【美濃】〔西暦1550年春〕
ハクは現在殿様の孫を育てていた。
その理由は・・・数十年前に遡る。
ハクは戦国の動乱に巻き込まれ、危険を回避するために頭巾を被って商売をしていた。
ある時に働かせて欲しいと弟子入りを希望する男が現れ、彼に商売の極意・・・というか集団心理学を教えた。
この彼こそ美濃の蝮と言われる斎藤道三その人である。
彼の少年期は悲惨だった。
父親は足軽、母親は病弱だった。
父親が元気だった頃はまだ生活が良かったのだが、父親が流れ矢の傷により足を悪くしてからは生活がどんどん苦しくなっていった。
母親の病気も悪化し寝たきりになっていった。
あまりの貧困に父親は道三を連れて商人の家に盗みを働くことにした。
その商人の家が私の家である。
護衛(孤児から育てた)もいたのだが、父親の決死の突撃に金が入った袋を1つ奪われてしまった。
父親はその時護衛に囲まれて討ち取られ、翌日家の前に磔にされた。
道三はその袋を持って家に逃げ帰る。
「新九郎(道三の子供の頃の名前)、おっとうはまだだべ?」
寝たきりの母親が道三に聞いてくる
「久々に仕事が入ったから遅くなるだ!!」
「そうかい。」
この時色々と道三は考えていた。
これから父親が死んだことをどう伝えるか、母親の薬代を稼ぐか・・・まだ道三は武芸など鍛えているはずもなく、本当にしたっぱの息子なだけだった。
・・・翌朝・・・母親は冷たくなっていた。
道三は幼いながらに両親を失ったのだ。
失意のうちに町に行くと父親が磔にされている。
あまりに残酷な現実である。
その夜・・・ハクは外で涼んでいた。
泥棒に入られたがはした金であったため、すぐに取り返すことができた。
すると外でザシュ、ザシュと何かを斬りつける音が聞こえてくる。
塀から覗くと子供が磔にされた男の首をとっているのだ。
道三は子供だったため、父親を持って家まで運ぶことができなかった。
そのため首をボロボロの袋に入れて持って帰った。
私は色々な人を見てきた。
偉大な祖父である清盛から衰退していった平家、源氏の家来達や大商人、豪農、乞食・・・たまたま入ってきた泥棒の息子というありふれた1人だったが、不思議な魅力を感じた。
(・・・面白いじゃない。)
道三はその後最後に盗んだ金と母親、父親を埋めた墓を作った後、寺で坊主として生活する・・・その間に薙刀を必死に覚え、読み書き、簡単な計算を覚え、商人に自分を売り込んだ。
それは本当にたまたまだった。
ハクは泥棒の息子が目の前の青年だと直感でわかった。
それからは自分が売っている商品の油を売りさばくのを任せてみた。
道三の過去は真実と嘘を混ぜているので信用しないでください。