問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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第十五話

 僕達“ノーネーム”一同と、その他の参加者達は宮殿に集められていた。

 そのあたりをうろうろしていると、黒ウサギとジンが心配そうな表情で近づいてくる。十六夜もこちらに来た。

「朔夜さん、ご無事でしたか!?」

「うん。ほとんど怪我ないよ。他の人は?」

「残念ながら、十六夜さんと朔夜さんと黒ウサギを除けば満身創痍です。飛鳥さんに至っては姿も確認出来ず………すみません、僕がしっかりしていれば………!」

悔しそうに頭を下げるジン。

「いや、ジンのせいばかりじゃないよ。僕もオルトリンデをいかせてたんだけど守りきれなかったし」

 今の状態はかなり厳しい。レティシアと耀もかなり疲弊しているみたいだ。

「白夜叉様の伝言を受け取り、すぐさま審議決議を発動させたのですが………少し遅かったようですね」

「そもそも審議決議ってのはなんのことだ?」

「“主催者権限”によって作られたルールに、不備がないかどうかを確認する為に与えられたジャッジマスターが持つ権限の一つでございます」

「ルールに不備?」

「YES。ジン坊っちゃんの伝言によると『今回のゲームは勝利条件が確立されていない可能性がある』との事でした。真偽はともかく、ゲームマスターに指定された白夜叉様に異議申し立てがある以上、“主催者(ホスト)”と“参加者(プレイヤー)”でルールに不備がないかを考察せねばなりません。それに一度始まったギフトゲームを強制中断出来るわけですから。奇襲を仕掛けてくる事が常の魔王に対抗するための権限、という側面もあります」

「へえ、無条件でゲームの仕切り直しが出来るんだ。でも、それだけ強力な権限なら何かデメリットが有るんじゃないの?」

「ええ、勿論存在します。審議決議を行ってルールを正す以上、これは“主催者(ホスト)”と“参加者(プレイヤー)”による対等のギフトゲーム。………えっと、単刀直入に説明しますと“このギフトゲームによる遺恨を一切持たない”、という相互不可侵の契約が交わされるのですヨ」

 その説明に、十六夜は片眉を歪ませる。

「………つまりゲームで負ければ最後、他の“サウザンドアイズ”や“サラマンドラ”は報復行為を理由にギフトゲームを挑むことが出来ない、ってことか」

「YES。ですので、負ければ救援は来ないものと思ってください」

「ハッ、最初から負けを見据えて勝てるかよ」

 十六夜が失笑すると、大広間の扉が開く。入ってきたのはサンドラとマンドラの二人だ。サンドラは緊張した面持ちで、僕達参加者に告げる。

「今より魔王との審議決議に向かいます。同行者は五名です―――まずは“箱庭の貴族”である、黒ウサギ。“サラマンドラ”からはマンドラ。その他に“ハーメルンの笛吹き”に詳しい者がいるのならば交渉に協力して欲しい。誰か立候補する者はいませんか?」

 参加者にどよめきが広がる。

(みんな、知ってる?)

 レスティア達にそう聞くと、

『知ってるわよ』

 レスティアから返事が帰ってくる。

 少しして、十六夜がジンの首根っこを掴んで、

「“ハーメルンの笛吹き”についてなら、このジン=ラッセルが誰よりも知っているぞ!」

「………は?え、ちょ、十六夜さん!?」

 十六夜が突然声を上げ、それに驚くジン。

「めっちゃ知ってるぞ!とにかく詳しいぞ!役に立つぞ!この件で“サラマンドラ”に貢献できるのは、“ノーネーム”のリーダー・ジン=ラッセルを、措いて他にいないぞ!」

「ジンが?」

 キョトン、とした顔を向けるサンドラ。だが、次の瞬間にはキリッ!と表情を戻す。

「他に申し出がなければ“ノーネーム”のジン=ラッセルにお願いしますが、よろしいか?」

 サンドラの決定に再びどよめきが広がる。

「“ノーネーム”が………?」「何処のコミュニティだよ」「信用できるのかしら」「決勝に残っていたコミュニティか?」「ありえねえ」「おい、他に立候補者は―――」

 周りがいろいろ言っている間に十六夜のところに行き、一応聞いておく。

「十六夜、レスティアが知ってるみたいだし僕も着いていっていい?」

「ああ。問題ないぜ」

 問題ないと言われたので僕も着いていく事にする。

 そして、十六夜はジンの方を向いて何かを言った後、交渉に向かうのだった。

 

          *

 

「それではギフトゲーム“The PIED PIPER of HAMELN”の審議決議、及び交渉を始めます」

 僕達の前には、斑のワンピースを着た少女が座り、その両隣に軍服を着た男(オルトリンデの話ではヴェーザーと呼ばれていた)と白装束を着た女性(こちらも同じくラッテンと呼ばれていた)が立っている。そして、サンドラに倒されたのがシュトロムらしい。

(ねえ、レスティア。真ん中の子の正体分かる?)

『そうね。ギフトネームからして、黒死病(ペスト)かしら?』

(うん。ありがとう)

 

「まず“主催者(ホスト)”側に問います。此度のゲームですが、」

「不備は無いわ」

 斑の少女は言葉を遮るように吐き捨てる。

「今回のゲームに不備・不正は一切ないわ。白夜叉の封印も、ゲームのクリア条件も全て調えた上でのゲーム。審議を問われる謂われはないわ」

「………受理してもよろしいので?黒ウサギのウサ耳は箱庭の中枢と繋がっております。嘘を吐いてもすぐ分かってしまいますヨ?」

「ええ。そしてそれを踏まえた上で提言しておくけれど。私達は今、無実の疑いでゲームを中断させられているわ。つまり貴女達は、神聖なゲームにつまらない横槍を入れているということになる。―――言ってること、分かるわよね?」

 そう言って、サンドラを見つめる。

「不正がなかった場合………主催者側に有利な条件でゲームを再開させろ、と?」

「そうよ。新たなルールを加えるかどうかの交渉はその後にしましょう」

「………わかりました。黒ウサギ」

「は、はい」

 少し動揺したように頷く黒ウサギ。黒ウサギは天を仰ぎ、ウサ耳をピクピクと動かす。

 少しして、黒ウサギが気まずそうに顔を伏せる。

「………。箱庭からの回答が届きました。此度のゲームに、不備・不正はありません。白夜叉様の封印も、正当な方法で造られたものです」

「当然ね。じゃ、ルールは現状を維持。問題はゲーム再開の日取りよ」

「日取り?日を跨ぐと?」

 サンドラが意外そうに声を上げた。周りの人間も同じだ。

「ジャッジマスターに問うわ。再開の日取りは最長で何時頃になるの?」

「さ、最長ですか?ええと、今回の場合だと……一ヶ月でしょうか」

「じゃ、それで手を―――」

「待ちな!」

「待ってください!」

「待って!」

 僕達三人は同時に声を上げる。

「……なに?時間を与えてもらうのが不満?」

「いや、ありがたいぜ?だけど場合によるね。………俺達は後でいい。御チビ、先に言え」

「はい。主催者に問います。貴女の両隣にいる男女は“ラッテン”と“ヴェーザー”だと聞きました。そしてもう一体が“(シュトロム)”だと。なら貴女の名は………“黒死病(ペスト)”ではないですか?」

「ペストだと!?」

 やはりレスティアが言ったことは当たっていたか。

「ペスト………そうか、だからギフトネームが“黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)”!」

「ああ、間違いない。そうだろ魔王様?」

「………。ええ。正解よ」

 涼やかな微笑で少女―――ペストは頷く。

「御見事、名前も知らない貴方。よろしければ貴方とコミュニティの名前を聞いても?」

「………“ノーネーム”、ジン=ラッセルです」

 コミュニティの名前を聞いたペストは、少し意外そうに瞳を開いた。

「そっ、覚えとくわ。………だけど確認を取るのが遅かったわね。私達はゲーム再開の日取りを左右できると言質を取っているわ。勿論、参加者の一部には病原菌を潜伏させている。ロックイーターの様な無機生物や悪魔でもない限り発症する、呪いそのものを」

「ジャ、ジャッジマスターに提言します!彼らは意図的にゲームの説明を伏せていた疑いがあります!もう一度審議を、」

「駄目ですサンドラ様!ゲーム中断前に病原菌を潜伏させていたとしても、その説明責任を主催者(ホスト)側が負う事はありません。また彼らに有利な条件を押しつけられるだけです………!」

 ぐっと言葉を呑みこむサンドラ。

 その姿を見て、その場にいる僕達参加者に問う。

「此処にいる人たちが、参加者側の主力と考えていいのかしら?」

「……………」

「マスター。それで正しいと思うぜ」

 黙っている僕達の代わりに、ヴェーザーが答える。

「なら提案しやすいわ。―――ねぇ皆さん。此処にいるメンバーと白夜叉。それらが“グリムグリモワール・ハーメルン”の傘下に降るなら、他のコミュニティは見逃してあげるわよ?」

「なっ、」

「私、貴方達の事が気に入ったわ。サンドラは可愛いし。ジンは頭いいし。そこの袴を着た子も強いし」

 どうやら、僕のことのようだ。

「私が捕まえた紅いドレスの子もいい感じですよマスター♪」

 ラッテンが愛嬌たっぷりに言う。

「ならその子も加えて、ゲームは手打ち。参加者全員の命と引き換えなら安いものでしょ?」

 微笑を浮かべ、小首を傾げるペスト。

 一応、ペストの呪いをどうにかする方法はある。

「………これは白夜叉様からの情報ですが。貴方達“グリムグリモワール・ハーメルン”はもしや、新興のコミュニティなのでしょうか?」

「答える義務はないわ」

 即答だった。しかしそれが逆に不自然だ。

「なるほど、新興のコミュニティ。優秀な人材に貪欲なのはその為か」

「……………」

「おいおい、このタイミングの沈黙は是ととるぜ?いいのか魔王様?」

 十六夜は挑発的に笑う。ペストは笑みを消し、十六夜を睨んだ。

「……だからなに?私達が譲る理由は無いわ」

「いいえあります。何故なら貴女達は、僕らを無傷で手に入れたいと思っているはずですから。もしも1ヵ月も放置されたら、きっと僕達死んでしまいます。………だよねサンドラ」

「え?あ、うん」

「そう。死んでしまえば手に入らない。だから貴女はこのタイミングで交渉を仕掛けた。実際に三十日が過ぎて、その中で失われる優秀な人材を惜しんだんだ」

 ジンは断言して言い切る。

 しかしペストは、それでもなお憮然と言い返す。

「もう一度言うけど。だからなに?私達には再開の日取りを自由にする権利がある。一ヶ月でなくても………二十日。二十日後に再開すれば、病死前の人材を、」

「では発症したものを殺す」

 突然の言葉にマンドラの方に振り向く。

「例外は無い。縦令サンドラだろうと“箱庭の貴族”だろうと………この私であろうと殺す。フロアマスターである“サラマンドラ”の同士に、魔王へ投降する脆弱なものはおらん」

 その発言を聞いて、十六夜が何か閃いた様に言う。

「黒ウサギ。ルールの改変はまだ可能か?」

「へ?………あ、YES!」

 黒ウサギはピン!とウサ耳を伸ばして答える。

「交渉しようぜ、“黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)”。俺達はルールに“自決・同士討ちを禁ずる”と付け加える。だから再開を三日後にしろ」

「却下。二週間よ」

 僕は気になったことがあるので聞く。

「今のゲームって、黒ウサギの扱いはどうなってるの?」

「黒ウサギは大祭の参加者でありましたが、審判の最中だったので十五日間はゲームに参加できない事になっています。………主催者側の許可があれば別ですが」

「よし、それだ魔王様。黒ウサギは参加者じゃないからゲームで手に入れられない。けど黒ウサギを参加者にすれば手に入る。どうだ?」

「………十日。これ以上は譲れないわ」

「ちょ、ちょっとマスター!?“箱庭の貴族”に参戦許可を与えては………!」

「だって欲しいもの。ウサギさん」

 ラッテンの言葉にそっけなく返すペスト。

 全員が他に何かないか考えている間に、

「ちょっといいかな?」

「何かしら」

「僕にはあらゆる呪いをとくギフトがあるんだけど、それを使ってみんなを治さない。これならどう?」

「………一週間よ。それ以上は無理」

「分かった。これで問題ない?」

 十六夜達に聞くと、頷く。

「ねえ………貴女、名前は?」

「神代朔夜」

「そう、覚えたわ」

 ペストがそう言った後、激しく黒い風が吹き抜ける。

 すると、一枚の黒い“契約書類(ギアスロール)”が残る。

 

『ギフトゲーム名“The PIED PIPER of HAMELIN”

 

 ・プレイヤー一覧

       ・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ(“箱庭の貴族”を含む)。

 

 ・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

       ・太陽の運行者・星霊  白夜叉(現在非参戦のため、中断時の接触禁止)。

 

 ・プレイヤー側・禁止事項

       ・自決及び同士討ちによる討ち死に。

       ・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず。

       ・休止期間の自由行動範囲は、本祭本陣営より500m四方に限る。

       ・神代 朔夜は呪いの治療不可。

 

 ・ホストマスター側 勝利条件

        ・全プレイヤーの屈服・及び殺害

 

 ・プレイヤー側 勝利条件

        ・ゲームマスターを打倒。

        ・偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

 ・休止期間

        ・一週間を、相互不可侵の時間として設ける。

 

  宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                      〝グリムグリモワール・ハーメルン〟印』

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