IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート)   作:ひきがやもとまち

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最近、精神的に不安定でしたので思い切ってギャグを書きたくなり、だいぶ前に思いついたけど書かなかった作品の一つを書いてみました。
ただ、思いついてから日が経ちすぎていたためか忘れていた部分が多く上手く書けなかったことが悔やみであります。
とりあえず試作品という形で投稿しますので、完成形を目指すとしたら別の機会でという事で。


学園アイエスの言霊少女(試作品)

 

 ――私が《インフィニット・ストラトス》の世界に転生してから十六年の時が経ちました。

 今の私には前世の男子高校生だった頃の自我はほとんど残っておらず、記憶だけが思い出として残留する程度のもの。完全にこの世界の住人の一人、異住・セレニア・ショートと言う名の少女として第二の人生を送っております。

 そんな私は今日、晴れて物語の舞台であるIS学園に入学を果たしました。別に原作介入したかったわけではないんですけど、ただなんとなくと言いますか、いるべき場所に帰ってきたような感じと言いますか・・・。初めて来たはずの場所なんですけど、どうしてだかそう感じてしまって入学しないと落ち着かずにこうなった次第です。本気で自分でも訳分かりません。

 

 

 まぁ、そんなこんなでIS学園の入学生として1年1組に配属され、原作主人公の織斑一夏さんとの面識も終えた私たちは入学初日の三時間目を迎えております。

 

 ―――そしてそこで、ちょっとだけ困った自体に直面する羽目になっておりました。

 

 それはクラス担任である織斑千冬先生が教室に入ってきて授業を始めようとした矢先、「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」と何気ない口調でつぶやかれた一言からはじまったものでした―――。

 

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

「私もそれが良いと思います!」

「お、俺っ!?」

 

 クラス代表・・・いわゆるクラス委員長みたいな役職を推薦する議題が担任教師の口から発せられたことによって始まってしまったこの問題。

 

「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないか? いないのなら無投票当選だぞ」

「ちょっ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな―――」

「自薦他薦は問わずと言った。他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」

「い、いやでも―――」

 

 普通に考えて『自薦他薦問わず。ただし他薦された者に拒否権はない』などという、半端な民主主義を採用した選出方法で募集してしまえば生徒同士でもめ事が起きることぐらい予測できて当然。他薦する側が一方的に有利で、無責任に役割を押しつけられて失敗した時の責任負担もないというのであれば誰だって面白半分で『世界初の男性IS操縦者』なんていう物珍しい客寄せパンダに投票するでしょうし、敗北が自分たちの利益に関わらないというなら尚更のことです。

 ましてや、入学したばかりで横のつながりもなく相手のプロフィールも実力さえ知らない人たちばかりの中では『肩書き』だけを選考基準に選ばざるを得ません。

 完全に織斑先生のテキトーすぎる選出方法の丸投げっぷりが問題の大本になってたんですが・・・・・・私自身も言いそびれちゃいましてねぇ・・・。なんか普段以上にやりづらく感じているのは何でなのでしょうか?

 なんとなくこう・・・あまり口出しし過ぎちゃダメだったような気が、デジャブみたいに甦ってきちゃって言い出しづらいのです。今までこんな事なかったんですけど、どうしたんでしょう? 今日に限って私の体は・・・。

 

「待ってください! 納得がいきませんわ! そのような選出方法は認められません!」

 

 そうこうしている間に「バンッ!」と机を叩いて立ち上がる人が現れまして、皆の推薦する『面白そうだから』の織斑さんに対して『実力主義』を掲げて真っ向から批判を浴びせて立候補されてこられたのでした。

 

「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしです!

 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 興奮冷められぬ、といった調子でアイドリングを終えて順調にエンジンを回し始めたらしいイギリス代表候補生の肩書きを持つ、お嬢様系の金髪ロール美少女セシリア・オルコットさん。

 

 まぁ、コレも常識的に考えて言ってること自体は正論でしょう。だって『代表候補生』なのですからね。

 IS操縦者育成校であるIS学園に入学したばかりのヒヨコにすらなれていない、乗り方を教えてもらいに来て受け入れられたばかりの新米相手に、数年前から訓練してもらっていた人の方が実力で上なのは当たり前のこと。むしろ後れを取るだけでも大恥なくらいにアドバンテージがありまくってる。

 

 と言うよりも、いちいち大声で主張するほどのことでもないです。言ってみれば、サッカー部に入っていて親に部費を払ってもらいながら本気で学んでいるはずの小学生が、同じクラスの遊び半分でサッカーやってるだけの子たちに『お前らより俺の方がサッカー上手いんだぜ』とか言うのと同じようなもんです。

 当たり前の事実はいちいち言わんでよろしい。むしろ言ってる人の器量が疑われてしまいます。立候補だけで十分すぎます。あまり余計なことは言わない方がたぶん面倒くさい事に巻き込まれなくて済むと思うんですが・・・・・・

 

「大体、文化としても後進国な国で暮らさなければならないこと自体、わたくしにとっては耐えがたい苦痛で―――」

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

「なっ・・・!? あ、あなたねぇ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

 ほら、やっぱりこうなりましたし・・・。売り言葉に買い言葉~・・・。

 とは言え、お互いに悪し様に言ったんですから、そこで「お互い様だ」と平和的に終わらせられたら良いのですけども。――感情が絡んだ人間関係のもつれの場合だと大抵の場合はそうはいかないんですよねぇ~。

 

「決闘ですわ!」

 

 ほら、やっぱりこうなりました。バンッ!と再び机を叩くセシリアさんです。

 もー、知らん。私じゃどうにもなりませんので、もー知りません。見て見ぬフリです。

 今日はなんだか調子が悪く、口も回りません。言うべきところで言いそびれたことが招いてしまった(かもしれない)問題を胸と記憶にとどめ置いて明日の糧にします。失敗は成功のもとと信じて・・・私は知りません! 投げ出して現実逃避です! もー知らん!!

 

「おう。いいぜ。四の五の言うよりわかりやす―――」

 

 ガララ。

 

 

「失礼いたします。なにやら織斑先生のクラスから、怒鳴り声が聞こえてきたような気がしたのですが・・・なにか問題でも起きたのですかね?」

 

 

 ・・・??? 織斑さんがオルコットさんからの挑戦を受けて応じようとした直前、教室の扉が開かれて一人の作業着を着た年かさの男性が入って参りましたが・・・。

 えっと、たしかこの人は・・・IS学園に関連したネット記事かサイトのどこかに載っていた校務員さんで、『IS学園内の良心』とかのあだ名で呼ばれているとかいないとかの・・・。

 

「――轡木十蔵さん、でしたっけかね?」

 

 うろ覚えな記憶を頼りにつぶやいただけの私の声が聞こえたのか、その白髪の男性は私の方へと視線を向けて穏やかな笑顔で「にこり」と微笑まれた後、あらためて織斑先生から事情を説明されておられました。

 

「あ、ああ学園ちょ―――ではなく轡木さん。ご心配をおかけしたようで申し訳ない」

 

 ・・・なんか余計すぎる一言が最初に言い間違いとして入っていたような気がしましたけど、言い間違いでしょうから私は気にしませんよ。ええもちろん絶対に気にしません絶対に。

 

「単に、身の程をわきまえないひな鳥共がかしましく騒いでいただけです。仕事の邪魔をしてしまったようで失礼しました。すぐに鎮めさせましょう」

「いえいえ、そこまでしていただかなくても大丈夫ですのでお気になさらず。それに若い生徒たちが野心的で覇気に飛んでいるというのは良い傾向です。将来が楽しみで教師冥利に尽きるというものではありませんか。教育に携わるものの一人として、羨ましい限りです」

「・・・そこまで手放しで賞賛されるほどの者たちではありませんが・・・」

 

 やや面はゆい感じなのか、織斑先生も若干腰が引けていて、逆にクラスの生徒たちから轡木さんに向けられる視線には妙に尊敬が混じりだしているようにも感じられるようになってきました。

 まぁ、言ってることは立派でしたし無理もないんですが・・・・・・なんなんでしょう? この感覚・・・妙にデジャブというか、過去に似たような人と似たような出会い方をしたことがあって、ヒドく後悔させられたような記憶が無いはずなのにあったような無いような気がしなくもない・・・・・・???

 

「ふむ・・・察するところ、再来週に行われるクラス対抗戦に参加させるクラス代表を決める段で、候補者が二人ほど出てどちらを選ぶかで揉められたのではありませんかな?

 そして1年1組に割り振られた生徒たちの数値から鑑みて、候補に挙げられていたのはイギリス代表候補のセシリア・オルコットさんと、世界初の男性IS操縦者である織斑一夏くんの二人・・・違いますかな? 織斑先生」

「・・・・・・その通りです。よくおわかりになりましたね、轡木さん・・・」

「ホッホッホ。学園に勤務する者として、新入生の皆さんの名前と肩書きぐらいは全て暗記しておきませんとな」

 

 何でも無いことのように言ってのける轡木さん。すげぇな―と素直に思ってしまう、前世でクラスメイトの名前や顔すら禄に覚えなかった私。ここら辺は人格の差か・・・。所詮は転生者なんて人格に問題あるのばっかり何で、いいんですけどね別に(問題発言であることは自覚しておりますが)

 

「とはいえ、私ごとき校務員が差しで口を挟むことではありませんでしたね。これは私の方こそ失礼しました。退室させていただきますので、どうか許してください織斑先生」

「いえ、気遣ってもらったことは奴らヒヨッコ共の励みになるでしょうから」

「ホッホッホ、そうだと嬉しいのですがねぇ。ところで最後に一つだけ。―――織斑くん?」

「え? あ、はい。なんですか?」

 

 いきなり名を呼ばれた織斑さんが、驚いたように顔と声を上げて返事を返されます。

 セリフを途中で半端に中断させられ、今の今まで忘れ去れたみたいに放置されてた訳ですから当然の反応っちゃあ当然の反応なんですけどね~。

 でも、彼は織斑さんに何の要件があるのでしょうか? IS学園の一校務員さんが世界初の男性IS操縦者に初対面で話す事なんて何も無いと思うんですが・・・あっ、またなんかスゴく嫌な予感がゾクゾクと・・・。

 

 

「先ほど轟いていた喝破から察するに、君はオルコットさんから挑戦を受けられたのではありませんかな?」

「は、はい。その通りです」

「受けられるのですかな?」

「はい、もちろんです。勝負を申し込まれて逃げるなんて、男のやる事じゃありませんから」

「それは大変よい心意気ですね。日本の男児たるもの、そうでなければいけません」

「はい! ありがとうございます!」

 

 あっ、なんか意気投合してる。原作知識は転生特典で与えられた分しかないんで知らないんですけども、『轡木十蔵さん』って人は、こういうキャラクターの人でしたので? う~ん、わからんと言うか知らん(キッパリ)

 

「では、勝利することでクラス代表の地位も手に入れてみせると?」

「いえ、それは興味ありません」

「・・・・・・なんですと?」

 

 ピクリと、轡木さんの眉毛が一瞬だけ大きく跳ねたように見えたのは、どうやら私だけだったみたいです。

 

「だって、地位とか名誉とかが欲しくて戦うわけじゃないですから。男だったら意地でも逃げられない戦いがあるけど、だからって報酬目当てに戦いたいとは全く思わないんですよ。剣士なら自分の腕を高めるために戦ってこそでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 うん、今度の変化には何人かが気づいたっぽいです。明らかに異常が発生し始めている気配がビンビン漂ってきています。肝心の織斑さん自身は鈍感なのか気づいてないみたいですけども・・・今のうちに気づいた私たちは彼の席から離れて避難しときましょう。

 

「俺は自分のために強くなりたいとは思いません。強くなって誰かのために力を使える男になりたいから強さを求めるようになったんです。自分のことにしか力を使えないヤツなんて身勝手なだけだと俺は思いますね、普通に考えて」

「――――――この――――――」

 

 ゆっくり、ゆっくりと、仏のように穏やかな微笑みを浮かべていた轡木さんの表情が変化していき。

 ゆっくり、ゆっくりと、右掌が肩の高さまで持ち上げられていき。

 

 

 

 

「こぉぉぉぉぉぉの、うつけ者ガァァァァァァァァァッッ!!!!!!」

 

 

 

 ピカッ!! ゴロゴロ!! ズガァァァァァァァッン!!!!!!!!

 

 

「ふぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ――――――ッ!?」

 

 

 

 ・・・右手を振りかざして(何故か知らねど)教室内がまっ暗に染まって雷が織斑線の頭上限定で落雷して感電させた、その時には既に。

 そこに仏の面影はわずかなりとも残っておらず、鬼の形相さえ通り越しまくって―――どっかの第六天から来たりた魔王様みたいな顔立ちに変貌しておりましたとさ。

 

 

 ――――なんでだよ!?

 

「天下を狙いうる力と好機を得ておきながら、それをみすみす見逃し己がちっぽけな自己満足に浸るなど愚の骨頂!!

 如何な切れ味鋭き名刀であろうとも、それを振るう者に野心と覇気なくばナマクラにも劣るというもの。天が与えし好機を見逃した者に明日はなき武士の生き様を忘れたか・・・?」

「い、一夏――――――ッ!?」

 

 織斑先生絶叫。立場がどうとか、黒焦げになってプスプスしている弟の丸焼きを前にして建前なんて言ってられなかったのか名字ではなく普通に名前を叫んで、可愛い弟さんを傷つけられたブラコン姉の怒りの形相で加害者の男性を睨みつけ。

 

 

「轡木! 貴様一体なんのつも――――――」

「洒落臭いわぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

 

 

 ズガラピッシャァァァァァァァァァッン!!!!!

 

 

「どぎゃ―――――ッん!?」

 

 

 おお・・・織斑さんの丸焼き二号(姉バージョン)が作られてしまいました。美味しく焼けてますけど、あまり食べたくありません。

 

「弟の敵を前にして剣も握らず、仇討ち一つ挑むことさえ出来ぬ者が世界最強などとは片腹痛し・・・・・・この現世はあまりにも変わらぬ。あの頃と同じ惰弱かつ怠惰な安寧の中で朽ちていくことを望む者が多すぎる――」

 

 

 二人の人間を感電死(死んでないとは思いますけどね?)させた加害者男性さんは、周囲からドン引きされまくっているのにも関わらずガン無視したまま窓辺へと歩み寄ると。

 

「・・・そう。あれは十年と少し前のこと。予が平坂より蘇り、再び現世への帰還を果たしたあの日の出来事よ・・・」

 

 と、哀愁を背中に漂わせながら、自ら手にかけた被害者姉弟二人を後ろから見ている私たちには屍のように打ち立てながら、なんか昔語りを始められたのでありましたとさ。・・・ほんと人の話を聞かないマイペースな御仁ですねぇ、この第六天魔王さ――いえ、IS原作に登場しているらしい校務員の轡木さんって人は(一先ずしらばっくれとく私です。転生者が転生者であることを知る者が出てくる作品は少ないのですよ)

 

「――其の者、白きカラクリ鎧をまといて鋼鉄の大海原へ降り立つなり。失われし古き良き時代の戦火を地上へと蘇らせ、鋼鉄艦の群れを灰燼と帰すなァり・・・『白騎士事件』と呼ばれた彼の戦によって、平穏なる古き腐った時代は終わりを告げた。

 旧体制の無能なる権力者ども亡き当時、誰が覇権を得ても不思議ではない時勢・・・謂わば群雄割拠の戦国の幕開け。さぞ乱世に満ちた世界へと生まれ変わるであろうと第二の生を生きてみれば―――フツ~に条約など結んで権力者共を鞍替えさせ、安寧なる怠惰な太平の世へと戻しただけではないかァァ・・・・・・」

「い、いや・・・そうならなければ私たち的にも困っていたというか・・・そもそも私も束もそんなものを望んでやったわけではなく―――」

「小賢しいわ小童がぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 ピカッ! ゴロゴロ!! ビリビリビリビリィィィィィッ!!!!

 

「し~び~れ~る~~~~~ッ!?」

 

 うん、なんか懲りない世界最強のIS操縦者さんが、IS無しの状態で再び魔王に挑んで玉砕させられちゃってるみたいですね。私は他の人たちと一緒に更に遠のいておいて正解でしたわ。危なっかしいにも程がある一帯です。彼女たち姉弟が転がってる教室内周辺は。

 

「余は失望した!! あまりに深い失望の深さ故に記憶を閉ざし、来たるべき乱世の始まりまで眠りにつくことを自らの心に架してしまうほどに!! 

 だァがァァ!! それも今日限りで終わりを告げる!! 乱世の始まりをもたらす混沌の主がァ、この学園に訪れた臭いによって余を黄泉がえらせた!

 平坂から黄泉がえりし余の力で、再びこの世界を下克上の世へと導いてくれようぞッ!!!」

 

 うん、それは大変ですね。誰なんでしょうね? そんなカオスの権化みたいな人は。やはり織斑一夏さんではないしょうか。原作主人公ですし、世界初が好きな魔王さん的にも気が合いそうな気がしますし。

 少なくとも私でないことだけは確実でしょう。たかが無力なTS転生者ごときが第六天から来たりた魔王を呼び覚ます力なんてあるはずないですから!

 

 だから静まりなさい私のデジャブ!! さっきから胸の奥が痛い! あと胃が痛い! なんか思い出せない思い出がブリ返してきたみたいな記憶が胃を痛めつけてくるのは何故に!?

 

「織斑一夏よ。白き“哀江洲(あいえす)”に選ばれし者として貴様に今一度だけ汚名返上の機会を許す・・・。一週間後の今日、この日を以てセシリア・オルコットと果たし合う御前試合をするがよい。逆らうならば――――」

「な、なんで俺がそんなこ・・・と・・・ッ。戦う理由がねぇ・・・よ・・・・・・ッ!!」

 

 おお、姉に遅れて大分立ってから織斑弟さんも復活してきました。そして主人公らしく魔王様からの命令に刃向かいます。さて、コレに対する対応はどうなるのでしょうか――?

 

「――是非も無し。即刻この場で首を斬り落とし、頭蓋を杯としてくれるまでのことよ。是非も無ァしィ・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 あ、黙った。魔王様相手に脅された勇者が沈黙することで、命令された内容を了解しちゃう選択肢を選ぶ系の熱血主人公になっちゃいましたよ織斑さんが。正しい判断ですけどね!

 脅された勇者が言うこと聞く道選んじゃっても恥にならない魔王様というのも、確かに存在する者なのです。・・・今目の前にいる第六天魔王様とかね?

 この人の場合、有言実行過ぎちゃって勇者特権の『未熟なうちはラスボスに楯突いても殺されずに生き延びられる』ご都合主義的展開は期待できません。なので脅されて沈黙は正しいです。弱い内は特に。そうしないとガチで死ぬ。

 

 

「乱世なくして成長なし! 我が学園に天下を目指さぬ者は不要ぞ!!

 このまま貴様ら哀江洲操縦者共が、安寧な学園生活を続けることを由とするならばァァ、是非も無し!!

 白騎士の亡霊を余の力で蘇らせ、再び『白騎士事件の乱』を引き起こさせた上で、この世全てを戦国乱世へと生まれ変わらせて見せようぞ!!

 それを否というならばァァァ・・・・・・余に貴様らの戦いの価値!! 示してみせるがよい!! それが出来ぬならば貴様らにも! そして貴様らが守ろうとする今の世にも!! 守られる価値など一切存在せぬ!!

 そのような腐りきった安寧な世界は、余の力で支配してやるゥゥゥゥ!!!! フハァーッハッハッハ!!!」

 

 

 

 ・・・言うだけ言ってというか、好き放題言いまくってから背を向けて去って行ってしまわれたIS学園校務員の轡木十蔵第六天魔王さま。

 織斑さんとオルコットさんとの戦いの結果次第では、第三次世界大戦すら勃発させてしまわない意思を示した上で、です・・・。

 

 こうして私たち1年1組の戦いは、IS操縦者個人個人の勝敗だけを問題としたものではなく、圧倒的な魔王の力で世界の平和を壊させないため、世界の平和を守るための使命を帯びた戦いへと様相を一変させられてしまったのでした―――。

 

 頑張れ織斑一夏さん! 負けるな原作メインキャラクターの皆様方!! 世界の命運は貴方たち選ばれた一部の勇者たちの手に委ねられたのです!

 大半の力なき一般市民は見ていて応援することぐらいしかできないお約束ご都合主義全開の状況下ですけど、それが物語であり主人公たちというものです! 頑張ってください! 応援しております! 応援することしか出来ませんけどね! 私は無力な一般生徒のモブキャラクターに過ぎませんのでね! 原作的に見たら! 原作的に見たら私はモブの一般生徒ポジション・・・・・・のはずです多分! いえ絶対に!!

 

 

「・・・・・・しかし面妖なものよ・・・。たしかに彼の教室の中より戦をもたらす混沌の臭いを嗅いだ気がしたのだが・・・・・・。世界初を与えられし彼の者ではなかったのか? では一体、何者に向けて天からの風が吹いたのか・・・。

 天の時、地の利、人の和を兼ね備え、今の世に終わりをもたらすべく天より選ばれた忌み子とは何処に・・・?」

 

 

 ・・・・・・私は絶対、モブキャラクターの無力な一般生徒です!! 断固として!! 断固!!(少しだけ意固地)

 

 

おわり

 

 

オマケ『今作版オリジナルキャラクター紹介』

 

異住セレニア

 「IS学園の言霊少女」でも主人公だったTS転生者で、今作でも変わらず主人公。

一見すると平行世界の別セレニアとか、セレニアが持っていたかもしれない別の可能性の具現のように見えなくもないが、実は単なる『二周目』の存在である。

 前回の一周目で過ごした記憶はなくなっているが、一周目で色々やらかしてしまったことを反省しているため本能的に『喋りすぎたこと』を気にしている場面では沈黙する方向に体が動いてしまう奇癖を追加されている。

 ただし、沈黙した結果いきなり“コレ”である。本気で碌なものを呼び寄せてくれない女の子だが、本人自身が呼んだわけではないことだけは公平を期すため明記しておきたい。

 基本的にはあんまし変わっておらず、意外と学ばない女の子であることが明かされていくが、元々から才能的には凡人であり特別な他人が周囲に多かっただけでしかないため本人自身の能力は最初からこんなもんであった。

 

 

轡木十蔵(第六天魔王の魂を受け継ぎし者)

 今作だといきなり登場してきて好き勝手やりまくってくれた、原作ではチョイ役なオジサン。

 今作だと様々な場面で介入してくるが、大筋を変えることなく余計な要素を追加していくだけで一応は納得して帰って行ってくれる。

 ただし、追加された要素をキチンとこなさないと脅しが単なる事実に変えられてしまう暴君のため、全ての学園行事イベントが命がけのものへと変貌してしまうことになるのが今作の特徴。

 人生五十年。命短し恋にも人生にも全力で取り組み、悔いなき学園生活を全うすることを生徒たちに強制してくる鬼の学園長。一応『学園BASARA』の方を参考にしているため生徒想いではあるのですよ。一応は。


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