問題児と精霊使いが異世界から来るそうですよ? 作:白ウサギ@FGO
天幕につくまでの道のりを歩いていると十六夜が、
「ちょっと世界の果てを見てくるぜ!」
と言いながら、走っていった。
黒ウサギは十六夜がいなくなったことにまったく気づいていない。
(これ、話した方がいいかな?)
そう話しかけると、
『言わなくていいんじゃない?』
『気づいていないので、言わなくていいと思います』
(それもそうか)
そんなふうに話していると、どうやら目的地に着いたみたいだ。
「ジン坊っちゃーン!新しい方を連れて来ましたよー!」
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性三人が?」
女性認定された。まあ、この見た目じゃあしょうがないか………
「はいな、こちらの御四人様が―――」
こちらを見た黒ウサギは固まった。
「………え、あれ?もう一人いませんでしたって?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方が」
「ああ、十六夜君のこと?彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「“止めてくれるなよ”って言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「“黒ウサギには言うなよ”と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」
「「うん」」
「さ、朔夜さんはなんで教えてくれなかったんですか?」
そう聞いてくる黒ウサギ。
「言わなくてもいいと思ったから」
そう言うと黒ウサギはガクリとうなだれる。
そんな黒ウサギとは対照的に、ジンは蒼白になって叫ぶ。
「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
「あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?………斬新?」
「それは、ゲームとしてどうなの?」
「冗談を言ってる場合じゃありません!」
「はあ………ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御二人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギはどうする?」
「問題児を捕まえに参ります。事のついでに―――“箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
そう言って、黒ウサギは髪を緋色染めていく。
飛び上がった黒ウサギは外門の柱に水平に張り付き、
「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ごさいませ!」
そう言って、あっという間に僕達の目の前から消え去った。
「………。箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」
「ウサギ達は箱庭の創造者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが………」
飛鳥は心配そうにしているジンに向き直り、
「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。二人の名前は?」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのと、髪の長い人が」
「春日部耀」
「神代朔夜」
ジンが礼儀正しく自己紹介する。僕達はそれに倣って一礼した。
「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」
飛鳥はジンの手を取ると、笑顔で箱庭の外門をくぐっていった。
*
外門をくぐると、ぱっと僕達の頭上に眩しい光が降り注ぐ。
『お、お嬢!外から天幕の中に入ったはずなのに、御天道様が見えとるで!』
「………本当だ。外から見たときは箱庭の内側なんて見えなかったのに」
どうやら耀は動物と話せるギフトを持っているみたいだ。
何を言っているのか気になったので通訳をお願いする。
(オルトリンデ、通訳お願いしてもいい?)
『はい。マスター』
そう言って、三毛猫の会話を通訳してくれる。
オルトリンデの通訳を聞いていると、ジンが耀の発言に対して答えてくれる。
「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されていますから」
「それはなんとも気になる話ね。この都市には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」
「え、居ますけど」
「………。そう」
いるんだ、吸血鬼。
『しかしあれやなあ。ワシが知っとる人里とはえらい空気が違う場所や。まるで山奥朝霧が晴れた時のような澄み具合や。ほら、あの噴水の彫像もえらい立派な造りやで!お嬢の親父さんが見たらさぞ喜んだやろうなあ』
「うん。そうだね」
「あら、何か言った?」
「………。別に」
耀のギフトが少し気になる。動物としゃべるギフトだけとは思えないし。
「お勧めの店はあるかしら?」
「す、すいません。段取りは黒ウサギに任せていたので………よかったらお好きな店を選んでください」
「それは太っ腹なことね」
僕達は近くにあった“六本傷”の旗を掲げるカフェテラスに座る。
注文をとるために店の奥から素早く猫耳の少女が飛び出てきた。
「いらっしゃいませー。ご注文はどうしますか?」
「えーと、紅茶を二つと緑茶を二つ。あと軽食にコレとコレと」
『ネコマンマを!』
「はいはーい。ティーセット四つにネコマンマですね」
………ん?と飛鳥とジンが不可解そうに首を傾げている。
それ以上に驚いている耀が店員に問いただす。
「三毛猫の言葉、分かるの?」
「そりゃ分かりますよー私は猫族なんですから。お歳のわりに随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスさせてもらいますよー」
『ねーちゃんも可愛い猫耳に鉤尻尾やな。今度機会があったら甘噛みしに行くわ』
「やだもーお客さんったらお上手なんだから♪」
猫耳娘は長い鉤尻尾をフリフリと揺らしながら店内に戻る。
その後ろ姿を見送った耀は嬉しそうに笑って三毛猫を撫でる。
「………箱庭ってすごいね、三毛猫。私以外に三毛猫の言葉が分かる人がいたよ」
『来てよかったなお嬢』
「ちょ、ちょっと待って。貴女もしかして猫と会話ができるの?」
そう言った飛鳥に、耀はこくりとうなずく。
「もしかして猫以外にも意志疎通は可能ですか?」
「うん。生きているなら誰とでも話は出来る」
「それは素敵ね。じゃああそこに飛び交う野鳥とも会話が?」
「うん、きっと出来………る?ええと、鳥で話したことがあるのは雀や鷺や不如帰ぐらいだけど………ペンギンがいけたからきっとだいじょ」
「ペンギン!?」
「う、うん。水族館で知り合った。他にもイルカ達とも友達」
まさか生きているなら可能とは。僕が出来るのは精霊ぐらいだから、少し羨ましい。
「ねえ、ジン」
「はい、なんでしょう?」
「箱庭にも精霊とかっているの?」
「居ますけど、それがどうかしたんですか?」
不思議そうに聞いてくる。
「うん、僕の仲間に精霊がいるから」
「精霊がいるんですか!?」
「う、うん。そうだけど、どうかした?」
そう言うと、飛鳥が
「じゃあ、あの時の大きな鳥は精霊かしら?」
「うん、そうだよ。他にもいるけど」
「見せて」
耀がそう言ってくる。なら、フェンリルがいいかな。
「フェンリル」
そう言うと、目の前にフェンリルが現れる。
それを見て、ジンは唖然としている。
「これでいい?」
「ありがとう。さわっていい?」
そう言ってきたのでフェンリルに聞く。大丈夫みたいだ。
その事を耀に伝える前に耀はさわり始める。精霊ともしゃべれるみたいだ。
「飛鳥達もさわる?フェンリルはいいって言ってるし」
「私は遠慮しておくわ」
「わかった」
そんな会話をしていると、ジンが
「もしかして、朔夜さんは精霊と会話出来るんですか?」
「うん。まあ、耀ほどすごくないけど」
そんな会話を四人でしていると、
「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ“名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」
そんな声が聞こえてくる。振り返ると、変な男がいた。
その男はどうやらジンの知り合いらしい。
「僕らのコミュニティは“ノーネーム”です。“フォレス・ガロ”のガルド=ガスパー」
「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ―――そう思わないかい、お嬢様方」
そう言って僕の隣に座り、僕達に愛想笑いを向ける。
なんで僕の隣に座るの?もう少し離れてほしい。
『殺してもいいかしら?』
『朔夜、気持ち悪いです』
『マスター、この失礼な男はなんなんでしょうか』
三人とも、ガルドと呼ばれた男のことは嫌いみたいだ。
「失礼ですけど、同席を求めるならばまず氏名を名乗ったのちに一言添えるのが礼儀ではないかしら?」
「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ“六百六十六の獣”の傘下である」
「烏合の衆の」
「コミュニティのリーダーをしている、ってマテやゴラァ!!誰が烏合の衆だ小僧オォ!!!」
ジンにそう言われ、ガルドは肉食獣のような牙と瞳を向ける。
ガルド、舐められすぎでしょ。
「口慎めや小僧ォ………紳士で通っている俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ………?」
「森の守護者だったころの貴方なら相応に礼儀で返していたでしょうが、今の貴方はこの二一〇五三八〇外門付近を荒らす獣にしか見えません」
「ハッ、そういう貴様は過去の栄華に縋る亡霊と変わらんだろうがッ。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてんのか理解できてんのかい?」
「ハイ、ちょっとストップ」
そう言ったのは飛鳥だ。
「事情はよくわからないけど、貴方達二人の仲が悪いことは承知したわ。それを踏まえたうえで質問したいのだけど―――」
「ねえ、ジン君。ガルドさんが指摘している、私達のコミュニティが置かれている状況………というものを説明していただける?」
「そ、それは」
「貴方は自分のことをコミュニティのリーダーと名乗ったわ。なら黒ウサギと同様に、新たな同士として呼びだした私達にコミュニティとはどういうものなのかを説明する義務があるはずよ。違うかしら?」
飛鳥の発言を聞いたガルドは獣の顔を元に戻す。
「レディ、貴女の言う通りだ。コミュニティの長として新たな同士に箱庭の世界のルールを教えるのは当然の義務。しかし彼はそれをしたがらないでしょう。よろしければ“フォレス・ガロ”のリーダーであるこの私が、コミュニティの重要性と小僧―――ではなく、ジン=ラッセル率いる“ノーネーム”のコミュニティを客観的に説明させていただきますが」
「………そうね。お願いするわ」
「承りました。まず、コミュニティとは読んで字のごとく複数名で作られる組織の総称です。受け取り方は種によって違うでしょう。人間はその大小で家族とも組織とも国ともコミュニティを言い換えますし、幻獣は“群れ”とも言い換えられる」
「それぐらいはわかるわ」
「はい、確認までに。そしてコミュニティは活動する上で箱庭に“名”と“旗印”を申告しなければなりません。特に旗印はコミュニティの縄張りを主張する大事な物。この店にも大きな旗が掲げられているでしょう?あれがそうです」
ガルドはそう言ってカフェテラスに掲げられた旗を指さす。
「もし自分のコミュニティを大きくしたいと望むのであれば、他のコミュニティに両者合意で『ギフトゲーム』を仕掛ければいいのです。私のコミュニティは実際にそうやって大きくしましたから」
そういわれて、疑問に思った事を口にする。
「あれ?でもジンのコミュニティは“ノーネーム”って言われてたけど、もともとそうだったの?」
「いえ。貴女達の所属するコミュニティは―――数年前までは東区画最大手のコミュニティでした」
「へえ、意外」
「とはいえリーダーは別人でしたけどね。ジン君とは比べようもない優秀な男だったそうですよ。ギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていた、東区画最強のコミュニティだったそうですから」
ガルドが一転してつまらなそうな口調で語る。
彼にしてみればどうでもいい話なのだろう。
「彼は東西南北に分かれたこの箱庭で、東のほかに南北の主軸コミュニティとも親交が深かった。いやホント、私はジンの事は毛嫌いしてますがね。これはマジですげえんですよ。南区画の幻獣王格や北区画の悪鬼羅刹が認め、箱庭上層に食い込むコミュニティだったというのは嫉妬を通り越して尊敬してやってもいいぐらいには凄いのです。―――まあ先代は、ですが」
「……………」
「“人間”の立ち上げたコミュニティではまさに快挙ともいえる数々の栄華を築いたコミュニティはしかし!………彼らは敵に回してはいけないモノに目を付けられた。そして彼らはギフトゲームに参加させられ、たった一夜で滅ぼされた。『ギフトゲーム』が支配するこの箱庭の世界、最悪の天災によって」
「天災?」
僕達は同時に聞き返した。
それほどの組織を滅ぼしたのが、ただの天災というのはあまりに不自然だ。
「此れは比喩にあらず、ですよレディ達。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災―――俗に“魔王”と呼ばれる者達です」
*
ある程度の話をガルドから聞き終え、それぞれに出されたカップを片手に飛鳥が言う。
「なるほどね。大体理解したわ。つまり“魔王”というのはこの世界で特権階級を振り回す神様etc.を指し、ジン君のコミュニティは彼らの玩具として潰された。そういうこと?」
「そうですレディ。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなることはよくあることなんですよ」
ガルドは椅子の上で大きく手を広げて皮肉そうに笑う。
「名も、旗印も、主力陣の全てを失い、残ったのは膨大な移住区画の土地だけ。もしもこの時に新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたんでしょうがね。今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありません」
「……………」
「そもそも考えてみてくださいよ。名乗ることを禁じられたコミュニティに、一体どんな活動ができます?商売ですか?
「そうね………誰も加入したいとは思わないでしょう」
「そう。彼は出来もしない夢を掲げて過去の栄華に縋る恥知らずな亡霊でしかないのですよ」
そう言ったガルドは、豪快な笑顔でジンとコミュニティを笑う。
「もっと言えばですね。彼はコミュニティのリーダーとは名ばかりで殆どリーダーとして活動はしていません。コミュニティの再建を掲げてはいますが、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えてもらうだけの寄生虫」
「……………っ」
「私は本当に黒ウサギの彼女が不憫でなりません。ウサギと言えば“箱庭の貴族”と呼ばれるほど強力なギフトの数々を持ち、何処のコミュニティでも破格の待遇で愛でられるはず。コミュニティにとってウサギを所持しているというのはそれだけで大きな“箔”が付く。なのに彼女は毎日毎日糞ガキ共の為に身を粉にして走り回り、僅かな路銀で弱小コミュニティをやり繰りしている」
「………そう。事情は分かったわ。それでガルドさんは、どうして私達にそんな話を丁寧に話してくれるのかしら?」
「単刀直入に言います。もしよろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」
「な、何を言い出すんですかガルド=ガスパー!?」
「黙れ、ジン=ラッセル。そもそもテメェが名と旗印を新しく改めていれば最低限のコミュニティに残っていたはずだろうが。それを貴様の我が儘でコミュニティを追いこんでおきながら、どの顔で異世界から人材を呼び出した」
「そ………それは」
「何も知らない相手なら騙しとおせるとでも思ったのか?その結果、黒ウサギと同じ苦労を背負わせるってんなら………こっちも箱庭の住人として通さなきゃならねえ仁義があるぜ」
「………で、どうですかレディ達。返事はすぐにとは言いません。コミュニティに属さずとも貴女達には箱庭で三十日間の自由が約束されています。一度、自分達を呼び出したコミュニティと私達“フォレス・ガロ”のコミュニティを視察し、十分に検討してから―――」
「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」
そう言って、耀に笑顔で話しかける。
「春日部さんは今の話をどう思う?」
「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」
「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの。朔夜さんもどう?」
「うん、僕も君たちとは友達になりたかったから。耀も僕と友達になってくれる?」
「………うん。飛鳥達は私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」
『よかったなお嬢………お嬢に友達ができてワシも涙が出るほど嬉しいわ』
ホロリと泣く三毛猫。そんなふうに飛鳥達と話していると、ガルドが大きく咳払いをして聞いてくる。
「失礼ですが、理由を教えてもらっても?」
「だから、間に合ってるのよ。春日部さんは聞いての通り友達を作りに来ただけだから、ジン君でもガルドさんでもどちらでも構わない。そうよね?」
「うん」
「朔夜さんは?」
「僕はレスティア達がガルドのことを嫌ってるし、飛鳥達が入るなら僕もジンのコミュニティの方がいいかな」
「レスティアって誰?」
耀が聞いてきたので答える。
「僕の相棒」
「そうなんだ」
そして、飛鳥がまた喋り始める。
「そして私、久遠飛鳥は―――裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ。それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら。だとしたら自身の身の丈を知った上で出直して欲しいものね、このエセ虎紳士」
ピシャリと言い切る。それを聞いてガルドは
「お………お言葉ですがレデ
「黙りなさい」
ガチン!とガルドは不自然な形で、勢いよく口を閉じて黙り込む。
「………!?……………!??」
「私の話はまだ終わってないわ。貴方からはまだまだ聞きださなければいけないことがあるのだもの。貴方はそこに座って、私の質問に答え続けなさい」
どうやら、これが飛鳥のギフトのようだ。
その様子に驚いた猫耳店員が僕達の方に駆け寄る。
「お、お客さん!当店でもめ事は控えてくださ―――」
「ちょうどいいわ。猫の店員さんも第三者として聞いていって欲しいの。多分、面白いことが聞けるはずよ」
首を傾げる猫耳の店員を制して、飛鳥は言葉を続ける。
「貴方はこの地域のコミュニティに“両者合意”で勝負を挑み、そして勝利したと言っていたわ。だけど、私が聞いたギフトゲームの内容は少し違うの。コミュニティのゲームとは“
「や、やむを得ない状況なら稀に。しかし、これはコミュニティの存続を賭けたかなりのレアケースです」
聞いていた猫耳の店員も同意するように頷く。
「そうよね。訪れたばかりの私達でさえそれぐらい分かるもの。そのコミュニティ同士の戦いに強制力を持つからこそ“主催者権限”を持つ者は魔王として恐れられているはず。その特権を持たない貴方がどうして強制的にコミュニティを賭けあうような大勝負を続けることができたのかしら?教えてくださる?」
ガルドは悲鳴を上げそうな顔になるが、口は意に反して言葉を紡ぐ。
「き、強制させる方法は様々だ。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫すること。これに動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」
「小物らしい手だね」
「そうね。けどそんな違法で吸収した組織が貴方の下で従順に働いてくれるのかしら?」
「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」
ピクリと飛鳥の片眉が動く。
かくゆう僕も表情には出さないが、かなり不快だ。
レスティア達もかなり不快そうにしている。
「………そう。ますます外道ね。それで、その子供達は何処に幽閉されているの?」
「もう殺した」
その場の空気が瞬時に凍りつく。
それでもガルドは飛鳥に命令された通り言葉を続ける。
「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思っていたが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。けど身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食
「黙れ」
ガチン!!とガルドの口が先程以上に勢いよく閉じられる。
「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えなくてよ。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら………ねえジン君?」
飛鳥の視線に慌ててジンは否定する。
「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」
「ねえ、ジン。今の証言で箱庭の法がこいつを裁くことはできる?」
「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが………裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」
確かにリーダーであるガルドがコミュニティを去れば、烏合の衆でしかない“フォレス・ガロ”が瓦解するのは目に見えている。
しかし飛鳥はそれでは満足できないようだ。
「そう。なら仕方がないわ」
そう言って飛鳥が指をパチンと鳴らすと、怒り狂ったガルドがカフェテラスのテーブルを壊し、
「こ………この小娘がァァァァァァァァ!!」
雄叫びとともに変化させる。
「テメェ、どういうつもりか知らねぇが……俺の上に誰が居るかわかってんだろうなァ!?箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!!俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ!その意味が
「黙りなさい。私の話はまだ終わってないわ」
ガチン、とまた勢いよく黙る。しかしそれだけでは止まらず飛鳥に襲いかかろうとする。だが、
「それ以上動けば殺すよ?」
そう言ってガルドの首もとに剣を突きつける。
そうすると、ようやくおとなしくなる。
「ありがとう。朔夜さん」
「気にしないで、僕もちょっとすっきりしたし」
それを聞いて、飛鳥は楽しそうに笑う。
「さて、ガルドさん。私は貴方の上に誰が居ようと気にしません。それはきっとジン君も同じでしょう。だって彼の最終目標は、コミュニティを潰した“打倒魔王”だもの」
その言葉にジンは大きく息を呑む。
自分達の目標を飛鳥に問われ、我に返ったようだ。
「………はい。僕達の最終目標は、魔王を倒して僕らの誇りと仲間達を取り戻すこと。今さらそんな脅しには屈しません」
「そういうこと。つまり貴方には破滅以外のどんな道も残されていないのよ」
「く………くそ……!」
「だけどね。私は貴方のコミュニティが瓦解する程度の事では満足できないの。貴方のような外道はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ。―――そこで皆に提案なのだけれど」
そう言うと、飛鳥は悪戯っぽい笑顔でガルドにある提案をする。
「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の“フォレス・ガロ”存続と“ノーネーム”の誇りと魂を賭けて、ね」