問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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 久しぶりの投稿です。
 中間テストがあって投稿するのが遅れてしまいました。


第二章 あら、魔王襲来のお知らせ?
第十話


「ふあ………」

 僕は窓から差し込む日差しで眼を覚ました。

 ゴロン、と寝返りをする。

(もう朝か………よし、二度寝しよう)

 そう思い、布団のなかに潜る。そして、二度寝しようとしたところで、

「朔夜君、緊急事態よ!すぐに起きて!」

 そう言って、ノックもなしに飛鳥が入ってくる。

「飛鳥………うるさいよ。それと、朝はもう少し静かにしてくれないかな………」

「そんなことよりも、これを見て!」

 そう言ってこちらに何か見せてくる。

 どうやら白夜叉からの招待状のようだ。

 読んでみると、どうやら北側でお祭りがあるみたいだ。

「これから十六夜君も誘おうと思うの。朔夜君もどう?」

「………ちょっと眠いけど、悪くないかな。うん。僕も行くよ」

「ええ。準備が出来たら来てちょうだい」

 そう言って、飛鳥は部屋から出ていく。

 出ていった後、僕はいつもの袴に着替えて飛鳥を追う。

 十六夜なら書庫にいるだろうから飛鳥もそっちにいるだろう。

 そう思い、書庫に向かうのだった。

 

          *

 

 書庫に着くと、何故か本の山に埋もれているジンがいた。

「飛鳥、準備終わったけど」

「それなら、はやく行きましょう」

 

「ま、ままま、待ってください!北側に行くとしてもせめて黒ウサギのお姉ちゃんに相談してから………ほ、ほら!ジン君も起きて!皆さんが北側に行っちゃうよ!?」

「……北………北側!?」

 そう言って跳び起きると、僕達に問い詰めてくる。

「ちょ、ちょっと待ってください皆さん!北側に行くって、本気ですか!?」

「ああ、そうだが?」

「何処にそんな蓄えがあるというのですか!?此処から境界壁までどれだけの距離があると思っているんです!?リリも、大祭の事は皆さんには秘密にと―――」

「「「秘密?」」」

 重なる三人の疑問符。

 ジンはこちらを振り返る。

 邪悪な笑みと怒りのオーラを放つ耀・飛鳥・十六夜の三人。

「………そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」

「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張ってるのに、とっても残念だわ。ぐすん」

「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目を見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」

 泣き真似をする裏側で、三人はニコォリと物騒に笑う。

 隠す気の無い悪意を前にして、ダラダラと冷や汗をかきながらこちらを見てくる。

「さ、朔夜さんからも何とか言ってください!」

「無理。それに………」

「そ、それに………?」

「………それに、実は僕自身も行きたかったからね」

 こうして、僕達は東と北の境界壁を目指すのだった。

 黒ウサギに、こんな置き手紙を残して。

 

          *

 

『黒ウサギへ。

  北側の四〇〇〇〇〇〇外門と東側の三九九九九九九外門で開催する祭典に参加してきます。

  貴女も必ず後から来ること。あ、あとレティシアもね。

  私達に祭りの事を意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合

  四人ともコミュニティを脱退します。死ぬ気で捜してね。応援しているわ。

      P/S ジン君は道案内に連れて行きます』

 

          *

 

 リリに手紙を預けた後、僕達五人は“ノーネーム”の居住区を出発し、噴水広場まで来ていた。。

 今朝方から賑にぎわいを見せる“六本傷”のカフェテラスに陣取ると、飛鳥は外門の近隣を見回して、

「噴水広場の近くに来るといつも思うのだけど………外門のあの悪趣味なコーディネートは、一体誰がしているの?」

 飛鳥は不快そうに呟く。

 それを聞いて、ジンはため息混じりに飛鳥へ説明した。

「箱庭の外門は地域の権力者がフロアマスターの提示するギフトゲームをクリアすることで、コーディネートする権利を得ます。一種の、コミュニティの広告塔の役割があるんですよ」

「そう………それであの外道の名残りが残っているの」

 フンッ、と不機嫌そうに髪を掻きあげる飛鳥。

 気を取り直すように飛鳥はカフェテラスの席に向き直る。

「それで、北側まではどうやって行けばいいのかしら?」

 飛鳥はそう言って、ジンに問う。

 その飛鳥の隣で、耀が小首を傾げながら答える。

「んー………でも北にあるっていうなら、とにかく北に歩けばいいんじゃないかな?」

「いやいや。正確な距離が分からないのにそれは無理なんじゃない?一日で着く距離にあるかも分からないんだし。ねえ、ジン。北側の境界壁までの距離ってどれくらいあるの?」

 僕がそう言うとジンは天を仰いで思考し、

「此処は少し北よりなので、大雑把でいいなら………980000㎞ぐらいかと」「「「「うわお」」」」

 僕達は同時に、声を上げた。

 

          *

 

「いくらなんでも遠すぎるでしょう!?」

 その数字を聞いて、カフェのテーブルを叩いて抗議する飛鳥。

 僕もその数字を聞いて、びっくりした。

「ええ、遠いですよ!!箱庭の都市は、中央を見上げた時の遠近感を狂わせるように出来ているため、肉眼で見た縮尺との差異が非常に大きいんです。今なら笑い話ですみますから………皆さんも、もう戻りませんか?」

「断固拒否」

「右に同じ」

「以下同文」

「皆が戻らないなら」

 ガクリ、と肩を落とすジン。

 僕ははっきり言って、どちらでもいい。

「黒ウサギ達にあんな手紙を残して引けるものですか!」

「だったらどうするんですか!!」

 ジンの言葉を聞いて僕は、

「白夜叉からの招待状だし、白夜叉に言ってみたら?」

「その手があったか」

「それもそうね。そうと決まれば、善は急げよ」

「ああ」

 こうして、僕達は“サウザンドアイズ”の支店に向かうのだった。

 

          *

 

 僕達は噴水広場を抜け“サウザンドアイズ”の支店の前で止まる。店前を掃除していた割烹着の女性店員に一礼され、

「お帰り下さい」

「まだ何も言ってないでしょう?」

 門前払いを受けていた。

 飛鳥は髪を掻きあげ、口を尖らせて抗議する。

「そこそこ常連客なんだし、もう少し愛想よくしてくれてもいいと思うのだけれど」

「常連客というのは店にお金を落としていくお客様の事を言うのです。何時も何時も換金しかしない者は、お客様ではなく取引相手と言うのです」

「あら、それもそうね。じゃあ御邪魔します」

 そう言って、店に上がり込もうとする僕達の目の前に立ち塞がる女性店員。

「だからうちの店は!“ノーネーム”御断りです!オーナーが居る時ならともかく今は」

「やっふぉおおおおおおお!ようやく来おったかマスター達いいいいいいい!」

 そう叫びながら、白夜叉がこちらに向かって降って来た。

 ズドォン!と地響きと土煙を上げながら荒々しく着地する。

「やあ、白夜叉。招待状、ありがとね。けど、北側への行き方がちょっと分からなくて………」

「よいよい、全部分かっておる。まずは店の中に入れ。条件次第では私が何とかしよう。………秘密裏に話しておきたい事もあるしな」

 白夜叉はスッと眼を細める。最後の言葉にだけ真剣な声音が宿る。

 それを聞いて、僕達は顔を見合わせ、悪戯っぽく笑う。

「それ、楽しい事?」

「さて、どうかの。まあマスター達次第だな」

 意味深に話す白夜叉。飛鳥達はジンを引きずりつつ、嬉々として暖簾をくぐる。僕もその後ろについていった。

 僕達は店内を通らず、中庭から白夜叉の座敷に招かれた。

 白夜叉は畳に腰を下ろし、厳しい表情を浮かべてジンに問う。

「本題の前にまず、一つ問いたい。“フォレス・ガロ”の一件以降、マスター達が魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂があるそうだが………真か?」

「うん、そうだけど」

 僕はそう言って首肯する。白夜叉は小さく頷き、視線をジンに移す。

「ジンよ。それはコミュニティのトップとしての方針か?」

「はい。名と旗印を奪われたコミュニティの存在を手早く広めるには、これが一番いい方法だと思いました」

 ジンの返答に、白夜叉は鋭い視線を返す。

「リスクは承知の上なのだな?そのような噂は、同時に魔王を引きつけることにもなるぞ」

「覚悟の上です。それに仇の魔王からシンボルを取り戻そうにも、今の組織力では上層に行けません。決闘に出向く事が出来ないなら、誘き出して迎え撃つしかありません」

「無関係な魔王と敵対するやもしれん。それでもか?」

 その問いに、十六夜が不適な笑みで答える。

「それこそ望むところだ。倒した魔王を隷属させ、より強力な魔王に挑み“打倒魔王”を掲げたコミュニティ―――どうだ?修羅神仏の集う箱庭の世界でも、こんなにカッコいいコミュニティは他に無いだろ?」

「………ふむ」

 瞑想している白夜叉に、僕も言う。

「それに、白夜叉も僕の契約精霊とはいえノーネームの一員になるんだから、あまり心配しなくても大丈夫だよ。それで本題は?」

「うむ。実はその“打倒魔王”を掲げたコミュニティに、東のフロアマスターから正式に頼みたい事がある。此度の共同祭典についてだ。よろしいかな、ジン殿?」

「は、はい!謹んで承ります!」

 白夜叉にそう言われ、ジンは表情を明るくして応えた。

「さて、では何処から話そうかの………」

 そう言って、一息つく白夜叉。そして中庭に眼を向け、遠い目をした後にふっと思い出したように話し始める。

「ああ、そうだ。北のフロアマスターの一角が世代交代をしたのを知っておるかの?」

「え?」

「急病で引退だとか。まあ亜龍にしては高齢だったからのう。寄る年波には勝てなかったと見える。此度の大祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭でな」

「「龍?」」

 そう言って、期待の眼差しを十六夜と耀が見せる。白夜叉は苦笑しつつ説明を続けた。

「五桁・五四五四五外門に本拠を構える“サラマンドラ”のコミュニティ―――それが北のマスターの一角だ。ところでおんしら、フロアマスターについてはどの程度知っておる?」

「私は全く知らないわ」

「私も全く知らない」

「僕も詳しくは知らない」

「俺はそこそこ知ってる。要するに、下層の秩序と成長を見守る連中だろ?」

 十六夜が軽く説明する。僕達は説明を清聴した。

「しかし、北は複数のマスター達が存在しています。精霊に鬼種、それに悪魔と呼ばれる力ある種が混在した土地なので、それだけ治安も良くないですから………」

 ジンはそれだけ説明すると、悲しげに目を伏せた。

「けど、そうですか。“サラマンドラ”とは親交があったのですけど………まさか頭首が替わっていたとは知りませんでした。それで、今はどなたが頭首を?やっぱり長女のサラ様か、次男のマンドラ様が」

「いや、頭首は末の娘―――おんしと同い年のサンドラが火龍を襲名した」

 は?とジンが小首を傾げて一泊。二度ほど眼を瞬く。

 しかしすぐに驚嘆の声をあげたジンが身を乗り出して言う。

「サ、サンドラが!?え、ちょ、ちょっと待ってください!彼女はまだ十一歳ですよ!?」

「あら、ジン君だって十一歳で私達のリーダーじゃない」

「そ、それはそうですけど………!いえ、だけど、」

「なんだ?まさか御チビの恋人か?」

「ち、違っ、違います!失礼な事を言うのは止めてください!」

 ヤハハと茶化す十六夜と飛鳥。怒鳴り返すジン。

 それを放置して、白夜叉に聞く。

「それで僕達に何をして欲しいの?」

「そう急かすな。実は今回の誕生祭だが、北の次代マスターであるサンドラのお披露目も兼ねておる。しかしその幼さ故、東のマスターである私に共同の主催者(ホスト)を依頼してきたのだ」

「あら、それはおかしな話ね。北は他にもマスター達が居るのでしょう?ならそのコミュニティにお願いして共同主催すればいい話じゃない?」

「………うむ。まあ、そうなのだがの」

 急に歯切れが悪くなる白夜叉。

 言いにくそうに白夜叉がしていると、十六夜が隣から助け船を出した。

「幼い権力者を良く思わない組織がある。―――とか、在り来たりにそんなところだろ?」

「んー………ま、そんなところだ」

(まさか、そんな理由とは思わなかったな)

 飛鳥の顔が不愉快そうに歪む。僕と同じ事でも考えていたのだろう。

「………そう。神仏の集う箱庭の長達でも、思考回路は人間並みなのね」

「うう、手厳しい。だが全く持ってその通りだ。だが実は東のマスターである私に共同開催の話を持ち掛けてきたのも、様々な事情があってのことなのだ」

 申し訳なさそうに項垂れる白夜叉。

 重々しく口を開こうとした白夜叉を、耀がハッと気が付いたような仕草で止める。

「ちょっと待って。その話、まだ長くなる?」

「ん?んん、そうだな。短くともあと一時間程度はかかるかの?」

「それはまずいな。黒ウサギに追い付かれるかも」

 ハッ、と他の二人とジンも気が付く。

 気が付いたジンは咄嗟に立ち上がり、

「し、白夜叉様!どうかこのまま、」

「ジン君、黙りなさい!」

 ガチン!と勢い良くジンの下顎が閉じる。

 その隙を逃さず十六夜が白夜叉を促す。

「白夜叉!今すぐ北に向かってくれ!」

「む、むぅ?別に構わんが、何か急用か?というか、内容を聞かず受諾してよいのか?」

「構わねえから早く!事情は追々話すし何より―――その方が面白い!俺が保証する!」

 十六夜の言い分に白夜叉は瞳を丸くし、呵々と哄笑を上げて頷いた。

「そうか。面白いか。いやいや、それは大事だ!娯楽こそ我々神仏の生きる糧なのだからな。ジンには悪いが、面白いならば仕方がないのぅ?」

「………!!?…………!??」

 暴れるジンを取り押さえる。それを余所目に、白夜叉は両手を前に出し、パンパンと柏手を打つ。

「―――ふむ。これでよし。これで御望み通り、北側に着いたぞ」

「「「「―――………は?」」」」

ジンを縛りあげながら、僕達は素っ頓狂な声を上げる。

(今の僅かな時間でどうやって北側まで行ったんだ?)

 そんな事を考えていると、僕以外の三人は店外へ走り出した。

「ちょ、待ってよ」

 そう言って僕は他の三人を追いかけた。

 

          *

 

 僕達が店から出ると、熱い風が頬を撫でた。

 いつの間にか高台に移動した“サウザンドアイズ”の支店からは、街の一帯が展望できる。

 飛鳥は大きく息を呑み、感嘆の声を上げる。

「赤壁と炎と………ガラスの街………!?」

(すごいな………みんなもそう思う?)

 レスティア達からも感嘆の声が上がっている。

 キャンドルスタンドが二足歩行で町中を闊歩している様を見て、十六夜も喜びの声を上げた。

「へぇ……!980000kmも離れているだけあって、東とは随分と文化様式が違うんだな。歩くキャンドルスタンドなんて奇抜なもの、実際に見る日が来るとは思わなかったぜ」

「ふふ。しかし違うのは文化だけではないぞ。其処の外門から外に出た世界は真っ白な雪原でな。それを箱庭の都市の大結界と灯火で、常秋の様相を保っているのだ」

 白夜叉は自慢げに言う。十六夜は眼下の街に目を向けながら頷く。

「ふぅん。厳しい環境があってこその発展か。ハハッ、聞くからに東側より面白そうだ」

「………むっ?それは聞き捨てならんぞ小僧。東側だっていいものは沢山あるっ。おんしらの住む外門が特別寂れておるだけだわいっ」

 一転して拗ねるように口を尖らせる白夜叉。

 美麗な街並みを眺めていた飛鳥は指をさしながら言う。

「今すぐ降りましょう!あのガラスの歩廊に行ってみたいわ!いいでしょう白夜叉?」

「ああ、構わんよ。続きは夜にでもしよう。暇があればこのギフトゲームにも参加していけ」

 ゴソゴソと着物の袖から取り出したゲームのチラシ。僕達がチラシを覗き込むと、

 

「見ィつけた―――のですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 ズドォン!!と、ドップラー効果の効いた絶叫と共に、爆撃のような着地。

「ふ、ふふ、フフフフ………!ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児様方………!」

 淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振りまく黒ウサギ。

 誰かがこちらに落ちてくるのには気づいていたので、オルトリンデに足止めを頼み、精霊魔術も使って全力で逃げるのだった。

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