、就寝直後のセレニアおっぱい寝返りプルルン♪を部屋に忍び込んで観賞した後、自分の部屋へ戻る途中の廊下が妙に長くなっていることに気づいていた。

 引き返そうかと悩みはしたのだが、明らかに背後の空間が広がりすぎている気配を察していたため『止む無し』と割り切り前へ前へと進み続けた。

 

 暗闇に包まれた長い長い廊下。その果てに出口の光が見えたので、俺は懐から取り出した雑巾を投げ込んで、狙撃されることなく床に落ちたのを確認してから光の外に出る。

 当然、出る瞬間と出るまでの速度には格差を設けることにより、念には念を入れておいた。将来的にセレニアを娶って一生を健やかなるオッパイライフで過ごしたいと願う俺に油断などない。

 

 そして、ようやく辿り着いた陽の光に満ちた其処は微妙に薄暗く、暗闇に満ちた廊下よりかは遙かに陽の光で満ちているけど、相対的基準だけで比べられてもなぁ~。

 まぁ、とにかく状況確認だ。俺は周囲を見回し、その場にある物を確認する。

 

 

 ――無駄に天井が高く、埋め込み型の照明ばかりで金のかかりそうな内装の場所。それでいて、実に殺風景きわまりない。

 

 目の前に座してスポットライトの当てられている、『鎧に似た印象を受ける《何か》』しか、存在していない広々とした薄暗がりの空間。

 

 ――そこは俺にとって、記憶を刺激される場所だった。

 どこかで見たことがある。何かがここで始まった記憶がある。

 だが、ナンだ? 俺の何がここで始まっていたのだろうか・・・・・・?

 

 顎に手を添え悩む俺に、“其奴”は笑いかけるように眼の部分を光らせて、少しずつ少しずつ俺の動きに合わせるように、自らの手足を動かし始める。

 

 

 皮膜装甲展開、・・・・・・完了。

 推進機正常作動、・・・・・・確認。

 近接ブレード、・・・・・・展開。

 ハイパーセンサー最適化、・・・・・・終了。

 

 

「そうだ・・・。これはアレだ。あのときと同じ物だ。思い・・・・・・出した!!」

 

 俺は二つの前世を持つ最強魔道師剣士の如く、唐突に自分の忘れていた遠い過去を記憶の彼方から呼び起こさせる。

 

 中学三年、最後の春。二月の真ん中頃に行われていた藍越学園入学試験。

 そこに行こうとして間違えた俺が迷い込んでしまった場所で出会ってしまった、俺の運命を変えた機体。俺に進むべき道を示してくれた銀髪の魔王と出会う切っ掛けを与えてくれた場所。

 

 第三世代IS欠陥機《白式》。

 そして、IS学園入学試験会場。

 

 夢か現か幻か、何故どうして何のためにか、何も理屈はわからんのだが。

 どうやら俺は、自分の過去に舞い戻ってきてしまったらしい。

 

 まこと現世は複雑怪奇、摩訶不思議。

 そして、それ故にこの世は面白きかな。

 

 

 

「えーと、織斑一夏です。よろしくお願いします。以上!」

 

 声を張り上げ名を名乗り、頭を下げた後にさっさと己の席へとひた早歩く。

 速度だ。速度が全てだ。いかに速く目的地に着けるかどうかで作戦成功の八割は決まるものなのだ。

 

「今日からお隣さんだな、仲良くしようぜ。

 そんじゃあ改めてーー俺は『織斑一夏』だ。

 これからよろしくな、異住」

「・・・・・・・・・・・・よろしくお願いします、織斑さん。

 それと、私のことはセレニアとお呼びください。名字は呼ばれ慣れてないんですよ。

 とっさの時に返事が遅れると何かと不便そうですし、できれば名前の方でお願いします」

「ん? そうなのか? わかった。

 んじゃ、もっかい改めて・・・よろしくな、セレニア」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええ・・・・・・お手柔らかに・・・・・・・・・・・・」

 

 ニカッと笑って、俺は自分の席に座り込み、隣の席の茫洋とした無表情が特徴的な女子生徒と『初対面』の挨拶を交わし合う。

 

 頭を下げ合い、俺は相手よりも一瞬だけ速く頭を上げる。

 そして凝視する。

 

 ――ぶるん♪

 

 ・・・・・・おおぅ・・・。

 俺は感動のあまり、思わず涙しそうになるのを堪えるため、《明鏡止水》の部分使用が必要なほど、深く激しく静かに感涙させられた。

 

 これだ。コレが見たかったのだ。コレが見たくて、俺はここまで来てしまったのだ。

 

 

 IS学園入学直後、俺はまだオッパイの良さに覚醒めていなかった。それ故に見逃していたことを、俺は大分後になって知ることになる驚愕の真実。

 

 なんとセレニアは。あの警戒心が人一倍強い無力な女の子は。

 IS学園入学直後の時点だと、『自分の胸のサイズに合わせたブラジャーを身につけていなかった』のである!!

 おかげで揺れるときは物凄く揺れる! 激しく揺れる! 揺れまくる!!

 さっきのだって本来ならば『ぷるん♪』で済むところを『ぶるん♪』である。場合によっては『ぶるん!』さえも有り得るだろう。自分の胸のデカさを自覚しながら配慮を怠っていた油断しすぎなロリ巨乳美少女の眼福永久保存記録映像が、今の時点で入学すれば見放題!

 

 だから俺はここまで来た。世界で初めてISを起動させた男として、IS学園入学までの流れを甘んじて受け入れ続けてきたのだ。

 

 そう! すべては良いオッパイを見るために! ただその一事の為だけに!

 当然の義務だ! デカいオッパイには、それだけの価値があるのだからな!!!

 

 

「・・・・・・? どうかされたんですか? 織斑さん。なんだか顔色がお悪いように見えますけど・・・保健室に行かれますか?」

「いや、気にしなくていい。美しい物を見ると、人は無条件に尊いと感じる本能があるからな」

「は、はぁ・・・・・・?」

 

 不思議そうにというか、違和感に悩まされていると言いたげな見慣れたセレニアの表情が愛おしい。そして考え事をしているセレニアのオッパイの揺れ方は尚愛おしい。

 

 ああ・・・過去に戻ってこれて良かった・・・。時間逆行物バンザイ。ジーク・おっぱい。

 

 

 

 そんなこんなで、俺は過去の色々と初々しい反応を見せてくれるセレニアとの会話と揺れる巨乳を愉しみながら、一時間目の授業を終えて二時間目に突入し、それも終わって二時間目の休み時間に入った時分。『それ』は唐突に舞い降りる。

 

「ちょっと、よろしくて?」

「へ?」

 

 いきなり掛けられた声に驚いて、俺は素っ頓狂な声で返事をしてしまう。

 セレニアとのやり取りばかり思い出していたせいで、このタイミングで誰かに話しかけられていた過去など丸っきり思い出せていなかったのだ。

 

 もっとも、声を聞けば誰のものかは瞬時に解る。

 念のために相手を見ると、やはりCカップ貴族セシリア・オルコット・・・お前だったか!

 

「訊いてます? お返事は?」

「ん? 先ほど返したと思ったが・・・アレでは駄目だったのか?」

「まあ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

 なにやら舞台役者さながらに身振り手振りを交えて驚きと不満を現してくる昔のセシリア。

 ・・・そう言えばコイツって、出会ったばかりの頃はこんな態度をとっていたような気がするな。

 正直、入学直後から一ヶ月後ぐらいまでの記憶はセレニアのこと以外あまり覚えていないというか、思い出そうとすると激しく頭が痛みだしてしまい上手く思い出せたことがないのである。

 

“惑わされるな! ソイツは偽物だ!”

 

 ――と、俺の中の俺がその頃の俺自身を否定する声が聞こえてきて、記憶再生の邪魔をする。その繰り返しで俺はあまり過去にこだわらなくなって久しいからなぁー。

 

 しかし、それにしても――――

 

「相応の態度で対応してほしいなら、まず自分の方から誠意を示すのが礼儀だろうが。

 初対面の相手に名乗りもしないまま、『自分は有名人だから名乗らなくても知っているのが義務だろう?』とでも言うような態度で接してくる礼儀知らずには、十分すぎるほど礼儀正しい対応だったと自負しているのだがな」

「なっ・・・・・・っ!?」

 

 相手は俺の返しが意外だったのか、金魚のように口を開けてパクパクと開閉し、セレニアも驚きはしないまでも『意外です』とは思ってそうな表情と視線で俺を見上げてくる。

 

 他の者たちは知らん。相手と話しているとききゃあ、相手の顔を見つめるもんだ。

 特に。

 

 ――相手がケンカ腰で話しかけてきた場合には、目線一つ逸らした方が負けよ。

 

「わ、私を知らないばかりか、このわたくしを礼儀知らずだと仰るんですの!? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補にして誇り高き英国貴族の一員でもあり、入試主席のこのわたくしを!?」

「応。当然であろう? 地位身分役職に、人としてどうかまでは含まれとらん。地位が高ければ人格的にも優れているなどと言うのは幻想に過ぎん。悪いことは言わないから認識を改めることだな」

「~~~~っ!!!」

 

 相手は顔を真っ赤にして怒り狂いながら、それでも人前で掴み掛かるのは貴族の矜持が許さなかったのか寸でのところで踏みとどまり、「・・・こほん」と一つ咳払い。

 

「・・・まったく、信じられませんわね。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら・・・・・・」

 

 ブツブツ言い出したが、基本的に俺はテレビがあってもアニメしか見ないので、どのみち今の時点で彼女のことを俺が知っていられるわけも無し。ならば知ってることは黙っておくとしよう。俺はセレニアほど臨機応変に舌が回る性質ではないのでな。

 

「いいでしょう、教えて差し上げますわ。わたくしの名は、セシリア・オルコット。イギリスの代表候補生にして専用機を与えられている、所謂エリートなのですわ」

「ふむ」

「そんな選ばれた人間である、エリートのわたくしとクラスと同じくすることだけでも本来なら、あり得ない奇跡的偶然・・・いいえ、幸運なのですから、その現実をもう少し理解していただける」

「重々理解している。そもそも、美人で巨乳の女と一緒のクラスになれて幸運を感じない男などおらぬ。お前ほどの美人とクラスメイトになれた事実は素直にうれしく思っている」

「な!? な!? なぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」

 

 なんだよ? なぜ急に顔を茹で蛸のように真っ赤にして驚き騒ぎ狼狽え様をさらし出す。

 俺は事実を言ったまでのこと。

 美人と一緒のクラスはうれしい。巨乳美少女なら尚うれしい。

 そして、セシリアは美人だ。さらにCだ。ギリ巨乳だ。射程範囲内だ。

 俺は本命以外の巨乳は差別しない。デカパイは皆等しく愛おしい。

 

「あ、あ、あなた! あなたはっ! あなたって人はぁぁぁっ!!!」

「どうした、セシリア。落ち着け。心とおっぱいの揺れ具合が乱れているぞ」

「こ、これが落ち着いていられるわけ―――」

 

 キーンコーンカーンコーン。

 ・・・あ、予鈴だ。

 

「すまん、セシリア。授業開始時刻の鐘が鳴った。話の続きはまた次の機会にでも」

「っ・・・・・・! も、もうこんな機会は二度と訪れませんわよ―――っだ!!!」

 

 真っ赤になったまま、自分の席へと走り去っていくセシリア。

 それを見送ることなく、俺は鞄から次の授業のため教科書を取り出し、並べていく。

 

 俺が愛するのはオッパイであり、尻ではない。決して嫌いではないが・・・やはり濁りなき眼でオッパイを見つめるためにも浮気はいかん。心が乱れる。――しかし意外といい後ろ尻だったな。

 

「あのー・・・、織斑さん? 一つ質問させてほしいのですが、よろしいですか?」

「なんだセレニア。お前の頼みなら俺は、世界を相手に関ヶ原をする覚悟はとっくの昔に済ませてあるぜ?」

「なんでいきなり私への好感度がMAXに・・・? いえ、今のが聞きたい質問だったわけじゃないんです。

 それじゃなくてその・・・貴方って昔から今みたいな性格してらしたんですかね・・・? たとえば、えーっと・・・朴念仁オブ朴念仁とか呼ばれたりした過去があったりとか御座いません・・・?」

「ふむ・・・朴念仁、か・・・・・・」

 

 俺は教室の天井を見上げて過去を振り返り、思いを馳せる。

 確かにあった。何度か言われた記憶が俺の脳裏の片隅にでも留めてあるから。

 

 だが、しかし。――――終わったことだ。昔の話でしかないのである。

 

「懐かしい響きだ・・・確かに俺は昔、そう呼ばれたことのある男だった。

 だが今は違う。今の俺はもう、朴念仁オブ朴念仁ではない。

 生まれ変わったネオ俺を超え、さらに進化し、天下人へも王手をかけようとしている俺は言うなればネオグレート俺。もしくはスーパー俺F2000だ!!!」

「語呂悪すぎる呼び方ですねそれ! 自分で言ってて舌噛みませんか!?」

「大丈夫だ問題ない! 俺は変わりたいと思える人に出会ったおかげで生まれ変わっているからな! 色々と! エロエロと!

 そうさ! すべてはお前のために! お前に相応しい男となるため俺は生まれ変わった織斑一夏! この宇宙のすべてから君を守り抜くため強くなった男!

 東西南北中央不敗! スーパーおっぱいマスター織斑一夏となった俺はここだ! ここにいる! セレニア! お前の元に俺は帰ってきたぞぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

「ごはぁぁぁっ!? ・・・や、やはり私のせいなのですか・・・? 全然身に覚えがないんですけど・・・むしろ初対面の相手としか思えないんですけども・・・それでも、それでもやはりこの変化は、原作に存在しないイレギュラーな私がもたらしてしまったトンデモ変化なのでしょうか・・・!?

 ――だとしたら、原作主人公をここまでの変態にしてしまっている私は・・・私はぁぁぁぁ・・・・・・っ!!!」

 

 頭を抱えて、顔色を真っ青にしながら胃のあたりを押さえるセレニア、かわゆす。

 ――そんな感じで、俺のレベルカンストから始まる平行世界タイムスリップ生活は始まったのだった。

 

 これから何が待っていて、どんな敵や、どんな巨乳との出会うのか・・・・・・愉しみで夜も眠れそうにないぜぇっ!!


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