問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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第十二話

「十六夜、何か悲鳴が聞こえてきたんだけど」

「あー………大方、白夜叉が黒ウサギにセクハラしてるんだろ」

 僕が言うと十六夜は海苔煎餅を齧りながら呆れたような声を出す。

 僕と十六夜は、ジンと例の女性店員とともに来賓質で歓談していた。

「そういえば、前々から気になっていたんだけどこの店ってどうやって移動してるの?」

「それは俺も気になってた」

「ああ、この店ですか?別に移動してきた訳じゃありません。“境界門(アストラルゲート)”と似通ったシステムと言って分かります?」

「「いや全然」」

 僕達が即答するとため息を吐き、少し砕けた口調で話してくれる。

「要約すると、数多の入り口が全て1つの内装に繋がるようになっているの。例えば蜂の巣………ハニカム型を思い浮かべてくれれば分かりやすいはずですよ」

 それを聞いて、十六夜が興味津々な顔つきで促す。

「へえ?つまり本店も支店も全部兼ね備えている、ということか?」

「違います。けどそうね、語弊がありました。境界門と違う点はそこです。境界門は全ての外門と繋がっているのに対し、“サウザンドアイズ”の出入り口は各階層に一つずつハニカム型の店舗が存在しているの」

「つまり“七桁のハニカム型支店”、“六桁のハニカム型支店”ってことでいいの?」

「そう。無論、本店の入り口は一つしかありませんが。この高台の店は立地が悪く、閉店となった過去の店。今回は白夜叉様が共同祭典に来られるということになり、一時的にこの店へ出入り口を繋げ、私室部と店内の空間を別に切り分けているの。店内へと繋がる正面玄関は、開かない仕組みになっておりますので悪しからず」

「あいよ」

「あら、そんなところで歓談中?」

 話しが一区切り付くと、湯殿から飛鳥達が来た。

 十六夜は椅子からそっくり返り、飛鳥達を眺める。

「………おお?コレはなかなか良い眺めだ。そうは思わないか朔夜と御チビ様?」

「はい?」

「何が?」

「黒ウサギやお嬢様の薄い布の上からでもわかる二の腕から乳房にかけての豊かな発育は扇情的だが相対的にスレンダーながらも健康的な素肌の春日部やレティシアの髪から滴る水が鎖骨のラインをスゥッと流れ落ちる様は視線を自然に慎ましい胸の方へと誘導するのは確定的にあ

 スパァーン!!

 黒ウサギが十六夜の頭をハリセンで叩く。

「変態しかいないのこのコミュニティは!?」

「白夜叉様も十六夜さんもみんなお馬鹿様ですッ!!」

「ま、まあ二人とも落ち着いて」

 慌てて宥めるレティシア。

「あははは………」

 僕も苦笑いだ。

 一人、頭を両手で抱えているジンの肩に、女性店員が同情的な手を置く。

「………君も大変そうですね」

「………はい」

 隣では同好の士を得たように白夜叉と十六夜が握手していた。

 

          *

 

 その後、レティシアと女性店員は来賓室を離れた。

 白夜叉は来賓室の席の中心に陣取り、両肘をテーブルに載せこの上なく真剣な声色で、

「それでは皆のものよ。今から第一回、黒ウサギの審判衣装をエロ可愛くする会議を」

「始めません」

「始めます」

「始めませんっ!」

 白夜叉の提案に悪乗りする十六夜。速攻で断じる黒ウサギ。

「そういえば、黒ウサギの衣装は白夜叉がコーディネートしてるのよね?じゃあ私が着ているあの紅いドレスも?」

「おお、やはり私が贈った衣装だったか!あの衣装は黒ウサギからも評判が良かったのだが、如何せん黒ウサギには似合わんでな。何よりせっかくの美脚が」

「白夜叉様の異常趣向で却下されたのです。黒ウサギはあのドレスはとても可愛いと思っていたのですが………衣装棚の肥やしにするのも勿体ないと思った次第で。飛鳥さんは赤色がとても似合うので良かったのですよ」

「まあ、確かに飛鳥は赤が似合うよね」

「ふふ、ありがとう。二人が普段着ている服もとても似合っているわよ」

 そう言ってくれると嬉しいな。

 黒ウサギは複雑そうな表情を浮かべている。

「だが、マスターはその服も似合うが、メイド服なんかも似合うぞ」

「!?」

「おい、白夜叉どういうことだ」

「実はさっきマスターにいろんな服を着せていたんじゃ。まあ、時間的に三着ぐらいしか無理だったがの」

「へえ、もしかしてさっき朔夜が連れて行かれた時か?」

「ああ、ついでに写真もとっておいたんだが………見るか?」

「見る」

 即答か。というか飛鳥と耀も見に行ったんだけど。

 しばらくたち、三人が写真を見終わりようやく本題に入る。

「実は明日から始まる決勝の審判を黒ウサギに依頼したいのだ」

「あやや、それはまた唐突でございますね。何か理由でも?」

「うむ。おんしらが起こした騒ぎで“月の兎”が来ていると公になってしまっての。明日かろのギフトゲームで見られるのではないかと期待が高まっているらしい。“箱庭の貴族”が来訪したとの噂が広がってしまえば、出さぬわけにはいくまい。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させて欲しい。別途の金銭も用意しよう」

 なるほど、と僕達は納得する。

「分かりました。明日のゲーム審判・進行はこの黒ウサギが承ります」

「うむ、感謝するぞ。………それで審判衣装だが、例のレースで編んだシースルーの黒いビスチェスカートを」

「着ません」

「着ます」

「断固着ませんッ!!あーもう、いい加減にしてください十六夜さん!」

 茶々を入れる十六夜。ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。

 すると、耀が思い出したように白夜叉に訊ねる。

「白夜叉。私が明日戦う相手ってどんなコミュニティ?」

「すまんがそれは教えられん。“主催者”がそれを語るのはフェアではなかろ?教えてやれるのはコミュニティの名前までだ」

 パチン、と白夜叉が指を鳴らすと羊皮紙が現れ、文章が浮かび上がる。

 そこに書かれているコミュニティの名前を見て、飛鳥が驚いたように目を丸くした。

「“ウィル・オ・ウィスプ”に―――“ラッテンフェンガー”ですって?」

「うむ。この二つは珍しい事に六桁の外門、一つ上の階層からの参加でな。格上と思ってよい。詳しくは話せんが、余程の覚悟はしておいた方がいいぞ」

 白夜叉の真剣な忠告に頷く耀。

 一方の十六夜は、“契約書類(ギアスロール)”を睨みながら物騒に笑う。

「へえ………“ラッテン・フェンガー”?成程、“ネズミ捕り道化(ラッテンフェンガー)”のコミュニティか。なら明日の敵はさしずめ、ハーメルンの笛吹き道化だったりするのか?」

 それを聞いて黒ウサギと白夜叉が驚嘆の声を上げた。

「ハ、“ハーメルンの笛吹き”ですか!?」

「まて、どういうことだ小僧。詳しく話を聞かせろ」

 なんで二人はこんなに驚いてるんだろう。十六夜もびっくりしているし。

「ああ、すまんの。最近召喚されたマスター達はしらんのだな。―――“ハーメルンの笛吹き”とは、とある魔王の下部コミュニティだったものの名だ」

「何?」

「魔王のコミュニティ名は“幻想魔道書群(グリムグリモワール)”。全二〇〇篇以上にも及ぶ魔書から悪魔を呼び出した、驚異の召喚士が統べたコミュニティだ」

「しかも一篇から召喚される悪魔は複数。特に目を見張るべきは、その魔書の一つ一つに異なった背景の世界が内包されているということです。魔書の全てがゲーム盤として確立されたルールと強制力を持つという、絶大な魔王でございました」

「――――へえ?」

「けどその魔王はとあるコミュニティとのギフトゲームで敗北し、この世を去ったはずなのです。………しかし十六夜さんは“ラッテンフェンガー”が“ハーメルンの笛吹き”だと言いました。童話の類は黒ウサギも詳しくありませんし、万が一に備えご教授して欲しいのです」

 十六夜は悪戯を思いついたようにジンの頭をガシッと掴んだ。

「なるほど、状況は把握した。そういうことなら、ここは我らが御チビ様にご説明願おうか」

「え?あ、はい」

 僕達の視線がジンに集まる。

 十六夜がジンの頭を掴んで寄せ、何かを耳打ちしたあと、コホン、とジンは咳払いする。そしてゆっくり語り始めた。

「“ラッテンフェンガー”とはドイツという国の言葉で、意味はネズミ捕りの男。このネズミ捕りの男とは、グリム童話の魔書にある“ハーメルンの笛吹き”を指す隠語です。大本のグリム童話には、創作の舞台に歴史的考察が内包されているものが複数存在します。“ハーメルンの笛吹き”もその一つ。ハーメルンとは、舞台になった都市の名前です」

「ふむ。ではその隠語が何故にネズミ捕りの男なのだ?」

「グリム童話の道化師が、ネズミを操る道化師だったとされるからです」

 白夜叉の質問に滔々と答えるジン。その隣で、飛鳥が静かに息を呑んでいる。

 飛鳥には何か心当たりがあるようだ。

「ふーむ。“ネズミ捕り道化(ラッテンフェンガー)”と“ハーメルンの笛吹き”か………となると、滅んだ魔王の残党が火龍誕生祭に忍んでおる可能性が高くなってきたのう」

「YES。参加者が“主催者権限(ホストマスター)”を持ち込むことが出来ない以上、その路線はとても有力になってきます」

「うん?なんだそれ、初耳だぞ」

「おお、そうだったな。魔王が現れると聞いて最低限の対策を立てておいたのだ。私の“主催者権限”を用いて祭典のルールに条件を加えることでな。詳しくはコレを見よ」

 

 白夜叉が指を振ると光り輝く羊皮紙が現れた。そこには誕生祭の諸事項が記されている。

 

『§ 火龍誕生祭 §

 

 ・参加に際する所持項欄

   一、一般参加は舞台区画内・自由区画内でコミュニ

     ティ間のギフトゲームの開催を禁ず。

   二、“主催者権限”を所持する参加者は、祭典のホ

     ストに許可なく入る事を禁ず。

   三、祭典区画内で参加者の“主催者権限”の使用を

     禁ず。

   四、祭典区域にある舞台区画・自由区画に参加者以

     外の侵入を禁ず。

 

  宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                “サラマンドラ”印』

 

「確かにこのルールなら魔王が襲ってきても“主催者権限”を使うのは不可能だね」

「うむ。まあ、押さえるところは押さえたつもりだ」

「そっか」

 僕がそう言うと、十六夜も納得したように頷く。

「けど驚きました。ジン坊っちゃん、どこで“ハーメルンの笛吹き”を知ったのです?」

「べ、別に。十六夜さんに地下の書庫を案内している時に、ちょっとだけ目に入って………」

「ふむ、そうか。何にせよ情報としては有益なものだったぞ。しかしゲームを勝ち抜かれてしまったのはやや問題ありだの。サンドラの顔に泥を塗らぬよう監視を付けておくが―――万一の際は、おんしらの出番だ。頼むぞ」

 僕達全員はその言葉に頷いて返す。

 その後は解散となり、僕は自分に宛がわれた部屋に移動した。

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