IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
すみません、活動報告で謝罪しておいて肝心のこちらに書き忘れておりました。申し訳ない限りです。
今朝方に目が覚めてPCを起動しハーメルンを開くて警告メッセージが届いておりまして『「性転換」タグが抜けているので一時閲覧を規制させて頂きます』とありました。
急いで修正し活動報告にも記載したのですが、出社時間が迫っていたのでこちらへの記載を今の今まで忘れてた次第です。ダメ作者で本当にごめんなさい・・・。
ーードゴォォォッン!!!!
『なんだ!?』
レインが吠えるように問うと、通信手が即座に状況を確認して報告をあげる。
「基地直上に敵影視認! 数! お、およそ三千!」
「さ、三千だとぉぉっ!?」
「バカな! 奴ら、いったいどれ程の数の別働隊を動員してきた!」
IS時代にはあり得ない数の敵が自分たちの頭上に迫ってきているのだと知らされて慌てふためく亡国機業幹部会の面々。
『狼狽えるな糞ジジイども!』
怒号で彼らを黙らせた後、冷静さを取り戻したレインは今更に頭上への注意を怠った自分自身に反吐が出そうな気分になっていた。
(意識を正面の敵に向けすぎた! やはりコピーどもの全体統合操作には無理があったか!)
内心で存在しない舌で舌打ちしながらもレインは、改めて戦況を確認し直す。
敵正面部隊は大半が敗残兵の群だ。指揮系統は崩壊し、部隊が部隊として機能していない。
もともと個々の技量を頼りとするIS操縦者は全体での意思統一と、互いが互いに合わせると言う行為を苦手としている。
より高みへと上ることを目指していたからだけではない。機体特性そのものが個人戦闘を重視した作りになっているので上からの強制という楔がない今、高性能な機体に操縦者自身が振り回されてしまっているのだ。
連携は一朝一夕で出来るほど容易なものでは決してない。互いの癖や戦い方を考える必要すらないほどに体に深く染み込ませる必要性が絶対的に存在する。
それらは単なる感情だけでは足りない。まったく以て全然足りていないのだ。
勝った後に全員が手にできるナニカ。
勝たなければ平等に失われるナニカ。
参加する全員が同じ目標を目指す『理由』。
自分一人では勝てない『敵』。皆で力を合わせなければ殺される『敵』。
皆で力を合わせなければ『勝てない』から協力し合える。
皆で力を合わせて倒さないと『殺される』から共に手を携えられる。
勝ったらみんな助かるし、みんな生きて帰ることが出来るんだ。
皆のために、自分だけが犠牲にならなくてもいい状況。
誰かが『報酬』を提示してやり、保証してやることで得られる『安心』。
会ったばかりでも、赤の他人同士が信頼感を抱く時に使える『言い訳』。
それらを与えてやっていたマイントイフェルから見限られた彼女たちに、もはや連携行動は取れない。
信頼しあう理由が消滅したから。
信じて背中を預けられる保証が消失してしまったから。
互いに同じ敵と戦う理由が失われた今、果たしてコイツは自分を裏切らないだろうか? 信頼して戦列を並べる事は出来るだろうか?
IS部隊がIS操縦者の群になったことで敵軍は敵兵になった。軍隊ではなくなっている。一人一人が個々の技量のみを頼りに各個に応戦しているだけ。捨て置いたところで何ほどでもあるまい。
『ーー今、望遠カメラで確認した。直上から迫る敵降下部隊はスコールの指揮により、ニーベルングがすべて焼き払った。全滅だ。
目の前の死に損ないは捨て置いて、敵本体を攻撃する準備を整えさせろ。反撃に出るぞ――』
「報告致します! 全滅させた敵降下部隊の更に上方から第二陣が接近中! チャージに入ったニーベルング第二射は間に合いません!」
『なんだと・・・・・・!!!』
相次ぐ凶報に流石のレインも愕然となって言うべき言葉を見失う。
敵は全滅させたはずだ。三千もの兵を捨て駒にするなどあり得ない。
なら、コイツ等は何だ? いったい何処の敵兵だ? 自分たちの敵は、いったいどれ程の強大さを有している?
それら疑問の全てが彼女の思考を雁字搦めに縛り上げて、拘束し尽くす。
ワイゲルトを使うべき局面は今であることにさえ気がつかないほどに。
本来ワイゲルトは、通常の第三世代IS《ゴールデン・ドーン》と大差ない火力しか有していない。
にも関わらずゴールデン・ドーンではなくワイゲルトが少数生産されたのは、その砲撃に溜めが必要ないことと、砲撃に際しては背中にマウントした巨砲が使い捨ての交換可能兵器として即座に補充できるからだった。
ようするにワイゲルトは攻撃用ではなくて、拠点防衛用に用いられるべき砲台型ISとして開発が進められていた機体なのである。
それをレインは積極的に前線での使用を許可してしまった。挙げ句、開戦当初には待ちかまえて十字砲火で薙払おうとする蛮行にさえ打って出た。
これは彼女が奉ずる『炎』の信念故であり、すべての物を燃やし尽くしたいと願う彼女の願望が行わせた愚考であったのだ。
(・・・!? 監視カメラのいくつかがブラックアウトした? さっきまで正常に動いていたのに? ・・・そうか! スコールが報告を上げてきた特殊部隊の連中だな!
だとしたら残りのカメラで探し出して小型コピーで殲滅してやーーなに!? カメラが復旧しないだと!? バカな! 最新の自己修復機能を装備させていたはずだ!
直ぐにも兵をやって目視で確認を・・・なんでこう言うときに限って繋がらねぇ! さっきまでので裏切り者を殺しすぎたのか? ああ、くそ! また別の監視カメラを!)
混乱する彼女の思考を更に煽り立てているのは、言うまでもなくスコール率いるアメリカ軍特殊部隊の面々。
実は彼女たちは監視カメラを壊してなどいない。ただ上から黒い布をかぶせて黒しか写らないようにしただけである。壊すより早く先に進めるし、基地外から持ち込んだ必要物資は裁縫用の大きな布切れ一枚だけでいいから楽だし、自己修復機能も作動しない。
これらの小細工は目視員が一人でも残っていた時点で破綻してしまう程度の拙いものだったが、新総帥が手ずから殺した役職に自分から志願する物好きはおらず、命令によって無理矢理やらされてるだけのイヤイヤ構成員は士気が低すぎて自分が殺されたことにも気づかずスコールの手で一方的に殺戮され尽くした後である。
そんな彼女だから、先ほど迫ってきていた直上からの降下部隊が囮でしかないことにも気づかない。
ダミーである。旧式の通常型EOSを見た目だけ真新しく偽装し、適当な熱源を持たせてから大気層より突き落としただけの目眩まし。
エクスカリバーを失った亡国機業に制宙権など存在しない。どれほど大回りで回り込もうとも背後から追い撃つのは不可能なのである。
後方を厄される恐れがないのであれば、安全策を高じるのは当然の選択肢だろう。
マイントイフェルが唯一懸念していたのは、敵基地内部に時代を超越した新兵器が存在していた場合の対処法についてだった。
前世ではさんざんにしてやられている分、そう言った非現実的な軍事科学分野の突出は戦時下において有り得ないほど発展し成果をあげることを事実として彼は知っていた。常識の範疇でバランスよく兵器の質をよくしている彼にとっては、実に迷惑きわまりない連中だったのだから。
本来であれば諜報部のスコールを使って調べさせたいところではあるが、彼女の機業内における地位は実戦部隊の隊長である。
後方司令部になにが隠されているか知ろうとして怪しまれるより、籠の中の腐ったリンゴとして機能させた方がよく動くだろう。そう判断した結果は今見たとおり。
だから彼は威力偵察がてらに古くさい在庫一斉処分廃棄セールをしようと上申し、すぐさま許可が下りたことに驚き呆れながらも、物わかりが良くて懐も器も大きい主君を戴くのは彼にとって理想の人生であり職場でもあったので最大限義務感を発揮し計画を練りに練った。
そうして実行に移された『黄金作戦』であったのだが・・・・・・思っていたよりも効果があった。ありすぎるぐらいには。
流石にここまでとは想像だにしていなかった彼は軍帽を脱ぐと顔を仰いで一人ごちる。
「・・・世界は広いな。まさかベルリンの伍長とヒムラーの特徴を双方から受け継いだ無能者がいる世界があるなどと、果たして誰が信じるだろうか・・・?」
そう慨嘆したくなるほど、敵司令官の指揮ぶりは拙劣きまわりないものだった。
まず、開戦当初からひたすら攻勢に出よう出ようと、強い気迫で押しているのが良くない。攻めの姿勢は大切だと思うが、流石に時期と状況が悪すぎる。
ここは要塞の利を活かして籠城し状況の変化を待つのが定石であるのに、敵司令官は自らの手で部下を殺めて公開処刑し、背水の陣を強いてしまった。
これにより長期戦はおろか、可能な限り短時間で敵に一撃を加えなければ味方の士気が激減してしまう窮状に自らを追い込んだことになる。
これにはスコールも一枚噛んでおり、マイントイフェル指示の元アメリカ政府が秘匿し続けてきた個人データ関連の情報をレインに届けさせたのである。
今の状況では必要なくとも、超希少な重要データがーーそれも各国要人の弱味やスキャンダルなどーー手に入れば欲を出すのが人間でありテロリストと言う生き物である。
これにより機業内部は、米軍艦隊による攻撃が差し迫っている中であっても尚収まらぬ意見対立を激化させていた。
元が寄り合い所帯の寄せ集め集団でしかない組織の構成員たちだ。『世界全てが我らの敵』という共通認識があればこそ維持できていた偽りの団結は、露骨な欲望に取って代わられてからは急速に落ちぶれ、やがて滅んだ。
開戦前の段階で亡国機業は各部門、各部署との間に深刻な精神的断裂が見受けられていたのだが、精神科医など洗脳や薬物投与の専門家しか招いたことのない機業内にあって概念自体が浸透せぬまま本格戦闘へと突入する羽目に陥ってしまった。これがレインによる大量粛正が必要となった要旨である。
「古今、難攻不落な要塞は外からの攻撃ではなく内側からの内部崩壊で滅んできたと、戦史の教科書で読んだことがありましたが・・・まさか本当だったとは。
世界は広く、未だ我々の哲学では理解できない驚きと驚異に満ちているものなのですね」
「あれは驚きでも驚異でもなく、『毒入りの夜食を食べる前に明日の昼食でなにを食べるかについて語り合う愚者の群れ』と呼ぶのだよ。覚えておきたまえリュック少尉」
「はっ! お心遣い、ありがたく」
艦橋の一角に席を占める士官学校を卒業したばかりと思しき新米将校へと軽く語りかけながら、相手の反応に「若いな」と自分の事を棚に上げた評価を下し、
「慌てるな少尉。真のフィナーレは恐らく次の場面で待っている事だろう」
「はっ! ・・・しかし、大佐殿。敵は既に我が軍の包囲下に置かれ、戦意を維持している者もほとんどいない有様です。後は司令部を押さえればチェック・メイトをかけられてしまう敵に今更なにが出来るとお思いになられているのですか?」
いい質問だ。マイントイフェルは機嫌良く答えてから指を一回鳴らし、従卒に二人分のコーヒーを持ってこさせる。
本心を言えば二回鳴らしてブランデーで滅び行く敵に鎮魂の美酒でも捧げてやりたいところだが、勤務時間中である。酒は控えるのが軍人としての責務であろう。
「敵に包囲され、追いつめられた。味方の兵は次々と討ち死にし、首脳陣の中では保身を計りたい者や、玉砕を呼号する者。ただ震えながら縮こまり、迫る現実から夢の世界へ逃亡する者。
様々な人間模様が織りなされているだろうと思われる、盛り上がり所ではあるのだが・・・経験則から言わせてもらうと、こういう連中の会話は専制的な独裁者にとってヒドく勘に障るらしくてね。追いつめられて味方さえ敵予備軍に見えてきている状況にあるなら尚更だ」
散りゆく敵へと捧げるブランデーの代わりにリュック少尉へコーヒーを振る舞ってやりながらマイントイフェルは、他人事のようにつぶやき捨てる。
「こう言う場合、愚かな司令官は自暴自棄になった挙げ句に味方を次々と射殺していく。処刑する相手が居なくなったら次は自分だ。最終的には自分諸共敵に突っ込んで、盛大に爆発四散してヒロイックナルシズムを大いに満足させながら散っていく。
「今、自分は輝いている」とでも思い込みながらね。ISコアがある今の時代なら、基地丸ごと全てを巻き込んで自爆するのも可能ではないのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!
ーー副長! すぐに前線部隊への撤退許可を出せ! 食い詰めIS操縦者どもにも同様にだ! 奴らが死ぬのは一向に構わんが、奴らにまで自暴自棄を起こされては叶わんからな! 大佐殿! よろしいですな!?」
「艦長の良きように。・・・ああ、それとだが折角足が手に入るのだし彼女たちに乗せてもらうのも悪くない。操縦者たちに通達してやれ、『近くで米兵を見かけたら問答無用で母艦まで連れ帰ってくるように』と。足は多く早いに越したことはないからな。楽でいい」
さすがの彼らも、この司令官代理の言いぐさには呆れかえらざるを得なかった。盗人猛々しいとは正にこの事で、一度は見捨てた捨て駒たちを再び自分たちの都合でこき使おうと言うのだから呆れるより他にない。
「了解しましたが・・・とうてい奴らが応じるとは思えません。むしろ我が軍兵士を人質にとり、条件交渉を求めてくるのでは?」
「構わないさ、応じてやるといい。何でも好きなことを注文させて、どんな内容だろうと躊躇わずにYes.と言えばそれでいい。全責任は責任者である私が取る」
「・・・・・・大佐、本気でおっしゃっておられるのですか?」
正気か、と目では問いかけてる艦長にマイントイフェルは笑顔を見せて。
「当然だよ艦長。我々は紳士的な平和主義者だ。交わした約束はきちんと守るし、違法行為は見過ごさない。それが軍人の勤めというものだ。違うかね?」
「であるなら、小官はーー」
「即ち」
艦長がなにを言おうとしているか悟っていたらしいマイントイフェルは機先を制す。
「人質を取っての条件要求など求めてきた時点で奴らは全員犯罪者だ。艦に収容後、即座に憲兵隊に逮捕拘禁させてくれたまえ。抵抗する場合はその場で射殺して構わん。
私には、我が軍将兵の生命に対する責任を果たさねばならないのでね。感情論で優先順位を誤る失策を選びはしないさ」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
もはや艦橋に声はなかった・・・・・・。
『へ、へへ、へへへへ・・・・・・死だ。死を与えるんだ俺は』
虚ろな笑い後を漏らしながら、レイン・ミューゼルだった物は、要塞内の廊下を当てもなく徘徊し続けていた。
見つけた奴らは敵味方老若男女を問わず、問答無用で撃ち殺して炎の中へ投げ込んでいった。
全ては世界を炎で焼き尽くすため。
世界を戦争の炎で燃やし尽くすため。
炎のミューゼル家は、世界全てを焼き尽くすまで燃え続ける地獄の業火だ。決して消えない、消えはしない。消えてなるものかと叫び声を上げながら司令室にいた老人どもを全員皆殺しにしてから部屋を後にし、殺せる対象を探して歩き続けた。
既に基地内に生命反応は残っていない。生きてるのは自分だけだ。そして自分も、じきに終わる。
先ほど基地の最深部に設置されている自爆装置を発動させてきた。もうすぐ要塞は爆発炎上し、盛大な花火となって燃え落ちることだろう。
そうだ。それでいい。炎のミューゼルは世界を焼き尽くす存在だ。そうでなければいけない存在だ。自分は世界とともに燃え尽きなければいけないのだ。
この基地が今のレインの世界だ。その全てだ。
基地のマザーコンピュータと直接接続できるために基地内部に限り神の如き絶対的権限を持つ彼女だが、裏を返せば基地を一歩でも出てしまえばISには付き物のエネルギー問題による縛りによって著しく能力を制限されてしまう。
未だ制御下に置かれているコピーたちも彼女のコントロールから外れるかもしれない。偽りの神に与えられた限定的な絶対権能。
このヘブンズ・ベースに居る間だけ世界最強になれる、世界最弱のIS操縦者レイン・ミューゼル。それが今の彼女であった。
だから彼女は、この基地ごと燃え落ちたいのだ。自分が神として君臨できる世界だけが、レインの世界の全てだったから・・・・・・。
この世界以外には行きたくない。この世界以外では生きていたくない。
私が神でいられるこの世界は私の楽園。私は楽園とともに燃え落ちる。
私が生きたいのは、この世界だけ。私が死にたいのも、この世界だけ。
『へ、へっへ、へ・・・・・・俺こそが今、世界最強・・・・・・』
ーーその時、レインの背後で闇がうごめいた。
「いやいや、キミはなんて弱くて哀れな生き物なんだろうねぇ、戦争処女のお嬢さん」
思わず振り返って、“ソレ”を見つめる。
“ソレ”は亡霊だった。あるいは怨霊かもしれない。
黒いナチス親衛隊服をまとった小太りの男が、まっすぐにレインを見つめながらニヤケ笑いを浮かべ、パチパチパチと愉快で滑稽な道化でも見たかのように拍手をしている。
(・・・生体反応がない。だからと言って、立体映像でもなければ投影機も側にはない。
つまり・・・・・・なんなんだ? こいつは・・・。見ているだけで吐き気と寒気が同時に襲ってきそうな嫌な笑い方をしやがってーー)
レインはモニターを通して殺気に満ちた視線を男に向けたが、相手はまるで気にしない。平然と愉しそうにレインを批評する。
「私は友人に手伝ってもらって、君のことをずっと見ていた。はじまりの時から、今の半端な化け物もどきに落ちぶれるまでずっとだよ。
君がなぜ、炎にこだわるのか無論知ってはいるが・・・今の君には関係あるまい?
なにしろ『炎を言い訳に使い、化け物に逃げたくても逃げ出しきれない』出来損ないの人間でしかない君に炎は、荷が克ちすぎていたのだからな」
『なん・・・だと・・・?』
聞き捨てならない発言であり、表現であった。
この地で神となった私に、「出来損ないの人間如き」だと・・・?
『てめぇ・・・神である俺に舐めた口聞いてると只じゃ済まさん・・・・・・』
「神? 神だって? 人間の弱さに耐えかねて、借り物の万能の力を得て、自分には何があるのかすら考えようともしないままに、偶然高い数値を叩き出したIS適正で自分の進むべき道を確定する君が神を自称するのかい?
――なんて意志の弱い、脆弱な人間なのだろう。弱い人間であることに耐えきれず、化け物へと逃げ出した敗北主義者どもより余程度し難くて愚かしい。
ああ・・・マルグリッド。今私は確かに確信した。君は世界最弱のIS操縦者ではない。世界最弱はここだ。ここに居る。私の目の前で死にかかっているよ!」
『黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!』
だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!!!!!
ひたすら機械の肉体に内蔵された機関銃を乱射するレイン。
だが、男は然したる感銘も受けないままに先と同じ調子で語り続け、批評し続ける。
「君は自らを炎と称していたね。世界を焼き尽くすための炎だと。
試みに聞いてみたいのだが、君が炎として焼き尽くしたい世界とは何を指している言葉なのかな? 地球全土かね? それとも世界地図に記載されている国と街、建築物の全てを指してでもいるのかね?
あるいは・・・君に見えている物すべて、君の内包している精神世界において『世界の全て』と言うことに君自身がしている狭い世界の事でしかないのかな?」
『・・・・・・!!!!!』
「君たち亡国機業を最初に見たときから思っていた。『半端な連中』だと。
「世界中を戦場に!」と呼号しながら、襲ってくるのは毎度のように不正規戦ばかり。
自国政府が保身のために自分たちの安全を保障してくれてるから、安全な立場で戦争ごっこを悦しみたいだけだから。
死にたくないけど殺したいから。負けたくないけど勝ちたいから。滅ぼしには来ても、自分たちが炎に巻かれて滅びるかもしれない未来は想定していないから」
「だからこそ、戸惑う。だからこそ、取り繕う。だからこそ、見苦しく足掻きながらも自分の足掻きに意味を見いだそうと逃避してしまう。
君は半端だ。君たちは半端な戦争狂“志願者”だよ」
「誰よりも弱く、誰よりも臆病だ。死にたいほどに苦しみながらも自分一人で首をくくる勇気がない。他人を殺す勇気はあっても、自分が死ねる勇気はない。
君たちは、君たちが好きだと感じる戦争が好きで、君たちが戦争ではないと感じる戦争が嫌いだ。蹂躙するのは大好きだが、侮辱された過去を忘れることは出来ない」
「君たちは死に掛けている人間を笑顔で誘惑し、自ら破滅していく様を見物しながら嗤うのが好きだ。泣き叫ぶ一般兵をIS武装で粉砕するのが好きだ。IS相手に勝てないと承知の上で挑んでくる相手の覚悟を否定して見下す行為が大好きだ」
「君たちは見下している相手を誘惑し、その手を振り払われるのが嫌いだ。自らの選択で破滅していく道を誇り高く歩んでいく人間を見た日には、酒がないと眠れない。泣き叫んで許しを請わない相手には、何が何でも許し請わせようと躍起になる。自分のISで勝てない相手に挑んで敗北し、見下される行為はこの世の何よりも許せない」
「ああ、なんてか弱い生き物なんだ君たちは。
機械の体に入れられて、内蔵しているガラス瓶の培養液の中に浮かぶ脳髄が自分の全てだと言う事実を他人の前では受け入れて見せながら、心の底では人間への復帰を諦めきれてはいない。
巨大な電算装置の記憶回路が自分の全てだというのに、未だ自分はレイン・ミューゼルだなどと人間の時の名前に固執する」
「人間が人間たらしめている物はただ一つ。己の意志だ。そう言う意味で君はまさしく人間だと言えるだろう。なにしろ『化け物を自称しながらも、自分は人間なんだと心の底で叫び続けている』
人間でなくなった自分を哀れみ、何ら苦労なく人間のままでいられる人間たちが憎くて憎くてしょうがない」
「だから殺しているのだろう? 他人を。自分を化け物に育て上げた連中には勝てないから。勝てる相手に怒りをぶつけて、「お前は弱い、雑魚野郎、出直してこい」と自分自身が言われ続けたトラウマを他人にも刷り込みたくて我慢が出来ない」
「君たちは、幸せそうにしている人間が嫌いだ。自分たち自身を哀れんでいるからだ。
君たちは、自分以外が嫌いだ。自分で自分のことが大嫌いだからだ。弱くて小さい、上に噛みつけはしても噛み千切ることは不可能な自分の弱さが大嫌いだからだ」
「化け物のような人間である私が保証しよう。君たちは人間だよ。
弱くて惰弱で取るに足らない、だからと言って「それがどうした」と割り切ることも、切り捨てることさえ出来ないままに、いつ切れるともしれない道のりを「無限に続く修羅の道」とでも綺麗な言葉で飾りたてながらでないと道を外れるのが怖くて夜道も一人で歩けない、か弱いか弱いフロイライン」
「さぁ、逝きたまえ。本来君が居るべき場所へ、在るべき立ち位置へ。
か弱い少女である君に、我々の戦場は不似合いだ。私たちとマルグリッドとのバージンロードに君の頭蓋で造った花生けを置く気はない」
「アクタ エスト ファーブラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
ーーこの日、亡国機業は本部基地諸共この地球上から完全に消滅させられた。
つづく