問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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第一章 YES!ウサギが呼びました!
第一話


 ~朔夜side~

「エスト、レスティア」

 そう呼ぶと、意図を察して戻ってくれる。

 急がないと、このままでは水に濡れることは間違いない。そうなると色々とこまる。

「シムルグ」

 そう呼ぶと近くに大きな鳥が現れ、朔夜と近くにいる三人と一匹も回収する。

 さすがにシムルグだけでは全員をのせて飛ぶのは無理なので、風の精霊魔術を使う。

 何とか無事、着地できた。

 僕が地面に降りると、他の三人と一匹も降り始める。

「ありがとね。シムルグ」

 そう言って、シムルグを戻そうとすると、猫を抱えた少女がこちらを見てくるのに気づいた。

「僕の顔に何かついてる?」

「その動物………さわっていい?」

「シムルグのこと?」

 そう言うと、こくりとうなずく。

「シムルグ、いい?」

 そう聞くとシムルグはこくりとうなずく。

「いいって」

「ありがとう」

 そう言って、シムルグを触りだす少女。

「――――――もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 いつの間にか話が進んでいたみたいだ。

「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。―――私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの動物をさわっている貴女は?」

「………春日部耀。以下同文」

「そう。よろしく春日部さん。最後に野蛮で凶暴そうな貴方は?」

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

「最後に私達を助けてくれた貴女は?」

 うーん、自己紹介なんて何年ぶりだろう。まあ、無難に返すかな。

「僕は神代朔夜。呼び方はお好きにどうぞ。後、さっきのことは自分を助けたついでみたいなものだから気にしなくていいよ」

「そう。よろしく朔夜さん」

「うん。よろしく、飛鳥」

 そう言うと、レスティアが話しかけてきた。

『朔夜、さっきから誰かがこっちを見てるんだけど』

(十中八九、この世界に呼び出した人だろうね)

 そんなふうに会話をしていると十六夜が苛立たしげに言う。

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

「………。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 そう言った耀はまだシムルグをさわっている。

「耀、シムルグを戻したいんだけどいいかな?」

 そう言うと、驚いた顔をする。

「えっ、僕変なこと言った?」

「ううん、耀って呼ばれるのあまりないから」

「駄目だった?」

「大丈夫。そのかわり、私も朔夜って呼んでいい?」

「うん。いいよ」

 そう言うと、シムルグから離れる。このままずっと出してるわけにもいかないのでシムルグを戻す。

「―――仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

 十六夜がそう言うと、茂みががさりという。

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの二人も気づいていたんだろ?」

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

「気配がまったく消せてないからね」

「………へえ?面白いなお前ら」

 そう言って軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。

 なかなか出てこないので、声をかけてみることにしよう。

「そこに隠れてる人、早く出てきてくれない?」

 そう言うと、ようやく出てくる。

「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

「断る」

「却下」

「お断りします」

「………」

「あっは、取りつくシマもないですね♪というか最後の人、無言はやめてください!」

 だってあのウサ耳が気になるし。

『さわってきたら?』

 そう言うレスティア。よし。

 モフッ

「えーっと。何をなさっているのですか?」

「君のウサ耳が気になったからさわってる。他の三人もどう?」

「へえ?なら半分よこせ」

「私も」

「じゃあ私も」

 僕は満足したので離れたけど、他の三人は彼女のウサ耳を力いっぱい引っ張っている。

 かなり痛そう。

 三人にウサ耳を引っ張られた黒ウサギの悲鳴が近隣に木霊した。

 

          *

 

「―――あ、あり得ないあり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないデス」

「いいからさっさと進めろ」

 そう言われた黒ウサギは目尻に涙を浮かべている。

 黒ウサギは咳払いをし、両手を広げて、

「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!ようこそ、“箱庭の世界”へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

「ギフトゲーム?」

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 ギフトゲームか………僕にできるかな?

 そんなことを考えていると飛鳥が挙手をする。

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

「嫌だね」

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者(ホスト)”が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

「………“主催者”って誰?」

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すために試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが“主催者”が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。“主催者”次第ですが、新たな“恩恵(ギフト)”を手にすることも夢ではありません。

 後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて“主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」

「後者は結構俗物ね………チップには何を?」

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間………そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然―――ご自身の才能も失われるのであしからず」

 これは気を付けないとな。仲間を失いかねない。

 疑問に思った事があったので黒ウサギに聞く。

「ねえ、黒ウサギ。僕も質問させてもらっていいかな?」

「どうぞどうぞ♪」

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

「………つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかな?」

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。―――が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」

「へえ。中々野蛮だね」

「ごもっとも。しかし“主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰ぬけは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが………よろしいです?」

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 そう言って、静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっている。

 そのことに気づいた黒ウサギは、構えるように聞き返した。

「………どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

「そんなものはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは………たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 十六夜は視線を黒ウサギから外し、僕達を見まわし、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。

 彼は何もかも見下すような視線で一言、

 

「この世界は………面白いか?」

 

「―――――」

 僕達も無言で返事を待つ。

 僕達を呼んだ手紙にはこう書かれていた。

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。

 それに見合うだけの催し物があるのかどうかこそ、僕達にとって一番重要な事だった。

「―――YES。『ギフトゲーム』は人を越えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 それを聞いて………僕は少しだけ笑みをこぼした。

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