問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ? 作:白ウサギ@FGO
僕達“ノーネーム”一同と、その他の参加者達は宮殿に集められていた。
そのあたりをうろうろしていると、黒ウサギとジンが心配そうな表情で近づいてくる。十六夜もこちらに来た。
「朔夜さん、ご無事でしたか!?」
「うん。ほとんど怪我ないよ。他の人は?」
「残念ながら、十六夜さんと朔夜さんと黒ウサギを除けば満身創痍です。飛鳥さんに至っては姿も確認出来ず………すみません、僕がしっかりしていれば………!」
悔しそうに頭を下げるジン。
「いや、ジンのせいばかりじゃないよ。僕もオルトリンデをいかせてたんだけど守りきれなかったし」
今の状態はかなり厳しい。レティシアと耀もかなり疲弊しているみたいだ。
「白夜叉様の伝言を受け取り、すぐさま審議決議を発動させたのですが………少し遅かったようですね」
「そもそも審議決議ってのはなんのことだ?」
「“主催者権限”によって作られたルールに、不備がないかどうかを確認する為に与えられたジャッジマスターが持つ権限の一つでございます」
「ルールに不備?」
「YES。ジン坊っちゃんの伝言によると『今回のゲームは勝利条件が確立されていない可能性がある』との事でした。真偽はともかく、ゲームマスターに指定された白夜叉様に異議申し立てがある以上、“
「へえ、無条件でゲームの仕切り直しが出来るんだ。でも、それだけ強力な権限なら何かデメリットが有るんじゃないの?」
「ええ、勿論存在します。審議決議を行ってルールを正す以上、これは“
その説明に、十六夜は片眉を歪ませる。
「………つまりゲームで負ければ最後、他の“サウザンドアイズ”や“サラマンドラ”は報復行為を理由にギフトゲームを挑むことが出来ない、ってことか」
「YES。ですので、負ければ救援は来ないものと思ってください」
「ハッ、最初から負けを見据えて勝てるかよ」
十六夜が失笑すると、大広間の扉が開く。入ってきたのはサンドラとマンドラの二人だ。サンドラは緊張した面持ちで、僕達参加者に告げる。
「今より魔王との審議決議に向かいます。同行者は五名です―――まずは“箱庭の貴族”である、黒ウサギ。“サラマンドラ”からはマンドラ。その他に“ハーメルンの笛吹き”に詳しい者がいるのならば交渉に協力して欲しい。誰か立候補する者はいませんか?」
参加者にどよめきが広がる。
(みんな、知ってる?)
レスティア達にそう聞くと、
『知ってるわよ』
レスティアから返事が帰ってくる。
少しして、十六夜がジンの首根っこを掴んで、
「“ハーメルンの笛吹き”についてなら、このジン=ラッセルが誰よりも知っているぞ!」
「………は?え、ちょ、十六夜さん!?」
十六夜が突然声を上げ、それに驚くジン。
「めっちゃ知ってるぞ!とにかく詳しいぞ!役に立つぞ!この件で“サラマンドラ”に貢献できるのは、“ノーネーム”のリーダー・ジン=ラッセルを、措いて他にいないぞ!」
「ジンが?」
キョトン、とした顔を向けるサンドラ。だが、次の瞬間にはキリッ!と表情を戻す。
「他に申し出がなければ“ノーネーム”のジン=ラッセルにお願いしますが、よろしいか?」
サンドラの決定に再びどよめきが広がる。
「“ノーネーム”が………?」「何処のコミュニティだよ」「信用できるのかしら」「決勝に残っていたコミュニティか?」「ありえねえ」「おい、他に立候補者は―――」
周りがいろいろ言っている間に十六夜のところに行き、一応聞いておく。
「十六夜、レスティアが知ってるみたいだし僕も着いていっていい?」
「ああ。問題ないぜ」
問題ないと言われたので僕も着いていく事にする。
そして、十六夜はジンの方を向いて何かを言った後、交渉に向かうのだった。
*
「それではギフトゲーム“The PIED PIPER of HAMELN”の審議決議、及び交渉を始めます」
僕達の前には、斑のワンピースを着た少女が座り、その両隣に軍服を着た男(オルトリンデの話ではヴェーザーと呼ばれていた)と白装束を着た女性(こちらも同じくラッテンと呼ばれていた)が立っている。そして、サンドラに倒されたのがシュトロムらしい。
(ねえ、レスティア。真ん中の子の正体分かる?)
『そうね。ギフトネームからして、
(うん。ありがとう)
「まず“
「不備は無いわ」
斑の少女は言葉を遮るように吐き捨てる。
「今回のゲームに不備・不正は一切ないわ。白夜叉の封印も、ゲームのクリア条件も全て調えた上でのゲーム。審議を問われる謂われはないわ」
「………受理してもよろしいので?黒ウサギのウサ耳は箱庭の中枢と繋がっております。嘘を吐いてもすぐ分かってしまいますヨ?」
「ええ。そしてそれを踏まえた上で提言しておくけれど。私達は今、無実の疑いでゲームを中断させられているわ。つまり貴女達は、神聖なゲームにつまらない横槍を入れているということになる。―――言ってること、分かるわよね?」
そう言って、サンドラを見つめる。
「不正がなかった場合………主催者側に有利な条件でゲームを再開させろ、と?」
「そうよ。新たなルールを加えるかどうかの交渉はその後にしましょう」
「………わかりました。黒ウサギ」
「は、はい」
少し動揺したように頷く黒ウサギ。黒ウサギは天を仰ぎ、ウサ耳をピクピクと動かす。
少しして、黒ウサギが気まずそうに顔を伏せる。
「………。箱庭からの回答が届きました。此度のゲームに、不備・不正はありません。白夜叉様の封印も、正当な方法で造られたものです」
「当然ね。じゃ、ルールは現状を維持。問題はゲーム再開の日取りよ」
「日取り?日を跨ぐと?」
サンドラが意外そうに声を上げた。周りの人間も同じだ。
「ジャッジマスターに問うわ。再開の日取りは最長で何時頃になるの?」
「さ、最長ですか?ええと、今回の場合だと……一ヶ月でしょうか」
「じゃ、それで手を―――」
「待ちな!」
「待ってください!」
「待って!」
僕達三人は同時に声を上げる。
「……なに?時間を与えてもらうのが不満?」
「いや、ありがたいぜ?だけど場合によるね。………俺達は後でいい。御チビ、先に言え」
「はい。主催者に問います。貴女の両隣にいる男女は“ラッテン”と“ヴェーザー”だと聞きました。そしてもう一体が“
「ペストだと!?」
やはりレスティアが言ったことは当たっていたか。
「ペスト………そうか、だからギフトネームが“
「ああ、間違いない。そうだろ魔王様?」
「………。ええ。正解よ」
涼やかな微笑で少女―――ペストは頷く。
「御見事、名前も知らない貴方。よろしければ貴方とコミュニティの名前を聞いても?」
「………“ノーネーム”、ジン=ラッセルです」
コミュニティの名前を聞いたペストは、少し意外そうに瞳を開いた。
「そっ、覚えとくわ。………だけど確認を取るのが遅かったわね。私達はゲーム再開の日取りを左右できると言質を取っているわ。勿論、参加者の一部には病原菌を潜伏させている。ロックイーターの様な無機生物や悪魔でもない限り発症する、呪いそのものを」
「ジャ、ジャッジマスターに提言します!彼らは意図的にゲームの説明を伏せていた疑いがあります!もう一度審議を、」
「駄目ですサンドラ様!ゲーム中断前に病原菌を潜伏させていたとしても、その説明責任を
ぐっと言葉を呑みこむサンドラ。
その姿を見て、その場にいる僕達参加者に問う。
「此処にいる人たちが、参加者側の主力と考えていいのかしら?」
「……………」
「マスター。それで正しいと思うぜ」
黙っている僕達の代わりに、ヴェーザーが答える。
「なら提案しやすいわ。―――ねぇ皆さん。此処にいるメンバーと白夜叉。それらが“グリムグリモワール・ハーメルン”の傘下に降るなら、他のコミュニティは見逃してあげるわよ?」
「なっ、」
「私、貴方達の事が気に入ったわ。サンドラは可愛いし。ジンは頭いいし。そこの袴を着た子も強いし」
どうやら、僕のことのようだ。
「私が捕まえた紅いドレスの子もいい感じですよマスター♪」
ラッテンが愛嬌たっぷりに言う。
「ならその子も加えて、ゲームは手打ち。参加者全員の命と引き換えなら安いものでしょ?」
微笑を浮かべ、小首を傾げるペスト。
一応、ペストの呪いをどうにかする方法はある。
「………これは白夜叉様からの情報ですが。貴方達“グリムグリモワール・ハーメルン”はもしや、新興のコミュニティなのでしょうか?」
「答える義務はないわ」
即答だった。しかしそれが逆に不自然だ。
「なるほど、新興のコミュニティ。優秀な人材に貪欲なのはその為か」
「……………」
「おいおい、このタイミングの沈黙は是ととるぜ?いいのか魔王様?」
十六夜は挑発的に笑う。ペストは笑みを消し、十六夜を睨んだ。
「……だからなに?私達が譲る理由は無いわ」
「いいえあります。何故なら貴女達は、僕らを無傷で手に入れたいと思っているはずですから。もしも1ヵ月も放置されたら、きっと僕達死んでしまいます。………だよねサンドラ」
「え?あ、うん」
「そう。死んでしまえば手に入らない。だから貴女はこのタイミングで交渉を仕掛けた。実際に三十日が過ぎて、その中で失われる優秀な人材を惜しんだんだ」
ジンは断言して言い切る。
しかしペストは、それでもなお憮然と言い返す。
「もう一度言うけど。だからなに?私達には再開の日取りを自由にする権利がある。一ヶ月でなくても………二十日。二十日後に再開すれば、病死前の人材を、」
「では発症したものを殺す」
突然の言葉にマンドラの方に振り向く。
「例外は無い。縦令サンドラだろうと“箱庭の貴族”だろうと………この私であろうと殺す。フロアマスターである“サラマンドラ”の同士に、魔王へ投降する脆弱なものはおらん」
その発言を聞いて、十六夜が何か閃いた様に言う。
「黒ウサギ。ルールの改変はまだ可能か?」
「へ?………あ、YES!」
黒ウサギはピン!とウサ耳を伸ばして答える。
「交渉しようぜ、“
「却下。二週間よ」
僕は気になったことがあるので聞く。
「今のゲームって、黒ウサギの扱いはどうなってるの?」
「黒ウサギは大祭の参加者でありましたが、審判の最中だったので十五日間はゲームに参加できない事になっています。………主催者側の許可があれば別ですが」
「よし、それだ魔王様。黒ウサギは参加者じゃないからゲームで手に入れられない。けど黒ウサギを参加者にすれば手に入る。どうだ?」
「………十日。これ以上は譲れないわ」
「ちょ、ちょっとマスター!?“箱庭の貴族”に参戦許可を与えては………!」
「だって欲しいもの。ウサギさん」
ラッテンの言葉にそっけなく返すペスト。
全員が他に何かないか考えている間に、
「ちょっといいかな?」
「何かしら」
「僕にはあらゆる呪いをとくギフトがあるんだけど、それを使ってみんなを治さない。これならどう?」
「………一週間よ。それ以上は無理」
「分かった。これで問題ない?」
十六夜達に聞くと、頷く。
「ねえ………貴女、名前は?」
「神代朔夜」
「そう、覚えたわ」
ペストがそう言った後、激しく黒い風が吹き抜ける。
すると、一枚の黒い“
『ギフトゲーム名“The PIED PIPER of HAMELIN”
・プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ(“箱庭の貴族”を含む)。
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・太陽の運行者・星霊 白夜叉(現在非参戦のため、中断時の接触禁止)。
・プレイヤー側・禁止事項
・自決及び同士討ちによる討ち死に。
・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず。
・休止期間の自由行動範囲は、本祭本陣営より500m四方に限る。
・神代 朔夜は呪いの治療不可。
・ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害
・プレイヤー側 勝利条件
・ゲームマスターを打倒。
・偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
・休止期間
・一週間を、相互不可侵の時間として設ける。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝グリムグリモワール・ハーメルン〟印』