問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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第十七話

 ゲームが終了して四十八時間が経過した。

 僕は、マンドラがいる執務室の天井裏に十六夜と二人でいた。

 十六夜の傷は、治癒の精霊魔術である程度は治っていた。

 一応、声だけは聞こえてくる。

「『全てが万事上手く進行し、魔王を撃退されましたこと、お祝い申し上げます。新生“サラマンドラ”が北のフロアマスターとしてご活躍されることを心より期待しております。

 追伸/星海龍王からお預かりした神珍鉄は、例の撒き餌達に贈らせていただきました』、か。…………流石は“サウザンドアイズ”。何もかも御見通しか。悪い事は出来んな」

「「何が?」」

 ガタン、という音がした。

 多分、突然した声に驚いて立ち上がったんだろう。

「まさか、“ノーネーム”の小僧ども……!何処にいる!?」

「屋根裏にいるぞ!」

 ズドガァン!と天井を破って十六夜が下りる。

「壊さなきゃ駄目なのか………」

 そんなことを呟きながら、僕も天井から降りた。

 ペッペッと十六夜は埃を払って、侮蔑の嘲笑でマンドラを見据えて言い放った。

「で、何が悪いことなんだ?まさか、“サラマンドラ”が魔王を祭りに招き入れた事か?」

「………なっ、」

「いやいや、そこ驚くところ?普通に考えたら分かるでしょ。ペスト達は百三十枚もの笛吹き道化のステンドグラスを出展していたんだよ?主催者(ホスト)が意図的に見落としてない限り、おかしいでしょ」

 違う?と僕は首を傾げる。

 十六夜は壮絶に面倒くさそうな顔をして、執務机に腰を下ろした。

「ああいや、別に摘発しようとかそういうのじゃねえし。俺が此処まで来たのは、ほら。なんだ。知的好奇心って奴だ」

「何………!?」

「俺の主観だが。アンタは別にサンドラを殺そうとか、跡目が欲しいとかじゃねえんだよな。むしろこう………サンドラがしっかりすることで“サラマンドラ”を支えて欲しいとか。そういう意図が見てとれるというか。もしやシスコン?」

「………」

「は、冗談として。俺なりに考えてみたんだが………“階層支配者”の使命を思い出してピンと来た。要するに今回の誕生祭襲撃は、一種の通例儀礼みたいなもんじゃねえかなーと」

 マンドラの顔も見ずに、十六夜は話を続ける。

「ルーキー魔王VSルーキーマスター?いやいや、偶然にしちゃ出来すぎなぐらい出来すぎだ。経験を積ませるという意味じゃこれ以上の相手はいない。これでサンドラは晴れて一人前の北のマスターとして認められるわけだ!いやホント、“サラマンドラ”も安泰だな!」

「………っ……」

 歯噛みするマンドラ。十六夜はスッと瞳を剣呑なものにし、

「………おい、黙ってんじゃねえぞ。俺が笑ってるうちに話すのが身のためだぜ?魔王を相手に、秩序の守護者がどうのといって啖呵切った姿は何処にいった?」

 十六夜は机の上で上体を反らし、マンドラを嗤う。

「今回、死者は五名だっけ?ああ、よかったよなあぁ、死んだのが“サラマンドラ”の連中で!俺達の身内に何かあったらお前―――サンドラもろとも潰してたぞ?」

「サンドラは関係無いッ!」

 そう言って、マンドラは怒声と共に剣を抜く。

「ちょっとマンドラ、落ち着いてよ」

 そう言って、マンドラを窘める。

「あのなあ………もう一回言うぞ。俺は摘発しようとかそういうつもりはねえんだ。秩序なんて所詮、汚れながら守られるもんなんだろうからな」

「知ったふうな口をッ………!」

「ああ、所詮知ったかだ。だから俺は他人が悪事に加担しようが構わない。謀も構わない。罪を犯すのも構わない。人を殺すのも好きにしろ、けど、――――やるというなら覚悟しろ」

「っ………!!」

「俺は俺の視界に入ったものを俺なりに、善悪付けて決めてきたわけだが。今回のケースは、大概糞だ。関わる気にすらならねえんだが………そっちがやる気なら仕方ない。オマエが俺に向けたその剣。振りかぶる暇も無いと思え」

 十六夜は執務机から立ち上がり、侮蔑と憤りを込めて睨みつける。

「サンドラが関係無いだと?テメエの身内が、テメエの通過儀礼なんぞで死んでんだ。知らぬ存ぜぬを通せると思ってんのか?祝勝会で偉そうに、参加者達へ言ってたぜ?

『誇りある戦いをした同士に喝采を!』とか。

『名誉ある死を遂げた同士に黙祷を!』とか。

 ハッ、マジ笑わせんなよ。そういうのは事情を知ってる連中だけが―――」

「―――知っていたとも」

 何?と十六夜の言葉が途切れる。

 僕も少し驚いていた。

「知っていたと………言ったのだ。今回の一件を、魔王襲来を仕組んだのが“サラマンドラ”である事は、サンドラを除き“サラマンドラ”全員が知っている………!!知った上で、同士は命を落としたッ!!!知った上で………恥じ入りながら、命を落としていったのだ」

「「……………」」

「箱庭の外から来た貴様らには分かるまい………!コミュニティの旗を!名を!名誉を守るという意味がッ!!!有力な跡目に裏切られ、長が病の床に臥せ………!失墜寸前のコミュニティを支えるために命を賭すなどッ!!箱庭の外の、ましてや人間なんぞに分かるはずがないッ!!!」

 所詮、箱庭の外から来た部外者。

 そう言われ、十六夜は目を逸らして舌打ちした。

「………しかし、私がお前に勝てるとは思っていない。私は、不出来な亜龍だ。百歳も下の妹にさえ劣る才しかない」

 マンドラは剣のベルトを解き、地面に置いた。

「気の済むようにしろ。貴様らの憤りは真っ当なものだ。しかし、この場だけは………この命一つで許して欲しい」

「「…………」」

 いやまあ、確かに怒ってたけど………

 十六夜も毒気を抜かれた様にため息をついた。

「別に、んなこたどうでもいい。腹の底からどうでもいい。あー何?有力な跡目に裏切られた?それってあれか。白夜叉が言っていた、長女のサラとかいうやつか」

「………そうだ。本来なら、成熟した力を持つ姉上が“サラマンドラ”を継ぐはずだった。父上が病に臥しさえしなければ、十やそこらのサンドラがマスターの座に就くなど………!」

 あっそ、と十六夜は興味無さそうに背中を向ける。

「まっ、死んだ連中が承諾済みで死んだってんなら、それは俺の関与するべきことじゃねえだろうよ。壊された街の事を抜きにすれば、損したのはお前ら。一番得したのは俺達なんだ。わざわざ水を差す必要もない」

「………すまん」

 十六夜はその言葉を聞いて、出ていく。

 僕はマンドラにお願いがあるので残った。

「あ、そうだ。この機会に1つ僕からお願いがあるんだけど」

「………っ……!」

 マンドラの顔が緊迫する。

 別にそんな無理難題を言うつもりはないんだけどな………

「そこまで難しいことじゃないんだけどさ。僕達は今後も、魔王と戦い続けていく。その中でもし、万が一にも僕達のコミュニティに何かあったら………君達がいの一番に駆け付けてね。あと、サンドラとの交友関係に口出しはあまりしないでほしいな。それで今回のことは目をつむるよ」

「ああ、御旗に誓おう。その時こそ、“サラマンドラ”は秩序の守護者として駆けつけると。サンドラとの交友関係についても、あまり口出しはしないようにしよう」

 その言葉を聞き、僕は執務室から出ていくのだった。

 

          *

 

 あれから一週間。

 境界壁から帰ってきた僕は、自室でごろごろしていた。

 するとコンコンと控えめなノック音がした。

「朔夜くん、起きてる?」

「うん、起きてるよ」

 僕が扉を開けると、飛鳥が立っていた。

 その肩には精霊―――地精のメルンが乗っている。

「これから農地に行くのだけど、朔夜くんも一緒にどう?」

「なんで農地?」

「それは、メルンにあの場所を元に戻せるか聞いてみようかと思って」

「分かった、僕も行くよ。他のみんなは?」

「もう行ってるわ。それじゃあ行きましょう」

 そう言って歩き出す飛鳥の後ろからついていき農園跡地まで向かう。

 農地には飛鳥が言った通り、黒ウサギや春日部、ジンに十六夜、それに加えて比較的年高めの子供達もいた。

「どう、メルン?ここの農地は元に戻りそう?」

「むり!」

 ぶんぶんと激しく首を振るメルン。

 困った表情で飛鳥がメルンに問いかける。

「………無理?」

「むり!」

 即答。

 地精であるメルンが此処までハッキリ言うということは、よほど高位の霊格を持っていなければ厳しいのだろう。

「ごめんなさい………期待させるような事を言って、」

「き、気にしないでくださいまし!また機会はありますよ!」

「そうだよ飛鳥。また違うギフトゲームで頑張ればいい」

 しょんぼりする飛鳥を励ます、黒ウサギと耀。

「なあ、極チビ」

「ごくちび?」

「そ。“極めて小さいメルン”だから略して極チビ。それでもしもだが………土壌の肥やしになるものがあったら、それを分解して土地を復活させることは出来るか?廃墟の木材とか、本拠の周りの林を肥やしにして」

 おお?とメルンは考える仕草を取る。

「………できる!」

「ホント!?」

「かも!」

 ガクッ、と飛鳥やや右肩下がりに気が抜ける。だが試す価値はあるようだ。

 飛鳥はギフトカードを取り出し、ディーンを召喚して命令する。

「ディーン!すぐに取り掛かるわよ!年長組の子達も手伝いなさい!」

「「「「「分かりました!」」」」」

「DeN」

 元気良く飛び出していく子供達。

 僕もゲオルギウスを呼び出して、手伝ってもらう。

 はしゃぎながら飛鳥に飛びつくメルン。

 仲良さそうな二人を見て、僕と十六夜は声をかけた。

「二人ともすごく仲良さそうだね」

「そうだぞ、お嬢様。そういうチビッコイのを愛でる趣味でもあったのか?」

「さあ、どうかしら。でも箱庭に来るまで知らなかったけど、子供を可愛がるのは楽しいわ。………それに、」

 ふっと飛鳥の目が遠くなる。

「………私、本当は姉妹が居る予定だったの。だからかもしれないわ」

「………そうか」

 十六夜は静かに相槌を打つ。

 僕もこの話は聞くべきではないと思い、何も言わない。

「さ、忙しくなるわよメルン!早く土壌を復活させて、みんなでハロウィンをするんだもの。貴女には人一倍頑張ってもらうわ」

「はい♪」

 飛鳥の言葉にメルンは元気良く返事を返すのだった。

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