本気の熱意。多分俺はそういう物に弱いと思う。
この前の個性把握テスト、そば毛君改め緑谷出久のボール投げ、あれを見た後に手を抜きふざけるのは彼に悪い気がして個性を使わない状態ではあったが、それでも素の身体能力で出せる全力でやってしまった。
彼の本気でヒーローになりたいという思いが伝わってくる。
単純な身体強化系であろう超強力な個性。代償なのか扱いきれてないのかはわからないが、個性を使用する度に大怪我をする。
ヒーローとしては最悪だ。
人を助けて自分が動けなくなってたら、また別の人が助けなくちゃいけない。とてもじゃないがヒーローには向いていない、夢だろうが何だろうが世に出て取り返しのつかない事をしでかしてしまう前に辞めた方がいい。
なのに……なのにだ!なんで俺はモニターから目を離せない?なんで言葉が出ない?
…………なんでこんなにっ!心が震える!?
魂が何かを俺に訴えかける。
これは見ない方がいいのか、それとも心に焼き付けるくらい見た方がいいのか、それもわからない。
頭では見てはいけない、これはある種の毒だ。なんて事を考えてしまう。
なのに心は目を離すな!なんて事を伝えて……いや訴えてくる。現に今まであえて無視してきたが俺のもう1つの人格である『親父』は、
目ぇ離すなよ!あ!今ちょっと横向いた!
なんて騒がしい事を言ったかと思えば、目を離さず余計な事も考えず、真剣に見ているときは何も言わず静かにして、何となく微笑んでいる気がする。何となくだけど。
………どうでもいいけど最近『親父』が普通に親父してる。
オールマイトの授業。これが俺にとって、ひとつの転機
◇
「ねぇねぇ、ヒーロー基礎学って何やると思う?」
隣の席の少女、芦戸三奈が気軽に話しかけてきた。
これは生来の彼女の性格という物もあるだろうが、俺には話しかけやすいオーラが出ているのではないだろうか?それでなければ入学して間もないのにだ!
ふむふむ、話しかけやすいオーラか、この調子で続ければ平和な学校生活を送れるのではないだろうか!ないだろうか!!
「ねぇ?聞いてるのー?」
「ん?あぁゴメン、ボーッとしてたよ。基礎学って言うくらいだからヒーローの基礎を学ぶ事だろうね。状況に対応するように座学でも教え込まれるんじゃないかな?」
「座学!?うぇーー!私、座学嫌い!!」
「まだわからないけどね」
可愛い反応なり、この会話は普通ではないだろうか?
なーんて事を考えていると廊下に気配を感じる、強く大きな気配を。
「私が普通にドアから来た!!」
思った通り、明らかに画風の違うオールマイトが登場した。
オールマイト……人気実力共にNO.1の伝説とも呼べるヒーローだ。そこまでヒーローに興味のなかった俺ですら知っている。
ヒーローになる気はないとはいえ、幼い頃からテレビに映っていたオールマイトを見て心が昂るのを感じる。
そんな有名人の授業を受けれるのはこの学校に入って良かったとも思える事のひとつだ。
さて筆記用具とノートを出してっと
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為様々な訓練を行う科目だ!!」
あ、訓練なんですねわかりました(諦め)筆記用具とノートをしまってっと
「早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」
なんて言葉を発すると共に手にはBATTLEの文字が書かれたカードを出す。
どこから出した?そのコスチュームポケットないぞ!?
「そしてそいつに伴って……こちら!!!」
一見なにもない壁から棚が迫り出してきた。
「入学前にもらった個性届けと要望に沿ってあつらえた……戦闘服!!」
周りからは歓声が上がる
「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」
「「「はーーい!!!」」」
……さて着替えるか
◇◇
コスチュームにそれぞれが着替え授業内容の説明を受ける。
2対2に分かれ片方は核兵器を守り、もう片方は核兵器を回収……屋内での戦闘訓練である。
あ、俺のコスチュームは『親父』が発動して顔が変化してもバレないような仮面を付けている+両手からの個性の発動を阻害しないようにノースリーブタイプだ、他はとりあえず燃えにくい素材でできている。だって燃えて全裸とか嫌だもん。
漫画じゃないんだし下半身だけ燃え残るとかないし。
「さてチームわけだか、このクラスは22名だ2名ずつで分けると1つのチームに出番がなくなってしまうので2つのチームは3人づつになる。そんなわけだから対戦相手によっては人数的に不利な場合になる事もある。しかしだからと言ってヒーローは現場を選べない。全てに対応出来るよう頑張りたまえ!!」
チームわけだから俺は3人のチームに振り分けられた。
これで俺個人への負担が減る。
チームメンバーは皆の娘!こと穂地依那子少女と隣の席の1-A誇る元気娘!こと芦戸三奈少女だ。2人共可愛い娘だったから少しだけテンション上がってきちゃったよお父さん。
◇◇◇
定点カメラで撮影された映像を別室のモニターで見学会です。
最初の対戦は緑谷&麗日ペアVS爆轟&飯田ペア。
音声がない為何を話しているかはわからないが、敵チームの爆轟が英雄チームの緑谷に対し、並々ならない怒りをぶつけている。
それに対して怒りをぶつけられる側の緑谷はその剣幕に怯えているがそれでも果敢に立ち向かい渡り合っている。
爆轟は大規模な爆発を起こし建物を崩壊させる。それを見たクラスメイト達は辞めさせた方がいいんじゃないか?とオールマイトに震源するが、なぜか俺はモニターから目を離せない。
怯える緑谷に一方的な攻撃を与える爆轟。
これは俺にとって、ひとつの転機。
きっとコレを見ていなければ俺はもしかしたら高校を辞めていたかもしれない。
後から考えると、ヒーローにというよりかは人が見せる激情に惹かれたのか、緑谷出久という少年が圧倒的な相手に怯えながら挑む姿に憧れたのかはわからない。が俺はこの日、確かにヒーローを、ヒーローになる自分を意識した。
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