問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ? 作:白ウサギ@FGO
第十八話
“
僕達は今後の活動方針を話し合うため、本拠の大広間に集まっていた。
一番上座に座っているジンはがちがちに緊張していた。
その様子に十六夜がヤハハと笑ってからかう。
「どうした?俺よりいい位置に座ってるのに、随分と気分が悪そうじゃねえか」
「だ、だって、旗本の席ですよ?緊張して当たり前じゃないですか」
「いやいや。ジンはこのコミュニティの旗頭であり名刺代わりなんだよ。僕達の戦果は全部“ジン=ラッセル”の名前に集約されて広がってる。その当の本人が上座に座らないでいったい何処に座るの?」
「YES!朔夜さんの言う通りでございますよ!事実、この一ヵ月間で届いたギフトゲームの招待状は、全てジン坊ちゃんの名前で届いております!」
ジャジャン!と黒ウサギが見せたのは、それぞれ違うコミュニティの封蝋が押された三枚の招待状。
それも、その内二枚は参加者ではなく貴賓客としての招待状だ。
「苦節三年…………とうとう我らのコミュニティにも、招待状が届くようになりました。それもジン坊ちゃんの名前で!だから堂々と胸を張って上座にお座りくださいな!」
「言っておくけど、これがジンの戦果じゃないとか言ったら怒るからね」
ジンが余計な事を言う前に釘を刺す。
「それで?今日集まった理由は、その招待状について話し合うためなのかしら?」
「は、はい。それも勿論あります。ですがその前に、コミュニティの現状をお伝えしようと思って集まってもらいました。………リリ、黒ウサギ。報告をお願い」
「わかりました」
「う、うん。頑張る」
ジンは暗い表情を一転させ、黒ウサギとリリに目配せをする。
リリは割烹着の裾を整えて立ち上がった。
「えっと、備蓄に関してはしばらく問題ありません。最低限の生活を営むだけなら一年は問題ないかと思います」
「へえ?なんで急に?」
「一ヶ月前に十六夜様達が戦った“黒死斑の魔王”が、推定五桁の魔王に認定されたからです。“
パタパタと二尾を揺らすリリ。
ちょっとモフモフしてみたいかも。
そんなふうに思っていると、レティシアが眉を顰め、そっと窘めた。
「リリ。はしたないことを言うのはやめなさい」
「え………あ、す、すみませんっ」
リリは狐耳を真っ赤にして俯き、尻尾をパタパタと大慌てだ。
僕は苦笑いをしながら話の続きを促した。
「“推定五桁”ってことは、本拠を持たないコミュニティだったの?」
「は、はい。本来ならたった三人のコミュニティが五桁に認定されることはそう無いみたいですけど、“黒死斑の魔王”が神霊だったことやゲーム難度も考慮したということらしいです」
「ああ、確かに。僕が白夜叉に貰ったゲームも、桁が上がれば上がるほど難易度が上がってたな」
「へえ、そうなのか。今度俺にも白夜叉のゲーム、紹介してくれないか?」
「うーん………まあ、いいかな」
十六夜と僕がそんな会話をしていると、リリが本題に戻す。
「えっと、それでですね。五桁の魔王を倒すために依頼以上の成果を上げた十六夜様達には、金銭とは別途に
「あら、本当なの?」
「YES!それについては後ほど通達があるので、ワクワクしながら待ちましょう」
へえ、十六夜から喜色の籠った声が上がった。僕達三人も同様だ。
ジンも明るく笑って頷き、再び報告を促した。
「それではリリ。最後に、農園区の復興状態をお願い」
「は、はい!農園区の土壌はメルンとディーンが毎日毎日頑張ってくれたおかげと、朔夜様の精霊もよく手伝ってくれるおかげで、全体の1/4は既に使える状態です!これでコミュニティ内のご飯を確保するのに十二分の土地が用意できました!田園に整備するにはもうちょっとかかりますけど、葉菜類、根菜類、果菜類を優先して植えれば、数ヵ月後には成果が期待できると思います!」
「それはよかった」
「当然よ。メルンとディーンが休まず頑張ってくれたのだもの。復興なんてあっという間よ」
「特にディーンは本当に働き者です。毎夜毎晩、飛鳥様がゲームに参加するとき以外はずっと土地の整備をしてくれて………!メルンが分解した若木や廃材なんかも休まず混ぜてくれて、本当に助かりました!」
「ふふ。喜んでもらえたようで何よりよ」
「人使いが荒いとも言うけどな」
そう言って、茶化す十六夜。
空気が悪くならないうちに慌てて黒ウサギが話を進める。
「そ、そこで今回の本題でございます!復興が進んだ農園区に、特殊栽培の特区を設けようと思うのです」
「特区?」
「YES!有りていに言えば霊草・霊樹の栽培する土地ですね。例えば」
「マンドラゴラとか?」
「マンドレイクとか?」
「マンイーターとか?」
「ユグドラシルとか?」
「YES!っていやいやどれもおかしいですよ!!?
「だって箱庭だし、ユグドラシルくらい存在するかなーと」
「あっても、そんなものは植えません!」
「「「「じゃあ、ラビットイーターで」」」」
「何ですかその黒ウサギを狙ったダイレクトな嫌がらせは!?」
うがーッ!!とウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。
「つまり主達には、農園の特区に相応しい苗や牧畜を手に入れてきて欲しいのだ」
「牧畜って、山羊や牛のような?」
「そうだ。都合がいいことに、南側の“
「今回の招待状は前夜祭からの参加を求められたものです。しかも旅費と宿泊費は“
黒ウサギが胸を張って紹介する。
そこまで黒ウサギが言うのなら、是非とも行ってみたいな。
「へえ………“箱庭の貴族”の太鼓判付きとは凄い。さぞかし壮大な舞台なんだろうな………お嬢様はどう思う?」
「あら、そんなの当たり前じゃない。だってあの“箱庭の貴族”がこれほど推している場所よ。目も眩むぐらい神秘的な場所に違いないわ。………そうよね、朔夜君と春日部さん?」
「そうだね。黒ウサギがここまで言うなら、是非とも行ってみたいな」
「うん。これでガッカリな場所なら………黒ウサギはこれから、“箱庭の貴族(笑)”だね」
「“箱庭の貴族(笑)”!??な、何ですかそのお馬鹿っぽいボンボン貴族なネーミングは!?我々“月の兎”は、由緒正しい貞潔で献身的な貴族でございますっ!」
「献身的な貴族っていうのがもう胡散臭いけどな」
十六夜がヤハハと笑ってからかうと、黒ウサギは拗ねてしまった。
「方針については一通り説明が終わりました。………しかし一つだけ問題があります」
「問題?」
「はい。この収穫祭ですが、二十日ほど開催される予定で、前夜祭を入れれば二五日。間約1ヵ月にもなります。この規模のゲームはそう無いですし最後まで参加したいのですが、長期間コミュニティに主力が居ないのはよくありません。そこでレティシアさんと共に一人は残って欲し
「「「嫌だ」」」
僕以外の三人は即答だった。僕が何も言わなかったのに気づいたのか、ジンが僕に聞いてくる。
「えっと、朔夜さんは」
「僕はどちらでもいいよ。でも、少しぐらいは行きたいかな。せめて、一週間くらいは」
「でしたら、前夜祭からの二週間は朔夜さん以外の三人。残りの日数を朔夜さんを入れた三人。………これでどうでしょうか?」
「そのプランだと、1人だけ全部参加できない事になるよね?それはどうやって決めるの?」
「それは――」
「ゲームで決めたらいいんじゃない?」
僕がそう言うと、みんなこちらを見てくる。
「ゲーム?」
「みんな参加したい。ならここは箱庭らしくゲームで決めればいいんじゃないかな?」
「あら、面白そうじゃない。どんなゲームをするの?」
「そうだなー………“前夜祭までに、最も多くの戦果を上げた者が勝者”ってのはどう?期日までの実績を比べて、収穫祭で一番戦果を上げられる人材を優先する。………これなら不平不満もないでしょ?」
僕の提案に十六夜達三人は頷いた。
「わかったわ。それで行きましょう」
「うん。………絶対に負けない」
「ヤハハ。俺も絶対負けないぜ」
こうして僕以外の三人のゲームが開始したのだった。
*
三人がゲームをしている間、僕はやることもないので白夜叉のところに遊びに来ていた。
「ねえ白夜叉、あとどれくらいで“サウザンドアイズ”から出れそう?」
「そうだのー………もう少し時間がかかりそうじゃ」
「へえ、そうなんだ」
「うむ。それで今回は何をしに来たんじゃ?」
「うん。ちょっと白夜叉とゲームしようと思って」
「ふむ。いいだろう、それでゲームの内容は?」
「トランプとか、ボードゲームかな」
「そうか、ちょっと待っておれ」
白夜叉はそう言って、どこからかいろいろなゲームを取り出した。
「二人じゃつまらないのもあるし、僕の精霊も参加で」
「うむ。それで賞品は?」
「うーん………それなら一位が最下位に簡単な命令権でどう?」
「わしもそれでよい」
「なら、まずはババ抜きで」
「うむ」
白夜叉がそう言ったあと、参加しても大丈夫か精霊に聞いたら、エストとレスティアは参加するようだ。
「それじゃあ、ゲーム開始」
そう言って、僕達三人のゲームを始めるのだった。
*
十回ほどのゲームで、レスティアが三勝二敗僕が三勝三敗白夜叉が二勝二敗エストが二勝三敗という結果だった。
僕への命令は頭を撫でたり、膝枕等の簡単な命令だった。
ちなみに、僕の命令はエストの髪を三つ編みにしたり、レスティアに料理を振る舞ってもらったり、白夜叉に他の服を着てもらったりした。
「白夜叉、今日は楽しかったよ。また来るね」
「うむ、いつでも来い。わしも楽しかったからな」
「それじゃ、またね」
そんな感じで、三人がゲームしている間は白夜叉のところで遊んだり、ギフトゲームを紹介してもらったりしていたのだった。