〔冬〕
北邦から持ち込まれた苗や種は技術者とともに全国に広がっていった。
青森藩は技術者の案内、住居の提供、建築資材の工場を建てることにより圧倒的だった収穫量のアドバンテージを失ったことによる損失を埋めることに成功した。
そのため軽工業重視だった工業も日ノ本で唯一蒸気機関を生産できる重工業社会を実現した。
「奥州街道の延長もしなければならぬな・・・参勤交代制は延期だな。」
家光はインフラに各藩が金を使っている現状から参勤交代制延期の英断をする。
〔西暦1635年夏〕
横浜港、大坂港の整備を幕府主導のもと開始する。
青森藩は蒸気機関車を青森から津軽までの距離を走らせることに成功する。
〔秋〕
米が大豊作となる。
「まずい!!今米の相場が暴落すれば幕府の収益に多大な影響が出る・・・いかがすべきか・・・。」
大老徳川忠吉は青森藩藩主で食に関して独自研究をしている龍元を江戸に召集した。
「簡単なことなんだな・・・売れる品を作ることなんだな。」
武士とは思えないデップリとした腹を抱えながら彼は話す。
周りに人がいれば不敬と言って後ろから斬られてもおかしくはない姿勢であり、態度である。
「米を粉末にして、刻鳥(鶏)の卵を混ぜながら練って焼き固め、砂糖と果物から作ったジャムを塗れば保存の効くお菓子となるんだな。酒にすれば貿易の品にもなるんだな。今回は北邦に相談すればただでさえ人口飽和状態の北邦ならほとんど買ってくれると思うんだな。」
「なるほど・・・しかし餓えがなくなったというのにこれとはな。」
「一時的に武士を助けるために米ではなく金貨や銀貨で渡した方が良いと思うんだな。」
「いや、流石に・・・。」
「一時的な処置なんだな。」
「一時的か・・・考えておく。」
その後も龍元は利のある提案を数々出して立ち去った。
忠吉は家光と相談の後に龍元が言ったことを元にした米異国売買の令を発布した。
幕臣達は表向き不満を口にしたが、屋敷の中では米暴落に対する有効的な政策と貧窮しなくて良くなったことから幕府の評判は高まった。
しかしどこも幕府のようにできた訳ではない。
【前田】
「べ、米価が!?暴落!?」
加賀100万石の前田家は実の入りが1/2まで下がってしまい、国政に支障をきたしてしまった。
青森のとある商人から借金をすることで何とか一時的に持ちこたえたが、それは遅延性の猛毒であった。
「ふふふ、加賀の経済は支配できたわ。」
青森の大財閥の長・・・ちひろであった。