問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ? 作:白ウサギ@FGO
翌日僕達“ノーネーム”一同は、運営側の特別席に腰かけていた。一般席が空いていないということで、サンドラが舞台を上から見る事のできる本陣営のバルコニーに席を用意してもらっていた。
十六夜が嬉々とした面持ちで白夜叉に問いかける。
「ところで白夜叉。黒ウサギが審判をする許可は下りたのか?」
「うむ。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させてもらったぞ」
「そうか。けど“箱庭の貴族”の審判が無くてもギフトゲームを進行する事は出来るだろ?なら審判をする事に何の意味がある?」
十六夜が小首を傾げて問う。中央に座っているサンドラが前に出て口を開いた。
「ジャッジマスターである“箱庭の貴族”が審判をしたゲームは“箔”付きのゲーム。ルール不可侵の正当性は、箱庭の名誉ある戦いに昇華され、記録される。箱庭の中枢に記録される事は両コミュニティが誇りの下に戦ったという太鼓判。これは、とても大事」
「へえ。それじゃあサンドラの誕生祭は箔付きのゲームとして認定されたってことなんだ」
マンドラがこちらを睨んできたが、無視してそう答えた。
そして、決勝の準備が進んでいった。
日が昇りきり、開催の宣言のために黒ウサギが舞台中央に立つ。
『長らくお待たせいたしました!火龍誕生祭のメインギフトゲーム・“造物主達の決闘”の決勝を始めたいと思います!進行及び審判は“サウザンドアイズ“の専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギがお務めさせていただきます♪』
黒ウサギが満面の笑みを振りまくと、歓声以上の奇声が聞こえてきた。
「うおおおおおおおおおお月の兎が本当にきたあああああああぁぁぁぁああああああ!!」
「黒ウサギいいいいいいい!お前に会うため此処まできたぞおおおおおおおおおお!!」
「今日こそスカートの中を見てみせるぞおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉお!!」
黒ウサギは笑顔を見せながらもへにょり、とウサ耳を垂れさせて怯んでいる。
「随分と人気者なんだね………」
かなりうるさい。というか、僕も昔似たようなことがあったな。
『騒がしいわね』
うん。僕もそれには同感。
「そういえば白夜叉。黒ウサギのミニスカートを絶対に見えそうで見えないスカートにしたのはどういう了見だオイ。チラリズムなんて趣味が古すぎるだろ。昨夜に語りあったお前の芸術に対する探究心は、その程度のものなのか?」
「そんなことを語っていたの?」
飛鳥がお馬鹿じゃないの?と言っているが二人には聞こえていない。
「フン。おんしも所詮その程度の漢であったか。そんな事ではあそこに群がる有象無象となんら変わらん。おんしは真に芸術を解する漢だと思っていたのだがの」
「………へぇ?言ってくれるじゃねえか。つまりお前には、スカートの中身を見えなくすることに芸術的理由があるというんだな?」
無論、と白夜叉は首肯する。
「考えてみよ。おんしら人類の最も大きな動力源はなんだ?エロか?成程、それもある。だが時にそれを上回るのが想像力!未知への期待!知らぬことから知ることの渇望!!小僧よ、貴様程の漢ならばさぞかし数々の芸術品を見てきたことだろう!!その中にも、未知という名の神秘があったはず!!例えばそう!!モナリザの美女の謎に宿る神秘性ッ!!ミロのヴィーナスの腕に宿る神秘性ッ!!星々の海の果てに垣間見えるその神秘性ッ!!そして乙女のスカートに宿る神秘性ッ!!それらの神秘に宿る圧倒的な探究心は、同時に至る事のできない苦汁! その苦渋はやがて己の裡においてより昇華されるッ!!何者にも勝る芸術とは即ち―――己が宇宙の中にあるッ!!」
「なッ………己が宇宙の中に、だと………!?」
何言ってるんだろう、この二人。
そう思って、白夜叉達に冷たい視線を向ける。
「そうだッ!!真の芸術は内的宇宙に存在するッ!!乙女のスカートの中身も同じなのだ!!見えてしまえば只々下品な下着達も―――見えなければ芸術だッ!!!」
ほんと、何言ってるんだろう。ちょっと僕には着いていけそうもない。
そして白夜叉が十六夜に双眼鏡を差し出す。
「この双眼鏡で、今こそ世界の真実を確かめるがいい。若き勇者よ。私はお前が真のロマンに到達できる者だと信じておるぞ」
「………ハッ。元・魔王様にそこまで煽られて、乗らないわけにはいかねえな………!」
そう言って、二人は双眼鏡で黒ウサギの方を見ている。
もう、あの二人は放置しよう。
*
ギフトゲーム名は“アンダーウッドの迷路”。
普通なら耀にも勝つ可能性はあった。
でもまさか不死の怪物ジャック・オー・ランタンなんてのが出てくるとは。
耀は業火の炎に追い詰められ、静かにゲーム終了を宣言した。
「………負けてしまったわね、春日部さん」
「ま、そういう事もあるさ。気になるなら後でお嬢様が励ましてやれよ」
気落ちする飛鳥と、軽快に笑う十六夜。
「シンプルなゲーム盤なのに、とても見応えのあるゲーム。貴方達が恥じる事は何も無い」
「うむ。シンプルなゲームはどうしてもパワーゲームに成りがちだが、中々堂に入ったゲームメイクだったぞ。あの娘は単独の戦いより、そちらの才能があるのやもしれんな」
白夜叉の言葉を聞きながら、なんとなく空を見上げる。
上空には真っ黒い封書が。十六夜も気づいたようだ。
「…………ねえ、白夜叉。アレ何?」
「何?」
白夜叉も空を見上げる。下の方では黒ウサギが驚愕の声を上げている。
「黒く輝く“
落ちてきた羊皮紙の一枚を手に取り、目を通す。そこにはこう書かれていた。
『ギフトゲーム名 “The PIED PIPER of HAMELIN”
・プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇 外門
・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の
全コミュニティ。
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・太陽の運行者・星霊 白夜叉。
・ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害。
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターを打倒。
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 “グリムグリモワール・ハーメルン”印』
数多の黒い封書が舞い落ちる中、静まり返る舞台会場。
観客席の中で一人、叫び声を上げた。
「魔王が………魔王が現れたぞオオオォォォォ――――!!!」