IS学園の言霊少女(本編終了・外伝スタート) 作:ひきがやもとまち
次回は戦争完全否定回です。単なる「人殺し行為でしかない」として描く予定です。
最近の言霊ISは血なまぐさい話ばかりで本当にごめんなさい。近いうちに明るい番外編を書く予定では居ますのでお許しを・・・。
東京湾に接近し、旗艦と戦艦の主砲をISシェルターに向けさせてからエイノー提督は部下に命じてIS学園との連絡回線を開かせた。
この距離まで接近できたこと、ここまでの間に一度の敵襲も受けなかったことなどから提督は、敵指揮官も自分たちと同じで戦いが続けられることを望んでいないと判断したからだ。
画面に映し出されたのが怜悧な美貌とナイフのように鋭い瞳を持ったブリュンヒルデ織斑千冬ではなく、自分の孫娘と対して歳の変わらない銀髪の少女であったことに多少の訝しさを感じながらも、相手が「IS学園側の交渉責任者」として登壇させてきたからには相応の礼を示す義務がある。
良識ある正統派の軍人としてエイノー提督はそう判断し、画面に対して敬礼しながら名乗りを上げる。
「アメリカ海軍第8艦隊司令官デラーズ・エイノー中将である。日本派遣艦隊総司令官ワルター・G・F・マイントイフェル准将の代理として話がしたい。攻撃は無用だ。
我らは無益な戦闘を断念し、母国への帰路に就くつもりでいる。その件で貴官に話しておくべき事があったのでこの場を設けていただいたのだからな」
『IS学園1年1組所属の生徒、異住セレニア・ショートと言います。若輩の身ではありますが、一応開戦に先立ち貴官等を迎撃するよう防衛省からの命令を受けている総責任者となっています。戦時下での特例で暫定的な地位に過ぎませんけどね』
ーーどこの国も同じ様な状況か・・・まったく、これだから戦争という奴は・・・。
子供に大量殺戮の総責任者という重責を課した日本政府の無能で横暴な政治屋どもに腹を立てつつも、怒りを心中に押さえ込んで彼は交渉のために口を開こうとする。
が、しかしーー。
『早速ですが、お伺いしたい。貴官は先ほど抗戦を断念したとおっしゃっていたはずですが、ではなぜ今なお貴官等の艦隊は民間施設に狙いを定めたまま砲口を動かそうとはしていないのか。納得できる説明を要求させていただきます』
機先を制されエイノー提督はわずかに鼻白み、怯まされた。
彼とて権道を用いるからには相応の糾弾と責任追及がくるであろうことは当然のことと理解していたし、それを見越しての交渉手順を頭の中に幾通りも思い描いて交渉には臨んできている。無論のこと、この展開も想定していた事態の一つには入っている。
いるのだが、しかし。しかしである。誰にでも先入観というものがあり、日本政府の弱腰と事なかれ主義は世界的にも有名であり、如何に名将の誉れ高いエイノー提督といえども、会ったこともない相手との対応を想定しておく際には優先順位で一番確率の高いものから順に並べざるを得ず、居丈高で攻撃的な調子の交渉を現代の日本人がアメリカ軍人相手に行ってくるなどと言う可能性はきわめて低いものと考えざるを得なかった。
彼は、やや沈黙をおいてから交渉を続けるため重い口を開く。まずは相手から自分たちへの疑念を解くことからはじめるしかない、と。
「・・・説明させていただく。現在、我が軍は貴官等によって半壊させられ本体は撤退を決定し、一部は現在も包囲下に置かれたまま身動きが取れなくなっており、我が艦隊の搭乗員たちは神経過敏な精神状態におかれ不安定きわまりない状況にある。
そのため彼らを安心させるため『こちらもまた人質を取っている』と言うことを目に見える形で示しておく必要が存在した」
『あくまでポーズだけで、実際に撃つ気はない・・・と?』
「如何にも。これは戦場の摩擦を警戒してのパフォーマンスであり、敵対する勢力同士が平和的に交渉を進めるためには必要な措置だったのだと言うことをご理解いただきたい』
詭弁だ。提督はそう思ったが、それでも表には出すことなく毅然とした態度で道化を演じ続けることを覚悟した。
米軍にしても日本側にしてもルール違反を犯しすぎた。この状態でまっとうな交渉など成立できるはずもないし、何よりも今現在不利な態勢にあるのは日本側ではなく自分たちエイノー艦隊と突出している二世たちの艦隊のみ。目下にある側が上位にたつ者に這い蹲ってお願いしても足元を見られるだけで何一つ守りきることなど出来はしない。
礼儀も手順も正当性も正しいやり方も全て必要で間違っていることなど決してないが、時として邪道は正道を超克してしまう場合がある。戦場という異常な状況に包まれた場所では特に。
戦いに貴賤はなく、正邪もない。当たり前のことだ。人殺し同士が語り合う理屈にそんな高尚なものが入り込む余地など存在しているわけがない。
なればこそ、地獄のような状態に陥った戦場において正しいのは常識でもルールでもなく結果であった。
人が死なず、無用な戦闘を終わらせられるのであれば権道だろうと条約違反だろうとやるのが正しく、正義で無駄死にさせるが非道。それがエイノー提督の指揮官としての信念だった。
異常者しかいなくなってしまった場所では、常識を語り尊重している者の方が異常なのである。異常が常識に取って代わった状況下にあっては異常者になるのが正道を貫く唯一無二の道であると信じるが故に。
『・・・なるほど。あなた方が置かれている悲惨な状況については理解しました。ーーそれで?』
モニターに写る動かない表情の少女が声の調子を変えることなく問うて来るのを耳にして、提督は顔をほころばせた。相手の反応から敵も継戦を臨んでいないことを確信できたからである。
彼はISシェルターにいる民間人への攻撃阻止を名目に、包囲下にある味方のⅡ世艦隊を人質交渉という形で引き渡してもらえないかと願い出た。終戦条約を締結するための交渉では出来うる限りの力添えをすることも条件として付属した。
悪い条件ではないと思っていたし、実際、悪い話ではなかった。むしろ破格の条件と言っていい。日本の食糧問題は今の段階で直ぐにでもアメリカからの援助が欲しくてたまらない状態にあるのだから・・・。
しかしーー
『お断りします』
銀髪の少女の返答に、提督は一瞬だけ相手を買い被っていたかと後悔し絶望の淵に沈みかけたが、それでも一瞬にして持ち直して陰を張り、拒絶する理由について問いただしたのは流石と言えよう。彼は「・・・拒否された理由をお聞かせ願いたい」と、うなり声にも似た獰猛な声を出したが相手の少女の彼が思っていたのとは違っていた。
『あなた方を信用できません』
それが相手からの返答内容だった。思わず目をパチクリさせる提督たちに続いて届いてきたのは冷静すぎる常識論で、戦場に合ってさえ頷かざるを得ないほどの説得力を有する厄介な言い分であった。彼女はこう言ってきたのだ。
『いつ撃ち始めるかも分からない相手に銃口を向けられながらでは、何を口約束で保証されたところで信用するには至れませんよ。心臓握りしめられながらじゃ、空手形だろうと全財産ベットしてしまいそうで怖すぎますからね』
「我々は自由と正義を奉ずる国の軍人だ。人権は尊重する」
『ほう。自分たちから指定してきた攻撃開始時間を無視して問答無用で市街地を攻撃してきた国の軍人さんが人権を尊重してらっしゃるとは意外ですね』
「・・・・・・・・・」
苦虫を噛み潰したような沈黙をエイノー提督は無表情で行う。痛いところを突いてくると感じたからだ。
無論、彼の方にも言い分はある。あれを行ったのはⅡ世どもの独断でしかなかったし、彼個人はあの時マイントイフェルの旗艦に据え置かれて行動の自由すら満足に取れなかった。ましてや私設軍隊に等しい二世たちの分艦隊の指揮にまで口を差し挟むなど不可能事でしかない。
もし仮に自分が座乗していたならば体を張ってでも止めていたことだけは確約できるが、そんなものは自分たちの都合であり事情に過ぎない。一方的に撃ってきた敵の人事に配慮して、被害者側が矛を収めてやらねばならぬ道理はない。
同胞を殺された被害者たちが加害者とその共犯者たちを許さぬと言うのは人として当たり前の優しさなのだから・・・。
ーーとは言え、それもまた提督と銀髪少女の都合であり事情であり、言い分でしかない。互いに勢力を率いる者同士、守り尊重すべきは部下たちの命と己に与えられている役割しか存在しない。
互いの正義も理念も理非も道理も善悪さえ、それらを成すために道具として使い捨てなければならない立場にある身だ。結果的に人死に少なくできるのであるなら嘘も方便と言う東洋の考え方こそ正しく正義を成せるのではないか?
エイノー提督は自分にそう言い聞かせ、自己正当化しながら己自身を騙し抜き、暴論としか取れないと分かり切っている意見を吐き気を堪えながらも口にする。
「そうだ。あの時点で我が国から見た貴国への評価は不意打ちすら辞さない程度にきわめて低いものだったからな。当然であろう? あそこに至るまでに貴国がしてきた事を考え合わせるなら礼儀正しく遇してやる方がおかしいと判断されても仕方があるまい」
強者の強弁、強者の理論。上から目線で相手を威圧し、無理を通して道理を引っ込めさせる大昔から続く大国の悪しき伝統。それを提督は用いてきた。
彼我の戦力比がわからないわけではない。だが、米国そのものは健在であり、日本国総体は窮乏している。今もなお以前と同じく米国は絶対的強者であり、日本は絶対的弱者であり続けていることに変わりはない。
彼の好みではなかったが他に方法がないならアメリカ本国の威光を傘にきて、居丈高な強気な態度を見せもする。
彼なりに正しい結果を導き出そうとした上での選択だったが、この時は状況と上司が悪すぎた。彼らが画面越しに向かい合い、交渉を続けている側にたつ士官の一人が一瞬だけだが窓外に目を向けギョッとしてしまう。
そこには有り得ない光景が・・・否、有り得てはならない光景が悪夢のように動き出してしまっていたからーーー
「て、提督! 主砲が・・・主砲が発砲シークエンスを終え、今すぐにでも撃ち出す寸前になっていおります!」
「なにぃっ!?」
慌てて提督は窓へと駆け寄り外を見て、隣の士官たちと同じように唖然とさせられる。
東京の民間施設ISシェルターに向けて砲口を固定していただけの主砲が、今や角度を微調整までされて何時でも撃つことが可能な状態で狙いを定めていたのである。
「やめさせろ!」
提督が怒鳴った次の瞬間。主砲はーーーー火を噴いていた。
ーーこの時、エイノー分艦隊旗艦に搭乗していた砲手たちの間では、提督の関知しない一方でマイントイフェルの性格とやり方をよく知るセレニアには予測のついていた事態が発生していた。
一人の砲術士官による艦内クーデターの勃発である。
「デ、ディック・・・お前なんでこんなこ・・・・・・ごふっ!?」
「・・・・・・」
既に半死半生の重傷を負っていた同僚を刺し殺して、純粋なアメリカ人でありエイノー提督の古参の部下でもある信任厚い中年の士官は、無言のまま主砲を操作して発砲してから自分の背後に広がっている真っ赤な風景へと振り返り、泣き腫らして真っ赤に染まった顔をクシャリと歪めながら亡き戦友たちに何度も何度も謝罪の言葉を繰り返し繰り返しつぶやき続けた。
「・・・・・・ゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよゴメンよ・・・・・・」
譫言のように同じ言葉を繰り返し、軍服の内ポケットから幼い少女と笑顔のまぶしい女性とが写っている一枚の写真を取り出して指でなぞる。
そしてまたつぶやき始める。
「アニー・・・ごめんよ、父さんもう家には帰れそうにないんだ。俺がいなくなった後も母ちゃんを大事にしてくれよ・・・? もう二度と悪魔になんか付いていったりしちゃダメだからな? 死んでいく父ちゃんと交わす最後の約束だぞ・・・?」
それだけ言ってから写真を破り捨て、代わりに取り出した白い鉢巻きを震えながら頭に巻いて立てかけてあった自動小銃に手を伸ばし、もうすぐ駆けつけてくるだろう憲兵たちが入ってくるドアへと向けて構えを取る。
やがてドアの向こうから「いったい何をやっている!?」「今すぐ鍵を開けなければ冗談ではすまさんぞ!?」等と言った警告を聞き流して待ちかまえ、強硬手段によりドアをぶち破って侵入してきた憲兵たちに向けて彼は大声で叫んでいた。ーー泣きながら、銃を乱射しながら、ただひたすら愛する家族の無事を祈りながらーー。
「大日本帝国ばんざーーーーーーーーーーーーっい!! 旭日会よ、永遠成れ!」
・・・・・・騒ぎを収束し終えたとき、現場に残されていたのは複数の死体と日章旗が書かれている鉢巻き、そして『日本は我が故郷、日本を我が手に』と筆文字で記されている白い襷と、得体の知れない錠剤・・・・・・。
これらの情報が提督のもとにもたらされると、当然彼の怒りと猜疑心は大いに刺激され、「これは日本の策略である!」とする彼の抱いた様々な感情がない交ぜになった八つ当たりとしか言いようのない答えを導き出してしまう。
「貴様ぁぁ・・・・・・異住! 謀ったな! 始めからこうする予定だったのではないか! 違うか!? 違うというなら証明して見せろぉぉっ!!!」
提督の怒声は力強さと迫力に満ち溢れ、並の小娘程度が覚悟だけで気圧されない程度の微風ではない。だが、台風をも上回る暴風でさえ、来ると分かっているのなら対策を講じて無害化してきたのが人類史である。
ましてや架空戦史モノとまったく同じ展開できた相手にどれほどの迫力と威圧があろうと量の多い少ないの問題でしかない。
自分の来て欲しいところに敵自らこさせる術は彼女が師匠から受け継ぎたいと悲願していたもの。それをやって上手くいった結果ならば怯える理由をいささかも持ち得ないのが似非不敗の魔術師の卵でしかない銀髪少女の歪みなのだから。
『そんな予定はありません。第三者による妨害工作ではないかと言いたいところですが、水掛け論になるだけなので止めときましょう』
肩をすくめながら他人事のような冷静さで応じられて、提督の怒りは沸点を超えかけるが、とどめを刺したのはセレニア自身の言葉による破滅の一弾であった。
『ーーで? どうされますか? 交渉を継続されることをお望みになられますか? それとも交渉は決裂したとして戦闘再開を望まれますか? どちらでもお好きな方でどうぞ』
この一言が提督の理性を月の彼方にまで蒸発させた。
・・・実のところ、彼がマイントイフェルの旗艦にいたときより食事には微量の興奮剤が仕込まれ続けており、それらが洗脳医療先進国ナチスドイツの元軍人マイントイフェル指示のもと適切な量を計算し尽くして投与され続け、このとき提督の体は時限式の感情爆弾を埋め込まれているような状態に陥らされていたのである。
その着火装置にセレニアは火をつけた。あるいは、ようやく飛び火で着火させることに成功した。
目に見えない心の導火線は、どこにあるのか分かり辛いから難しいと心の中で安堵しながら・・・。
「ぬけぬけとよく言う! 貴様のような卑劣奸と交わす約定など「必ず地獄へ送ってやる!」以外は必要ない! 待っていろ! 今すぐ行って貴様を八つ裂きにし、他のIS操縦者共々ギロチンにかけてやるからな!」
この発言には周りにいた彼の幕僚たちの方が驚いて目を剥いた。どれほど怒り狂っていたとしてもエイノー提督はこのような発言をなさるお人ではないはずだ。何か理由がおありになるに違いないと、勇気を出して一歩踏み出した参謀が
「落ち着いてください、提督。ここは冷静さを保つことこそ寛容。ことは我々のみならず、艦隊全乗員の命と彼らの家族の今後にまで影響を及ぼしかねない問題ですから、返答までに今しばらくの猶予を求めるのが定石かとーー」
返事はない。代わりとして銃弾が彼の右胸を貫いていた。
「ヤツらは既にこちらを討ちに来ているきているではないか! こちらからも撃たなければ討たれるだけだ! 何故それが分からん!?」
『・・・・・・・・・』
「撃たねばならんのだ! 討たれる前に! 我らを討とうとする敵は滅ぼさなければ明日はこない!」
「勝つために、滅ぼすために我々は来たのだ! 命がけで! 殺し合いをしてまでも!
皆、殺す覚悟があるなら死ぬ覚悟も出来ていようが! 違うか!?」
『・・・・・・・・・』
返答はない・・・・・・。
「今より全艦、IS学園のある学園島に向かって突入して玉砕し、もってアメリカ合衆国海軍の恩顧に報いるものとする。この期に及んで生命を惜しむ輩は、よもやおるまいな?」
『・・・・・・・・・』
返答はない。ーーもう二度と、彼らは彼らの司令官に返答しようとは思っていないからだ。
提督は狂われた。壊れてしまわれた。悲劇ではあるが、これも人殺しを生業とする罪深き職業軍人故に背負わされた業と言うもの。
せめて最期までお付き合いするのが、自分たちが提督から受けてきた恩を返すことにつながるのだと信じて自らの職務を果たすことにのみ集中する。
提督の怒声と指示だけが聞こえる艦橋内で、意志持つ機械と化した幕僚たちが黙々と仕事に精励しながら無意味で無価値な死に向かって彼らは進み続けてゆく。
地獄に向かって、愉しくなさそうにーーーー
「おお、そうだ。途中で目に付いた物は片端から壊せ。無論ISシェルターもだ、不愉快きわまりない。日本を感じさせる物はすべて破壊しながら進軍せよ。
ははは、戦争だ戦争だ『白騎士事件』以来待ち続けた夢にまで見た復讐戦の戦争だ・・・私が十年近く待ち続けた満願成就の戦争の時がきた!!!!」
「・・・と、まぁこういう風になると分かり切っていたからこその突き放し具合だった訳でしてね・・・」
私は提督の変貌ぶりに目を丸くしてらっしゃるナターシャさんに、子供が手品の種明かしでもするかのような仕草と口調で吐き気を催したくなる気持ちをバカにしながら最後の悲劇に終わりを告げる指示を下します。
「織斑さん、後はお願いします。敵とは休戦条約も停戦条約も交わしてませんので、どうぞご随意に・・・」
疲れた気持ちで私は席を移動して、クロエさんにハッキングさせる予定の艦内映像が映し出されるモニターの前の席に座り直します。
これから始まる惨劇の一部始終を目に納めておくために。
「相手が選ぶはずがないと分かった上で選択肢を与えてみせて、自分から破滅の道を選ばせる・・・人として最低最悪の行為をしている人間に偽善なんて口に出す権利なんかありはしません。嘘で人が救えるならともかく、自分一人しか救えない嘘なら気持ち悪いだけです、反吐がでる。
所詮、戦争に正しいやり方なんてものはないんですよ。あるのはただ『こうすれば楽に大量に効率よく人殺しができるマナー』ぐらいなものなんです。
自分に都合のいい自由と権利の使い方で人に死を選ばせる人間に、自分の言葉をどう解釈されるかなんて気にする資格なんてあるはずないじゃないですか・・・・・・」
ナターシャさんに言っているのか、それとも自分自身に向かって言い聞かせて自己正当化したいだけなのか、自分でもよく分からないまま私はただグランギニョルの放送開始を待ちます。
黒いモニター画面を見つめながら今か今かと、早く始まり早く終われと願い続けながら、自己嫌悪に浸りながら、後悔することで罪悪感を薄めようとする自分自身の狡っ辛さに心底嫌気がさしながら・・・・・・。
つづく