織田信長と斎藤龍興は9歳の差があった。
その9年で全てが決まっていた。
「斎藤家家長の斎藤龍興と申します。」
「堅苦しい話は無しだ。なぜ我を苦しめた。」
信長は堅苦しい話が嫌いであり、約6年間も美濃攻略に費やしてしまったことに苛立ちを覚えていた。
「我が美濃を守るためでございます。」
「・・・それだけか。」
「それだけです。」
信長は失望した顔をした。
家臣も我が父から受けついだ等があれば納得しただろうが、今の言葉で忠誠を捨てる者がいる時点で負けである。
(それに比べて・・・。)
信長の家臣には信長を慕っている者しかいなかった。
信長が織田家であり、織田家は信長の全てとなっていたのだ。
ギリ
信長に悟られないように拳に力を入れた。
「・・・我の前にその面を金輪際見せるな!!」
美濃からの追放である。
俺はわざと命が助かって安堵しているかのように演技した。
家臣・・・いや、旧家臣達は私をその時捨てた。
完全に・・・。
私は城から持てるだけの金品を持って城を出た。
「龍興様、手伝います。」
「すまないな。」
「いえ。」
私の元にはハクの元に行きたいと願う利害が一致した仲間が50人だけおり、家臣は1人もいなかった。
(俺はまだ20だ。今からでも巻き返すことが可能。・・・絶対に俺を見てくれる家臣を作る!!)
天才は孤独を好むというが、彼は時勢を読む天才でもあった。
【政都 金糸雀の家】〔西暦1569年冬〕
龍興は無事50人の希望者とともに北邦共和国に行くことができた。
行く途中に8~12歳の捨て子を5人ほど拾って連れてきた。
龍興は彼らを自分の家臣にするべく様々なことを教えた。
計算であったり、読み書きであったり・・・。
龍興自身も行商や、僧の真似事をしたりしながら彼らの食費を稼いだ。
北邦共和国に着いて彼は国境前で軍に捕らえられたがハクの手紙を見せると何か勘違いされたが通ることができた。
北邦共和国という国は日ノ本の何十倍もの領土と人、金を持っていた。
俺がさらに注目したのは身分差が無いことだ。
勿論部下や上司の関係はあるが、貴族や武士のような特権階級が無いことに驚いた。
俺も含めてハクの部下も北邦の生活は天国だと言っている。
身分を隠して1年間農家で俺は働かせてもらった。
そこでは大量の水車を使った稲作や、牛と時を告げる鳥(鶏)を飼っていた。
何も知らない俺と家臣(予定)に色々なことを教えてくれた。
家で出してもらった料理も自分が食べてきた飯が残飯のように感じるほど旨かった。
俺はこの農家が国の上流階級にあたる人物なのではと思い、聞いてみると
「何を言ってるだ?おでなんかぺーぺーよ。フツーの農家だ。この周辺だと小さい方だべ。」
凄まじいカルチャーショックが龍興を襲った。