問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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第十一話

 黒ウサギから逃げた後、人混みに紛れて身を隠す。

「まさかこんなにはやく見つかるとは………」

「あの手紙が原因だと思うけど」

「同感です」

 僕の言葉に答えたのは、呼び出していたエストとレスティアだ。

「まあ、あんなこと書かれたらね………」

 そんな会話をしながら三人で周りを見る。

「それにしても、すごいな………」

「確かにそうですね」

 周りには色々な作品が置いてあり、見ているだけでもかなり楽しい。

 遠くの方で爆音がして、笑い声が聞こえる。十中八九十六夜だろう。

「あー………十六夜達は見つかったのか」

「そうみたいね」

 少しして、レティシアが空から降りてくる。

「朔夜、見つけたぞ」

「あー………見つかったか」

「逃げないのか?」

「別に。エスト達と少し街を見れて満足だし。それで、オルトリンデは?戻ってきてないんだけど」

「ああ、それなら白夜叉に連れていかれたぞ」

「マジか………いったん戻るよ」

 そう言って、白夜叉のところに向かうのだった。

 

          *

 

 白夜叉のところに行く途中何故か瓦礫が周りに落ちており、そこには黒ウサギと十六夜がいた。

「何やってるの?」

「あ、朔夜さん。ようやく見つけましたよ!」

「ああ、もうレティシアに捕まったから」

「それならよかったのですよ………」

「そこまでだ貴様ら!!」

 黒ウサギとしゃべっていると、声が聞こえた。

 そちらを見ると、炎の龍紋を掲げ、蜥蜴の鱗を肌に持つ集団が来ていた。

 それを見た黒ウサギは頭を抱え、そして両手を上げるのだった。

 

          *

 

「随分と派手にやったようじゃの、おんしら」

「ああ。ご要望通り祭りを盛り上げてやったぜ」

「胸を張って言わないで下さいこのお馬鹿様!!!」

 スパァーン!と黒ウサギのハリセンが十六夜の頭に直撃する。

 その後ろでジンは頭を抱えている。

 何故か僕も黒ウサギ達と一緒に連行された後、運営本陣営の謁見の間に連れてこられた。

 前を見ると幼い少女がおり、彼女が今回の誕生祭の主催であるサンドラなのだろう。

 その傍にいる側近らしき軍服姿の男が鋭い目つきで前にでて、僕達の方を高圧的に見下す。

「ふん!“ノーネーム”の分際で我々のゲームに騒ぎを持ち込むとはな!相応の厳罰は覚悟しているか!?」

「これマンドラ。それを決めるのはおんしらの頭首、サンドラであろ?」

 白夜叉がマンドラと呼ばれた男を窘める。

 サンドラは上座にある豪奢な玉座から立ち上がり、僕達に声を掛けた。

「“箱庭の貴族”とその盟友の方。此度は“火龍誕生祭”に足を運んでいただきありがとうございます。貴方達が破壊した建造物の一件ですが、白夜叉様のご厚意で修繕してくださいました。負傷者は奇跡的になかったようなので、この件に関して私からは不問とさせて頂きます」

 チッと舌打ちをするマンドラ。十六夜が意外そうに声を上げる。

「へぇ?太っ腹な事だな」

「うむ。おんしらは私が直々に要請したのだからの。何より怪我人が出なかったことが幸いした。よって路銀と修繕は、報酬の前金とでも思っておくが良い」

 ほっと胸を撫で下ろす黒ウサギ。十六夜は軽く肩を竦ませる。

「………ふむ。いい機会だから、昼の続きを話しておこうかの」

 そう言って白夜叉が目配せをしサンドラがマンドラ以外の側近を下がらせる。

 人が居なくなると、サンドラは固い表情と口調を崩し、ジンに駆け寄る。

「ジン、久しぶり!コミュニティが襲われたと聞いて随分と心配していた!」

「ありがとう。サンドラも元気そうでよかった」

 同じく笑顔で接するジン。二人が親しげに話していると、

「その様に気安く呼ぶな、名無しの小僧!!!」

 そう言って、帯刀していた剣をジンに向かって抜く。ジンの首筋に触れる直前、十六夜が足の裏で受け止めた。十六夜はそれを蹴り返し、軽薄な笑みを浮かべる。

「……おい、知り合いの挨拶にしちゃ穏やかじゃねえぜ。止める気無かっただろオマエ」

「当たり前だ!サンドラはもう北のマスターになったのだぞ!誕生祭も兼ねたこの共同祭典に“名無し”風情を招き入れ、恩情を掛けた挙げ句、馴れ馴れしく接っされたのでは“サラマンドラ”の威厳に関わるわ!この“名無し”のクズが!」

 睨み合う十六夜とマンドラ。慌ててサンドラが止めに入る。

「マ、マンドラ兄様!彼らはかつての“サラマンドラ”の盟友!此方から一方的に盟約を切った挙げ句にその様な態度を取られては、我らの礼節に反する!」

「礼節よりも誇りだ!そんな事を口にするから周囲から見下されるのだと、」

「これマンドラ。いい加減に下がれ」

 呆れた口調で諌める白夜叉。しかし尚も食ってかかり、睨み返すマンドラ。

「“サウザンドアイズ”も余計な事をしてくれたものだ。同じフロアマスターとはいえ、越権行為にも程がある。『南の幻獣・北の精霊・東の落ち目』とはよく言ったもの。此度の噂も、東が北を妬んで仕組んだ事ではないのか?」

「マンドラ兄様ッ!!いい加減にしてください!!」

 サンドラが見かねて叱りつける。

 一つ気になることがあったので質問する。

「ねえ、噂って何のこと?それって僕達に協力して欲しいことと関係あるの?」

 うむ、と白夜叉は僕達全員の顔を一度見回した後、一枚の封書を取り出した。

「この封書に、マスター達を呼び出した理由が書いてある。………己の目で確かめるがいい」

 渡された封書を開けると、そこには只一文、こう書かれていた。

 

『火龍誕生祭にて、“魔王襲来”の兆しあり』

 

 成る程、だから僕達が呼ばれたのか。

 そんな事を考えながら十六夜の方に封書を渡す。

 十六夜もそれを見ると、普段の軽薄な笑みが完全に消えた。

「正直意外だったぜ。てっきりマスターの跡目争いとか、そんな話題だと思ったんだがな?」

「何ッ!?」

「謝りはせんぞ。内容を聞かずに引き受けたのはマスター達だからな」

「違いねえ………それで、俺達に何をさせたいんだ?魔王の首を取れっていうなら喜んでやるぜ?つーかこの封書はなんだ?」

「うむ。ではまずそこから説明しようかの」

 白夜叉がサンドラに目配せをする。サンドラが頷くと、白夜叉は神妙な面持ちで語り始めた。

「まずこの封書だが、これは“サウザンドアイズ”の幹部の一人が未来を予知した代物での」

「未来予知?」

「うむ。知っての通り、我々“サウザンドアイズ”は特殊な瞳を持つギフト保持者が多い。様々な観測者の中には、未来の情報をギフトとして与えておる者もおる。そやつから誕生祭のプレゼントとして贈られたのが、この“魔王襲来”という予言だったわけだ」

「へえ。予言という名の贈り物(ギフト)か。それで、この予言の信憑性はどれくらいなの、白夜叉?」

「うむ。上に投げれば下に落ちる、という程度のものだな」

 白夜叉の例えに、一瞬だけ疑わしそうに顔を歪ませる十六夜。

「………それ、予言なのか?上に投げれば下に落ちるのは当然だろ」

「予言だとも。何故ならそやつは“誰が投げた”も“どうやって投げた”も“何故投げた”も解っている奴での。ならば必然的に“何処に落ちてくるのか”を推理することができるだろ?これはそういう類の予言書なのだ」

 はい?と、十六夜は呆れた声を上げる。周囲の人間もその事実に言葉を失っていた。

 マンドラは顔を真っ赤にし、怒鳴り声を上げた。

「ふ、ふざけるな!!それだけ分かっていながら魔王の襲来しか教えぬだと!?戯言で我々を翻弄しようという狂言だ!!今すぐにでも棲み処に帰れッ!!」

「に、兄様………!これには事情があるのです………!」

 憤るマンドラを必死に窘めるサンドラ。

「なるほど。事件の発端に一石投じた主犯は既に分かっている。………けど、その人物の名前を出す事は出来ないんだな」

「うむ………」

 歯切れの悪い返事をする白夜叉。

 十六夜の言葉と白夜叉の態度でだいたいわかった。

「つまり魔王が火龍誕生祭に現れる為に策を弄した人物が他にいて、その人物は口に出すことができない立場ってことなの?」

 僕が白夜叉にそう言うと、ジンがハッと声を漏らし、サンドラの方を見る。

「まさか………他のフロアマスターが、魔王と結託して“火龍誕生祭”を襲撃すると!?」

 ジンの叫び声が謁見の間に響く。白夜叉は哀しげに深く嘆息した後、首を左右に振った。

「まだわからん。この一件はボスから直接の命令でな。内容は予言者の胸のうち一つに留めておくように厳命が下っておる。故に私自身はまだ確信には至っていない。………しかし、サンドラの誕生祭に北のマスター達が非協力的だった事は認めねばなるまいよ。なにせ共同主催の候補が、東のマスターである私に御鉢が回ってきたほどだ。北のマスターが非協力的だった理由が“魔王襲来”に深く関与しているのであれば………これは大事件だ」

 唸る白夜叉と、絶句する黒ウサギとジン。

 しかし十六夜は、得心がいかないように首を傾げている。

「それ、そんなに珍しいことなのか?」

「へ!?」

「お、おかしなことも何も、最悪ですよ!フロアマスターは魔王から下位のコミュニティを守る、秩序の守護者!魔王という天災に対抗できる、数少ない防波堤なんですよ!?」

「けど所詮は脳味噌のある何某だ。秩序を預かる者が謀をしないなんてのは、幻想だろ?」

「なるほど、一理ある。しかしなればこそ、我々は秩序の守護者として正しくその何某を裁かねばならん」

「けど目下の敵は、予言の魔王。ジン達には魔王のゲーム攻略に協力して欲しいんだ」

 サンドラの言葉に合点がいったように頷く。他のみんなも頷いている。

 これは失敗できないな。

「わかりました、“魔王襲来”に備え“ノーネーム”は両コミュニティに協力します」

「うむ、すまんな。協力する側のマスター達にすれば、敵の詳細が分からぬまま戦うことは不本意であろう。………だが分かって欲しい。今回の一件は、魔王を退ければよいというだけのものではない。これは箱庭の秩序を守るために必要な、一時の秘匿。主犯には何れ相応の制裁を加えると、我らの双女神の紋に誓おう」

「“サラマンドラ”も同じく。―――ジン、頑張って。期待してる」

「わ、分かったよ」

 ジンはそう言って頷く。白夜叉は硬い表情を一変させ、哄笑を上げた。

「そう緊張せんでもよいよい!魔王はこの最強のフロアマスター、白夜叉様が相手をする故な!マスター達はサンドラと露払いをしてくれれば良い。大船に乗った気でおれ!」

 双女神の紋が入った扇を広げ呵々大笑する白夜叉。

 僕も魔王とちょっと戦ってみたいな。

 十六夜もどこか不満そうだ。

「やはり露払いは気に食わんか、小僧」

 

「いいや?魔王ってのがどの程度か知るにはいい機会だしな。今回は露払いでいいが―――別に、何処かの誰かが偶然に魔王を倒しても、問題は無いよな?」

 挑戦的な笑みを浮かべる十六夜に、白夜叉は呆れた笑いで返す。

「よかろう。隙あらば魔王の首を狙え。私が許す」

「それなら僕もちょっと戦ってみたいんだけど、いいかな?」

「うむ。問題ない」

 交渉が成立した後、僕達は謁見の間で魔王が現れた際の段取りを決めて過ごした。




~おまけ~
「そういえば白夜叉」
「む?なんじゃマスター」
「オルトリンデはどこ?」
「それならあそこだ」
 そう言って、白夜叉が指さした方には何故かメイド服を着せられているオルトリンデが。
「白夜叉何やってんの!?」
「ちょっとあやつで着せ替えをしておっただけだ。それより、マスターに着せたい服があっての」
「着せたい服?」
「これだ!」
 そう言って見せてきたのは、オルトリンデと同じメイド服。
「これを着ろと?」
「うむ。マスターなら絶対似合う!だから着てくれ、頼む!」
 そう言って、土下座してくる。
「ちょっ!分かったから、土下座やめて!恥ずかしい」
「本当か!!」
「う、うん」
「なら今すぐじゃ!!」
「ちょ、引っ張らないで服がのびる!」
「ついでに他の服も着てもらうぞ」
「聞いてない!!」
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