問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ?   作:白ウサギ@FGO

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第十九話

 いつものように、白夜叉のところにいると、見知らぬ女性がやって来た。

 白夜叉に誰かを聞いたところ、十六夜が倒した蛇神で白雪姫というそうだ。

 しばらくたった後、黒ウサギもやって来た。

「ねえ、白夜叉。何で黒ウサギ達がこっちに来たの?」

「それは話があってな。だがその前にこの服を着てもらうぞ。ついでにマスターもだ」

「いや、ついでの意味が分からないんだけど。って、本当に着せようとしないでよ」

 僕の話も聞かずに白夜叉は僕達三人に同じものを着せていく。

 一応、僕男なんだけどな。まあ、二人の着替えは見ないようにしてるけど。

「や、やめてください白夜叉様!!黒ウサギは“箱庭の貴族”の沽券に掛けて、あれ以上きわどい衣装は着ないと言ったではありませんか………!!!」

「く、黒ウサギの言う通りです!この白雪も神格のはしくれとして………こ、このような恥ずかしい格好をして人前に出る訳には………!!!」

「二人とも………諦めなよ。白夜叉だし」

「朔夜さんは恥ずかしくないのですか!?」

「いやまあ、少し恥ずかしいけど」

 二人とも以外と似合ってるんだよな………」

『朔夜、声に出てるわよ』

 え、まじで?

『ええ、マジよ』

 ちらりと黒ウサギ達の方を見ると、二人の顔が赤くなっていた。

「ふふふ、うぶな奴らよ。おんしらは何も分かっておらん。清く正しく美しく、尊いが故に、穢し堕とし辱めたいと人は強く望むものよ。おんしらのように高嶺の花など特にそうなのだ!!」

「白夜叉、その高嶺の花に僕は入ってないよね?」

 僕がそう聞くと、白夜叉はその事については何も言わず話を続ける。

「このままではいずれ、その身体にエロイ事を仕込みたいというエロイ欲求が爆発したエロイ暴徒がおんしらを姦策に嵌めてエロエロにしようと動きだすに違いない!そうッ!!まるで今の私の様にッ!!」

 

「「「黙れこの駄神ッ!!!」」」

 

 そう言って、黒ウサギが轟雷を、白雪姫が水流を、僕は爆風を白夜叉にぶつけた。

 白夜叉が飛んでいった先には十六夜達がおり、十六夜が白夜叉を足で受け止めた。

「てい」

「ゴバァ!!お、おんしいい加減にせいよッ!?足で受け止めるなと言っておるだろう!!」

「なら吹っ飛んでくるなよ。つか何をやったら黒ウサギに金剛杵を使わせるほど―――」

 そこで十六夜の言葉が切れた。大方、こちらを見て驚いているのだろう。

「………黒ウサギ、朔夜。どうしたその格好」

 ひゃ、と黒ウサギが情けない声を上げる。

「白夜叉に着せられたんだ」

「ゃ、やだ、なんで十六夜さんが此処に………!!?」

「いや、それは俺の台詞だと思うが………ふむ」

 そう言って、十六夜は水煙を腕で払った。

 途端、黒ウサギと白雪姫は自分の身体を抱きしめるようにへたり込む。

「………着物?」

「えっと、ミニスカの着物?」

「いいや、ワンサイズ小さいミニスカの着物にガーターソックスだな」

 うむ、と白夜叉が自慢げに胸を張る。

 レティシアは深いため息を吐いて、僕達の前に立つ。

「三人とも、とりあえず着替えなさい。特に黒ウサギ。そんな全身濡らした格好では、」

「何ッ!?黒ウサギが濡れ濡れだと!!?」

 ―――ズドオォォォォォン!!!と、追撃の轟雷が白夜叉を貫いたのだった。

 

          *

 

「まあ、コンセプトは悪くなかった。しかし次からはきちんと俺に相談してからだな、」

「これ以上その話を引き延ばすのは止めてくださいっ」

 スパン、と何時もの服装に戻った黒ウサギが十六夜の頭を少し軽めにハリセンで叩く。

 しかし白夜叉は少し焦げた頭を振り、至って真面目に首を振った。

「いや、あの服も今日の話に無関係ではない。今の服は本来黒ウサギに着せる衣装ではなく、この外門に造る新しい施設で使う予定の正装での」

「し、施設の正装!?あのエッチな着物モドキがでございますか!?一体どんなお馬鹿な施設を作るつもりなんです!?」

「黒ウサギ、少し落ち着いて。施設そのものは真っ当かもしれないでしょ」

「ああ。彼女の言うとおり、施設そのものは真っ当な代物だ」

「ちょっとまって、白雪姫。一応、僕男なんだけど」

「なんだと!?」

 すごく驚かれた。まあ、慣れてるからいいけど。

「やや横道に逸れてしまったが、この件については“階層支配者(フロアマスター)”の活動の一環でな。最近の東区画下層では魔王らしい魔王も現れておらんし、ちょいと発展に協力しようと思っての。しかしさて、何処から手を付けたものかと悩んでおった時に、十六夜から発案があったのだ。“発展にはまず、潤沢な水源の確保が望ましい”とな」

「ほら、ちょっと前に旱魃騒ぎがあっただろ?あの様子を見る限り、どのコミュニティも水の工面には苦労しているみたいだったからな」

「街中に張り巡らされている水路だが、あれは使用料を払える中級以上のコミュニティしか使えないのが現状。東の七桁外門では、多くの組織が都市外にまで水を汲みに行っておる。定期降雨は行っているものの、十分な貯水が出来るコミュニティは果たして幾つあるものか」

「そ、そうですね。北側のように降雨量が多いわけでも無く、南側のように大河が都市部を貫通している訳でもありません。こればかりは土地柄として諦めるしかなかった問題です」

「うむ。そこで一つ、“階層支配者”の権限で大規模な水源施設の開拓を行おうというわけだ。十六夜には白雪の元に水源となるギフトを取りに行ってもらったのだが………よもや隷属させてくるとは思わなんだ。まだまだ修行不足だのう、白雪?」

 ニヤニヤと白雪姫を見る白夜叉。ムスッとした顔で白雪姫はそっぽを向いた。

「御話は分かりました。しかしそうならそうと言ってくだされば良いものを………こんな小僧を介さずとも、我が主神の求めならば喜んで協力致しましたのに」

「いや、それでは意味が無いのだ。“階層支配者”が全てを成して甘やかせば、下層は堕落する一方。施設は用意しても、最後の一押しはやはりその地域に住まうものが成さねばならん。この度の一件で十六夜に依頼したのは、最下層から実力のあるコミュニティが現れた事を広く知らしめ、競争心を高めようという意味合いもあったからの」

 そんな白夜叉のプランを聞いても顔を顰めていた白雪姫だったが、十六夜を一瞥して諦めたように深くため息を吐いた。

「ふう………まあ、致し方ない。異議を唱えても契約が覆る訳も無い。トリトニスの滝は移住してきた水精群に預け、我は小僧に従いましょう」

「そりゃどうも。ま、心配せずとも俺から命令する事は暫くねえよ。施設が完成するまでは白夜叉に身柄を預ける契約だしな。―――さて、これで契約成立。ゲームクリアだ。例のものを渡してもらおうじゃねえか」

「ふふ、分かっておる。“ノーネーム”に託すのは前代未聞であろうが………地域発展の為に神格保持者を貸し出すほどの功績を立てたのだ。他のコミュニティも文句は有るまいさ」

 そう言って、白夜叉は両手を前に伸ばし、パンパンと柏手を打った。

 すると座敷は光に包まれ、やがて一枚の羊皮紙が現れる。

 羽ペンを虚空から取り出した白夜叉は文末にサインを書きこむと、ジンに瞳を向けた。

「それでは、ジン=ラッセル。これはおんしに預けるぞ」

「ぼ、僕ですか?」

「うむ。これはコミュニティのリーダーが管理するもの。おんしがその手で受け取るのだ」

 ジンは促されるまま白夜叉の前に座り、羊皮紙の文面に目を通した。

 直後、ジンが動かなくなった。

「こ、これは………まさか……!!?」

「どうしましたジン坊っちゃん?」

 そう言って、ジンの後ろに回り込んだ黒ウサギも同様に動かなくなった。

 なんて書かれてたんだろう。

「が………外門の、利権証………!僕らが“地域支配者(レギオンマスター)”!?」

「うむ。外門の利権証は地域で最も力のあるコミュニティに与えられるもの。“フォレス・ガロ”が解体して以降、“サウザンドアイズ”が預かっていたが………今のおんしらになら、返しても問題なかろう」

 ふふふ、と口元を隠しながら笑う白夜叉。

「し、しかし、今の僕らは外門に飾る旗印がありません。外門が無印では地域のコミュニティから異論が上がるかも、」

「おいおい御チビ、頭使えよ。俺達は水源を地域に無償提供するんだぜ?普通は名無しと声高に罵ってる連中も、声を潜めずにはいられないだろ?」

 流石十六夜。そこまで考えていたんだ。

 ジンは大きく息を呑み、困惑した視線を黒ウサギに移す。

「黒ウサギ………」

「―――――………」

 黒ウサギは全身を震わせて立ち上がり、十六夜に近づく。

「どうした?何か不満があるっていうなら、聞くだけ聞くが」

「―――――……っ」

 ガバッ!と黒ウサギは、十六夜の胸の中に飛び込んだ。

「凄いのです………!凄いのです、凄いのです!!凄すぎるのですよ十六夜さんっ!!たった二ヵ月で利権証まで取り戻していただけるなんてっ………!本当に、本当にありがとうございます!」

 ウッキャー♪と奇声を上げてクルクルと十六夜にぶら下がる黒ウサギ。

(これは十六夜の勝ちは決まりだね。後一人は誰になるんだろう?)

 そんな事を考えながら、黒ウサギ達を微笑ましく見るのだった。

 

          *

 

 ―――その夜。“ノーネーム”では小さな宴が行われていた。

 黒ウサギも自作の魚料理を並べられた。

 僕達主力陣は勿論、子供達にも好評だったが、十六夜の―――

「黒ウサギ。これ多分、餡をかけないで酢漬けにしたほうが美味い」

 ―――という一言で、色々と台無しになった。

 

 宴の席が終わり、皆自室に戻った後、僕はお風呂に向かっていた。

(収穫祭、楽しみだな………)

 そんな事を考えながら、脱衣場に着くと袴を脱いで風呂場に入った。

 近くの籠に服が入っていたので、誰かいるのだろうと思い、一応タオルは巻いておく。

 風呂場には予想通り十六夜達がいた。

「朔夜も入ってきたんだな」

「まあね」

「お前の髪も洗おうか?」

「それじゃあ、お願いしようかな」

 僕がそう言うと、十六夜が髪を洗い始めた。

「上手いね」

「まあな。レティシアの髪も洗ったが、朔夜は朔夜で違った良さがあるな」

「ありがとう」

 十六夜に洗われた後、湯船に浸かる。

「そういえば、何で十六夜達は一緒に入ってるの?」

「それは、主殿が私の髪が湯船で濡れている姿を見たかったからのようだ」

 僕の問いにレティシアが答える。

「まあ、確かに見る価値はあるね」

「だろ?」

 僕がそう言うと、十六夜も同じように頷いている。

「それで、私からの質問なのだが十六夜は故郷でどのような生活をされていたのだ?」

「あ、それ僕も気になる」

 僕達がそう言うと、十六夜が意外そうな顔をした。

「前々から聞きたいと思っていたのだ。飛鳥や耀や朔夜の故郷も気になるが、十六夜は殊更気になる。強大な力を持つギフトもそうだが、箱庭の世界では重宝される博識さも謎だ。故郷の世界では、その分野について研究していたのかな?」

「いや、只の興味本位で学んだものさ。特にやりたい事も無かったからな」

「本当に?理由も無く独りで学んだと?」

「ああ。―――いや、」

 そう言って、十六夜は苦笑する。

「独りではなかったと?共に学ぶ者が?」

「まさか。俺と肩を並べる奴がいたら、わざわざ異世界まで暇つぶしになんて来ねえよ」

 ヤハハ、と笑って十六夜は湯船から出る。

 僕はもう少し入っていたいので、少しの間残ることにした。

 

          *

 

「十六夜、本当に行かなくていいの?」

「ああ」

 僕がそう聞くと、十六夜が頷いた。

 昨日の夜に十六夜のヘッドホンが無くなり、探していたのだが結局見つからなかったようだ。

 なので十六夜は本拠に残り、僕と耀が行くことになった。

 三人は飛鳥達が待っている本拠の前に移動する。

「………あ、来ましたよ!」

 ジンが声を上げた。十六夜の頭を見た黒ウサギが目を丸くして十六夜に問う。

「ど、どうしたんですかそれ」

「頭の上に何かないと髪が落ち着かなくてな。それより話がある」

 十六夜はそう言って道を開ける。そこから、僕と耀が出てきた。

「………本当にいいの?」

「仕方ねえさ。アレがないとどうにも髪の収まりが悪くていけない。壊れたスクラップだが、無いと困るんだよ」

 髪を掻きあげながら飄々と笑う十六夜。

「ありがとう。十六夜の代わりに、頑張ってくるよ」

「おう、任せた。ついでに友達一〇〇匹ぐらい作ってこいよ。南側は幻獣が多くいるみたいだからな。俺としては、そっちの期待が大きいぜ?」

「ふふ、分かった」

「朔夜も頑張れよ」

「うん。十六夜の分まで頑張るよ」

 そう言って十六夜に向かって手を振り、飛鳥達のところに行く。

 こうして僕達五人と一匹は本拠を後にしたのだった。

 

          *

 

 僕達は本拠を後にした後、“境界門(アストラルゲート)”の前に来ていた。

「この収穫祭から帰ってきたら、いの一番にこの彫像を取り除かないと」

「ま、まあまあ。それはコミュニティの備蓄が十分になってからでも、」

「あら、何を言ってるの黒ウサギ。この門はこれからジン君を売り出すための重要な拠点になるのよ。先行投資の意味でも、まずは彼の全身をモチーフにした彫像と肖像画を」

「お願いですからやめてください!」

 ジンが青くなって叫ぶ。幾らなんでも恥ずかしいのだろう。

「「「じゃあ、黒ウサギを売り出そう(しましょう)」」」

「何で黒ウサギを売り出すんですかっ!」

「「「じゃあ黒ウサギを売りに出そう(しましょう)」」」

「何で黒ウサギを売るんですかあああああああ!!!」

 スパパパーン!っと黒ウサギの叫びと共に、僕達の頭にハリセンを奔らせる。

「我々がこれから向かう場所は南側の七七ご九一七五外門。“龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)”が主催する収穫祭でございます。しかしそれとは別に、舞台主である巨躯の御神体“アンダーウッド”の精霊達からも招待状が来ております。両コミュニティには前夜祭のうちに挨拶へ向かいますので、それだけ気に留めておいてください」

「うん」

「分かったわ」

「分かったよ」

 黒ウサギが道先案内をしている間に“境界門”の起動が進む。

「皆さん、外門のナンバープレートはちゃんと持ってますか?」

「大丈夫だよ」

 そう言って、僕は鈍色の小さなプレートを黒ウサギに見せる。

「……………、」

「どうしたの、春日部さん。何か忘れものでも?」

「ううん………ただ、十六夜の事が気になって」

「そうだね………でも、まさか十六夜がヘッドホン一つで辞退するとはね」

「そうね。私もそれは思ったわ」

「YES。あれほど楽しみにしていましたのに」

「きっと、あのヘッドホンは十六夜にとって大事なものなんだよ」

 そう言って耀は、首にかかったペンダントを握りしめる。

「………見つかるといいね」

 僕達三人も同意して頷く。その直後、“境界門”の準備が調った。

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