IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
会長ファンの方は今すぐ閉じてください。
作者は責任を負いません。
「ふぅ・・・厄介な問題ですねぇ・・・
どうやっても、すぐに解決できそうにありません・・・。
・・・いえ、解決策はあるんですが彼に実行出来るかどうか・・・ううむぅ・・・」
唸りながら廊下を歩く私、異住・セレニア・ショート十六歳、転生者は今現在、思いも寄らぬ難題に直面していました。
ちなみに決闘のことではありません。
パンダ決定戦・・・もしくは、バツゲームを受けるのはどちらかなどというバラエティー番組みたいな行為に大真面目に取り組んでは、それこそ笑い物です。
パンダか笑い物か。
どちらに転んでもバッドエンドが確定している茶番劇に悩みを抱くほど、私は暇を持て余していません。
ですのでーー今悩んでいるのは別の問題・・・・・・
具体的には、彼ーー織斑さんの頭の出来についてでして・・・・・・
『い、意味がわからん・・・。なんでこんなにややこしいんだ・・・?
専門用語の羅列ばっかだ・・・辞書がなけりゃやっていけない・・・
・・・だけどISの辞書なんて無いし・・・ううぅ・・・パンダぁ・・・・・・!』
それが、今日最後に聴いた彼の言葉でした。
私との決闘ーーと言う名目の羞恥刑ーーが決定した後、彼は今まで読んでこなかったらしいIS学園の教科書を開いて熱心に読み始め・・・十分もせずに轟沈しました。
その理由が、この言葉に込められていたんだと思いますが・・・・・・
「・・・普通、辞書なんか引かなくてもネットで検索すれば専門用語の解説ぐらい、いくらでも載っているでしょうに・・・なぜ気づかないのでしょうか・・・・・・?」
そう呟きつつ、私はポケットから辞書数百冊分をダウンロードしてあるスマートフォンを取り出して首を傾げました。
ちなみに、この世界ではIS関連の情報はネット検索で一瞬で入手可能です。
もちろん、公開されている限りにおいては、と言う限定条件は付きますが。
まぁ、当然でしょう。
なにせ、一機で世界中の軍隊を相手に圧勝した、かの《白騎士》が原型な訳ですし。
そんな危険物の情報を一切秘匿しておくなんて民主国家では不可能です。憲法舐めちゃいけません。
そんな、ごく当たり前のことにさえ気づかないバトル作品の主人公・・・
そして、そんな彼の隣席になった私・・・・・・
・・・前途多難すぎる・・・・・・
誰かに代わって貰えないでしょうか・・・?
・・・まぁ、初日からやらかしてしまったっぽいので、ちょっとは罪悪感を感じなくはないですけど・・・・・・。
「ふふふ。何か悩み事かな?
だったら~お姉さんに相談してみな~い?」
・・・ん?
なんでしょう。今誰かの甘い声がしたような・・・?
・・・どちらかと言えば風俗店の呼び声というべき声音でしたが、女声でしたし、指摘するのはやめておきましょう。
なぜなら、ここは女子校。・・・高校生は未成年です。その手の店とは縁が有りませんし、有ってもいけません。
ルールを守って明るく健全なIS学園生活を送りましょう。
「あら~無視するつもりかなぁ~?
お姉さん傷ついちゃうなぁ~。
そんな悪い子にはお仕置きをーー」
「と言うよりも、まず姿を見せて貰えませんか?
どこかに隠れながら話しかけてくる不審者の声に、通報もせずに無視するに留めているだけでも、感謝していただきたいのですが?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言でーーただし、若干気まずげにーー姿を現したのは水色の髪の美人さんでした。
たしか、この方は・・・・・・
「更識・・・楯無さん・・・・・・でしたか・・・?」
「あら、やっぱり私のこと知っているのね。
それで? 貴女は何者なのかしら?
事と次第によってはーー」
「知っていると言うよりも、入学式で新入生全員に向けて挨拶してませんでしたっけ?
それに、IS学園最強の生徒会長さんなんですから普通に色々なところで写真を見かけるんですけど・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あっ、目を逸らしました。
ついでに、脂汗が滲んでいます。
もしかしてこの人・・・逆境に弱かったりします・・・・・・?
しばらくの間、何かを必死になって考えていた彼女はーーぶっちゃけ、取り繕う方法を考えているようにしか見えませんでしたーーやがて、何かを閃いたのかパッと表情を輝かせると、
「そ、そうだわっ!
貴女がさっきの授業中に言っていた内容、あれは入学直後の新入生には知り得ないことのはず!
どこの誰から教えてもらったのかしら? お姉さんに教えて貰える?
もしかして、それは亡こーー」
「ネットからですが?」
スマホを操作していくつかのサイトを立ち上げ、更識会長にも見えるようにします。
『IS学園の新七不思議』
『IS学園の裏と表』
『IS学園、現実と幻想の狭間で』
その他、諸々・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「軍が開発中の秘密兵器とか言うのなら軍事機密の一言で秘匿できますが、一般人まで生徒として迎え入れている以上、民間を完全な情報統制下に置くなんて不可能ですよ。
だいたい、そんな事やったら民主国家でも何でもないでしょう? ここ、留学生も受け入れている国立校なんですよ? 国立が憲法無視してどうするんですか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ーーなんだか、虐めているみたいな気分になるので、その表情辞めて貰えませんかね?
私、一般でも知ることが出来る範囲の事しか言ってませんよ?
なんら非合法はしてませんし、犯罪行為に関わってもいません。
清廉潔白こそが、ひねくれ者である私の身の守り方です。
「あの・・・も、もしかしなくても、ぼ、亡国機業の事も知らな・・・いわ・・・よ、ね?」
「報告機構だったら存じていますが?」
「ごめんなさい。今の会話は全て忘れてください、お願いします」
「ええ、判りました。全て忘れます。
一般生徒が知ってはいけない情報を、生徒会長自らが直接教えてしまった不祥事についても全て忘れます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もはや私の顔を見ようとしない更識会長。
完全な大失態です。
あとで、もみ消すのに苦労しそうですね。ご愁傷様です。
ただーーなんだか、イメージしてたのと随分キャラが違いますね・・・。
たしか、与えられた情報だとーー
更識楯無、ヒロインの一人。お姉さんキャラ。
ーーとの事でしたが、なんだかお姉さんと言うには抜けた所が多すぎる気がするんですけど・・・・・・
それから、もうひとつ。
・・・なんだか先程から顔を真っ赤にして息が荒いんですが・・・持病持ちという設定だったりするんでしょうか?
色々な意味で関わりたくない人ですね。色々な意味で。
「はぁはぁ・・・なにかしら、この感覚・・・新鮮で斬新で・・・・・・とっても快感・・・・・・」
・・・うん、これも聴かなかったことにして忘れましょう。
私は何も聴かなかったし何も言われなかった。
そもそも、誰とも出会っていないんです。そうしましょう。それで、万事解決です。
「ご用件はそれだけですか? でしたら失礼させていただきます。
私も、無用無意味な会話につきあい続けるほど暇ではありませんので」
「はぁぁぁぁっんっ!!」
なぜか、ビクンッと身体を震わせ黄色い悲鳴を上げる更識会長。
絶対、関わり合ってはいけないタイプです。全速力で逃げ出しましょう。世の中には逃げても恥にならない相手は大勢います。
正確にはーー相手にしてはいけない『変態』と呼ばれる存在が大勢いるのです。
というかーー『コレ』がヒロインの《インフィニット・ストラトス》って、本当にハイスピード学園バトルラブコメなんですかね?
ジャンルの変更を申請したいのですが、どこの役所で受け付けて貰えますか?
「ね、ねぇ異住さん・・・。ひとつだけ・・・ひとつだけお願いがあるのだけど・・・訊いて貰えないかしら・・・・・・?」
「・・・内容次第です。
事と次第によっては警察沙汰になりますので、それを了解した上で言ってみてください」
「出来れば・・・セレちゃんって、呼んで良いかしら・・・?
もしくはーーお姉様で」
「セレちゃんの方は許可しますが、後者を口にした瞬間あなたの社会生命が終わりますよ。これは絶対です。それだけはお忘れ無きよう。
では、失礼いたします」
一礼し、私はーー全速力で自室へとひた走ります。
逃げ出しました。逃走しました。逃避しました。
だってーー怖かったんですよ、あの人。
とくにーー眼が。
あれはーーあきらかに病んでいました。
なぜ、あんなのを生徒会長にしたのか理解できません。したくもありません。
とにかく、今は逃げることに集中です。
背後から「はぁぁっんっ! やっぱりイぃぃぃぃぃっ!」などという嬌声じみた悲鳴は聞こえてきません。
聞こえていないんです。そういう事にします。させて下さい。
毎回、同じ締め方にするつもりは更々ありませんが、今回だけはハッキリ言わせて下さい。
コレ、ほんとーーーーっに《インフィニット・ストラトス》?
つづく
プロローグと一話で異住が名字なのにショートと呼んでいたので訂正しました。